タラコを食べても魚は減らない? 産卵期の漁業は問題あるのか?


産卵期に魚を獲ることが問題なのか?

卵を抱えている魚を獲り続ければ減ってしまう。誰が考えてもわかることです。日本では、過去の歴史から北海道のニシンや秋田のハタハタを始め、産卵のために集まってくる魚を獲り続けて資源を潰してしまった例がいくつもあります。近年サケも激減していますが、これも産卵に回遊してくる魚を狙っています。

共通しているのは、卵に価値があることです。魚が減ると水産資源管理が機能していない場合、子孫を残そうと最後まで群れがまとまる産卵期か、未成魚狙いの漁業が進行してしまいます。

このため日本では、加入乱獲が様々な魚種で起きています。加入乱獲とは簡単に言えば、親魚の獲り過ぎで産まれてくる子供が少なくなってしまうことです。その結果、世界で類を見ないほど、様々な魚種が減り続け、全国各地で社会問題になっています。

なお海水温上昇の影響だと思っている方は、矛盾点を明記してあるこちらの記事を読んで下さい。(過去最低の水揚量と海水温上昇を比較すると驚くかも知れません。

産卵期に獲った魚を獲ってはいけないのか?

タラコ、イクラ、カズノコなど、たくさんの魚卵が年中店に並んでいますね。魚卵大好きな日本人。果たして私たちは魚の卵を食べ続けても良いものでしょうか?

ところで、タラコが不漁で食べられなくなるという報道を聞いたことがあるでしょうか?タラコは食べ続けてもよいのでしょうか?

答えはシンプルで「(輸入品は)全く問題ない」です。順を追って客観的な事実から検証してみましょう。主要供給国の米国やロシアでも、産卵期を主体に日本の約10倍も大型船で獲り続けています。しかし資源が減少して問題になることは聞こえてきません。なぜでしょうか?

まずは、タラコ原料の輸入数量から検証してみましょう。

2つとも水産通信社のデータを編集

2つのグラフの内、まず上の方を見てください。スケトウダラを漁獲しているのは、米国、ロシアそして日本です。黄色い折れ線グラフは、輸入を含めたタラコの全体の供給量(冷凍と生原料)を表しています。安定的に年間で約4万㌧供給されていることが分かります。

どの国も狙いは産卵期です。その理由は、日本向けにタラコ原料が高く売れるからです。タラコ生産量の約7割は日本向けと言われており、買付力はダントツです。一方で身の方は、フィレにしたり、すり身にしたりして、日本だけでなく欧米市場を始め各国に輸出されています。

水産通信社のデータを編集

上の表は、過去10年間のタラコ原料の生産量の平均です。国産はわずかで6%のシェア。9割以上は輸入原料に頼っていることがわかります。つまり、日本のスケトウダラ が減ってタラコの生産量が減っても大勢に影響がないのです。

ちなみにスケトウダラ の年間漁獲量(2020年)は、米国は136万トン、ロシア183万トン。一方で資源量を大きく減らしている日本は、桁違いに少なく16万トンでした。

米国・ロシアでは産卵期狙いで問題がないわけ

スケトウダラ

米国もロシアも産卵期にスケトウダラを大量漁獲しても問題が無い理由は、水産資源管理の違いによる資源量の差にあります。米国の例が分かり易いので説明します。

上のグラフをご参照下さい。米国(アラスカ)のスケトウダラのABC(青い棒グラフ・生物学的漁獲可能量)とTAC(オレンジの棒グラフ)そして実際の漁獲量(赤い折れ線グラフ)を示しています。

アラスカの場合は、生物学的に漁獲しても良い数量(青・ABC)を下回ったTAC(オレンジ・漁獲可能量)で設定されている年度が多く、かなりセーブされています。

このため、資源状態は極めて良い状態が続いています。TACと実際の漁獲量は、オレンジの棒グラフと赤い折線グラフを見れば分かりますが、ほぼ100%です。

アラスカでの昨年(2020年)の平均漁獲サイズは約750g(6歳前後)でした。100%成熟するのは5歳以上なので、成魚が漁獲の中心になっていることがわかります。

日本のスケトウダラ の場合はどうか?

水産庁 資源管理のあり方検討会

上のグラフは、日本のスケトウダラ 資源の内、日本海北部系群の推移です。米国で法律で禁止されているTACがABCを超えているなど、およそ考えられない管理が行われてきました。

グラフは2013年までで、現在は一応ABCを上回らないTACになっていますが、TACが大きすぎ水産資源管理が機能していない点は変わりません。この結果について、下のグラフでは2014年以降の推移も含んでいるので、どうなっているか見てみましょう。

水産研究・教育機構

上のグラフは2013年以降も含めた漁獲量推移ですが、漁獲量は減少続きで、改善されていないことが分かります。また、オレンジ色の箇所は、当時資源量が減少した原因とされていた韓国船の漁獲量です。その後1999年以降は韓国船が撤退。しかしながら撤退後も、肝心の漁獲量は回復どころか減少が続いています。自国の管理に問題があったのに、『外国に責任転嫁』していた一例です。

日本のスケトウダラ には、全部で4系統の資源があります。それらの過去5年(2019-2015年)分のTACに対する漁獲量の年平均消化率は僅か54%です。毎年ほぼ100%枠を消化している米国の例と比較すると違いは歴然です。

これは日本の場合、獲り切れない量の枠が設定されていて、獲り放題となり、管理になっていないことを意味します。ちなみにロシアでは2年続けて枠の消化が7割を切ると、その漁業者の枠を没収する制度が2019年より適用されています。日本でも過剰な枠の配分を制御するためにも、個別配分後、実績が少なければ没収するという制度にすれば、枠の分量に関して真剣に考えるようになるでしょう。

マークで分かる水産資源管理の違い

タラコ MSC認証 ロシア又は米国産

米国・ロシア共にスケトウダラ漁に関しては、取得が難しい国際的な水産エコラベルであるMSC漁業認証を取得しています。2011年に同じスケトウダラでMSC認証を取得している米国産に対し、ロシア産は認証がないため欧州市場で需要が減少。その後、ロシアは約3年かけてようやく認証にこぎつけた経緯があります。

日本のスケトウダラ漁業が、現在の管理状況でMSC認証を取得するには、かなりハードルが高いのは間違いありません。それでも、同じスケトウダラで、なぜこれほどまでに日本の資源状態が悪くなっているのか、国際的な広い視点で問題点をとらえることが不可欠ではないでしょうか?

以上で、必ずしも産卵期に魚を獲ってはいけないということではないことをお分かりいただけたでしょうか?

ポイントは、資源量がサステナブルな状態か?水産資源管理が機能しているかどうか?ということに尽きるのです!

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