北欧のシシャモ資源が必ず戻るわけ

国産シシャモの幼魚 小さくても容赦なく漁獲されてしまう

食卓や居酒屋などでおなじみ、脂がのった北欧産のカラフトシシャモ(以下シシャモ)。しかしその供給が、資源量の一時的な減少で禁漁となり細る見通しです。日本に供給しているのは、アイスランドとノルウェーです。アイスランドの禁漁は、2019年に続き2年目、別の水産資源ですが、ノルウェーのバレンツ海も同じく2019年から禁漁しています。

この他、東カナダでもシシャモが獲れますが、卵の量が多いものの、脂があまりないのが特徴です。

北欧(アイスランド、ノルウェー)産 シシャモ

ところで、シシャモなどをエサにするマダラなどの腹の中にはシシャモが一杯。でも禁漁なのはなぜでしょうか?

シシャモは3年〜4年で成熟して、ノルウェーやアイスランドの沿岸で産卵をして一生を終えます。それぞれ別の資源ですが、ノルウェーではロシアと共同で管理していて、卵を産む資源量(産卵親魚量)を95%‼︎の確率で20万トン残すルールとしています。

資源量が例えば30万トンと推測されると(30➖20=10) 10万トンが漁獲枠となります。一方で、20万トンを下回ると禁漁となります。アイスランドについても、同様に産卵親魚量を15万トン残す資源管理です(2015年に方式変更)。同じくこの水準を下回ると禁漁となります。

共に2〜3月が漁獲シーズンで、ノルウェーは、早くも禁漁を決めています。アイスランドは3月現在も調査を続けていますが、解禁は厳しい見通しです。

7隻の漁船がアイスランド近海をくまなく調査

資源調査においては、図のように、官民の漁船が手分けをしてアイスランドの周りをくまなく調査しています。

色が付いている箇所がシシャモの未成魚資源 3~4歳で産卵のためにアイスランド沖に回遊して来る

ところで、来期、2021年のアイスランドでのシシャモは約17万トンの漁獲枠が早くも現時点で科学者から勧告されています。これは、資源調査の結果1~2歳の未成魚の加入量が、平均値を大きく上回っているデータが出ているからです。

上の図はシシャモの資源分布を示しているのですが、まだ成熟しない未成魚の資源です。2021年には、一部が親になってアイスランド沖に産卵のために回遊してくるのがわかっているので、解禁見込みとなっているのです。

ところで、もし生活のためだといって、この未成魚の漁場まで行き、食用にならないシシャモを大量に獲ってしまったらどうなるでしょうか?

漁獲枠もなく、もしあっても獲り切れない枠だったり、個別割当制度(IQ,ITQ,IVQ)もなかったらどうなるでしょうか?

それが様々な魚種で、日本で魚を減らしてしまう漁業の問題なのです 。

シシャモの赤ちゃん 国産 北欧では絶対獲らないサイズ
シシャモの成魚 国産

写真は、日本のシシャモの写真です。日本では、シシャモに漁獲枠さえありません。年間の漁獲量は千㌧弱です。もちろん、単純比較はできませんが、日本の場合は、漁獲枠が機能していないので、小さな魚の漁獲「成長乱獲」が様々な魚種で、日常茶飯事に起きています。

上の写真のようなシシャモの未成魚は、将来のことを考え、「絶対」に獲りません。

冷静に考えれば、日本では、様々な魚種で小さな魚を獲ってしまう「成長乱獲」、産卵する親の数が少ないのに獲ってしまう「加入乱獲」を同時に引き起こしています。それを魚が減っているのに、海水温の上昇や外国にばかり責任転嫁するのは、いい加減にやめるべきなのです。

話を元に戻します。シシャモを見かけなくなっても、一時的に高くなったような気がしても、それは短期的なことで、数年で回復してくるのです。

はっきりそう言い切れるのは、水産資源管理がしっかりしているからに他なりません。また、漁獲する量だけでなく、マダラを始め、他の魚のエサとして減少する量も考慮されて、漁獲枠のアドバイスが出されます。

言うまでもなく漁業者にとっても、大事な収入源であるシシャモが禁漁であって良いわけがありません。しかしながら、水産資源管理がしっかりしていると、サバ、ニシンなど他の魚種が十分補ってくれるので、禁漁に対する強い不満や補助金の話は聞きません。

日本も、北欧を始めとする海外の資源管理の本当の姿をすれば、将来の明るいビジョンが見えてきます。漁業は本来、水産資源管理ができていれば成長産業です。

そしてその為の第一歩が、水産資源が国民共有の財産という内容が欠けていますが、国際的に見て遜色がない資源管理にするという漁業法の改正であったのです。

シシャモだけではありません。世界と日本の水産資源管理を比較するとハッキリとその問題点と解決策が分かります。悪化している状況を美化して問題を先送りする段階ではありません。

国会で水産資源管理のことを話してみました

参議院 国際経済・外交に関する調査会 2020年2月12日

2/12に参議院で国際経済・外交に関する調査会が開催されました。そこに参考人として水産資源管理のことを話して欲しいと依頼があり、話をして来ました。3人の参考人が呼ばれ、その1人がさかなクンだったので、マスコミの注目は凄く、帽子を取るとかとらないとか、あちらこちらのTVにも映っていたそうです。

参議院からの招待状

ちなみに、会議ではさかなクン参考人ではなく、さかなクンと呼ばれ、ご自分のことは、さかなクンといってました。本当にさかななんだ(笑)。

テレビは「さかなクン」一色でしたが、参考人が3人が各20分話し、それに対して2時間弱が質疑というまじめな組み立てでした。さて、その中で、いつも出てくる重要な質問がありました。

世界と日本のグラフ

筆者のプレゼンは、世界と日本の水揚げ量の推移の違い、世界の中で、日本の海の周りだけが、世界銀行に水揚げ量が減ると予測されており、すでに予想を上回るスピードで悪化していること。減少要因とされる海水温の上昇などの要因は、日本だけに起こっている問題ではないこと。水産資源管理の成功により、成長を続けているノルウェーでは、漁船の大小に関わらず99%の漁業者が満足していると説明しました。

さらには、データを元に同国では魚の資源が増え、補助金が減るという現象が起きており、その根本にある政策が、科学的根拠に基づく「漁獲枠=TAC」の設定とそれを漁業者や漁船などに、個別に割り当てていく「個別割当方式=IQ、ITQ、IVQ」にあるという説明などをしました。アイスランド、デンマークといった漁業で成長している国々と制度が共通していることも解説しました。

日本は、皮肉にも東日本大震災で、マダラなどが漁獲圧力の減少で、一時的に魚が増えたものの、従来通りのやり方で、小さな魚まで獲ってしまい、数年で元に戻ってしまったこともデータで明示しました。

太平洋側のマダラ資源は、震災後一時的に資源が激増。しかし漁獲枠もなく獲り過ぎて元の木阿弥に。

マダラの資源推移を例とした具体的な説明

さてその質問内容を要約です。「なぜこれほどやるべきことは明快なのに、日本は水産資源管理ができないのか?」 同じ質問を、これまで様々な分野の方から一体何回受けたことでしょうか‼

水産資源管理については、漁業先進国と異なり、日本では事実がほとんど知られていないため、魚が減るとそれが海水温の上昇や外国が悪いという責任転嫁ばかりになってしまうことにあります。

政治家の皆さんに事実が伝わっていないので「間違った前提に対する正しい答え」という最も悪い政策がこれまで繰り返し行われて来ました。

漁業で成功している国々でも、水産資源管理に対しては、最初は反対でした。しかし、最後には政治的な判断が行われています。親しいデンマークの漁業会社(当時)でも、反対が強くもめたものの、最終的には自分がまとめて個別割当制度(ITQ)を実施したと直接聞いたことがあります。

ノルウェーのマダラ資源は、漁業大臣の判断で高水準が維持され続けている。その地方や産業に対する好影響は計り知れない。(オレンジ色の棒グラフが、マダラの水揚げ金額推移)

ノルウェーで当時の漁業大臣が1987年にバレンツ海(ノルウェー)でのマダラの海上投棄を禁止したことが、2019年まで禁止しなかったEU(北海)での資源量の決定的な違いとなっていることもグラフ(オレンジ色の折れ線グラフ)で説明しました。

ノルウェーでは、小さなマダラを投棄すれば将来の資源に悪影響するという正しい情報に対して、現実的には難しいという反対を押し切って、大臣がマダラの海上投棄禁止の判断し、将来に豊かな資源を残したのです。

法律になることで、漁業者は漁場の変更や、網目を大きくするなどの早急な対応が必要になったはずです。

日本は、マダラの漁獲枠さえないので、赤ちゃんマダラも容赦なく水揚げしています。

三陸沖で漁獲されるマダラの幼魚 資源管理が進む北欧や北米では決して水揚げされない

ノルウェーの水産資源管理は沿岸漁業者を優遇という事実

「沿岸漁業者はどうなるのか?」 北欧型の水産資源管理制度の是非を巡って大きな誤解があるのは、沿岸漁業への配慮についてです。

漁村崩壊とか、漁獲枠によって社会問題が起きているなどというのは、大きな誤りであり、その逆です。 ノルウェーなどでそんな話をすると、どこの国にこと?と苦笑いされてしまいます。

ノルウェーでは、地方への配慮から、小型の漁船枠が大型漁船に売られない制度になっています。このため日本のように沖合と沿岸漁業間で起こる不満は過去の話です。マダラなどで資源量が少ないときには、沿岸漁業への配分を増やして配慮しています。

漁業者の数で言えば、多いのは沿岸漁業者の方です。そのような環境下で、99%の漁業者が満足しているのに、それがなぜ社会問題になっていると言われるとしたら理解に苦しみます。

外国人の船員が多いなども間違いです。一般的なサラリーマンより収入が高く、個別割当制度により、計画的に休みも取れる仕事をなぜ外国人に譲るのでしょうか?

