ノルウェーサバは一年中脂がのっているのか?

ノルウェーサバ  NSC

焼き魚の定番として、すっかりお馴染みになっているノルウェーサバ。多少の誤差や好みは別として、脂がのっていないノルウェーサバを食べたことがあるでしょうか?

焼いた後に冷めても美味しいのがノルウェーサバの特徴の一つです。一年中出回っているので、まるでいつでも旬のような感じがするかも知れません。

一方で、国産のサバの場合は、春から夏にかけて鮮魚で買って、脂がなくてパサパサしていたといった経験がないでしょうか?

ノルウェーサバは一年中脂がのっているわけではない

このグラフは、ノルウェーサバの脂肪分推移を表しています。赤の折れ線グラフをご覧ください。春(3〜4月ごろ)が産卵期で、この時期の脂肪分は5〜10%程度と低くなっています。そして夏になると産卵で痩せた体力を取り戻すべく、どんどんエサを食べて脂肪を蓄えて行きます。

9月中旬、霜降り状態に脂がのったノルウェーサバ 

脂肪分のピークは8月頃で、30%前後になるのですが、この時期は、まだ身に脂が十分回っていません。その後の9月中頃から皮と身の間に溜まっていた脂肪が身に回り、霜降り状態になって最も美味しい時期に入ります。

日本に輸入されるノルウェーサバは全て冷凍の状態です。脂がのった秋から冬にかけて冷凍されたサバが、周年加工により市場に供給されているのです。それで常に脂がのったサバが食べられるのです。

ところで、ノルウェーでは、秋から冬にかけてしかサバが獲れないのでしょうか?日本では、一年中どこかしらからで水揚げされ、生のサバが途切れないので不思議ですね。

ノルウェーサバの約7割(2018年)を漁獲する大型巻き網船は、千キロ離れた漁場でも魚を獲りに行くことが可能です。また一度に千㌧以上のサバを冷やした良い状態で2~3日かけて運んでくることも可能です。従って、やろうと思えば、日本のように一年中、サバを漁獲することは物理的にできるのです。

しかしながら、ノルウェーの漁船は、物理的には問題なくても、脂がのった美味しい時期以外はサバを漁獲しません。

その理由は、水産資源管理システムにあります。ノルウェーの巻き網船には、漁船ごとに漁獲枠(Quota)が科学的な根拠に基づいて毎年割り振られています。

2018年のサバの漁獲枠は1隻当たり約1,400トンでした。大型巻き網船は、その数量をたった1回で獲ってしまうことが可能です。一方で、物理的にはその数倍獲ることが可能ですが、それは規則でできません。

枠を1回で使用するよりも、3~4回くらいに分散させて、少しでも魚価が高くなるように漁をしています。求めているのは水揚数量ではなく、水揚金額の増です。

また、脂がのっていない時期より、脂がのって身に回っている時期の方が、価格が高くなります。主要マーケットである日本市場は特に脂ののり具合に敏感です。

そこで漁業者としては、漁獲枠が実際に漁獲できる数量より大幅に少ないので、たくさん獲ることではなく、如何に品質を向上させて魚価を上げることに力を入れています。

かつ、大量貧乏にならないように、できるだけ水揚げを分散して魚価を維持・高めることにを重視しています。このため水揚げされたサバの状態はとてもよくなります。

一方で、日本のマサバの場合はどうでしょうか?

国産のマサバ 脂がのらない6月もの 脂ののりは表面からは分からない

裏返してみると身は赤く脂はほぼない

ノルウェーサバとは対照的な赤い身で、6月のマサバの脂はほとんどありません。実際に食べてみると、身が固くてパサパサ。

この時期の脂肪分データをみると下のグラフのように5~10%前後しかなく、ノルウェーサバの25~30%前後の脂肪分に比べて非常に低くなっています。

マサバ 6月は5~10%前後とほとんど脂がのっていない 千葉県
マサバ 11月は20~25%前後も脂がのり美味しい 千葉県

一方で、日本のマサバも秋になるとノルウェーサバ同様に脂を蓄えます。脂肪分もノルウェーサバには及ばないものの、上のグラフを見てわかる通り20~25%前後にも達します。

