サンマは輸入で代替できない理由

サンマではありません サンマは太平洋以外でいるのか?

日本の漁業と水産物の輸入

このサイトで何度もお伝えしていますが、日本では、水産資源管理の不備により、様々な魚種で資源が激減が続いています。2021年の漁獲量は417万㌧と記録が残る1956年以降で、過去最低となっています。資源自体が減っているので、今年こそは!と大漁祈願しても以前のように、獲れるようにはなりません。

日本で漁獲量が減った魚を、世界中の海から探して輸入する。そんな仕事に約30年携わりました。アジ、サバ、ニシン、シシャモ、サケ、マグロを始め、魚だけでなくエビ、イカ、タコなども含め、世界には似たような水産物がいます。

200海里漁業専管水域が1977年に設定され、その後1980年代をピークとして山から滑り落ちるように減り出した日本の漁獲量。その減った不足分を補うビジネスが買付でした。そして1985年のプラザ合意で円高が一気に進み、輸入量が一気に増加しました。

日本は1972年から1988年までの長期に渡り、世界最大の漁業国でした。それと前後して世界最大の水産物の輸入国でもありました。しかし今では漁業においては、中国を始め各国に抜かれ、輸入でも最大の輸入国から転落し、米国、中国などとの差が広がっています。

漁獲量(養殖物含む)でのかつてのJapan as No.1は、世界に例を見ない水産資源管理の大失敗により、世界と対照的に悪化が止まりません。PDCAを行い、これまでの言いたい放題で無責任な発言に歯止めをかけるよう、誰がどのような発言をして、実際はどうなっているのかの検証が必要です。

海外との比較も不可欠です。そうでないと、本当のことが言えるまともな研究者が育ちませんので。

世界には似た魚が多い輸入アジ

オランダ産のアジの開き 国産アジではないと見分けられますか?

日本の水産物が減るに伴い拡大した輸入ビジネス。それぞれにストーリーがあります。刺身やアジのタタキに使われるのは国産ですが、「アジの開き」の原料に代表されるのがアジの冷凍原料。

アジの開き用の原料探しは、1980年代に西アフリカのモーリタニア近郊の原料調達から始まりました。その後、オランダやアイルランド沖合のアジの方が脂がのっていることが分かり、開き原料として本格輸入が始まりました。

不思議なことに、日本の買付が始まったころ、同じ青物でもサバやニシンと異なり、アジは、欧州ではほとんど食用になっていませんでした。安い水産物を大量に輸入するナイジェリアなど、西アフリカ諸国向けが主力でしたが、ここに日本バイヤーからの注文が入りました。今考えれば、アフリカ諸国にとっては、迷惑な参入者だったと思います。

当時、価格が安いアジやサバを、はるか欧州から輸入するなどとは考えられませんでしたが、国内資源の減少と円高といった要因が輸入の背中を押す結果となりました。

オランダやアイルランドなどで漁獲されていたアジは、1990年時点では、ナイジェリアなどのアフリカ向けがトン当り400米ドル、日本向けが同600米ドル程度でした。それが国際相場の上昇で今では、アフリカ向けも含め、その3倍以上の価格になっています。かつては大きめのアジの開きや、脂がのったアジのフライが日本の市場へ、一枚100円程度で供給されていましたが、輸入価格の上昇で、100円での価格は小さいサイズを除き難しくなっています。

サバも似た魚が多い

ノルウェーサバ 国産サバではないと見分けられますか?

日本では、資源管理上マサバとゴマサバをひとまとめにされてしまっていますが別種です。日本では一般的にマサバの方が評価が高いですが、海外のマサバ(系)とゴマサバ(系)も同様です。

米国・カナダ・南米・アジアそして欧州と様々なサバを検品しました。細かったり、脂がのっていなかったり、身質が柔らかすぎたりと、サバ好きが多く、結局品質に厳しい日本に受け入れられたのはノルウェー産のマサバ系のサバでした(和名 ニシマサバ)。

今ではサバの定番といえば安定のノルウェーサバとなっています。しかしながら、1990年前後に日本のマサバの不漁で大量輸入が始まった際には、脂がのり過ぎている、缶詰で水煮にすると色がよくないなど、品質面で色々問題がありました。しかしながら、科学的根拠に基づく漁獲枠の設定と、漁船ごとの漁獲枠配分(IVQ)により、脂がのらない時期や価値が低い小サバを獲らない仕組みにより、今では日本のサバ市場を席巻するに至っています。

その他の水産物も似た魚が多い

アイスランドの赤魚 Hiroki Igarashi

アジとサバ以外でも、ニシン、シシャモ、サケ、マグロを始め、魚だけでなくエビ、イカ、タコなども含め日本に生息しているのと似た水産物は世界にたくさんいます。

ノルウェーやアイスランドから輸入しているアカウオやカラフトシシャモなど、太平洋でも大西洋でも漁獲されるのは、海がつながっているからなのでしょう。アカウオはアラスカで、カラフトシシャモはロシア(太平洋)。で漁獲されています。

サンマが輸入で代替できない理由

サンマは太平洋以外では見当たらない

ところで、日本で獲れる魚と似たような魚が、世界のあちらこちらにいる一方で、似た魚がいない魚種もあります。実はそれがサンマなのです。

中学の地図帳にスペインや南アフリカなどが、サンマの漁場として記されているのを見たことがあります。筆者は世界中の青魚を調べましたが、サンマは太平洋にしかいません。

もし極例外にいたとしても、極々少量です。世界中の青魚について話し合うPelagic Fish Forum(クローズド)でも、聞いたことがありません。世界と比較した日本の魚に関する情報は、学術論文も含めて、とにかく誤りが多いです。

獲れないなら、サンマを輸入すれば良いという考えがあるようです。しかし日本に輸入されているサンマは、日本の漁船と入り乱れて操業している漁船が獲った同じ資源のサンマです。

つまり、日本の漁船が獲っているサンマがいなくなってしまう事態というのは、中国や台湾といった国々の漁船もサンマが獲れなくなるということなのです。そして恐ろしいことに、肝心の漁獲枠は昨年の漁獲量の3倍!と大ザル。効果がある対策は、残念ながら全くうたれていないのです。

時間の経過とともに深刻度だけが増しているサンマ漁。何とかせねばなりませんね。

水産資源管理・誤情報が止まらなくて良いのか?

デンマークの漁港 ノルウェー同様に数が多いのは小型船

誤った情報の先にあるもの

ロシアの侵攻が始まってから、心が痛む戦争に関する情報を目にしない日はありません。そんな中で、国営放送中に勇気を持って正しい情報を示した女性の行動に、世界中の人が感動し、勇気づけられたのではないでしょうか?

ロシア軍の撤退と平和、そして亡くなられた多くの方のご冥福をお祈りします。また攻撃や非難で苦労されている方々の生活が、これ以上悪化せず、再び平和が訪れるよう心から願っております。

プロパガンダによる悲劇

世界が制裁強化を進める中で、ロシア人の捉え方が侵攻に対して違う場合があります。ウクライナに住む子供が、ロシアに住む親にロシア軍による惨状を説明しても、信じてもらえないという報道を見ました。これは西側からの情報が遮断され、政府に情報をコントロールされてしまうことによる影響が大です。

これだけ情報社会になっても、情報源が限られて、誤った情報が繰り返し続けられると、それを信じてしまう恐ろしさがあります。キエフから避難して行く人のほとんどは西側に向かうものの、一部はロシアに避難する人もいるそうです。ロシア側がその一部の人を利用して、国内のプロパガンダに利用する恐れがあると海外のラジオで放送していました。

第二次世界大戦で、我が国は大本営発表により情報統制され、国民は負けていることを知らされていませんでした。その結果、戦争による被害は甚大となりました。

決して遠い異国のことではない

(IPSOS)

そのロシアと同じような事が、水産資源管理において我が国でも起きています。水産資源とそのサステナビリティにおいて、我が国は世界と比べると異常なほど意識がズレているのです。後述しますがなぜでしょうか?上の表はフランスの調査会社による、水産食材を選ぶ際に「資源の持続性(サステナビリティ)は重要ですか?」というアンケートです。世界平均では80%の人が重要と答えています。しかしながら、日本人で重要と答えたのは、僅か40%と断トツに低くなっています。その上のロシアでさえ73%です。

SDGs14(海の豊かさを守ろう)には程遠く、水産資源に対するサステナビリティへの意識が非常に低い日本では、水産資源と漁獲量の減少が止まりません。一方で、世界では漁業も水産業も立派な成長産業です。魚の資源を巡って世界と日本で起こっていることはまるで違います。それをこれまで様々な形で、ファクトをベースに発信しているのが微力ながら拙ブログです。おかげさまで、すでに累計のいいね!シェアは累計約5万回となりました。多くの人に正しい理解が広がることを願っています。

水産資源管理の情報は合っているのか?