時代の流れと水産業改革(日本経済調査会)による提言

ご紹介したノルウェーを始めとする水産資源管理について初めて広く世に伝えたのは、3人の内のもう1人である小松正之さんでした。それは、2007年に日本経済調査会で発表されました。

当時は、北欧型を含む先進的な水産資源管理の紹介は「見てきたような嘘」「素人談義の底の浅さを暴露」「日本型の管理手法に対する評価が高まりつつある」などと何名もの学者の方などに批判されました(そのWebは削除されています。)。しかしながら、時代が変わり、政治家の方々にも正しい情報が伝わり始めました。そして同氏が中心となり、2019年に第二次水産業改革委員会の最終報告が発表されています(2017年開始)。

2018年12月に70年ぶりの漁業法改正と言われている法律に改正には、その一部が熱意のある政治家の方々によって最初の一歩が踏み出されているのです。何が本当だったのか、はっきりとわかってきたのです。

最後に、水産資源管理に関係する人が多い中、なぜ学者もない筆者が参考人として代表して国会に呼ばれたのか?

実は、本当のことをいうと自分のためになりません。 そのことが、日本だけが魚が減り続けている異常な状態につながっているのです。この辺は、「サカナとヤクザ」の続編などで、事実に基づいた報道が行われれば、多くの地方と人が救われるきっかけになることでしょう。

日本の水産資源管理は、それ自体大きな社会問題でもあります。消費者、仕事、そしてSDGsを達成する国として、ほとんどの日本人が関わっている大問題なのです。そのためには、国民、そして政治家の皆さんが、日常生活に大きくかかわっている重大な問題を、客観的な事実に基づき、正しく理解して世論を変えて行くことなのです。

魚が減ったのは本当に外国のせいだけなのか?

国産スケトウダラ 日本とは対照的に米国とロシアの資源量は豊富でサステナブル

魚が消えて行く話題が絶えません。昨年(2019年)も、サケ、サンマ、スルメイカ、サクラエビ、イカナゴを始め、様々な魚種の不漁・禁漁が話題になりました。このため、漁業者、地域経済、そして消費者にも悪影響を及ぼしています。

原因は、海水温の上昇、外国の乱獲などの理由がほとんどでした。そして、魚種交代や、レジームシフトといったもっともらしく聞こえる解説も散見されました。しかしながら、その本質的な原因をひも解いて行くと、様々な矛盾が露呈して来ます。

昨年(2019年)も、サケスルメイカサンマ、イカナゴ、サクラエビをはじめ、消費者にとってだけでなく、地域経済に深刻な影響を与える不漁や禁漁が様々な魚種で起きてしまいました。

外国漁船が獲ってしまうから魚が減るというのは確かにそうです。1977年に設定された200海里漁業専管水域は、当時世界中の海に展開していた世界最大の漁獲量を誇る日本漁船の排斥が背景にありました。日本の漁船は、各国の水産資源にとって脅威でした。

ただし問題の本質は、特定の国が悪いということではなく、国際的な資源管理の仕組みが無かったことにありました。戦後の食糧不足から始まり、日本には動物性タンパクを魚で国民に供給する必要性が生じていたのです。国別の漁獲枠でもなければできるだけ獲ろうという力が働いてしまいます。そしてそれが乱獲の一因にもなります。

サンマのように資源が減って、同じ資源を各国が獲り合えば、それぞれが漁獲できる配分量が取り合いにより減り、ひいては全体の資源量も減ってしまうという最悪のケースに陥ってしまいます。

取り合いによって深刻な資源崩壊が起こったことで、世界的に有名なのが、東カナダ・グランドバンク漁場でのマダラ資源です。1992年に禁漁となり、未だに回復待ちです。東カナダ沖の漁場は、1977 年に設定された200海里漁業専管水域が設定される以前には、カナダ船以外の漁船も、東カナダの漁場に入り乱れていました。

グラフのように急激に伸びた漁獲量は、200海里の設定後、外国船の排除により大きく減少しました。その後、漁獲量は安定するはずだったのでしょうが、結果はその15年後に、禁漁に至る悲惨な事態となりました。マダラは主要魚種でしたので、漁業、加工業を始め300万人以上が仕事を失いました。カナダ史上最大のレイオフ(一時解雇)と言われています。

なぜ、200海里の設定後に悲劇が起きたのか?それは、自国の乱獲を棚に上げて外国を非難しただけであったことに他なりません。そのマダラ資源の激減の反省からできたのが、国際的な水産エコラベルとして受け入れられているMSCマークです。

これによく似た日本のケースを挙げるので、何が悪かったのか考えてみてください。

激減したスケトウダラの原因は何か?

スケトウダラ 日本海北部系群水揚げ推移 オレンジ色が韓国船の漁獲量で他は日本漁船の漁獲量

グラフは、北海道の日本海側のスケトウダラの漁獲量推移です。他の魚種でも多く見られる典型的な右肩下がりです。ところで、当時このスケトウダラ資源が減少しているのは「韓国漁船」による漁獲が原因といわれてました。韓国漁船の漁獲量は「オレンジ色」の部分です。200海里の制定後も、韓国漁船は同漁場での漁獲が可能であったため、割合は低いながらも、日本の漁獲量に影響してはいました。

韓国漁船の排斥が求められ、ようやく1999年に出て行くことになりました。漁獲量の減少は、韓国漁船が原因とされていたので、当然1999年以降は、漁獲量が回復するはずでした。ところが、1999年以降の漁獲量推移は、回復どころか激減してしまいました。

この例は、東カナダのマダラ資源崩壊と同じで、自国の乱獲を棚に上げて獲り続けた結果ではないでしょうか?早い段階で有効な資源管理のための手を打たないと、そのツケを払うためには数十年の年月がかかることになってしまいます。

イカを乱獲して他国に脅威を与えたこの国はどこだろうか?

もともとイカ漁で脅威だった国はどこか?

ある国のイカ漁が記事になっていました。「地元に脅威〇〇イカ船団」「略奪に渦巻く非難」「根こそぎ包囲網に不安」「反感抑え紳士的警告」「ナイター並みの照明」「乱獲の反省と節度」「進出2年でもう不漁」「獲り過ぎかなと漁労長」

この記事の◯◯は、どこの国のことでしょうか?たぶん近隣の国々のことだと思う人が多いことでしょう。

しかしながら、その〇〇に当てはまるのは「日本」なのです。記事はニュージーランド沖での日本のイカ漁に関する1974年の朝日新聞でした。当時はまだ200海里漁業専管海域(1977年に設定)の設定前でした。このため、日本漁船は12マイルもしくはそれ以内の好漁場に入って漁ができたのです。

今回の投稿は、どこの国が悪いというのが趣旨ではありません。国際的な視点で漁業を見ると、国が変わるだけで、まさに「歴史は繰り返す」なのです。漁業の歴史に関する基本的なことを知らないで他の国を批判ばかりしてしまうと、事実を知ると唖然としてしまうことになるでしょう。

サクラエビやイカナゴの減少は、近隣諸国の漁業と関係はない

ここで大事なことは、日本の200海里を出て回遊するサンマ、カツオ、サバなどの魚と、国内で完結するイカナゴ、サクラエビといった魚は分けて考えることです。

前者は科学的な根拠に基づく国別漁獲枠(TAC)を手遅れになる前に設定すること、後者は外国の漁業は影響していません。温暖化などに対するリスクを予防的アプローチとして十分考慮して、より慎重な漁獲枠を設定することが必要不可欠です。

そしてそれらを早獲り方式で資源を潰させないために、個別割当制度(IQ,ITQ,IVQ)などを適用して防いでいくのです。その成功例は、北米、北欧、オセアニアなどにたくさん存在しています。

安易な他国非難は止め、他国で資源崩壊したケースも参考にした上で、国際的な枠組みを早急につくることが重要なのではないでしょうか?

サンマ・本当はどうなっているのか?

