シシャモ資源が大復活! でもそれは北欧の話のわけ

アイスランド産の干しシシャモ

海水温の影響を受けているはずなのに?なぜ北欧だけ?

お腹に卵を抱えたお馴染みの干しシシャモ(カラフトシシャモ)。その原料の2大供給国は、アイスランドとノルウェーです。しかしご存知ないかも知れませんが、2019年からシシャモ漁を、資源回復のためにそれぞれ禁漁していました。

その甲斐があって、今年(2021年)はアイスランド、そして来年(2022年)は、ノルウェーも資源量が順調に回復して解禁となりました。そしてシシャモが再び大量に日本市場に供給されます。

日本の国産シシャモについても後で述べますが、こちらは過去最低を更新中で回復の兆しはありません。ところで3ヶ国で漁獲量が減った原因ですが、日本でよく言われる原因は海水温の上昇です。しかし、北欧の海でも海水温上昇の影響がありますが、大きく回復しています。海水温のせいであれば、日本同様に減り続けるはずではないでしょうか???また、3ヶ国とも産卵期に狙いを定めて漁をしています。

2年間の禁漁期間を経て得たものは?90万㌧!の漁獲枠

2021年10月、アイスランド海洋・淡水研究所(MFRI)から資源調査の結果、2022年度の漁獲枠のアドバイスが発表されました。その量は90万㌧と驚愕の数量でした。この数量は、日本のサバの年間水揚げ量(2019年)の2倍と言えば、その規模が想像できるかと思います。

北欧産のシシャモは、脂がのっていて人気があります。消費者としては、供給量減少で上昇していた末端価格が、供給量の回復で再び落ち着いてくることに期待したいところです。

周辺国も恩恵を受けるシシャモの資源回復

アイスランドのシシャモ資源の回復は周辺国にも大きな恩恵を与えます。その代表がノルウェーに対してです。ノルウェー海域でも、アイスランド海域同様に2019年から資源量の減少から禁漁しています。

ノルウェーには8万㌧もの漁獲枠が、おすそ分けされます。禁漁していてもノルウェー産のシシャモが供給されているのは、このような他国からの漁獲枠配分によるものです。ちなみに今年(2021年)は4万㌧分けて(アイスランド枠13万㌧から)もらっています。

過去最低の漁獲量が止まらない 悲惨な我が国のシシャモ漁

北海道の資料を編集

10月になり北海道でのシシャモ漁が解禁となりました。

昨年(2020年)の漁獲量は僅か300㌧で過去最低。上のグラフをご覧ください。赤の折れ線グラフは漁獲量、青は単価を示しています。数量については1980年には2万㌧に迫る勢いでした。しかし今ではその面影さえ残っていません。科学的根拠に基づく漁獲枠なしで漁業を続けると、回復する機会を逃す一方で、資源激減が起こる典型的な例です。

また、大幅な供給減による暴騰が続く単価の上昇にも注目して下さい。どんどん消費者から遠い存在になっています。

ちなみに昨年の輸入量は、カナダ産(脂が少ない)と海外から分割で輸入されていた北欧産の数量を含めて僅か8千㌧でした。2021年度はアイスランドの解禁、2022年からは脂がのったアイスランド・ノルウェー産が出そろうことで再び年間2万㌧前後が輸入されて行くことでしょう。

なお、日本のシシャモ(学名Spirinchus lanceolatus)と北欧シシャモ(学名Mallotus villosus)は生態が異なります。前者は川を遡上して産卵、後者は海で産卵します。ただし、資源を持続的にしていくための管理方法の基本は同じです。

日本では、SDGs(持続可能な開発目標)の14.4で示されているMSY(最大持続生産量)に基づく水産資源管理ができていないのです。なお、2020年の漁業法改正MSYに基づく管理がようやく埋め込まれました。(注:運用が甘い傾向あり)

アイスランドのシシャモはサステナブル

アイスランド産のシシャモ MSC認証付き

上の写真をご覧下さい。左側にある青いマークはMSC認証のマークです。持続可能(サステナブル)な漁業しか認証されません。残念ながら日本のシシャモ漁は、現状の管理方法では、まず無理です。

日本のシシャモ資源は、国際的な観点から俯瞰すると、非常に厳しい状況が続く可能性が高いと言えます。これは残念なことに水産資源管理制度の違いです。

たとえ単年度など短い期間で増えているように見えることがあっても、数十年単位で見れば、それは幻想であることがわかります。

この点は、ニシン、ハタハタ、ウナギなど多くの魚種で共通します。中長期的に見ると、どれも実際には良くなっていません。

上のグラフはアイスランドのシシャモ資源量(産卵親魚量)の推移です。もともとは40万㌧の資源を残し、それ以上の資源量を漁獲枠としていましたが、近年では管理方法が変更されました。

現在の管理及び解禁基準は、産卵する親魚量(産卵親魚)を、3月15日(産卵期に該当)の時点で95%の確率で15万㌧残すというルールです。ちなみに禁漁だった2019年は30万㌧、2020年は55万㌧も同資源量はありました。

ちなみに、未成魚である1、2歳の資源量は過去3位の量ですので、将来も磐石です。アイスランドやノルウェーは未成魚のシシャモに手は出しません。

日本のシシャモ漁の場合は、そもそも科学的にどれだけの親魚量を残すか?という厳格な数量管理の方法ではありません。資源量が減って供給が減れば価格が上昇します。ですから漁期中に出来るだけたくさん獲りたいという意識が働いてしまい悪循環が続きます。

科学的根拠を ふ化放流は必要だろうか?