さて本題に入ります。日本の水産系の大学関係者から発信されている情報には、基本的な誤りが非常に多く、このため国民にひどい誤解が生じています。それを誰かが指摘しないといけないと思い、山ほどある誤情報の中から、その内の一部を挙げてみます。

①「漁業生産量が減ったのは、資源が減ったのではなくて漁業就業者が減ったからである」

水産資源が多くの魚種で減少しているのは、国の資源量評価や実際の漁獲量が激減していることで明らかです。資源が減ったから漁業者も減ったのです。一方でノルウェーでも漁業者は減っていますが、資源はサステナブルで潤沢です。

②「現在の漁獲量は90年ごろに比べて貝類の激減を除けば遜色ない」「魚は減っていない!日本型管理の維持を」

実際には、90年ころに比べ貝類を除いても漁獲量は激減しています。農水省の統計データを始め、いくらでもエビデンスはあります。また数量管理に重点を置かない日本型の資源管理のみで漁業が成長している国は世界にありません。

③「日本のTAC(漁獲可能量)が課題だったのは過去の話」

日本のサバ枠の消化率は6割しかなく資源管理に役立っていません。ノルウェーサバ枠が、毎年消化率ほぼ100%なのと根本的に異なります。資源管理に役立っていないので、サバの幼魚も見つければ一網打尽。これは漁業者ではなく水産資源管理制度の問題です。ノルウェーでは絶対に起こらない幼魚の乱獲「成長乱獲」が日本各地で続いています。

④ノルウェー漁業に関する誤った情報

・「ノルウェーは大型船主体で、大規模な漁業だけをさせている」

(Fiskeridirektoratet)

上の政府の資料を見ると、ノルウェーの漁船5,857隻の内、10メートル以下の小型船漁船が3,036隻も占めています。28メートル以上の大型船はたった255隻。圧倒的に漁船、漁業者数が多いのは、大型ではなく、中小型漁船です。(2020年)

⑤「ノルウェーは数量管理を進めることで効率化を実現。しかし、小さい魚を捨ててしまうとかブラックマーケットに流通されるなどの課題がある」

1980年代に海上投棄を一早く禁止したのがノルウェーで、マダラを始め資源が潤沢です。また、バーコード管理によるトレーサビリティが実施されていますし、ブラックマーケットなど存在しません。海上投棄やブラックマーケットは、罰則が緩くクロマグロを始めトレーサビリティがほとんど実施されていない日本の話です。根拠のない情報は国の信用と品位を下げてしまいます。

⑥「2019年にノルウェーサバはMSCから外されている」

ノルウェーサバの缶詰

ノルウェーサバの資源状態は良好(ICES)です。MSCが停止しているのは、各国が自国の枠を増やしたいという政治的な問題で、国別TACの合計が科学者のアドバイスを超えているからです。しかし、各国の個別割当制度が機能しており、幼魚狙いはありません。また、それに伴って資源が悪化しているわけではありません。日本のサバの場合は、そもそもMSC認証を取ろうとしても、現状のジャミやローソクといったサバの幼魚乱獲や過剰漁獲枠では、箸にも棒にもかからないことを知らねばなりません。他国批判をできるどころではないのです。

⑦「ノルウェーでは30人乗りの漁船に監査役が1人付くというが数人乗りの日本では不可能だ」

ノルウェー漁船は、大型巻き網船でも乗船しているのは10名程度。30人乗っている漁船など、ノルウェーの現場を20年以上見てきた者として言いますが、そんな漁船はそもそも存在しません。また、監査役(オブザーバー)は乗っていません。水揚げの際に自動計量器で厳格に水揚量を測定しています。

⑧「ノルウェーと比べても意味がない」

いいえ非常に意味があります。現実から目をそらしてはいけません。サバだけではありません。40cm以下のマダラの漁獲を禁止しているノルウェー。漁獲枠がなく、10cm前後のマダラまで容赦なく漁獲する日本。両国の違いは、科学的根拠に基づく枠が設定されて管理されているどうかの違いに他なりません。日本では枯渇しつつあるイカナゴシシャモ(カラフトシシャモ)の資源も潤沢です。もちろん、我が国と異なり、枠が設定されていて漁業者はそれを守ります。

最後に

水産資源に関し、自国の問題を棚上げし、事実を曲げて伝えて水産資源を減らしてしまう余裕はありません。大学などで事実と異なる発言をされている方は、教育上よくありませんので、胸に手を当てて自分がやっていることが正しいか真摯に考えて下さい。すでに学生や国家にどう影響してしまったのか?

ロシア、ベラルーシ、ミャンマー、中国など、本当のことを言えなくなってしまっている国々が、どうなるかを我々は知っています。

日本には、石油も天然ガスも国内を賄う資源はありません。しかしながら、水産資源に関しては、本来その資源は十分あるはずでした。

我が国では、いつの間にか水産資源管理で本当のことを言わない傾向になってしまいました。このために、世界と比べると大きくズレてしまいました。しかしながら、エビデンスを示し続けることで、おかしなことに気づく方が様々な分野で増え、少しずつまた確実に理解は進んでいます。

学生や研究者の方を始め、勇気を持って本当の事を言う人が増えることを願っています。その根拠としてお役に立てれば、それに勝る喜びはありません。


価格高騰! そして次々に消えて行く魚たち

次々に消えて行く日本の魚

サンマサケスルメイカシシャモイカナゴなど様々な日本の水産物で「こんなことは過去にない」「記録的不漁」といった報道が毎年続いています。

一方で、局地的に漁獲量が増えたり、水揚げ量が多い日が報道されると、全体で激減していることは何も変わらないのに、まるで回復しているような錯覚をさせられてしまいます。例えば、2020年にサンマが2年ぶりに1日3,000㌧越えという報道がありました。2019年にはスルメイカが定置網で3日連続で1万箱越えという報道もありました。

これらの個々の報道内容は事実であっても、サンマもスルメイカも全体の水揚げ数量は激減したままで、2021年は過去最低を更新しています。

サンマ の価格はマグロ並みに

農水省のデータを編集

上のグラフをご覧ください。水揚げ量が激減して起こるのは、魚価の急上昇です。2021年のサンマの漁獲量は1万8千㌧で、2019年から3年連続で過去最低を更新しています。一方魚価は上昇を続け、2021年の魚価はキロ621円と、2020年のキロ480円の3割増でした。これは1992~1994年の平均魚価キロ61円と比較すると約10倍です。

マグロの価格と比較すると、さらに高騰している程度が分かるかと思います。日本でマグロの刺身として最も消化されているマグロは、メバチマグロです。2020年に輸入されたメバチマグロ(冷凍)の平均価格はキロ592円(約6万㌧)でした。

しかしながら、サンマの魚価は高騰しても、漁獲量が少ないために、漁業者に取っては肝心の水揚げ金額が上がらず。一方で消費者に取っては売り場での価格が上昇するという、双方に取って最悪の組み合わせとなっています。