2019年のサンマは細かった 

歴史的な「凶漁」とは?

様々な魚が減って日本人の秋の味覚にも異変が起きています。その一つがサンマです。毎年、秋になると脂がのった生のサンマが、1匹100円前後で大量に店に並んでいました。凶漁といわれる昨年(2019年)でも、何日かは1,000㌧以上に水揚げがまとまり、手ごろな価格で売られる日もありました。しかし、売価の上昇を実感した方は多かったことでしょう。

2019年のサンマの価格は例年の末端価格に比べ2〜3倍が多かった

2019年のサンマ水揚量は、約4万㌧と記録に残る1969年の約5万㌧を下回りました。この水揚量は、サンマ漁の創成期と戦時中を除き歴史上最低の数字でした。20万㌧以上が当たり前だった2014年以前の漁獲量が、2015年以降は下降線をたどっています。それまでの数字がまるでウソのようです。

しかも価格が上昇しただけではありません。海水温の上昇でエサとなるプランクトンが減少したからでしょうか?細めで脂が少ないサンマの比率が高くなってしまいました。漁場が遠く、片道2~3日もかかる漁場からでは、鮮度も日帰りで水揚げされるサンマと比較すると落ちてしまいます。

価格が高くて、脂ののりが薄いと、自然と消費者も離れてしまいます。また、それだけではありません。水揚げされて冷凍されたサンマを周年かけて利用していた加工業にも、原料不足による悪影響を与えてしまいます。

冷凍サンマがまた助けてくれるのか?

お手頃価格の脂がのった解凍サンマ

昨年(2019年)の秋になっても中々サンマの水揚げがなかったときに、手ごろな価格で店に並んだのが「冷凍サンマ」を利用した「解凍サンマ」でした。

しかも、脂も前年のものなので、まあまあでした。解凍サンマは、前年の秋に冷凍されたものです。まだ先ですが、次の秋になれば、鮮魚が少なくても、再び脂がのった冷凍サンマが手ごろな価格で提供されるのでしょうか?

残念ながら、冷凍サンマの供給は厳しくなります。サバでも同じなのですが、水揚げされたサンマは、価格が高い用途向けから市場で引き取られて行きます。

価格が最も高いのは鮮魚向けです。昨年のように一回の水揚量が少ないと、ほとんどが鮮魚向けに回ってしまいます。このため冷凍向けにされる分は減少し、かつ魚価高によりコストは高くなってしまいます。

細くて脂のりが薄く、鮮魚向けに向かないサンマは冷凍に回り易いのですが、それは脂がのったおいしいサンマではありません。

海水温の上昇を理由にすると起きる矛盾

水温の影響は、サンマの資源量の増減に影響します。これは、農作物の収穫量が、その年の気温や雨量などに影響を受けるのと同じです。

ところで、昨秋のサンマの凶漁に対する不漁は、海水温の上昇によりサンマが日本の近海に回遊してこないので獲れないとか、日本に回遊する前に、公海で台湾や中国などの大型漁船が獲ってしまうことが不漁の原因だという報道がほとんどでした。

それでは、その日本から遠い公海に行けばサンマが例年通り獲れたのでしょうか?その答えは「No!」です。まだ数字は出て来ていませんが、公海での他国のサンマ漁も日本と同様に不漁もしくは大不漁だったのです。つまり、サンマの回遊量そのものが非常に少なかったのです。

赤がサンマ 東から西へ移動して行く 青がサバ類で黄色がマイワシ 水産研究教育機構

サンマ(赤色)は上の図で言うと、東から西へと回遊してきます。マサバとマイワシは、サンマほど大回遊しませんが、漁場は同じように北海道から三陸の沖合にかけてが、秋~冬に主漁場になります。

ところで上の図に出ているマイワシは、 資源量が増えて来ています。その理由として、寒冷レジームが挙げられています。海水温が低くなってきている??? 一方で同じような漁場なのに、サンマは海水温の上昇で漁獲量が少ない?と言われています。

また同じく凶漁が続くスルメイカ漁では、 海水温が低かったので減っているとも言われています。実際には海水温上昇で資源量が増え易いはずが、逆に減少しているなど、海水温をもとに資源の増減の話をすると辻褄が合わなくなります。

海水温上昇が問題になっているのは、日本の近海だけではありません。世界中の話です。最も温暖化の影響を受けているといわれている北極では、氷が減りシロクマが氷の上からアザラシの猟ができない報道も見かけます。

しかしながら、水産資源管理ができている海域では、魚種により資源量は凸凹がありますが、概して青物類(サバ・ニシンなど)、底魚類(マダラなど)ともにサステナブル(持続的)な状態です。海水温の上昇で同じく影響受けているのに、日本の海のように様々な魚種で水揚量減少が記録的になっているようなことはないのです。

水揚量の推移を見てみよう

サンマの漁獲量推移 赤が日本の漁獲量 水産研究教育機構

サンマの水揚げ推移を見てみましょう。赤色の日本の漁獲量の推移を見ると、明らかに減少傾向です。今のままでは、サンマ漁が日本の漁獲量で年間20万トン前後に戻る状況とはほど遠くなってしまっています。

赤色以外の他国の漁獲量は、同じ資源を獲り合っているので、日本の一方的な立場からすれば脅威です。しかしながら、すでに多数の漁船を投資している国々は、漁業者が早く投資分を回収したいなど、別の事情と考えができてしまっています。

日本の漁船が漁獲している比率は、2018年漁期で約3割と、2000年以前に8割前後だった比率に比べて大幅に減少しています。公海での国別漁獲割り当てを決めてこなかったために、台湾・中国といった国々の進出を許してしまいました。

すでにたくさんのサンマ漁船を建造されてしまったので、後には引かない状態です。これらの国々は、自国の漁獲実績を主張して漁を止めることはありません。

このため全体の資源量が大幅に回復しない限り、2014年以前のように日本が20万トン以上漁獲できるようにはならないのです。

2018年の実績である3割のシェアで計算すると、20万トン獲るためには、全体での漁獲量が60万トン必要になります。ところが、1995年~2018年までの平均漁獲量は全体で39万トンでかつ減少傾向です(NPFCデータ)

米国でのケースでは、1977年の200海里漁業専管海域設定後の数年間で、同国沖の公海でスケトウダラを操業する日本漁船を排斥してゼロとしています。そして自国の水産資源管理を科学的根拠に基づきサステナブルにして現在に至って漁業を成功させています。

これまでの調査で十分だろうか?

日本では、魚がいなくなると安易に環境や他国に責任転嫁する傾向にあります。マスコミもそのように報道してしまうことで、多くの誤解と、実際に魚が激減するケースが後を絶ちません。昨年だけでも、イカナゴ、サクラエビを始め、減少傾向が続く水産物が話題になり、このままではさらに増えることになるでしょう。

北欧の資源量調査を見てみよう

サバとニシンの資源調査 ノルウェー、アイスランド、EU漁船が協力 調査は広範囲にわたる

サンマに話を戻しましょう。北欧の資源量調査の例を見てみましょう。上記の図は、ノルウェー、EU、アイスランドなどの漁業をしている国々が、手分けをして広範囲にわたって資源調査状況を示しています。そしてそのデータを共有して、科学的根拠に基づき漁獲枠を決めて行きます。

サンマの資源調査については、範囲が広いので日本の調査だけでは範囲が不十分です。日本の調査範囲は、主に水平展開しての調査になっています。これを中国や台湾、ロシアなどと連携して広範囲を調査して、北欧同様にデータを共有して、その数字に基づいて漁獲枠の話し合いをするべきです。

北欧の場合でも、各国の主張が食い違う場合があります。このため、必ずしもすべての魚種で、国別に漁獲してよい量(国別TAC)が科学的根拠に基づいて決まっているわけではありません。

しかしながら、乱獲に陥ると自分で自分の首を絞めてしまうことは良く理解しているので、獲れるだけ獲るようなことはしません。ここで日本も含む各国の水産資源管理と大きな違いがあります。

一方で、サンマの場合は、2019年に55万トンという獲り切れない漁獲枠を決めたものの、何の資源管理効果もありません。これを一刻も早く北欧並みの管理にしないと大変なことになる一歩手前の状態まで来ているのです。

現時点では、2020年の漁期もサンマ資源が激減しているのに、各国は獲り放題です。漁獲量制限どころか、配分交渉に備えて実績を増やそうという力が働いてしまいます。

日本も例年12月は小型が多くなるので漁を控えているのですが、そういう配慮はしませんでした。厳格な国別漁獲枠(国別TAC)が決まっていないので、できるだけたくさん獲るという点でどこも同じです。

サンマがいなくなってしまう前の対策のためには、批判だけでなく、事実の理解と現実の対処法を国民が理解していく必要があります。

なぜ軒並み「記録的不漁」?スルメイカ漁も!