なぜ、日本ではノルウェーのように脂ののった時期以外でも、獲って流通させてしまうのでしょうか?消費者としては、お店に並んでいる以上、そのサバが脂が無いと思って購入することはないでしょう。

一方で、家で調理して食べて美味しくないと、産地にかかわらず、もしくは焼き魚や煮魚に対して食べたくないというトラウマになってしまうかも知れません。

筆者は、日本だけが魚の漁獲量が減少を続けているだけでなく、魚離れまで起きてしまっている理由は、この美味しくない魚が店に並んでしまうことで、消費者が離れてしまうからだと考えています。

消費者が知らないところで、食用に向かない小さなサバもたくさん水揚げされている。

それでは、日本で獲るサバも、ノルウェー同様に常に脂がのった美味しいサバにするにはどうしたらよいのでしょうか?

その答えは、ノルウェー同様に船ごとに漁獲枠を設定することにあります。ただし、そこで重要なポイントがあります。それは獲り切れない大きな枠を設定しないこと、魚が獲れたら枠を増やすことはしないことです。

日本でも、漁船ごとにサバの枠を設定しているケースがあります。しかし、漁獲枠が大きすぎるために、漁船は小さなサバでも、見つけたら獲ってしまいます。これはノルウェーとは似て非なる制度です。

また、枠が大きいために、分散して水揚げをしようという意識が働きにくく、いっせいに獲って処理し切れないほど水揚げしてしまうケースがよく見られます。

大量水揚げでは鮮度が落ちてしまうので、魚価は下がり、食用に向かない比率が増えます。このため養殖のエサや輸出に回ってしまうケースもあり、もったいないことが起きているのです。ノルウェーサバは99%が食用ですが、日本では7割程度が食用になっているに過ぎません。

ノルウェーサバも日本のマサバも同じように春頃産卵し、秋から冬にかけて脂がのって美味しくなります。ノルウェーのような水産資源管理を行い、資源をサステナブルにし、同じように脂がのった時期に冷凍してそれを周年加工して流通させれば、日本のマサバで脂がのったサバを年中供給することができるようになります。

同じ11月に漁獲されたマサバでも200g前後の未成魚では、
成魚のように脂はのらない。千葉県

ただし、本来脂がのる秋~冬の時期であっても、ローソクやジャミと呼ばれるマサバの幼魚には、グラフにようにほとんど脂はのらず食用に向かないので、価値は低くなります。小さいうちには獲らず、最低でも300g以上、成魚になるまで待っことが重要です。そして大きくなってから脂がのった時期に獲ることが大切なのではないでしょうか?

ノルウェーサバは年中脂がのっているのは、脂がのっている時期しか漁船が獲らない制度だからなのです。漁業法の改正に伴い、国際的に遜色のない資源管理を行えば日本でもできることです。

食べたら危険? ノルウェーサーモンの誤解を解いてみた(2)

アトランティックサーモン 天然

冷凍されて輸入されているからアニサキスの問題はない?

ノルウェーサーモン(アトランティックサーモン)への誤解を解く第2弾。アニサキス? 冷凍?共にノルウェーサーモンとほぼ関係がないファクターが、ネットで説明され間違いが間違いを呼び複雑骨折しています。

まず養殖のノルウェー サーモンとアニサキスの関係について。アニサキスは、体内に取りこんでしまうと激しい腹痛を伴う恐ろしい寄生虫です。しかし、輸入されているノルウェーサーモンは養殖です。エサのドライ加工したペレットにはアニサキスはおらず、その心配はありません。そのため刺身用として、寿司ネタとして広く流通しているのです。

アニサキスはマイナス20度で24時間以上冷凍すると死滅します。このため、オランダやドイツで人気がある生食のニシン(マチェス)は一旦冷凍してから流通しています。ニシンは天然ものです。