また、漁場が遠いことによる鮮度面や、たくさんのサンマから大きめのサンマを選んで出荷するような水揚げ状態ではないため、消費者としては高くて品質も今一つといった印象だったかも知れません。

シシャモはマグロの価格を超える

国産のシシャモ
農水省他のデータを編集

北海道を漁場とするシシャモの価格も高騰しています。2021年の北海道での漁獲量は170トンで、過去最低を更新しています。魚価はキロ3,900円と前年度(キロ2,381円)の64%高でした。

この価格は、もはやメバチマグロどころか、高級マグロであるクロマグロ(冷凍)の2020年価格(東京都市場・冷凍)キロ3千円も超えています。

北海道のシシャモの価格も漁獲量が多かった時は今より大幅に安価でした。1979年・1980年と各1.4万、1.9万トン漁獲されていた年の魚価は、各キロ94円とキロ81円でした。当時に比べると2021年の価格は40~50倍に高騰しています。しかも、価格が高騰しても漁獲量が激減しているために、サンマ同様に漁業者の水揚げ金額は上がらず、消費者に取っては高嶺の花となっています。

兵庫県
兵庫県のデータを編集

クギ煮やチリメンなどで食用とされるイカナゴも、漁獲量の激減で高騰しています。神戸のイカナゴの魚価は、2021年はキロ844円でした。1982年以前で年間2~3万トン前後を漁獲していた当時は、キロ100円未満でした。

それが漁獲量が激減し、2017年~2020年の4年間の価格はキロ1,776円~2,578円へと高騰しました。イカナゴは大阪湾、伊勢湾、福島沖、仙台湾、陸奥湾など、各地で不漁や禁漁が続いています。イカナゴは、ただでさえ少ない資源量になのに、その成魚ではなく幼魚を狙って漁獲するために「成長乱獲」が起こってしまいます。このため余計に資源に対して悪い漁業を行ってしまうことで、さらに悪循環が続いてしまいます。

どうすればよいのか?

今回ご紹介しているサンマ、シシャモ、イカナゴは、資源面では、持続性を考慮すると、すでに漁獲を続けられる限界を超えていることが容易に推定されます。たとえばシシャモは、年間で170トンしか漁獲量がなくなっている日本の漁獲は、資源量を配慮した公的な漁獲枠もなくそのまま。一方で、親魚量が20万トンを切ると禁漁して回復を待つノルウェーシシャモ(カラフトシシャモ)の管理とでは、余りにもその未来も合わせ違い過ぎます。

イカナゴについては、対照的に科学的根拠に基づく厳格な資源管理を行っているノルウェーでは、24万トンの漁獲で魚価はキロ約50円でした。資源はサステナブルです。また取得が難しい国際的な水産エコラベルであるMSC漁業認証も取得しています。なお、ノルウェーのイカナゴは成魚狙いですので、さらに資源に優しい漁業になっています。

シシャモもイカナゴも、すでにあまりにも資源量が減り過ぎて、回復にはかなりの年月を要します。しかしながら、ノルウェーなどで実施している科学的根拠に基づく処置を行わないと、短期的な一喜一憂がある程度で本格的に回復することは、まずありません。

サンマについては、同じくまずは科学的根拠に基づく全体のTAC(漁獲可能量)を設定し、枠を国別に配分する必要があります。NPFC(北太平洋漁業委員会)で2021年に決められた枠は、実際の漁獲量を大幅に超える枠で、水産資源管理に対する効果はありません。

NPFCでは、2021年と2022年の2年間で33万㌧もの獲り切れない漁獲枠を設定しています。2021年の漁獲量は、その3分の1程度の10万㌧程度と推定されます。内、日本の枠は15万㌧で漁獲量は1.8万㌧でした。日本の場合、漁獲枠は実際の漁獲量の5倍以上でした。これでは、日本も含め各国とも資源状態がかなり悪化していることなど顧みずで、できるだけたくさん獲ろうとするのみとなります。

北欧・北米・オセアニアなど水産資源をサステナブルにしている国々では、漁獲枠と漁獲量がほぼイコールなのが当たり前です。これは実際に漁獲できる数量より、かなり控えめな枠が設定されているためです。

国連海洋法やSDGs14.4にあるMSY(最大持続生産量)といった考え方を取り入れずに、できるだけ漁獲量を増やそうとする漁業には未来はなく、あるのは共倒れのみです。

ある魚種が獲り尽くしたら、別の魚種を獲り尽くす。ある漁場の魚を獲り尽くしたら、別の漁場を獲り尽くす。別の魚種も、漁場も、もうありません。

その負の連鎖に気付いてもらうべく、これからも様々な実例を出しながらファクトベースでの発信を続けて行く次第です。

ハタハタが 資源管理のモデルケースという誤解

ハタハタ

 回復しない秋田のハタハタ漁 (このままでは回復することもない)

12月に入り秋田のハタハタ漁がようやく始まり、ニュースになっています。しかしながら漁獲量は少なく、価格が高騰しています。12/4の秋田県 八森港での初水揚げの最高価格は、メスでキロ4千円と、クロマグロのような価格になってきています。水揚げ量は僅か200キロでした。

供給量が極端に少ないので、価格が高騰します。漁業者側からすれば単価が高くても水揚げ量が少ないので、肝心の水揚げ金額が増えません。一方で、消費者側からすれば高くて買えないとなり、双方にとって辛い環境になってしまうのです。

秋田のハタハタというと「資源管理のモデルケース」と思っている方々がいます。これは極度の不漁に対応して、1992年から3年間自主的な全面禁漁を実施したことを指しています。禁漁後、2004年には漁獲量が3,300㌧まで回復しましたが、良くなるどころかその後減り続けて、昨年(2020年)の漁獲量はその約10分の1の400㌧弱でした。

もともと1960〜1970年代には年間で1〜2万㌧漁獲されていたので、とても回復したとはいえない状況でしたが、禁漁前よりは漁獲量が増えた程度だったのです。そして何よりも問題なのは、漁獲量が再び激減してしまい、一向に回復出来ていないことにあります。

今の管理方法で本格的に回復する可能性はないのですが、その理由は後述します。「今年こそは!」などと期待しても、肝心の水産資源管理が機能していないので、残念ながら無理なのです。

ハタハタの漁獲量と資源推移

水産研究教育機構

上のグラフをご覧ください。ハタハタ(日本海北部系群)の漁獲量推移を表しています。赤が秋田県の漁獲量推移です。このグラフを見て「資源管理のモデルケース」と言う推移だと言えるのでしょうか?

減少したのは、魚が減るとレギュラーのように登場する中国漁船のせいでもありません。また、近年問題になっている海水温上昇のずっと前の、30年以上前から減少していることが分かります。従って海水温の上昇が理由でもありません。

資源が潤沢であれば良いのですが、産卵期に減り続けるハタハタを獲り過ぎているのが現実です。おまけに小さな一年魚も容赦なく獲っています。成長乱獲と加入乱獲の挟み撃ちですので、資源が崩壊していくのは自明です。

機能していない水産資源管理の問題

ハタハタの卵のかたまり (秋田県)

ハタハタの漁獲量が激減したままであり、回復どころか悪化の一途である理由は、水産資源管理、特に漁獲枠の設定と、その運用の双方にあります。

①漁獲枠が実際の漁獲量より大きいケースが多い。(例)2020年度は枠650㌧に対し約6割の漁獲量。②漁獲量が漁獲枠をオーバーしてもそのまま獲り続けている。(例:2019年度は枠650㌧に対して2割も漁獲量が超過。①②の2点から、これでは漁獲枠も水産資源管理も機能していません。

そして今年(2021年)は、その漁獲枠の設定を止め、漁獲日数を新設するというやり方になりました。本来は、北欧などでの成功例を鑑み、科学的根拠に基づき、従来の漁獲枠を設定し、それを個別の漁船や漁業者に割り振って厳格に管理すべきなのですが、その逆を行くことになりました。