水揚量が激減しているスルメイカ

サンマ秋サケ(シロサケ)が過去最低の漁獲量を記録してしまいました。そしてスルメイカも遂に記録的不漁が4年目に突入です。皮肉にも世界銀行やFAO(国連食糧農業機関)が公表している悲観的な見通しのままです。漁獲量の減少が様々な魚種で起きていて止まりません。「イカの活き造り」で知られるケンサキイカも記録的な不漁に見舞われています。

スルメイカは、鮮魚出荷だけでなく、塩辛などの珍味、フライ、刺身、スルメを始め、様々な加工がされて行く基幹的な水産原料です。 函館や八戸を始め、スルメイカに依存している地域にとって大きな痛手です。まずは、漁獲量推移の現状をグラフで見てみましょう。

青の折れ線グラフがスルメイカ、赤がアカイカ(1983年から分類)、緑がその他イカ類となっています。2000年以前には40~60万㌧もあった漁獲量は、2018年には10万㌧を割り込んでしまっています。昨年(2019年)はさらに落ち込んでいる見通しです。

グラフをよく見てみると、スルメイカの漁獲量だけが激減しているだけでなく、アカイカ・その他イカ類と、イカ類がまとめて激減していることが分かります。

スルメイカ激減要因は何か?

スルメイカの分布と産卵場 水産研究教育機構

魚が減る原因としてしばしば環境要因、特に海水温の上昇が挙げられます。 たしかに環境要因は水産資源の増減に影響します。しかし日本では獲り過ぎが、環境要因に置き換えられてしまうことがよくあります。

資源管理の遅れが海水温や外国に責任転嫁されてしまう報道が後を絶たないため、日本人の多くは「獲り過ぎ」という魚が減って行く本当の理由を知りません。

スルメイカでは、資源量と環境の関係で矛盾点が露出します。

まず海水温が高くなっているのは、否定しえない事実です。ところでスルメイカの場合、資源が減少している原因として考えられるのが寒冷レジーム、つまり水温の低下となっています。

さらに産卵期に海水温が低下したことが原因?ともいわれています?ところで、水温が高いのではなく低い?というのがそもそも??です。しかも、一方でこれだけ温暖化が問題になっているのに、それが生態に影響するほど低かったとは考えにくいです。

ちなみにこんな報告もあります。『2019年9月24日、盛岡で、水産庁と「するめいか資源に係る意見交換会」が行われた。研究者の話もまじえ、昨年暮れから今年初めにかけて、東シナ海の水温分布は、するめいかの産卵に良い環境であった、と報告されている。」』

また、もしもそれだけ水温が低かったのであれば、スルメイカは産卵のための適水温を求めて移動するはずですね。スルメイカの産卵海域は図の通り広範囲にわたっています。高温ならともかく、海水温の低下が資源減少の主因になるとは、にわかには信じがたいです。

仮説になりますが、こういう矛盾が起こってしまう理由は、魚が減った結果を、無理やり環境要因に転嫁してしまうためと考えます。例えていうなら、周りの企業はみな業績が良いのに(世界全体では水揚量は増加中)、悪かった(日本だけが減少傾向)ことを、景気悪化(海水温の上昇など)に転嫁してしまいマネジメントを反省しないのに似ています。

そこで日本と世界の漁獲量の推移を見れば、明確にそれがおかしなことが分かります。世界中で日本の海水温だけが上がるはずはありませんのでww。

水産庁資料では「 我が国周辺水域では、水温が温かい時代である温暖レジームにはカタクチイワシやスルメイカ等の漁獲量が増え、逆に冷たい時代である寒冷レジームにはマイワシやスケトウダラ等の漁獲量が増える傾向にあります。 」とあります。

寒冷レジーム(??)でマイワシが増えるという一方で、海水温が高いためにサンマが日本近海に近寄らずに獲れない??秋から冬にかけて同じような北部海域で漁獲されるのに??一方で海水温が低いといってみたり、他方で高いといってみたりでは理解は困難です。

岩手の漁業者の方が、スルメイカ資源の環境要因に関する矛盾を新聞社に指摘しているブログがこちらです。良く調べないで、責任転嫁された内容がそのまま報道されていることがわかります。これでは誤解が誤解を生んでいくだけです。

機能していない漁獲枠(TAC)

漁業法改定に伴い、漁獲枠(TAC)が機能することを期待しますが、現時点(2020年1月)でのスルメイカのTACは資源管理に機能していません

(水産庁資料より編集)

2018年から過去10年でのTACに対する漁獲率はわずか46%。これでは漁獲枠が実際の漁獲量より大幅に大きく、水産資源管理が機能しません。

TACは、目標値ではありません。 ノルウェーのサバ 、アラスカのスケトウダラを始め、漁業で成長を続けている北欧や北米での漁獲量は、TACに対してほぼ100%です。実際に漁獲できる量より大幅に少ない数量が、漁業者や漁船ごとに割り振られています。このため例外を除き、毎年漁獲枠通りの漁獲実績になっています。

小さなイカを獲っても大丈夫か?

小さな小さなスルメイカも逃がさず漁獲されてしまう 

漁獲枠(TAC)が機能していないと写真のような生まれたばかりのスルメイカまで根こそぎ獲ってしまいます。悲しいことに、これが日本の漁業の現実です。

スルメイカ秋季発生系群の成長 水産研究教育機構

スルメイカの寿命はわずか1年です。写真のスルメイカは1パイわずか10g程度。8ヶ月も経てば200g以上になるのに、実にもったいなく、資源に悪い漁業が我が国で行われているのです。

科学的根拠に基づく漁獲枠が、漁業者や漁船ごとに厳格に決まっていれば、スルメイカに限らず漁業者は、資源に悪くて、価値が低い小さな魚は獲らなくなります。

さらにたくさん獲るのではなく、単価が高い魚を獲って水揚げ金額を上げようとします。すると、幼魚は成長して産卵する機会を得て、資源が持続的になって行きます。そして漁業者だけでなく、消費者にも大きな魚の供給が増えてそのメリットが及んで行くのです。

他国の漁獲のせいではないのか?

スルメイカについては、環境要因が主因ではないことは恐らく理解されたと思います。そして、最後に残るのが、近隣諸国のこと。つまり、韓国、中国、北朝鮮の漁獲への疑問でしょう。日本近海のスルメイカの漁獲量は、2017年で約14万㌧。日本:韓国=比率で約45:55でした。これに数量が分からない北朝鮮や中国の数字が加わります。

特に日本海側の漁場では、各国が入り乱れて漁をしているのは報道の通りです。また、2019年は北朝鮮がロシア海域で違法操業が行い3,000人以上が捕まったと言われています。

日本、韓国がそれぞれ実際の漁獲量より大きな漁獲枠を設定し、それとは別に中国、北朝鮮も漁を行っているので、環境要因が改善されれば(そもそもこれも?)漁獲が回復するなどという生易しい状態ではありません。

しかしながら、このまま漁を続ければ、さらに獲れなくなって窮地に陥ることになるでしょう。

合意は容易ではありませんが、スルメイカに加えて、サンマ、サバ、マイワシなども含めて、手遅れになる前に科学的根拠に基づく総合的な国別漁獲枠の設定が不可欠なのです。

漁獲量という人間の力を軽視して、環境要因を主体に資源の問題を語ってしまうと大きな誤解と矛盾が生じます。そして誤った前提に対する正しい答えを政治が主導してしまった結果が、直面している魚が消えて行くという現実です。世界と日本を比較して、国際的な視点を持って行動することが待ったなしになっています。

2019年1月18日 加筆。

なぜ日本のサケだけが歴史的不漁なのか?

大不漁が続く日本のシロザケ

人気があって、日本人がもっともよく食べる魚の一つであるサケ。ところがそのサケの漁獲量に異変が起きています。2019年の秋から年末にかけての報道では、「北海道・三陸とも記録的不漁」「近年最悪漁5万㌧割れ」「秋サケは幻の魚」などといわれ、漁獲量の激減が大きな社会問題になっているのです。

ところで、天然のサケが10万㌧以上漁獲される国は、米国(アラスカ)、ロシア、日本だけなのです。正確にいえば日本が脱落しましたが、、、。天然のサケがまとまって獲れるのは、ともに北半球の太平洋側です。天然のサケは、世界のあちらこちらでたくさん獲れている魚でないことをご存知でしたでしょうか?

他の国々のサケの水揚げ状況は?

日本では、10~20年前(2000年~2009年)の平均漁獲量は23万㌧もありました。それが、2016年から10万㌧を割り込み始め、2019年は5万㌧と激減しています。ちなみにノルウェーやチリなどから輸入されているサケ(ギンザケ・アトランテックサーモン・サーモントラウト)は全て養殖物です。

ところで日本のサケの話だけしていると大不漁の話ばかりなので、さぞや他の国も大不漁だろうと想像されるかも知れません。しかしそれは全然違うのです。ちなみに昨年(2019年)アラスカは40万㌧で近年8位、ロシアは50万㌧で史上4位と共に「豊漁」で、まるで別世界です。こういう事実が一般には知られる機会がほとんど無く、異変に気付くきっかけがつかめないのも問題ですね。

アラスカのベニザケ アラスカのサケ類は日本と対照的に豊漁

サケの市場価格はどうなっているのか?