日本で天然の鮭を生で食べるルイベ。これは鮭を一旦冷凍した料理です。冷凍するのは、天然のサケには養殖物と異なりアニサキスなどの寄生虫リスクがあるからなのです。

ニシンやサバなどの天然魚は、エサとなるツノナシオキアミなどにアニサキスが寄生しており、それを食べることで内臓などにアニサキスが入り寄生します。

しかしながら、ノルウェーサーモンに与えるのは、ペレットと呼ばれる粒状のエサです。原料のフィッシュミールは、加熱、乾燥させるのでアニサキスはいません。ノルウェーで問題になっているのは、後述しますが、シーライスと呼ばれる全く別の寄生虫です。

さらに日本に輸入されているノルウェーサーモンは90%以上が生の空輸です。ですから、冷凍されているからアニサキスは大丈夫というのは、そもそも的外れなのです。

アニサキスの危険?

天然アトランティックサーモンの寄生虫(シーライス)

ノルウェーサーモンにつく寄生虫(シーライス)の写真です。赤い矢印をご覧ください。アニサキスは、半透明で細いイトミミズのような全然違う虫です。この写真は、アイスランドの川に回遊してきた天然のアトランティックサーモン(ノルウェーサーモンと同じ)です。養殖で問題になっているシーライスは、このように天然のサーモンにも一般に寄生しているのです。

ノルウェーサーモンに寄生しているシーライスは、写真のように内部ではなく皮く目立つ虫です。生食用に調理する際には、皮は取り除かれますよね。

養殖場にアニサキスが入ってくる可能性が100%無いとは断言できませんが、常識的に考えて問題は無いのです。

ノルウェーサーモンは生で空輸される

2018年に輸入されたノルウェーサーモンのセミドレス(エラと内臓を取り除いた形態)の数量は15,605トンです。その内、冷凍での輸入はわずか192トンです。つまり、99%が生鮮の状態で輸入されて主に生食用として流通しているのです。

加工したフィレーの形体(頭、内蔵、骨、皮などを除去)で冷凍したものが1,699トンあります。一方で生鮮で輸入されるフィレーは大幅にそれ以上あります。チリ産などの数字も入るので詳細は分かりませんが、全部ノルウェー 産とかなり多めに計算したとしても、生鮮での輸入は9割を超えています。ノルウェーサーモンが生食で食べられるのは、冷凍して輸入されるからという理由ではないのです。

ノルウェーサーモンを加熱する?

ステーキやムニエルなどでノルウェー サーモンは加熱調理されます。もちろん、火を通しても美味しく食べられます。ただ、アニサキスの問題があるので火を通して食べた方がよいというのは、正しい解釈ではありません。

アニサキスは火を通せば死滅しますが、そもそも養殖のノルウェー サーモンにはいないので、その話自体が関係がないのです。

欧州でも寿司ネタで人気のアトランティックサーモン

EUや米国をはじめ世界中でアトランティックサーモンを使った寿司の需要が増えています。ちなみにEUや米国の食品輸入は衛生基準を始め日本に比較してかなり厳しく、問題がある食品を、しかも生食で流通させるなど考えられません。

なぜ、ノルウェーサーモンに関するデマが広がったのかは分かりません。ただ、水産資源管理、サステナビリティに関しての誤った情報や知識不足が悪影響を与え、それに対する答えが見つけられないケースがサーモンに限らず多々あります。当サイトはそのための手掛かりの一つとなれれば幸いです。

ダイオキシン、抗生物質、殺虫剤などについては「食べたら危険?ノルウェーサーモンの誤解を解いてみた(1)」をご参照ください。

食べたら危険?ノルウェーサーモンの誤解を解いてみた (1)

天然のアトランティックサーモン

ノルウェーサーモンは「最も危険な食べ物」なのか?