これは漁期を設定して漁業者に漁獲量を委ねるインプットコントロールというやり方です。因みに漁獲枠で管理する上記の方法はアウトプットコントロールと呼び、北欧、北米、オセアニアではこのやり方が主流で、資源をサステナブルにする成功を収めています。世界で魚をインプットコントロールのみで管理して、資源がサステナブルな例は知りません。

ハタハタは輸入で代替できない魚

ハタハタの分布図 上 日本海北部系群 下 日本海西部系群 水産研究教育機構 

日本ではサバアジスケトウダラシシャモ を始め、主に獲り過ぎで自国の魚が減ると、今度は世界中を開拓して輸入で補って来ました。北海道産もありますが、上の図はハタハタの主な分布図です。朝鮮半島の近辺にも分布はしているものの、ハタハタの主な分布は日本の海なのです。

ノルウェーなどサバなどを輸入している大西洋や、アラスカ(米国)やロシアなどスケトウダラ を輸入している北部太平洋ではハタハタは見当たりません。

従って日本がハタハタの水産資源管理を科学的根拠に基づき厳格に行えば、国内はもとより海外にも市場ができるのですが、資源が減り過ぎて国内需要もままならない状態であるのは、とても残念と言わざるを得ません。

なぜ日本では不正水産物の流通ができるのか?

大間のクロマグロ これは横流しの不正なものかどうか?

不正な魚でも流通しやすい日本

大間のクロマグロ、焼津のカツオと「横流し」「脇売り」といった水揚げ量の誤魔化しや、一部が盗み取られていた問題が発覚して報道されています。

「サカナとヤクザ」の世界が現実に起こっている

中国に高値で輸出される乾燥された国産ナマコ 

2018年に出版されて注目を集めた「サカナとヤクザ」では、「築地で密漁アワビは売っているんですか?」「ああ、売られているよ」、「密漁物は横流しから転じて、ヨコモノと呼ばれる。正規のナマコがここまで高値になっているのは、ヨコモノの購入を前提に価格が決まるからという」。といった不正の場面がたびたび出て来ます。

ナマコ、アワビ、シラスウナギ(養殖用)といった高級商材に関しては2020年の漁業法改正により、罰金が3,000万円以下(下表)と強化されています。しかしながらクロマグロを始めまだまだ他の魚種では緩いのが現実です。罰金も罰則も甘ければ、不正は減りにくいでしょう。

水産庁

IUU(違法・無報告・無規制)漁業の魚は輸入品ばかりではない

違法な水産物はどこから来るのでしょうか?と問われれば多くの人は海外からの輸入品とまず考えるかも知れません。しかしながら、上記の大間のクロマグロのケースもまさに無報告のIUU漁業の1つなのです。IUUはSDGs14でなくすことが下記通り明記されています。期限は2020年でしたが、、、。全く実現していないどころか、魚が減少して違反が増えているのが現実でしょう。

『水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。』

なぜこのような闇の流通が可能だったのだろうか?

日本で闇流通がまかり通っているのは、それを排除する仕組みがないからです。その仕組みがトレーサビリティです。例えば、日本が輸入しているノルウェーサバやノルウェーサーモン。上の写真のようにバーコードで1ケースずつ管理されています。また、生産日を始め必要なデータも表記されていることが分かります。

バーコードも生産日も分からない

一方で、日本の水産物の多くは、写真のように生産日はおろか、ほとんど何も書かれていないものが多く見られます。万一放射性物質や汚染の問題が起きても、魚の名前が書いてある程度ではトレースできません。「大丈夫」と言われても、、、どうやって証明するのでしょうか?

「漁獲証明」不正が起きにくいEUの流通 

EUでは2010年から水産物の輸入に「漁獲証明」を求めています。どこで誰がいつ漁獲したのかといったことが証明されています。IUU漁業による水産物はEUに輸出できません。

EU向けにならない違法な水産物であったとしても、日本ではメロ、ミナミマグロなどの例外を除き「漁獲証明」要求していません。このためIUU漁業による水産物がすり抜けて入って来ている可能性が否定できないのです。

現状では国産でも輸入でもIUU漁業の水産物が流通してしまいます。漁業法の改正で罰則が強化されたとはいえ、残念ながらこれが日本の現実なのです。

解決方法はハッキリしている

デンマーク(EU)の市場 原料のトレーサビリティが行われている

国産、輸入品を問わず違法な水産物の流通を防ぐ方法があります。それはトレーサビリティを徹底されることです。バーコードによる生産管理が我が国で、できないはずはありません。

筆者は10年ほど前にノルウェー大使館からの依頼で、ノルウェーサバのトレーサビリティを実現するための委員として、研究を手伝ったことがあります。ノルウェーでの漁獲されたサバが日本に輸入される末端市場までのトレース。しかしその際にボトルネックになったのは、日本で加工された後のトレースでした。

ノルウェーから輸入された原料は完璧なトレースができる体制であっても、日本では水産加工品にバーコードを付けて管理する習慣はほとんどなしです。このため情報が途切れてしまうので、末端までの完璧なトレースは日本では無理でした。

なおスーパーなどで独自にトレースされていない原料に、バーコードを付けているケースは、原料からの一気通貫の管理ではないので除きます。

そもそも、日本で冷凍されたサバ、サンマなど国内販売される冷凍原料には、生産日すらケース毎に付ける習慣がありませんでした。これではトレースができるはずはありません。

やらなくてはならないこと トレーサビリティ

日本で不正な水産物を流通させないためには、国産品においては、バーコードなどによるトレーサビリティを徹底させること。輸入品においては「漁獲証明」を要求することの2点になります。

国産水産物は、漁業法改正(2020〜)により、今後TAC(漁獲可能量)、IQ(個別割当)の魚種が増えることで資源管理が強化されて行きます。その際の逃げ道を断つことが不可欠です。国内での密漁を含むIUU漁業は、資源量の悪影響を与えています。トレーサビリティによりそれらをブロックするのです。

輸入水産物についても、EUなどがIUU漁業の輸入排除を徹底しているので、そのおこぼれが管理が甘い日本に来てしまう傾向を遮断するのは、SDGsを採択している国として当然のことです。

ちなみに、IUU漁業による水産物の流通は日本に限ったことではありません。筆者は世界のあちらこちらで見て来ていますが、日本との大きな違いはトレーサビリティによって悪循環を止めて来ていることです。

日本の対応が急がれます。

シシャモ資源が大復活! でもそれは北欧の話のわけ

アイスランド産の干しシシャモ

海水温の影響を受けているはずなのに?なぜ北欧だけ?

お腹に卵を抱えたお馴染みの干しシシャモ(カラフトシシャモ)。その原料の2大供給国は、アイスランドとノルウェーです。しかしご存知ないかも知れませんが、2019年からシシャモ漁を、資源回復のためにそれぞれ禁漁していました。

その甲斐があって、今年(2021年)はアイスランド、そして来年(2022年)は、ノルウェーも資源量が順調に回復して解禁となりました。そしてシシャモが再び大量に日本市場に供給されます。

日本の国産シシャモについても後で述べますが、こちらは過去最低を更新中で回復の兆しはありません。ところで3ヶ国で漁獲量が減った原因ですが、日本でよく言われる原因は海水温の上昇です。しかし、北欧の海でも海水温上昇の影響がありますが、大きく回復しています。海水温のせいであれば、日本同様に減り続けるはずではないでしょうか???また、3ヶ国とも産卵期に狙いを定めて漁をしています。しかし減るだけで資源が回復しないのは日本だけです。

2年間の禁漁期間を経て得たものは?90万㌧!の漁獲枠

2021年10月、アイスランド海洋・淡水研究所(MFRI)から資源調査の結果、2022年度の漁獲枠のアドバイスが発表されました。その量は90万㌧と驚愕の数量でした。この数量は、日本のサバの年間水揚げ量(2019年)の2倍と言えば、その規模が想像できるかと思います。

