大不漁 サンマ漁はどうなったのか?


新物のサンマ 焼いても脂がほとんどにじみ出て来ない 

社会問題 サンマ大不漁は正しく認識はされているか?

2020年のサンマの漁獲量はわずか2万9千㌧と、歴史的「凶漁」と言われ過去最低だった昨年を27%も下回りました。

ところが、その原因を客観的に分析した情報はなかなか見当たりません。消費者に取っては高くて細いサンマ、一方で漁業者に取っては魚価が高くても漁獲量が極端に少ないために水揚げ金額が不足。つまり双方に取ってよくない最悪の事態に陥っています。

また、同じサンマ資源を獲り合っている台湾・中国などとの国別の漁獲枠の合意もされていません。残念ながらサンマ資源を巡る環境は悪化の一途です。

矛盾だらけ! サンマが減った理由

①海水温の上昇により日本の沿岸に群れが近づかない②台湾や中国の漁船が日本に来遊する前に獲ってしまうなどの理由がマスコミを通じて報道され、多くの日本人が原因の本質を誤解しています。

①については、日本から遠く離れた「公海」の漁場でも不漁となっています。近づく前の群れ自体が激減していることを理解する必要があります。そうしないと、来年こそは!といった可能性が低いことに期待することになってしまいます。短期的に一時的に回復したような錯覚を覚えることがあっても、最低でも10~20年単位で漁獲量推移を見てみると、何もよくなっていない現実がわかります。

②については、今年の漁業は「公海」が主体であり、台湾、中国などの漁船と入り混じって漁が行われていました。同じ漁場である以上、日本の漁船が獲れなければ他国の漁船も同様に獲れません。ただし、他国は日本と異なり、洋上で凍結しているために陸地まで数日かけて往復する時間が不要です。このため日本の漁獲量は相対的に減少してしまいます。これは漁獲実績をもとに話し合う漁獲枠配分の話し合いの際に、不利な要素となってしまいます。

マイワシが増えたのでサンマが回遊しにくくなった?

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「マイワシの分布が拡大して、サンマが北へ東へと追いやられている?」日本では魚が獲り過ぎでいなくなると、その結果をもとに無理やり理由を付ける傾向があり、問題の本質からズレて行きます。そして結局は「原因はよくわからない」にたどり着くのです。これなら誰にでもできます。

上のグラフは、サンマと太平洋側で漁獲されたマイワシの漁獲量推移をグラフにしたものです。1980~1990年代にかけてマイワシの漁獲量は、200万㌧前後と現在の5倍前後もありました。一方で、サンマの漁獲量も同時期に20~30万㌧もあり、昨年(2020年)の10倍もの水揚げでした。マイワシがサンマの来遊を妨げているのなら、当時のサンマの漁獲量は今より少ないという理屈にならないでしょうか?

また、同様におかしな例が、イカナゴが激減した理由です。水がきれいになり過ぎて栄養分が減ったからという理由ですが、それならば海の水がもっと綺麗だった奈良時代や室町時代などは今より少なかったのか?という理屈になります。「資源管理制度の不備による魚の獲り過ぎ」という魚が減った本当の理由を捻じ曲げてしまうとそれらの理由には様々な矛盾が出てきます。もう一方で、問題が先送りされて何の解決も見出せなくなります。現実と真摯に向き合うことが重要ではないでしょうか?

サンマの水揚げ減少と魚価(水揚げ単価)の高騰で起こること

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水揚げ数量と魚価の推移を表した上のグラフをご覧ください。2000年~2009年の年間平均水揚げ量は約30万㌧、単価は約キロ¥100でした。それが水揚げの激減に伴い昨年は、水揚げ数量でその約10分の1、単価は5倍となっていることがわかります。

年間30万㌧前後の水揚げがあった時期には、供給量が消費量に対して多過ぎるため、食用に回らず養殖のエサなどの非食用向けに2割程度回ることが少なくありませんでした。また、干物や缶詰などの加工原料にも次々に冷凍されて行きました。

ところが、ここ数年のように水揚量が減少し、単価が高騰すると養殖のエサに回していたような小さなサンマでも、供給不足により食用に回され易くなります。また加工原料に向けられる原料も相対的に減少し、かつ原料価格は高騰し使いにくくなってしまいます。

さらに、全体的にサンマ以外のサバなども含めて、海の栄養分が減っているためか成長がよくない傾向があります。

それで「サヨリ?」と呼ばれるような細くて小さなサンマが売り場に出てくるのです。また供給不足により単価が高い。このために消費者の財布に優しかったサンマは消えてしまう傾向が強くなっています。

昨年一時期活躍した冷凍サンマも、2019年の水揚げ自体が過去最低であったために冷凍にはほとんど回っていません。加えて2020年はさらに減るか、もしくは非常にコストが高い冷凍品となります。

サンマの水揚げ数量と金額推移から分かること

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次に水揚げ数量と金額推移を示した上のグラフを見てください。2018年以前は、水揚げ数量が減っても、意外と水揚げ金額が減少していないことがわかります。漁業者に取って肝心なのは、水揚げ数量ではなく、水揚げ金額の方です。冷静に見れば、水揚げ量が減ると単価が上がるので、大漁が必ずしも漁業者に取って良いことではないのです。これは他の魚種でも概して同じです。

ところが、水揚げ金額は「水揚げ数量x魚価」で決まります。水揚げ数量があまりにも少ないと、魚価のアップで水揚げ金額の減少を補えなくなってしまうのです。そして今、それが起き始めています。

また、水温の上昇と資源の減少により、漁場が遠くなっています。ノルウェーサバのように漁船ごとに漁獲枠の割当がされていないので、小型の漁船ほど遠い漁場に向かいにくく不利になってしまいます。また、無理して出ていけば事故の危険性も高まります。

予想通りの大不漁 有効な対策なし

水産研究教育機構 

昨年の大不漁は事前の調査結果と予想の通りでした。上図の2020年9〜10月の調査結果では、北海道近海では見つからず。

ところで、サンマのTAC(漁獲可能量)は、26.4万㌧と漁獲実績(2.9万㌧)のほぼ10倍。しかもノルウェーのように漁船別の枠ではありません。このため、資源量を考えての漁獲を行う体制になっていないのです。

国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)での採択14「海の豊かさを守ろう」は、日本以外のサンマを獲る国々も守らなければならない内容です。そのためには、手遅れに近づいているサンマの資源管理をまともにすることが喫緊の課題ではないでしょうか?

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