サケが大不漁であれば値段が上昇するはずです。しかしながら、焼き物として定番のギンザケなどのサケの価格は、短期的には下がっています。その理由は、日本での水揚げが減っていても、ロシア、米国(天然物)、チリ(養殖物)など、それを上回る供給体制が出来上がっているからなのです。

この状態は、もともと上昇が続いていた相場が少し行き過ぎて、需給のバランスが短期的に崩れているととらえるのが妥当です。しかし5年~10年単位でみれば、魚の需要の増加に対して供給が追い付かない構造になっているので、再び価格は上昇して行くことでしょう。

塩ザケの定番となっているチリのギンザケ(養殖) 2019年は相場下落

例えば、10年前にキロ400円だったあるサケの相場が800円まで高騰。それが前年比で600円に一時的に下がった場合、相場的には大幅な値下がりです。しかし、10年前に比べれば大幅高であり、価格帯を前年比、もしくは5~10年前後のスパンでとらえるかで、高いか安いかの価格のとらえ方は変わってくるのです。

さて本題に戻りましょう。なぜ日本のサケだけが激減しているのか?よく温暖化の問題が上がります。温暖化により魚が減る懸念は、サケが漁獲されているアラスカなどでも問題になっています。またFAOは気候変動・温暖化により2050年までに漁獲量が2.8%~12.1%減少する可能性があると予測しています。そうであれば、なおさら予防的アプローチを行い、水産資源管理を科学的根拠に基づき厳格に行っていかなければなりません。決して日本だけが温暖化の影響を受けているわけではないのですから。

自然に産卵するサケが少ない問題が指摘されていたが、、、

温暖化の影響は米国でもロシアでも同様に懸念されています。しかしこれらのサケが豊漁になっている国々と日本では決定的に違うことがあります。

その一つが、川で産卵するサケの比率が日本では非常に低くなってしまっていると考えられることです。出来るだけ採卵して放流する考え方です。このため恐らく放流で回帰してくる比率が、アラスカでは3割程度(34% : 2018年 ADF&G)であるのと、ほぼ逆になってしまっているようです。

サケの来遊数は激減している。グラフは2017年まで。2019年はさらに減少している。水産研究教育機構

また、サケは産まれた川に戻ってくる母川回帰の性質が有名です。しかし、サケの回帰不足で孵化させるために採卵するサケの数が減っています。一方で放流数はほとんど減少していない(グラフ参考)ので、川で自然に産卵するサケの数が少ない計算になります。採取状況などの違いにより、河川によって異なりますが、約7割のサケが放流された魚であったというデータもあります。

また、孵化させる卵の量を確保するために、足りない分を他の川に回帰予定だったサケの卵が使われているケースがあるようです。

サケの回帰率が大幅に減少中。放流数が横ばいであることから、回帰数は激減し、水揚げ量も同様になってしまう。水産研究教育機構

サケの回帰数が少ない表れとして、回帰率が3〜4%から2%弱までに大幅に減少していることが挙げられます。放流数がほぼ同じで回帰率が減れば必然的に、回帰数は減少してしまいますね。

断言まではできないのですが、自然産卵のサケの稚魚より、採卵された稚魚の方が生命力が弱いと仮定します。そこで自然産卵するサケの量が減ってしまった。つまり採卵用も含めて、サケの獲り過ぎで、自然産卵のサケの回帰数が減り、全体でサケの水揚げ量が激減していることが、減った主因ではないかと推測できないでしょうか?

日本のサケはMSC認証を断念。そしてその結果は?

北海道のサケ定置網漁業は、2014年にMSC認証取得を断念 そして5年後の水揚げ量は激減した。孵化放流の依存を減らせなかったのが原因ではなかろうか?

実は、北海道のサケ定置網漁業は、水産エコラベルとして国際的に認識されているMSC認証を2011年~2014年にかけて取得しようとしていました。しかし残念ながら「孵化放流に依存しすぎで持続的でない」と評価されて断念しています。

そこでは、自然産卵を増やすことが指摘されていたのです。一方で、サケ類の豊漁が続く米国(アラスカ)やロシアでは、対照的にMSC認証の取得が進んでおり、サケ類の資源量は持続的(サステナブル)です。

日本のサケが減っている理由については、その他に護岸工事や、温暖化によるエサ不足なども考えられるそうです。そうであればなおさら、自然に産卵させて川に戻らせる数を増やして行かねばならないのではないでしょうか?

サケ資源が回復して持続的(サステナブル)にできることが望まれます。そのためには、できるだけ河川で自然に産卵させる数を増やしたい状況ではないでしょうか?

本来、国の許可を採卵目的で獲っているはずのサケの卵がイクラになって流通されるようなことがないことも切に願いたいところです。


シラスは獲っても良いのでしょうか?

カタクチイワシの稚魚 シラス

シラスとは?

小魚の問題を投稿したところ、それではシラスの漁獲はどうなのか?と、とらえられる方が多かったようです。みなさんが食べられているシラスの大半はカタクチイワシの子供です。今回はそのシラスについての投稿です。

養殖に使うシラスウナギ 

普段食べられているシラスにはいくつか種類があります。カタクチイワシのシラスほどメジャーではありませんが、マイワシやウルメイワシの稚魚もシラスです。また、シラスとは呼びませんが、後述するイカナゴ(コウナゴ)の稚魚も、ちょっと細長いシラスのように見えます。

ところで、養殖に使うウナギの稚魚もシラス(ウナギ)と呼びます。その昔、スペインなどでシラスウナギを食べる習慣がありました。今では資源が激減し日本同様に絶滅危惧種となり、代わりにスリミを使ったイミテーションのシラス(ウナギ)の製品が売られているのです。

日本人は小魚が大好き

釜揚げシラス カタクチイワシの幼魚

スーパーの魚売り場に行けば、必ずと言ってよいほど目にすることができるシラス。その主な親であるカタクチイワシは、春から秋までの長い期間に渡って産卵します。冷凍して解凍したシラスも広く出回っていますので、周年供給されているのです。シラス丼、パスタ、おにぎリと様々な料理に相性抜群ですね。

そんなシラスは沿岸で、細かい網目の網で漁獲されています。幼魚を獲っても資源は大丈夫なのでしょうか?現状では、禁漁期間を設けていることがあるそうですが、カタクチイワシには肝心の数量を管理する漁獲枠さえありません。

漁獲量の推移を見てみる

全体で見ると、青の折れ線グラフが親のカタクチイワシの漁獲推移で、赤がシラスです。カタクチイワシの漁獲量は、 1956年~2018年の平均で297,495㌧、2018年の漁獲量は109,800㌧と大きく減少しています。一方で、シラス(注)の同平均で54,868㌧、2018年は50,000㌧と親のカタクチイワシの漁獲量の推移と違いほとんど変化がありません。

これは、シラスの漁獲は小規模な沿岸漁業による漁獲主体であるため、仮にシラスの資源量が多かった時期でも、増えていても物理的に獲れなかったものと推定されます。

ただしこれも、イカナゴですでにそうなってしまっているように、資源量が大きく減ってしまい禁漁を強いられたり、ほとんど獲れなくなってしまう事態になる懸念もあります。

(注:シラス=カタクチイワシの稚魚という前提)

こうすれば問題はない

シラスを獲ってもよいのか?に対しては、まず産卵できる親の資源量が持続可能(サステナブル)なレベルであれば、問題ないと言えます。つまり、シラスのような幼魚を獲ってしまうこと自体が本質的な問題ではないのです。魚を減らすことなく獲り続けられる最大の親の資源量を維持しながらの漁獲となっているかどうかが問題なのです。

魚を減らすことなく獲り続けられる最大量をMSY(最大持続生産量)と呼びます。漁業先進国より数十年遅れて、漁業法改正で、その考え方がようやく取られることになりました。

困ったことに日本はMSYをほとんど無視してきましたが、この考え方は、1996年に日本が批准した国連海洋法や2015年に国連で採択されたSDGs14(海の豊かさを守ろう)の中でも明記されています。

SDGs 持続可能な開発目標 14 「海に豊かさを守ろう」

シラスのような幼魚であっても、卵を持っている魚であってもMSY(最大持続生産量)を維持できる漁獲量であることが不可欠です。そしてそれが漁獲枠(TAC)と個別割当制度(IQ、ITQ、IVQなど)でセットになれば、あとは漁業者が経済的なことを考えて、どの時期の魚を獲れば単価(水揚げ金額)が上がるか考えて漁をするだけになります。