北欧産のシシャモは、脂がのっていて人気があります。消費者としては、供給量減少で上昇していた末端価格が、供給量の回復で再び落ち着いてくることに期待したいところです。

周辺国も恩恵を受けるシシャモの資源回復

アイスランドのシシャモ資源の回復は周辺国にも大きな恩恵を与えます。その代表がノルウェーに対してです。ノルウェー海域でも、アイスランド海域同様に2019年から資源量の減少から禁漁しています。

ノルウェーには8万㌧もの漁獲枠が、おすそ分けされます。禁漁していてもノルウェー産のシシャモが供給されているのは、このような他国からの漁獲枠配分によるものです。ちなみに今年(2021年)は4万㌧分けて(アイスランド枠13万㌧から)もらっています。

過去最低の漁獲量が止まらない 悲惨な我が国のシシャモ漁

北海道の資料を編集

10月になり北海道でのシシャモ漁が解禁となりました。

昨年(2020年)の漁獲量は僅か300㌧で過去最低。上のグラフをご覧ください。赤の折れ線グラフは漁獲量、青は単価を示しています。数量については1980年には2万㌧に迫る勢いでした。しかし今ではその面影さえ残っていません。科学的根拠に基づく漁獲枠なしで漁業を続けると、回復する機会を逃す一方で、資源激減が起こる典型的な例です。

また、大幅な供給減による暴騰が続く単価の上昇にも注目して下さい。どんどん消費者から遠い存在になっています。

ちなみに昨年の輸入量は、カナダ産(脂が少ない)と海外から分割で輸入されていた北欧産の数量を含めて僅か8千㌧でした。2021年度はアイスランドの解禁、2022年からは脂がのったアイスランド・ノルウェー産が出そろうことで再び年間2万㌧前後が輸入されて行くことでしょう。

なお、日本のシシャモ(学名Spirinchus lanceolatus)と北欧シシャモ(学名Mallotus villosus)は生態が異なります。前者は川を遡上して産卵、後者は海で産卵します。ただし、資源を持続的にしていくための管理方法の基本は同じです。

日本では、SDGs(持続可能な開発目標)の14.4で示されているMSY(最大持続生産量)に基づく水産資源管理ができていないのです。なお、2020年の漁業法改正MSYに基づく管理がようやく埋め込まれました。(注:運用がかなり甘い傾向あり)

アイスランドのシシャモはサステナブル

アイスランド産のシシャモ MSC認証付き

上の写真をご覧下さい。左側にある青いマークはMSC認証のマークです。持続可能(サステナブル)な漁業しか認証されません。残念ながら日本のシシャモ漁は、現状の管理方法では、まず無理です。

日本のシシャモ資源は、国際的な観点から俯瞰すると、非常に厳しい状況が続く可能性が高いと言えます。これは残念なことに水産資源管理制度の違いです。

たとえ単年度など短い期間で増えているように見えることがあっても、数十年単位で見れば、それは幻想であることがわかります。

この点は、ニシン、ハタハタ、ウナギなど多くの魚種で共通します。中長期的に見ると、どれも実際には良くなっていません。

上のグラフはアイスランドのシシャモ資源量(産卵親魚量)の推移です。もともとは40万㌧の資源を残し、それ以上の資源量を漁獲枠としていましたが、近年では管理方法が変更されました。

現在の管理及び解禁基準は、産卵する親魚量(産卵親魚)を、3月15日(産卵期に該当)の時点で95%の確率で15万㌧残すというルールです。ちなみに禁漁だった2019年は30万㌧、2020年は55万㌧も同資源量はありました。

ちなみに、未成魚である1、2歳の資源量は過去3位の量ですので、将来も磐石です。アイスランドやノルウェーは未成魚のシシャモに手は出しません。

日本のシシャモ漁の場合は、そもそも科学的にどれだけの親魚量を残すか?という厳格な数量管理の方法ではありません。資源量が減って供給が減れば価格が上昇します。ですから漁期中に出来るだけたくさん獲りたいという意識が働いてしまい悪循環が続きます。

科学的根拠を ふ化放流は必要だろうか?

魚が減ることに対して策を講じることは必要です。しかし本当に効果があるのか?と疑問に思うのがふ化放流です。

2022年に北海道でシシャモのふ化場が新設され、既存施設に比べ3倍の卵をふ化させることができると計画されています。これにより漁獲量を安定させようとしているそうです。

ところで、復活した北欧両国ではふ化場を使って資源を回復させたわけではありません。同じく激減が続くサケも同様なのですが、資源量をサステナブルにできている国では、自然産卵とMSY(最大持続生産量)を維持できる水産資源管理に重点を置いています。

やるべきことは、資源が回復するように、科学的根拠に基づいて現在の漁獲量を減らす。そして河川を始め、魚が産卵し易い環境を整えることが必要ではないでしょうか?

日本の水産資源管理は「井戸の中の蛙大海を知らず」といったケースが後を絶たず、様々な魚種がどんどん消えています。

そして減った原因を、自国の管理は棚上げし、海水温上昇や外国にばかり責任転嫁しています。そして、来年こそは!と大漁祈願の神頼みばかりでは、本当によくなることはありません。

ノルウェーでもシシャモ漁解禁

Norges Sildesalgslag

アイスランドに続き、ノルウェーでも来年(2022年)からシシャモ漁が解禁となりました。ノルウェーが資源を管轄するのは、北部のバレンツ海の漁場です。その産卵場はノルウェー北部(ロシア含む)で、アイスランドのシシャモとは、資源の系統群が異なります。アイスランドが漁獲するシシャモは、アイスランド沿岸で産卵します。

生態系も考えた水産資源管理

ところでシシャモを食べるのは人間ばかりではありません。マダラを始めとした、多くの魚の貴重なエサでもあります。シシャモの漁場でマダラが混獲されたりすると、その漁場は禁漁区にするなど厳格に管理されています。

漁獲枠設定の際には、漁獲量だけでなく、他の魚がエサとする量も計算されています。イカナゴマイワシといった食物連鎖の低辺にいる魚は、人間だけでなく海の生き物にとっても非常に重要なエサです。

エサ資源が減れば、そのエサを食べていた魚の資源も減ります。残念ながら日本では、こうした他の魚のエサとなる分量の配慮に関する報道は聞きません。生物多様性も十分考慮することが重要であることに気付いていただければと思います。

なお、アイスランドは日本と漁業規模が違うとか、種類が違うシシャモではないか?という問題ではありません。

科学的根拠に基づく水産資源管理ができているかどうかという、極々基本的な入口のところで致命的な違い(誤り)が起きているということが言いたいことであることを申し添えておきます。

イクラは食べ続けて良いのか? 減り続ける日本のサケを考える

イクラになる前の原卵

2周年御礼!「いいね!」「シェア」で4万5千回

我が国では水産資源に関して正しい情報が少なく、ほとんど有効な対策が取られていません。このため必然的に様々な魚が消え続けています。手遅れになる前に、社会に気付いて欲しいという想いから、「魚が消えていく本当の理由」というタイトルでブログを始めて丸2年が経過しました。

これまでに50記事を発信。「いいね!」「シェア」は累計で4万5千回を超えました。ありがとうございます。今回は、サケとイクラについて、誰も検証できていない視点から解説します。

アラスカ産 ベニザケ

サケの漁獲量が激減しているが、イクラを食べ続けてもよいものか?

子供から大人まで、日本人が大好きなイクラ。ところが、サケの漁獲量激減という報道が、毎年のように続いています。サケが減っているのに、その卵を食べ続けてしまってよいものなのでしょうか?