回転ずしや寿司などですっかり日本の市場に定着している養殖物のノルウェーサーモン(アトランティックサーモン)。ノルウェー輸出審議会(NSC)によるメディアへのキャンペーンで見る機会もあったかも知れません。

ところが「ノルウェーサーモン」と検索すると「最も危険な食べ物」「抗生物質」「殺虫剤」「エサに大量の小魚が乱獲されている」「河川で見つかるサケの50%以上が養殖サーモン」「小さな場所に押し込まれている」などネガティブ内容を含む検索結果がいくつも出てきます。

読むと「えっ!」と思う内容が多く、このため記事が拡散されて、Googleの検索上位に上がり、それらがさらに多くの人の目についています。そしてそれらのネガティブ記事に様々な尾ひれがつきそれが拡散。

Yahoo知恵袋でのやり取りもベストアンサーの返答自体が、そういったネガティブ記事の受け答えがベースになっており、留まるところを知りません。

養殖 ノルウェーサーモン(アトランティックサーモン) NSC

ところが現場を見ると、非常に厳しく管理され、きれいで澄んだ海で養殖されているノルウェーサーモン。 今回は、それらの主だったネガティブ内容をデータ、国際ルール、統計などを基に検証します。

ダイオキシン、抗生物質、殺虫剤 ?

まずダイオキシンについてです。「養殖サーモンを食べるとPCBなどの害」、「上限は年間3食。」?こんな検索結果を見れば食べるのが怖くなってしまいますね。

ところが、ノルウェーの科学委員会(Norwegian Scientific Committeeでは「週に1kg以上食べても健康に害を及ぼさないとしています。(www.nifes.no)

ダイオキシンについて

養殖より天然のサーモンの方がダイオキシンなどは多い

グラフ見て頂くと一目瞭然ですが、ノルウェーでは、天然のサーモンの方が、養殖物よりもダイオキシンやPCBの含有量が多いというデータになっています。またサバやニシンよりも養殖サーモンの方が低いのです。

10年以上検査がされておらずでした。このため、「養殖物」という先入観による情報が一人歩きしたのでしょう。なお、この結果は2017年に発表されたものです。

毎年11,000尾のサーモンが検査され、PCB、ダイオキシン、重金属のレベルはEUの制限値をはるかに下回っています。

抗生物質について

ノルウェーサーモン 抗生物質使用量と養殖量推移

上のグラフは、ノルウェーサーモンの抗生物質使用料と、養殖量の推移を表しています。これも結果は一目瞭然です。抗生物質の使用が多かったのは、30年以上前のことです。その間に生産量は5万トンから120万トンに激増。逆に抗生物質の使用量は99.9%削減されているのです。

抗生物質 肉とサーモンの使用量

ついでにノルウェーでの肉とサーモンにおける抗生物質の使用量を比較したグラフを見てみます。キロ当たり肉は175mgですが、サーモンはわずか0.00036mgです。

殺虫剤?(エトキシキン)について

次に「殺虫剤(エトキシキン)」がエサに混じって使われているということについてです。ノルウェーサーモンのエサには、フィッシュミール(構成比17%)が使用されています。

ところで魚粉には、乾燥した魚粉が自然発火しないように船舶で輸送する際には、エトキシキンを使用することが「義務付け」られています。また、使用料についてはWHOで基準が定められています。

欧州で販売されているアトランティックサーモン

日本には過去12ヶ月(2018年10月〜2019年9月)で21万トンのフィッシュミールが輸入されています。輸送手段は船舶です。もし、エトキシキンがダメなら、日本で養殖されているハマチ、マダイなどを始め、フィッシュミールをエサにしている養殖魚はどうなるのでしょうか?

エサに大量の小魚が乱獲されている?

ノルウェーでは、サバでもニシンでも大きくなれば食用になる魚を小魚の内に獲るような勿体ないことはしません。サバではノルウェーの食用向けの比率は99%で日本は同70%程度です。また釧路で水揚げされるマイワシでは90%がフィッシュミール(2018年)になっており、この件は、むしろ日本に当てはまってしまう内容です。

ちなみに、ノルウェー ではニシンをフィッシュミールにしています。しかしミールになるのは、頭、骨、内臓などの可食部を取り除いた残渣です。イカナゴのように食用にしていない魚は、丸のままフィッシュミールにしていますが、科学的根拠に基づき資源管理されており、乱獲には全く該当しません。

河川で見つかるサケの50%以上が養殖サーモン?