単価が高い魚は、それだけ食用として消費者にとって価値がある魚ということです。消費者にも、漁業者に取っても価値がある魚を獲るべきであって、現在のように多くの親の魚が減ってしまい、価値がない小型の魚まで獲ってしまう構図は、言うまでもなく、最悪のケースなのです。

海外のケース

カタクチイワシやイカナゴは海外でも多く漁獲されています。カタクチイワシ(アンチョビー)の漁獲で有名なのがペルーです。ペルーでは資源量の増減により大きく変化しますが、年間100万㌧以上も漁獲されています。ただし、彼らはシラスのような幼魚は漁獲しません。幼魚の比率が増えてくると、その漁場での漁獲を禁止して資源を維持します。

ノルウェーのイカナゴ 幼魚は漁獲せず フィッシュミール向け

またイカナゴはノルウェーやデンマークなどの北欧諸国でも獲られています(写真)。ノルウェーでの年間漁獲量は、2019年の漁獲枠125,000㌧に対して124,786㌧でした。消化率は99.8%。ちなみに日本のイカナゴ漁獲量は、漁獲量の減少が止まらず14,600㌧(2018年)でした。そしてこれらの国々でも、ペルー同様に幼魚は漁獲しません。なぜなら食べる習慣がなく、幼魚に価値がないからです。

細長いのが特徴のイカナゴの幼魚

カタクチイワシや、イカナゴの水産資源管理には、ペルーやノルウェー・デンマークと日本には決定的な違いがあります。それは、科学的根拠に基づいた漁獲枠(TAC)の有無です。さらにこれらの国々は漁獲枠が漁船や漁業者に配分される個別割当制度(ITQ/IVQ)が設定されて、資源管理が行われています。

これらの国々でも、もし幼魚に価値を見出せば獲りに行くことでしょう。しかしながら、幼魚を獲れば親の資源量に悪影響を与える「成長乱獲」が起きる懸念があります。そこで間違いなく将来の資源を持続的にするための「親の資源量」を残すことを考えた上で、実施することでしょう。

つまり、シラスを獲ってよいかについては、科学的根拠に基づき、カタクチイワシのMSY(最大持続生産量)を維持できる量であるかどうかなのです。それができる範囲の漁獲であれば問題ありません。

逆にいうと、現在のように漁獲枠を設けず、カタクチイワシの資源をどれだけ残すかも決まっていない状態で、シラスを獲り続けることは、将来に禍根を残すリスクが高いということです。

シラスの資源量は、もちろん環境要因によっても影響を受けます。しかしながら、魚が減っているのを、自国の水産資源管理制度の不備にあることを棚に上げて、環境や外国のせいにばかりに責任転嫁をしてしまうのはよくありません。

結局は、すでに様々な魚種で起こっているように、魚が減って、漁業者のみならず、魚で生計を立てていた皆さんや、我々消費者含めて、多くの人を巻き込んでしまいます。

イカナゴの漁獲推移 温暖化の問題が起こる以前から減少が続く

イカナゴを例に取ると、4年連続の禁漁になった伊勢湾・三河湾や、不漁が全国で続くなか、せめて宮城だけでもと言われた宮城も、昨年のわずか3%、24㌧の水揚げとなり、壊滅的になってしまいました。

一方で、資源管理を科学的根拠に基づいて、漁獲枠を設定し、それを漁船ごとに個別割当制度で運営しているノルウェーでは上記のように、資源が豊富で豊漁でした。

グラフを見ると、全体では日本のイカナゴの漁獲量が減り始めたのは、1980年代以降で、それが現在に至っていることが分かります。

激減した理由として近年の温暖化が挙げられています。短期的には、それも影響していることでしょう。しかしながら、イカナゴが減っていると言われる現在より、30年ほど前から明らかに減少が始まっていたことが分かります。

イカナゴが激減した理由は、日本の水産資源管理制度に根本的な原因があり、それに近年の温暖化が追い討ちをかけているのではないでしょうか?

また、ノルウェーの方が、必ずしもイカナゴがたくさんいるから漁獲量が多いというわけではありません。日本では1970年台に20〜30万㌧も年間で漁獲されており、この数量はノルウェー昨年の漁獲量よりも多かったのです。

海域により多少の凸凹はあっても日本全体での上記の結果は、決して偶然ではなく、水産資源管制度による違いに起因する必然です。シラスは、親のカタクチイワシを含めて、ノルウェー同様に科学的根拠に基づき、早急に枠を決めて管理すべきなのです。

こんなに小さな魚を獲っても大丈夫でしょうか?

鉛筆と同じような長さの小さな小さなマダラ

小さいうちに獲ると魚は大きくなれない

魚によって寿命は違うのですが、小さいうちに漁獲してしまうと、成魚になって卵を産んで子孫を残す機会を奪ってしまいます。これを「成長乱獲」と言います。

また魚を減らすことなく獲り続けられる数量をMSY(最大持続生産量)と言います 。産卵する親をサステナブル(持続可能)な量に維持して魚を獲り続けることが世界の漁業の常識であり課題です。

海の憲法と呼ばれる国連海洋法や2015年に採択されたSDGsの14(海の豊かさを守ろう)にも、MSYによる管理が明記されています。

小さな魚まで獲られてしまう国は?

可食部がほぼない、小さな小さなノドクロ(アカムツ)

小さな魚を獲ってはいけないことは誰にでもわかるはずです。しかし、それは大概の場合、どこか他の国のことで、自分たちには関係がないことと思われることでしょう。しかしながら、水揚げの現場や売場の魚に解説を加えると、問題が身近にあることがはっきりわかります。

食用にできずエサにしてしまうケースは別にして、日本人は、ほぼ魚を捨てることなく、とても器用に使います。このため、とても小さな魚でも、「ひらき」にしたり、ほとんど食べるところがなくても、魚肉の部分をとって、練り製品やカマボコなどに混ぜたりします。

もっとも、小さな魚でも、資源が潤沢にあり、獲っても持続性に影響がなければ問題はありません。しかしながら、資源が少ないのに、小さな魚を獲ってしまうとなると話は別です。

日本の場合は漁獲枠がなかったり、あっても漁獲量より漁獲枠が大きすぎて機能してないケースがほとんどです。このため、漁獲圧力が高くなって、水産資源に非常に悪い影響を与えているケースが随所に見られます。その結果、日本の漁獲量に対しては、世界銀行やFAOが非常に悲観的な見通しを出しています。

皮肉なことに、売り場などで見る幼魚、小さな甲殻類などは国産ばかりです。科学的根拠にもとづく水産資源管理が機能している漁業先進国である北米、北欧、オセアニアなどでは、日本と違い、まだ価値が低い小さな魚はもったいないので漁獲しません。日本が輸入しているのは、価値も価格も高い輸入水産物です。このためあれっ「⁉️」と思う小さいのは国産の魚介類ばかりなのです。

可食部は?小さな毛ガニ

小さな毛ガニやズワイガニも見かけます。カニはエビのように丸ごと唐揚げにできません。小さなカニはそもそも可食部がほとんどないのです。もっと大きくなってから獲れば良いのにと思います。

しかし、そもそも漁獲枠がなかったり、漁獲枠があっても大き過ぎたり、または個別割当方式になって配分されていなかったりでは、自分が獲らなければ他の人に獲られてしまうという発想になってしまいます。これを「共有地の悲劇」と言います。

その結果、将来にとって悪いと分かっていても、小さな魚を獲ってしまいます。そして獲れなくなるとさらに頑張って小さな魚でも獲り、さらに減って行きます。これが多くの魚種や地域で起こっているのです。これがまさに悪循環が全国各地で起こっていることです。

小さな小さなスルメイカ

4年連続で水揚げ量がダウンし、過去最低の水揚げ量になろうとしているスルメイカ。他国のせいや、水温が低くて???など、減った理由の責任転嫁が多い反面、写真のように、自国で生まれたばかりの小さなスルメイカまで、容赦なく獲っている現実を知る必要があるのではないでしょうか?

何尾いるのか?シシャモの幼魚 

写真のシシャモは幼魚。1パックの中に一体何尾いるのか分かりません。どれだけ小さな網目ならこんなに小さな魚を獲ることができるのでしょうか?資源保護のために、今年シシャモ(カラフトシシャモ)を禁漁したノルウェーやアイスランドでは、幼魚がたくさんいる居場所を知っています。しかし資源の持続性を考えて、幼魚は決して獲らずに成熟して大きくなるまで待って獲ります。

これだけ小さいと、もちろん卵はありませんし、とても干しシシャモにできる大きさではありません。

漁業法改正により、これから国際的にみて遜色がない資源管理を行うことになりました。逆にいえば、これまではそうではなかったので、水産資源が減り、魚で生計を立てていたコミュニティの衰退が止まらないのです。これまで国内外の数多くの現場を見てきたので実感します。

魚の資源が潤沢であり続ければ、小さな魚を獲りたければ獲って構いません。ただ、漁業先進国のように漁船や漁業者ごとに漁獲枠が厳格に配分されていれば、経済性を考え、漁業者自ら価値が低い小さな魚を獲るのを避けるようになります。

小さな魚まで獲ってしまう日本の問題。その問題の根源は、漁業者にではなく、水産資源管理制度の違いにあるのです。

魚を獲り尽くしてしまう前にやるべきこと!漁獲枠(TAC) 国内編

スモークされた大西洋マダラとニシンの製品 漁獲枠が設定されている

魚が獲れないニュースに慣れてきていませんか?