サケの漁獲量とイクラの生産量の関係

水産通信社のデータより編集

上のグラフは、日本のサケ類(少量のカラフトマス等含む)とイクラの生産量の推移を示しています。2013年2015年前後には、年間15万㌧前後あったサケの漁獲量(左軸)が、2019年〜2020年には5万㌧程度と、3分の1に激減しているのがわかります。それに合わせて、イクラの生産量(右軸)も同6~7千㌧から2~3千㌧と大きく減っていることが分かりますね。

輸入も含めたイクラの供給量はどうなっているのか?

水産通信社のデータより編集

上のイクラの供給量推移のグラフをご覧下さい。青の折れ線グラフが減り続ける国産原料でのイクラ生産量。オレンジが米国・ロシアを主体とした輸入品の合計です。また、グレーは国産と輸入品の総合計を示しています。減り続けている国産品を輸入品で補って来ていましたが、全体的に供給量は減少傾向であることがわかります。美味しい水産物の需要は世界で伸びていますので、買付競争により輸入環境は厳しくなって行きます。

他国も含めたサケの漁獲量はどうなっているのか?

水産庁

2つグラフの内の上のグラフは、北太平洋におけるサケ類の漁獲量推移を示しています。イクラを供給しているのは、北太平洋(米国、ロシア、カナダ、日本)のサケ類です。このサケ類全体の漁獲量推移が、イクラ生産量に影響します。日本では不漁のニュースばかりですが、全体では減っていませんね。

それどころか漁獲量を見ると、米国は23万㌧(2021年)と近年3位の豊漁、ロシアでは53万㌧(2021年)と過去10年で2番目の大豊漁と報道されています。

一方日本は昨年(2020年)は、過去最低タイの6万㌧弱の大不漁でした。現在(10月)は、シーズン真っ最中ですが、今年だけでなく、来年以降も厳しいでしょう。ちなみに日本の2000年~2010年における平均漁獲量は23万㌧と、豊漁と言われる今年の米国の水揚げ量と同量でした。如何に独り負けしているかが分かるかと思います。

上の下のグラフは、サケ類の稚魚放流数を示しています。放流数はほぼ一定ですね。サケと言えば、採卵して放流した稚魚が生まれた川に帰ってくるというイメージをお持ちの方が多いかと思います。ところが実際には、稚魚放流と自然産卵の2パターンで回帰するのです。

サケの減少も含めて、日本では何かと魚が減ると、その原因を海水温上昇にする傾向があります。しかしながら、米国、ロシアも同じように影響を受けているはずなのに、漁獲量も資源量も減少傾向ではありません。なぜ日本の魚ばかり減るのでしょうか?

次に他にサケの減少に大きく影響していると考えられる原因について検証しましょう。

放流したサケと自然に産卵したサケの割合

Alaska Fish and Game

上のグラフは、アラスカ(米国)でサケの商業漁獲における自然産卵と稚魚放流のサケの漁獲尾数と比率を示しています。緑色の棒グラフが自然産卵、黄色が放流によるものです。黒の折れ線グラフは、放流物の漁獲比率を表しています。

Alaska Fish and Gameより編集

上の円グラフをご覧下さい。2018年は放流によるサケの漁獲比率は34%でした。放流を行いながらも、実際には回帰してくるサケの半分以上は自然産卵によるものであることが分かります。

自然環境は確かに変化しています。しかしながら、米国での調査結果の数に基づき、自然産卵によるサケの方が、稚魚放流のサケよりも環境への適応度が高いという仮説を立ててみましょう。すると、現在日本が行なっている採卵による稚魚放流よりも、資源回復のためには、採卵や漁獲量を減らし、自然に産卵するサケの量を増やした方が良いということにならないでしょうか?

さらに国際的な視点から俯瞰すると、資源量が少ないのに無理に採卵することが返って逆効果となり、結果として米国、ロシアと来遊量の差が拡大していることが想定されます。

日本のサケ放流は大丈夫か?

水産庁

上のグラフをご覧ください。青の折れ線グラフが、日本のサケの稚魚放流尾数(右軸)で、棒グラフの合計が来遊数(左軸)となっています。

このグラフで気付いていただきたいことがあります。それは、来遊数が激減しているのに、稚魚放流数がほぼ横ばいという点です。これは放流を優先させる余り、自然産卵するサケの数を減らしている可能性が高いことを意味しています。

もともと自然産卵のサケの方が来遊率が高いのではないかと考えられています。また、サケの来遊数が少ないために、別の川で採卵された卵から生まれたサケが違う川に放流されてしまえば、遺伝子的な錯乱が起こってしまう恐れもあります。

かつて北海道のシロサケで、2011年〜2014年にかけて世界的な水産エコラベルであるMSC認証取得が目指されたことがあります。しかしながら途中で断念されています。

認証を得るためには、MSY(最大持続生産量)レベル維持のための産卵魚をエスケープさせることが必要であること、及び資源状態が悪い場合には回復のための手段として採卵(増殖)をほとんど行っていないことなど、克服せねばならない要件がありました。

その後、日本独自の水産エコラベルであるMEL認証は得たものの、肝心のサケの来遊量は激減してしまいました。

水産庁

他国のサケの放流数と比較して分かること

上のグラフは、各国のサケの漁獲量と稚魚放流数を示しています。左下が日本です。赤の折れ線グラフが稚魚放流数ですが、15〜20億尾前後と、日本より漁獲量が多い米国、ロシアの5〜10億尾に比べ2〜3倍も稚魚放流が多いことが分かります。漁獲量と放流尾数の関係が乖離しているのは日本だけです。

放流尾数が多いのに、肝心のサケの漁獲量は、日本だけが激減してしまっているのです。

海水温上昇については、日本だけでなく、米国もロシアも影響を受けています。しかしながら、サケの漁獲量で激減を続けているのは我が国だけです。サステナビリティの面では、米国もロシアもMSC認証を取得、一方で日本は取れずに断念。結果を見るとサケが減ってしまい地域社会に暗い影を落としているのも日本だけです。

サケだけではありませんが、日本には世界で起こっている現実を俯瞰した水産資源管理が欠かせません。またイクラは、日本だけが消費しているわけではありません。これから他の水産物同様に、さらに買い負けが進行して行きます。

日本では資源の減少は、サケに限らず海水温の上昇が原因とされることが多いです。しかしながら、同じく海水温上昇の影響を受けている米国・ロシアでは豊漁というのが現実です。そこで国際的な視点からご理解いただきたいことがあります。それは、イクラを食べ続けるためには、サケの自然産卵を増やさせて、国内の資源回復を本気で行うことが急務なのではないかということです。

タラコを食べても魚は減らない? 産卵期の漁業は問題あるのか?

産卵期に魚を獲ることが問題なのか?

卵を抱えている魚を獲り続ければ減ってしまう。誰が考えてもわかることです。日本では、過去の歴史から北海道のニシンや秋田のハタハタを始め、産卵のために集まってくる魚を獲り続けて資源を潰してしまった例がいくつもあります。近年サケも激減していますが、これも産卵に回遊してくる魚を狙っています。

共通しているのは、卵に価値があることです。魚が減ると水産資源管理が機能していない場合、子孫を残そうと最後まで群れがまとまる産卵期か、未成魚狙いの漁業が進行してしまいます。

このため日本では、加入乱獲が様々な魚種で起きています。加入乱獲とは簡単に言えば、親魚の獲り過ぎで産まれてくる子供が少なくなってしまうことです。その結果、世界で類を見ないほど、様々な魚種が減り続け、全国各地で社会問題になっています。

なお海水温上昇の影響だと思っている方は、矛盾点を明記してあるこちらの記事を読んで下さい。(過去最低の水揚量と海水温上昇を比較すると驚くかも知れません。

産卵期に獲った魚を獲ってはいけないのか?

タラコ、イクラ、カズノコなど、たくさんの魚卵が年中店に並んでいますね。魚卵大好きな日本人。果たして私たちは魚の卵を食べ続けても良いものでしょうか?