ノルウェーサーモン 脱走尾数 単位千尾

養殖のサーモンが逃げ出し、天然物と混じってしまうことは避けねばなりません。ノルウェーでは、サーモンが脱走した場合、1尾当たり約6,000円(500NOK)の罰金がかかります。

河川で見つかるサーモンの50%が養殖物という検索結果もありましたが、実際には5%以下というデータなのです。天然のサーモンの縄張りが荒らされたり、他の魚も含めてエサがなくなってしまうなどということもありません。

小さな場所に押し込まれている?

サーモンの比率はわずか2.5%で97.5%が海水 NSC

ノルウェーサーモンの養殖は、環境にとても配慮しています。上の養殖場の図の通りで、サーモンの比率はわずか2.5%であとは海水です。小さい場所で養殖などしていません。過密養殖とは程遠い健全な状態なのです。

実際、現場に行ってみると、養殖場は広いフィヨルドの中にポツンとあり、もっと養殖場があっても良いのでは?と思うくらいです。

また、販売に不可欠になってきている養殖版の水産エコラベル(asc認証)を取るためには、養殖する魚の環境や、使用するエサのサステナビリティの考慮も欠かせません。

まだまだ、ノルウェーサーモンに関する誤った情報発信はたくさんありますが、長くなるので今回は第一弾としてこの辺にしておきましょう。

世界と日本の魚の状態を比較してみた

世界の水揚量は増加を続けている FAOデータを編集

世界全体の水揚量は増え続けているのに、日本だけが多くの魚で減り続けています。しかしこの「異常」な現実は、一般にどころか、社会科を教えているような先生方にも、ほとんど知られていません。

食用に向かない小さなマサバやマイワシが、容赦なく漁獲されている

まず世界全体の水揚量推移のグラフを見てみましょう。天然と養殖を合わせ右肩上がりに増えています。1988年に1億トンに達した水揚げは、2017年では2億トンと倍増しています。恐ろしいことに、日本では同時期での比較では1,200万トンから4百万トンへと逆に1/3に激減しているのです。

天然と養殖物について見てみると、天然物が横ばいであるのに対して、養殖物の数量が著しく伸びています。天然魚の水揚量は頭打ちのように見えます。しかしそうではありません。北欧、北米、オセアニアなどの漁業先進国が、実際に漁獲できる数量より「大幅」にサステナビリティを考慮して天然魚の漁獲量を制限しているのでそう見えるのです。

水産白書

なぜ、子供たちに教える先生が、世界と日本を比較した魚の資源状態のことを知らないのでしょうか?それは、先生方がその現実を学ぶ機会がほとんどないからです。

学校の教科書には、日本の水揚げが減少しているグラフだけが載せてられているだけです。このため1977年に設定された200海里漁業専管水域により遠洋漁業の衰退などにより魚が獲れなくなり、後継者不足や高齢化で大変な一次産業と児童や生徒に教えてしまうのです。

これでは、世界で起こっている現実が全く伝わりません。魚が消えて行くことは、私たちの生活にとても身近な問題なのに、、、です。

そこで、上のような世界全体と日本の水揚量推移でグラフを作ると、世界と日本の傾向が明確に異なることがわかります。このグラフ1枚をベースに、学校で世界と日本の傾向が著しく違う理由に関して授業を行えば、先生も含めて非常に勉強になり、話題は尽きないことでしょう。

世界銀行の発表を合わせると日本が特例であることがはっきりします。世界銀行が2010年と2030年の海域別の水揚量を予測している表では、世界全体では23.6%増えているのに、日本の海域だけがマイナス9%とマイナスを示しています。

しかも2030年を待たずして2015年で460万トンにまで減っており、前倒しして悪化してしまっているのです。日本の水揚げが大幅に減った原因として、マイワシの水揚げが減少していることも理由になっています。

しかし、マイワシの水揚げは、東日本大震災があった2011年以降は急激に増えて来ており、逆に全体の水揚げ減少を抑える要因になっています。

マイワシが減ったからでは、全体の水揚量が減り続けている理由にはなりません。

水産資源の減少としてよく出てくるのが「環境の変化」です。海水温の上昇などは、資源量に影響を与えます。しかしながら、世界中で日本の海だけが温暖化しているのでしょうか?