「記録を取りだしてから最低」「半世紀ぶりの凶漁」「かつて経験したことがない不漁」など、サンマ、サケ、スルメイカ、イカナゴ、サクラエビなど、漁獲量の減少が年々深刻なケースが後を絶ちません。そしてその原因については、海水温の上昇や外国のせいにした後に「原因はよくわかっていない」で終わっていることがよくあります。

ところで、魚が獲れなくなって困るのは漁業者だけではないのです。その魚を加工していた加工業者、資材を納めていた業者、販売していた関係者を含めて、地域社会にも深刻な影響を与えてしまいます。

これを世界に視野を広げて漁業に成功している国々と比較すると、その減った原因がはっきりわかってきます。その一つが「漁獲枠(TAC:注)」の設定の有無と運用の違いなのです。

今年のサンマ漁は4万トン前後の過去にない大不漁で終わる見通しです。しかしその漁獲枠は、漁獲前から、前年(13万トン)より獲れない調査結果が出ていたのに26万トンもありました?そして来年も厳しい漁が予想されているのに、また26万トンで決まってしまいました。獲り切れない漁獲枠?

同じく不漁で困っているスルメイカなども同じですが、日本の漁獲枠設定は、漁業先進国と、その運用が大きく異なり、形骸化して機能していないものがほとんどなのです。

漁業に従事する人が、水産資源が減っていても、生活のために出来るだけ獲ろうとするのは、ある意味当たり前です。そのため、漁獲枠の設定が獲り切れないほど大きかったり、漁獲枠自体がなかったりすれば、さらに将来悪くなるのが分かっていても、幼魚でも、卵を持った魚にでも手を出してしまうのも自然の成り行きかも知れません。

この結果、漁業先進国に比べ、様々な魚種で水産資源が危機的な状況になっているのが、日本の海の中の状態なのです。

70年ぶりの漁業法改正により、TACの設定魚種が増え、漁獲量ベースで早急に8割を対象にすることになりました。これは、漁業先進国に追いつくためには必要不可欠なのですが、問題はその中身です。輸入しているサバ、スケトウダラ、ズワイガニなどの天然魚種のほとんどは、TACが科学的根拠に基づいて設定され、漁獲量はTACとほぼイコールです。

水産資源をサステナブルにしていくためには、科学的根拠に基づくTACは決定的に重要です。日本は2019年時点でTAC魚種は8種(サンマ、スケトウダラ 、マアジ、マイワシ、マサバ及びゴマサバ、スルメイカ、ズワイガニ、クロマグロ)です。

しかし、この国内枠とは別にWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)で国際合意があるため変更できないクロマグロを除いて、漁獲枠が実際の漁獲量より大きすぎたり、漁獲が増えてきたら枠を増やしたりで、水産資源管理に役立ってきていません。

日本の漁獲枠の問題

漁獲枠の運用が効果を発し、水産資源管理に成功している国々では、実質的に漁獲枠=漁獲量となっています。これは、実際に獲れる数量より大幅に枠が少なく、簡単に枠をクリアできる漁獲量だからです。このため、獲り残された魚は成魚となり卵を産み続けます。漁業者は価値が低く、サステナブルではない幼魚は避けて漁をしているのです。

魚を減らすことなく獲り続けられる最大値をMSY(最大持続生産量)と言います。MSYでの水産資源管理は、1996年に批准した国連海洋法でも明記されています。しかしながら「沿岸漁業社会の経済上にニーズを勘案」という一文がその言い訳になってしまったのか、無視に近いことをしてしまいました。

このため、水産資源管理に関する方向付けが、北欧、北米、オセアニアなどの漁業先進国に比べて、決定的に遅れてしまいました。

特に日本はしっかりせねばなりませんね。

しかしながら、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の「14 海の豊かさを守ろう」にはMSYでの資源管理が明記され言い訳の文言はすでになく、かつその 期限は2020年となっています。遅れに遅れてしまった「国際的にみて遜色のない資源管理」が、漁業法改正によって漁業先進国に比べ数十年遅れでようやく始まろうとしています。

TAC は目標ではない

運用方法が間違っているため、日本の漁獲枠は目標のような数字になってしまっています。このため、漁業者からは制限が事実上ないようなものです。これでは制限に対する不満が出にくいものの、肝心の魚が減少して大きな損失を被っています。そしてその影響は、魚が高くなるという形で消費者にも跳ね返っているのです。

ノルウェーサバの漁獲枠と漁獲量は、ほぼイコール

それでは、具体的な数字をもとに、日本と海外を比べてみましょう。まずは、サバです。日本のTACと実際の漁獲量を比較すると、過去10年(2007〜2016年)で平均62%の消化率です。一方で、ノルウェーサバの場合(2008〜2017年)は、グラフの通り、97%とほぼ100%に近い数字です。

さらにいうと、日本のサバのTACはサバ類として1本で管理されています。詳しくは、マサバとゴマサバ、そしてそれぞれ太平洋系群(マサバとゴマサバ)と対馬暖流系群(マサバ)・東シナ海系群(ゴマサバ)と学名も系統も異なり、資源管理上4つに分けるべきサバの分類を、サバ類としてまとめてしまっており、これでは管理になりません。

漁獲枠が大きすぎるため、漁業者は見つけたら、大きさなどにかかわらずたくさん獲ろうとします。このため、ローソク、ジャミと呼ばれる値段が安く、食用に向かないサバの幼魚も、我慢できずに獲ってしまうのです。

一方ノルウェーでは、漁獲枠が、実際に漁獲できる量よりも大幅に少なく、かつ漁船ごとに枠が配分されています(IVQ 漁船別・個別割当制度)。このため各漁船は小さなサバを避けて大きなサバだけを獲るようにしています。その結果サバ以外も含め、海には成魚(産卵親魚)の数が多くなっているのです。

日本とノルウェーのTACの違いは、食用比率にも表れます。食用にならない幼魚まで獲ってしまう日本のサバの食用比率は、約7割(2017年)で、後者は、ほぼ99%(毎年)です。また日本の場合は、国内で食用に向かないサバが大量に(2018年 約25万㌧・水揚げの5割弱)輸出されています。それらを日本国内での食用に向かないサバとカウントすると、実質的な食用比率は7割より、かなり下がることになります。

皮肉にもその分、食用にならない小さなサバを獲らないノルウェーなどから高い価格で輸入しているのです。本来であれば、成魚になった大きなサバを国際価格で輸出することが、資源の持続性と経済性の両面でプラスになるはずです。

TACがない魚はどうなってしまうのか?

マダラ(太平洋系群)の資源量推移 震災後一時的に激増したが再び激減。マダラにはTACが設定されていない

日本ではTACがなくて、米国、北欧、ロシアといった漁業国で設定されている代表的な例がマダラです。日本のマダラ資源(太平洋系群)は、2011年に起きた東日本大震災以降、漁獲圧力が減少し、資源量が急回復しました(グラフ参照)。しかしながらそれもつかの間で再び悪化し、元の木阿弥です。

マダラの幼魚 TACをきちんと設定している国では、日本のように幼魚まで獲らない

再び減った主な理由は、漁獲枠がなく、写真のような食用にならないマダラの幼魚まで獲ってしまうからです。TACと個別割当制度(ITQ)で、日本と対照的な管理をしているアイスランドでは、漁業者自ら決められた網目15cmより大きくして23cmとし、小さなマダラが獲れないようにして魚価と水揚げ金額の増加を狙っている漁業者もいます。

マダラの漁獲量は、日本が約5万トン(2018年)であるのに対し、米国が16万トン(2019年)、ノルウェー37万トン(2018年)、アイスランド26万トン(2018年)と、日本に比べて非常に大きな漁獲量になっています。その違いはTACがない日本と、TACで管理している国の違いが、資源管理の違いにより、数十年という年月をかけて資源量の大きな差となり、漁獲量の違いを生んでいるのです。

次の機会に譲りますが、ニシンなども加えて比較すると、TACや個別割当制度(IQ,ITQ,IVQなど)の有無により、巨大な資源量の差ができていることがわかります。

TACの設定と漁業毎の争い 

日本近海では、沖合VS沿岸漁業といった対立関係が見られます。本来、漁獲枠が巻網、定置、釣りなどに厳格に分かれていて、その範囲内での漁獲量であるべきなのです。しかし、それが決まっていなかったり、オーバーしても罰則がなければ、あるのは非難合戦と不信感ばかりになってしまいます。