ところで、タラコが不漁で食べられなくなるという報道を聞いたことがあるでしょうか?タラコは食べ続けてもよいのでしょうか?

答えはシンプルで「(輸入品は)全く問題ない」です。順を追って客観的な事実から検証してみましょう。主要供給国の米国やロシアでも、産卵期を主体に日本の約10倍も大型船で獲り続けています。しかし資源が減少して問題になることは聞こえてきません。なぜでしょうか?

まずは、タラコ原料の輸入数量から検証してみましょう。

2つとも水産通信社のデータを編集

2つのグラフの内、まず上の方を見てください。スケトウダラを漁獲しているのは、米国、ロシアそして日本です。黄色い折れ線グラフは、輸入を含めたタラコの全体の供給量(冷凍と生原料)を表しています。安定的に年間で約4万㌧供給されていることが分かります。

どの国も狙いは産卵期です。その理由は、日本向けにタラコ原料が高く売れるからです。タラコ生産量の約7割は日本向けと言われており、買付力はダントツです。一方で身の方は、フィレにしたり、すり身にしたりして、日本だけでなく欧米市場を始め各国に輸出されています。

水産通信社のデータを編集

上の表は、過去10年間のタラコ原料の生産量の平均です。国産はわずかで6%のシェア。9割以上は輸入原料に頼っていることがわかります。つまり、日本のスケトウダラ が減ってタラコの生産量が減っても大勢に影響がないのです。

ちなみにスケトウダラ の年間漁獲量(2020年)は、米国は136万トン、ロシア183万トン。一方で資源量を大きく減らしている日本は、桁違いに少なく16万トンでした。

米国・ロシアでは産卵期狙いで問題がないわけ

スケトウダラ

米国もロシアも産卵期にスケトウダラを大量漁獲しても問題が無い理由は、水産資源管理の違いによる資源量の差にあります。米国の例が分かり易いので説明します。

上のグラフをご参照下さい。米国(アラスカ)のスケトウダラのABC(青い棒グラフ・生物学的漁獲可能量)とTAC(オレンジの棒グラフ)そして実際の漁獲量(赤い折れ線グラフ)を示しています。

アラスカの場合は、生物学的に漁獲しても良い数量(青・ABC)を下回ったTAC(オレンジ・漁獲可能量)で設定されている年度が多く、かなりセーブされています。

このため、資源状態は極めて良い状態が続いています。TACと実際の漁獲量は、オレンジの棒グラフと赤い折線グラフを見れば分かりますが、ほぼ100%です。

アラスカでの昨年(2020年)の平均漁獲サイズは約750g(6歳前後)でした。100%成熟するのは5歳以上なので、成魚が漁獲の中心になっていることがわかります。

日本のスケトウダラ の場合はどうか?

水産庁 資源管理のあり方検討会

上のグラフは、日本のスケトウダラ 資源の内、日本海北部系群の推移です。米国で法律で禁止されているTACがABCを超えているなど、およそ考えられない管理が行われてきました。

グラフは2013年までで、現在は一応ABCを上回らないTACになっていますが、TACが大きすぎ水産資源管理が機能していない点は変わりません。この結果について、下のグラフでは2014年以降の推移も含んでいるので、どうなっているか見てみましょう。

水産研究・教育機構

上のグラフは2013年以降も含めた漁獲量推移ですが、漁獲量は減少続きで、改善されていないことが分かります。また、オレンジ色の箇所は、当時資源量が減少した原因とされていた韓国船の漁獲量です。その後1999年以降は韓国船が撤退。しかしながら撤退後も、肝心の漁獲量は回復どころか減少が続いています。自国の管理に問題があったのに、『外国に責任転嫁』していた一例です。

日本のスケトウダラ には、全部で4系統の資源があります。それらの過去5年(2019-2015年)分のTACに対する漁獲量の年平均消化率は僅か54%です。毎年ほぼ100%枠を消化している米国の例と比較すると違いは歴然です。

これは日本の場合、獲り切れない量の枠が設定されていて、獲り放題となり、管理になっていないことを意味します。ちなみにロシアでは2年続けて枠の消化が7割を切ると、その漁業者の枠を没収する制度が2019年より適用されています。日本でも過剰な枠の配分を制御するためにも、個別配分後、実績が少なければ没収するという制度にすれば、枠の分量に関して真剣に考えるようになるでしょう。

マークで分かる水産資源管理の違い

タラコ MSC認証 ロシア又は米国産

米国・ロシア共にスケトウダラ漁に関しては、取得が難しい国際的な水産エコラベルであるMSC漁業認証を取得しています。2011年に同じスケトウダラでMSC認証を取得している米国産に対し、ロシア産は認証がないため欧州市場で需要が減少。その後、ロシアは約3年かけてようやく認証にこぎつけた経緯があります。

日本のスケトウダラ漁業が、現在の管理状況でMSC認証を取得するには、かなりハードルが高いのは間違いありません。それでも、同じスケトウダラで、なぜこれほどまでに日本の資源状態が悪くなっているのか、国際的な広い視点で問題点をとらえることが不可欠ではないでしょうか?

以上で、必ずしも産卵期に魚を獲ってはいけないということではないことをお分かりいただけたでしょうか?

ポイントは、資源量がサステナブルな状態か?水産資源管理が機能しているかどうか?ということに尽きるのです!

水産資源は誰のものか?「国民共有の財産」となっていない謎? 

日本の漁港 資源が減り水揚げ量も減っているのに漁港への税金投入は続く。

水産資源は法律で「国民共有の財産」になるはず??

長年の疑問?なぜ未だに「水産資源は国民共有の財産」と法制化されていないのか?2011年7月22日の閣議決定。内閣府ホームページポイントを下記に表示。

https://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/publication/p_index.html 閣議決定・追加方針本文はの32ページの【農林・地域活性化 ⑰】

水産資源は誰のものか?2007年に(社)日本経済調査協議会(水産業改革高木委員会)でこの議論が始まりました。そして2011年7月22日に「国民共通(共有)の財産」として上記の引用通り閣議決定されています。しかしながら、2021年8月現在、まだそれが法律になっていません。

漁業・水産業で成長を続ける国々では、国が水産資源管理を行っている。

日本では、沖合漁業と沿岸漁業そして釣り人との間で、感情のもつれや不信感が絶えません。一方で、ノルウェーのように水産資源が豊かで、漁業で成長を続ける国ではそのような話を聞きません。大型巻き網船は大活躍です。なぜでしょうか?

それは、ノルウェーやオーストラリアのように「水産資源を国民共有の財産」として位置づける、もしくは米国のように「国民の負託を受けて国が管理」する、つまり水産資源管理を漁業者に丸投げせず「国が管理」している点で大きく異なるのです。

繰り返される争い

魚が減って獲れなくなってくると、魚は誰のものなのか?という争いが起きます。魚が山ほどいて獲り放題な状態の時には、この不幸な争いはほとんど起きません。

しかしながら、水産資源は有限であるがゆえに、ある時点から管理が機能していないとほぼ例外なく減少が始まります。そして徐々に減りだした資源は、突然急激な減少を引き起こします。その例は、近年では、サンマ、スルメイカを始め枚挙にいとまがありません。

そして、自国の分け前を増やそうと論争が起きます。その典型的な例は、戦後の食糧不足解消のために、世界中の海に進出して世界最大の漁獲量を1972年から1988年の長期にわたって誇ってきた日本に対して起きました。

このため、主に日本漁船を排除しようと1977年に200海里漁業専管水域が設定されました。日本の遠洋漁業は大打撃を受けることになります。また英国漁業もアイスランドの漁場から排斥され大きな打撃を受け今日に至ります。