外国の船が獲ってしまうからという理由もよく出てきます。しかしながらこれも、ホッケ、イカナゴ、クロマグロをはじめ、外国漁船の影響はあまり関係がないケースがほとんどです。

またサンマについては、国際資源です。これも公海での国別の漁獲量さえ決まっていない現状では、外国ばかりを非難しても仕方がないことを理解せねばなりません。

日本の水産資源管理のように、漁期や漁法などは制限するものの、肝心の数量については目一杯獲って水産資源を減らしてしまう国は、例外なのです。

日本の減少理由をクジラのせいにしている場合もあるようです。もちろんクジラはたくさんの小魚などを食べます。

しかしながら、ホウェールウオッチングが盛んな、アラスカやアイスランドなどでは、クジラがたくさんいますが、魚もサステナブルな状態でたくさんいるのです。

不漁 凶漁なぜ日本の魚ばかり減るのか?

次々に消えて行く魚。今年(2019年)獲れないと話題になった水産物を例に挙げてみます。サンマ、サケ、スルメイカ、イカナゴ、サクラエビ、毛ガニ、ウナギの稚魚などなどです。

「〇十年ぶりの不漁・凶漁」「過去最低の漁」「こんなに獲れなかったことはない」といったニュースに慣れてきていないでしょうか?

一方で、獲れていた頃に比べると、ほとんど獲れていないのに、あまりにも獲れなくなってしまい、少しでも獲れるようになると、まるで資源が回復したかのように錯覚される魚として、ホッケ、ニシンやクロマグロが挙げられます。

また、東日本大震災で、しばらくの間、漁獲圧力が落ちて急激に資源が増えたにもかかわらず、再び減ってしまったマダラなど、水産資源管理やサステナビリティの欠如により、残念な結果になっているケースは少なくありません。

魚が減った原因として、環境の変化や外国の影響と自国の資源管理は棚に上げて責任転嫁するケースをよく見かけます。

もちろんそれらの影響がないとまでは言いません。しかしながら問題の本質は、自国の獲りすぎを棚上げにした水産資源管理にあるケースがほとんどです。

そして、消費者として目に前の魚に問題があってもあっても、言われないと気づかないことが多いのです。

身近には乱獲(成長乱獲)の形跡が、、。。

小さなスルメイカ

「スルメイカが獲れない」というニュースを聞いたことがあるかと思います。その原因として上がるのが、外国船による操業です。ただ、その一方で、日本では、写真のように産まれたばかりと思われる小さなスルメイカを獲って売っています。これで良いのでしょうか?

サバの場合でも、日本では食用にならないローソクとかジャミと呼ばれる未成魚が容赦なく漁獲されています。養殖のエサや輸出に回ることが多く、目にする機会は少ないです。しかし実にもったいなく、資源にも良くない漁業が日本のあちこちで行われていることが、資源の減少、そして水揚量の減少とつながってしまうのです。

輸入では十分賄えない時代

水産白書

日本の水産物の輸出入に関するグラフを見てみてください。青い棒グラフの「輸入数量」は年々減少しています。一方で赤い折れ線グラフの「輸入金額」は年々上昇しています。

これらが意味するところは「単価の上昇」です。この傾向は、さらに厳しくなるのは上述の通りです。これを「買い負け」と言います。 

日本のように様々な魚種が減ってしまうと、代替になる魚がなかなか見つかりません。このため、獲りすぎで海に常に借金をしているような形になっています。未成魚でも幼魚でも獲ってしまうので、魚は成長する機会も産卵する機会も奪われてしまいます。

魚を獲り過ぎると、海の中を泳いでいる魚は、小さな価値が低い魚の比率が高くなります。このため消費者は、大半を占める小さな魚の中から選ばれた少し大き目の魚を高い単価で買う羽目になってしまいます。

そして漁業者には安く、消費者には高いという悪循環になってしまいます。そのギャップを埋めてきたのが、輸入水産物でした。しかしながら、世界中で水産物の需要が増えて、日本が思うように買い付けできる時代ではなくなってしまっています。

国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)において、水産物をMSY(最大持続生産量=魚を減らさずに獲り続けられる最大値)水準にまで回復させる期限は2020年です。まさに待ったなしの日本の水産資源管理なのです。