逆に漁獲枠の配分と罰則が決まっていれば、いがみ合う必要はなくなります。配分が最も難しいのですが、ノルウェーで行われているような資源量が少ない時の、沿岸漁業への配慮が重要です。

なお、おさらいになりますが、ただTACを設定すればよいのではありません。科学的根拠に基づき、TACと漁獲量がほぼイコールとなるような設定と運用が不可欠です。日本のようにTACが実際の漁獲量より大きかったり、北海道沖(道東沖)のマイワシ漁のように、魚が獲れたら増やすでは、TACをどれだけ設定しても役には立ちません。

TACは、本来利用している全ての魚種に、科学的根拠を基に入れるべき制度です。漁獲量を自主管理によりサステナブルにできている例は、あったとしても極まれです。かつ少しでも多く獲りたいという本能には勝てず、結局は続かないのです。

また、TACが決まっても、それが漁船や漁業者ごとなどに個別割当制度(IQ,ITQ,IVQなど)が適用されていないと、いわゆるオリンピック方式となって、これまた見つけたら何でも獲ることに繋がってしまいます。

漁業法改正にも個別割当制度(IQ)方式の適用が入っていますが、これ以上手遅れになる前に早急な対応が求められます。

(注) TACは漁獲可能量と言いますが、ここでは分かり易いように漁獲枠と同じ意味で記述します。

法律が変わって、証明書がない魚は流通できなくなる?

どこから来たのか?小さなアワビ

証明書がない魚は流通できなくなる?

水産資源保護への新規制が行われる見通しとなりました。農水省は、早ければ2020年の通常国会に関連法案を提出する予定です。内容は、国内の水産物に産地証明書を付け、輸入品においても漁獲証明書を義務付けていくというものです。

そもそも、どこで誰がどのように獲ったのか分からない水産物が、輸入品・国産品にかかわらず、他の水産物に混じって出回っているのはおかしいですよね?

アワビ、ウナギ、ウニ、カニ、サケ、ナマコと知らないうちに密漁品を食べ、反社に協力しているかも知れない内情を追った「サカナとヤクザ(鈴木智彦著)」は、大きな反響を呼びました。

証明書がないものが、輸入も流通もできなくなれば価値がなくなります。そうやって国際的に大きな問題になっているIUU(違法、無報告、無規制)漁業を排除し、水産資源管理に貢献していこうとする大きな動きがあります。

EUでは、2010年から漁獲証明がない水産物は輸入できなくなっています。一方で、日本の輸入規制は弱く、漁獲証明は、メロ、ミナミマグロなど、極限られた魚種で必要になっているに過ぎません。違法に漁獲された水産物でも輸入されやすいのです。

生産日などのトレーサビリティに必要な情報はほとんど無い

日本ではトレーサビリティが十分でないことが少なくないため、流通している国産の鮮魚などの水産物は、誰がいつどこで獲ったものかが、すぐに分からないケースが少なくありません。特に鮮魚などが入った国産の水産物は、流通に使用されている発泡スチロールの外側には、写真のようにこれらの情報が記載されていないものがほとんどです。

輸入品の場合は、北欧などバーコードなどで厳格に管理されているものが多くあります。しかし、IUU漁業の原料が、人件費が安い国々で加工されてしまうケースがもしあれば、その製品が日本に輸入されやすいという面は否めません。

トレーサビリティの不備によって起こるのは、IUU漁業の魚の問題だけではありません。不幸にして放射性物質などの問題が発生した場合、これまでのやり方では、その安全性を客観的証明するのは難しい環境にあります。また、鮮魚だけではありません。冷凍原料のイカ、サバ、サンマなど、生産日が入っていない原料も問題は同様に起こってしまいます。

対照的に冷凍ノルウェーサバの場合、生産日はもちろんのこと、規格、保管温度などの情報が表示されて、詳細な情報がバーコードで管理されています。

鮮魚で空輸されるノルウェー サーモン。生産日の表示を始め詳細なデータが、バーコードで管理されている

空輸で輸入される生鮮のノルウェー サーモンについても、生産日、消費期限といった情報が表示されています。日本の場合は、生産日などを表示しない傾向があります。しかしながら、ノルウェーなどの輸出国は情報を表示して管理することで、品質などで問題が発生した場合でも、素早くトレースして原因を特定する仕組みができています。こうして輸出する側が、自分たちを守るためにとトレーサビリティを行っているのです。

日本では密漁品でも流通してしまう

高級商材として中国や香港などで人気が高いナマコ

政府は、証明を義務化する対象として、密漁リスクが高いナマコとアワビから始める見通しです。密漁品など無関係と思われるかも知れませんが、日本で流通している水産物が、そうではないとどうやって証明できるのでしょうか? そもそも、訳あり品、特別価格といった水産物に対する警戒心が、日本人には薄いのかも知れません。

絶滅危惧種ニホンウナギ。稚魚密漁や無報告が問題になっている

国内の密漁検挙数は、2017年で20年に比較して3割増えているそうです。密漁は他人事でも、外国で起きた預かり知らぬことでもなく、身近な問題なのです。

ウナギが絶滅危惧種となり供給が大幅に減少しています。このため養殖に使うシラスウナギと呼ばれるウナギの稚魚の取引き価格は、キロ200万円(2019年)と非常に高いです。資源が激減したために魚価が高騰、そのため密漁が増えやすくなる悪循環に陥っているのです。

2018年の漁業法改正に当たっては密漁に対する罰金は大幅に引き上げられることになります。密漁品の取得に対しては3年以下の懲役、3,000万円以下の罰金を始め罰則が強化されます。罰則強化による減少も期待されています。

輸入を規制する必要がある水産物

水産資源管理を自国で厳格に行っていても、IUU漁業で漁獲されてしまっては困ります。 世界ではIUU漁業を規制しようとする動きが年々強まっています。一例として、Googleは全世界の海洋漁業活動を可視化するGlobal Fishing Watchを2016年に開設しています。人工衛星などから取得した漁船の位置情報を解析し活動状況を表示。船名や国名もわかる時代です。

最新IT機器で世界の漁船の動きをウォッチし、漁獲証明がない水産物を輸入できないようにして市場からIUU漁業を排斥する動きが加速してきました。一方で、その排斥された魚が、漁獲証明をあまり必要としない日本に輸入されやすいで良いわけがありません。

IUU漁業の意味

養殖に使うシラスウナギと呼ばれるウナギの稚魚

IUU ( Illegal Unreported Unregulated) 漁業の3つの要素を見てみます。まず「Illegal=違法」は、誰でも悪いことが分かるので簡単です。一方で、Unreported=無報告とUnregulated=無規制の2点は、何が問題なのか分かりにくいかも知れません。

「無報告」について分かり易い例が、絶滅危惧種に指定されている養殖に使うウナギの稚魚漁です。日本で池入れされているウナギの稚魚は少なくも半分以上が、密漁や無報告によるものと言われています。実際の池入れ数量と報告されている漁獲量に大きな差があるのです(例)2015年シーズンは約6割が出所不明。

ウナギの場合、違法に漁獲された分もあるかも知れませんが、それ以上に、報告されていない数量が問題です。またそれ以外の多くの魚種に、資源評価のための漁獲量や資源量のデータが十分にないことが問題になっています。

ほとんどの魚種において、国際的にみて遜色がない資源管理が実行されてきていたのならば、漁業法の改正でTAC(漁獲可能量)を増やす際に、データがなくて困っているといった現在直面している問題は起きなかったはずです。

「無規制」については、漁期、漁法、漁具などの規制があるものの、食用にならないような様々な魚の幼魚まで、底曳きや巻き網などでまとめて獲ってしまっています。 これは肝心の「数量」で管理していないため起こってしまいます。まさに多くの漁業は、水産資源管理制度の不備により、肝心の数量面での資源管理において「無規制」に近いのです。

気付くことの重要性

小さいうちに獲られてしまったメバル 一山500円

2018年に、70年ぶりに改正された漁業法の背景には、政治家を含む多くの関係者が、日本の水産資源管理の問題点の気づきがありました。世界と比較してみると次々に分かる日本の資源管理制度の異常性。このため「国際的にみて遜色がない資源管理」の実績がクローズアップされています。また問題の根源にあるのは、食を通じて大きくかかわっているのに、その問題を国民の多くが知らないことにあります。

おわりに

前述の「サカナとヤクザ」のおわりには「処方箋が分かっているのに手が付けられない。日本の漁業を知れば知るほど、密漁など大した問題ではないと思えてくる。」と書いてあります。

密漁はもちろん大きな問題なのですが、それよりもっと大きな問題があることに、著者が取材を通じて気が付かれたのです。

主要参考文献を見ると拙著が3冊「日本の水産業は復活できる!」「魚はどこに消えた?」「日本の漁業が崩壊する本当の理由」挙げられていました(笑)。

水産資源管理の問題は、非常に重要で身近な問題なのです。