日本排斥後に、米国やニュージーランドで起こったこと

1976年に米国はアメリカ化を行い外国の排除は1991年に完了したと紹介されている

しかしながら米国では、日本漁船を追いだした後、カニ漁業者がたくさんのカニ漁船を建造、これによりカニ資源の減少を引き起こしました。この問題を解消するために、米国は当時カニ漁業者にとっては未利用魚であったスケトウダラを漁獲させて、行き場を失っている日本の漁船に洋上で買い取らせて過剰漁船問題を解決して行きました。

ニュージーランドの漁船と漁港

一方、ニュージーランドでも、1977年の200海里専管水域の設定で日本漁船が排除されるようになると、一大漁業ブームが起きて漁業許可が乱発されました。しかしながら資源が減少してしまいました。そこで1982年には許可証の一時凍結も行われ、漁獲努力量の50%削減計画が打ち出されました。そして自国の沿岸漁業を根本的に見直すことに決めてできたのがITQ(譲渡可能個別割当制度)なのです。

米国でもニュージーランドでも、日本漁船を排斥しても同じように乱獲が起きています。しかし日本との大きな違いは、水産資源管理の問題に気付き、漁業者に「自己管理」の名のもとに漁業者に管理を丸投げせずに、科学的根拠に基づく「国の管理」で資源が回復し、現在の成長と繁栄につながっているのです。この点が結果で明らかな通り、成長か衰退かの決定的な違いです。

東カナダ沖・大西洋で起きたマダラの乱獲

MSC認証のきっかけになった東カナダでのマダラ資源の崩壊 FAOデータから作成

太平洋だけでなく、大西洋でも乱獲による資源崩壊が起きています。東カナダでのマダラ漁は、1977年以前に各国が入り乱れて乱獲を起こしました。そして1977年の200海里漁業専管水域の設定により、他国をカナダの海域から排斥して行きました。

本来であれば、この時点で科学的根拠に基づく水産資源管理を行っていれば、カナダは1992年~2021年現在に至るマダラの禁漁という憂き目にあっていなかったことは確実でした。

しかしながら、今度は自国で乱獲を引き起こし、マダラ資源にとどめを刺してしまったのです。この反省からできたのが国際的な水産エコラベルであるMSC認証ができたというのは有名な話です。

禁漁してほぼ30年経っても東カナダのマダラ資源は再開できる資源量に回復していません。イカナゴニシン、ホッケなどすでに激減してしまった日本の多くの資源は、この状態に近いかも知れないと言わざるを得ないのが残念です。

「水産資源が国民の共有財産」になると何が変わるのか?

資源の状態が良いノルウェーのマダラ 40cm以下は漁獲禁止 水産資源は国民共有の財産

日本の至るところで、漁業者や水産加工業者が困っている根幹にあるのは、魚が減ってしまっていることです。これを回復させねばなりません。しかし、肝心の資源に関するデータが足りないということが起きています。そこで、漁業者に対して漁獲データの提出を義務付けることです。

また、国民がその共有財産が、水産資源管理の不備で減少していることに対して関心を持ってもらうことです。そこで「なぜ日本の海の周りだけ魚が減り続けるのか?」という「異常事態」に気付いてもらうことです。

かつて水産庁の高官の方に「なぜ国民の共有財産とならないのでしょうか?」と聞いたことがあります。その時には「そう意識しています。」という返答でした。しかしながら、法律として明記されるかどうかが大きな違いではないだろうか?と今でも考えています。

サンマ 報道されていることが事実か検証してみた

サンマが来遊して来ないのはマイワシやサバが増えたから?を検証してみた。

8月のお盆になってもまだ店頭にサンマの鮮魚は並んでいません。7月に漁期に入ったものの、これまでは水揚げがゼロだからです。上の写真は細々と並ぶ台湾と昨年の国産の解凍物。しかし多くはありません。他国も含めサンマの漁獲量が激減しているからです。

日本では、魚が減るとその原因が乱獲から他の要因に責任転嫁されてしまうケースが後を絶ちません。このため「間違った前提に対する正しい答え」が求められ、改善どころか悪化だけが進んでしまいます。

マスコミも情報不足および注目を集めるためか、変わった珍説が出ると検証もせず報道してしまいます。そして日本では水産資源に関してどんどん誤った情報が拡散されているのです。

瀬戸内海のイカナゴが激減に対した理由が「水が綺麗になりすぎたため」と報道されているのには驚かされました。それなら水が今よりももっと綺麗だった江戸や室町時代にはイカナゴはもっと少なかったのでしょうかw?

そこで今回は、サンマの来遊を阻害しているのはマイワシやサバ類という説が本当か検証してみます。サンマ、マイワシ、サバ、イカナゴも驚いていることでしょう。

それぞれの説を全否定するわけではありませんが、客観的な事象や数字から分析すると明確な矛盾が出てくるので、本質的な問題ではないことが浮き出てきます。

サンマの来遊を阻害するマイワシ、サバ類は依然として多く19年より増加しているという。』❓❓❓

2021年8月。サンマの漁獲シーズンになりました。今年の予想は、過去最低の昨年よりは多いが、2019年より少ないというものです。2019年の4.6万㌧は2020年の3万㌧より多いという数字ですが、そもそも2019年の数字自体がほんの10年前まで20~30万㌧(2001年~2010年の平均26万㌧)漁獲されていた数量より極めて少ない数字なのです。

サンマとマイワシの関係

                     農水省のデータから作成

上のグラフをご覧ください。まずサンマとマイワシ(以下太平洋が対象)の関係です。マイワシ、マサバと日本海でも漁獲されているので、共に太平洋側で漁獲された数量を基に分析していきます。

マイワシの漁獲量が増えて来ていますが、1980年代のマイワシの平均漁獲量は250万㌧、同サンマは22万㌧でした。2019年(2020年は未発表)のマイワシ52万㌧、2020年のサンマは3万㌧と、1980年代の方が約5倍もマイワシが漁獲されていましたが、サンマも約7倍漁獲されていました。これでマイワシのせいでサンマの来遊を阻害していると言えるのでしょうか?

サンマとサバ類の関係

次のグラフをご覧下さい。サンマとマサバ(太平洋)の漁獲量の関係です。1980年代のマサバの平均漁獲量は38万㌧、同サンマは22万㌧でした。2019年(2020年は未発表)のマサバは27万㌧、2020年のサンマは3万㌧でした。1980年代の方が約5倍もマイワシが漁獲されていましたが、サバは増えたどころか3割減となっています、、、。これでサバのせいでサンマの来遊を阻害していると言えるのでしょうか?(注)サバ類とはマサバとゴマサバのこと。数量はマサバが圧倒しているのでゴマサバは割愛しています。

サンマとマイワシとマサバの相関関係 

最後にサンマ・マサバ・マイワシの3つを合わせた漁獲量推移のグラフをご覧ください。2つのグラフの説明と、上のグラフを照らし合わせて考えた場合、果たしてサンマが来遊してこないのはマイワシやマサバが阻害しているから?と言えるでしょうか?そこまでマイワシもマサバも全然多くありません。

こうやって、実際の数字で分析されているのは見たことがありません。しかし、こうやって客観的にみるとサンマの来遊とマイワシやサバ類の増加が原因であるとは言えないことがわかります。

サンマの資源量推移 NPFC

上のグラフは、サンマの資源量推移です。激減していることが分かります。サンマが来遊してこない最大の理由は資源量が減少しているからです。海水温が低い公海でも資源量も漁獲量も激減しているのです。だから来遊も減ります。なぜ本当のことを言わないのでしょうか?

検証結果は、データ分析からサンマの来遊の減少とマイワシやサバの増加には相関関係は見られないということです。

サンマが減少している主因は、魚種交代でも何でもなく獲りすぎなのです。魚種交代というのは、それぞれの魚種の水産資源管理が出来ていてはじめて語れる内容です。

なお、このWEBサイトは、マスコミや研究者の方々も含めて「魚が消えていく本当の理由」について気付いていただき、水産資源の回復とその持続性に役立ていただくことを意図しています。

より詳しく知りたい方は、下記サイトを参照してください。