魚が減ることに対して策を講じることは必要です。しかし本当に効果があるのか?と疑問に思うのがふ化放流です。

2022年に北海道でシシャモのふ化場が新設され、既存施設に比べ3倍の卵をふ化させることができると計画されています。これにより漁獲量を安定させようとしているそうです。

ところで、復活した北欧両国ではふ化場を使って資源を回復させたわけではありません。同じく激減が続くサケも同様なのですが、資源量をサステナブルにできている国では、自然産卵とMSY(最大持続生産量)を維持できる水産資源管理に重点を置いています。

やるべきことは、資源が回復するように、科学的根拠に基づいて現在の漁獲量を減らす。そして河川を始め、魚が産卵し易い環境を整えることが必要ではないでしょうか?

日本の水産資源管理は「井戸の中の蛙大海を知らず」といったケースが後を絶たず、様々な魚種がどんどん消えています。

そして減った原因を、自国の管理は棚上げし、海水温上昇や外国にばかり責任転嫁しています。そして、来年こそは!と大漁祈願の神頼みばかりでは、本当によくなることはありません。

ノルウェーでもシシャモ漁解禁

Norges Sildesalgslag

アイスランドに続き、ノルウェーでも来年(2022年)からシシャモ漁が解禁となりました。ノルウェーが資源を管轄するのは、北部のバレンツ海の漁場です。その産卵場はノルウェー北部(ロシア含む)で、アイスランドのシシャモとは、資源の系統群が異なります。アイスランドが漁獲するシシャモは、アイスランド沿岸で産卵します。

生態系も考えた水産資源管理

ところでシシャモを食べるのは人間ばかりではありません。マダラを始めとした、多くの魚の貴重なエサでもあります。シシャモの漁場でマダラが混獲されたりすると、その漁場は禁漁区にするなど厳格に管理されています。

漁獲枠設定の際には、漁獲量だけでなく、他の魚がエサとする量も計算されています。イカナゴマイワシといった食物連鎖の低辺にいる魚は、人間だけでなく海の生き物にとっても非常に重要なエサです。

エサ資源が減れば、そのエサを食べていた魚の資源も減ります。残念ながら日本では、こうした他の魚のエサとなる分量の配慮に関する報道は聞きません。生物多様性も十分考慮することが重要であることに気付いていただければと思います。

なお、アイスランドは日本と漁業規模が違うとか、種類が違うシシャモではないか?という問題ではありません。

科学的根拠に基づく水産資源管理ができているかどうかという、極々基本的な入口のところで致命的な違い(誤り)が起きているということが言いたいことであることを申し添えておきます。

イクラは食べ続けて良いのか? 減り続ける日本のサケを考える

イクラになる前の原卵

2周年御礼!「いいね!」「シェア」で4万5千回

我が国では水産資源に関して正しい情報が少なく、ほとんど有効な対策が取られていません。このため必然的に様々な魚が消え続けています。手遅れになる前に、社会に気付いて欲しいという想いから、「魚が消えていく本当の理由」というタイトルでブログを始めて丸2年が経過しました。

これまでに50記事を発信。「いいね!」「シェア」は累計で4万5千回を超えました。ありがとうございます。今回は、サケとイクラについて、誰も検証できていない視点から解説します。

アラスカ産 ベニザケ

サケの漁獲量が激減しているが、イクラを食べ続けてもよいものか?

子供から大人まで、日本人が大好きなイクラ。ところが、サケの漁獲量激減という報道が、毎年のように続いています。サケが減っているのに、その卵を食べ続けてしまってよいものなのでしょうか?

サケの漁獲量とイクラの生産量の関係

水産通信社のデータより編集

上のグラフは、日本のサケ類(少量のカラフトマス等含む)とイクラの生産量の推移を示しています。2013年2015年前後には、年間15万㌧前後あったサケの漁獲量(左軸)が、2019年〜2020年には5万㌧程度と、3分の1に激減しているのがわかります。それに合わせて、イクラの生産量(右軸)も同6~7千㌧から2~3千㌧と大きく減っていることが分かりますね。

輸入も含めたイクラの供給量はどうなっているのか?

水産通信社のデータより編集

上のイクラの供給量推移のグラフをご覧下さい。青の折れ線グラフが減り続ける国産原料でのイクラ生産量。オレンジが米国・ロシアを主体とした輸入品の合計です。また、グレーは国産と輸入品の総合計を示しています。減り続けている国産品を輸入品で補って来ていましたが、全体的に供給量は減少傾向であることがわかります。美味しい水産物の需要は世界で伸びていますので、買付競争により輸入環境は厳しくなって行きます。

他国も含めたサケの漁獲量はどうなっているのか?

水産庁

2つグラフの内の上のグラフは、北太平洋におけるサケ類の漁獲量推移を示しています。イクラを供給しているのは、北太平洋(米国、ロシア、カナダ、日本)のサケ類です。このサケ類全体の漁獲量推移が、イクラ生産量に影響します。日本では不漁のニュースばかりですが、全体では減っていませんね。

それどころか漁獲量を見ると、米国は23万㌧(2021年)と近年3位の豊漁、ロシアでは53万㌧(2021年)と過去10年で2番目の大豊漁と報道されています。

一方日本は昨年(2020年)は、過去最低タイの6万㌧弱の大不漁でした。現在(10月)は、シーズン真っ最中ですが、今年だけでなく、来年以降も厳しいでしょう。ちなみに日本の2000年~2010年における平均漁獲量は23万㌧と、豊漁と言われる今年の米国の水揚げ量と同量でした。如何に独り負けしているかが分かるかと思います。

上の下のグラフは、サケ類の稚魚放流数を示しています。放流数はほぼ一定ですね。サケと言えば、採卵して放流した稚魚が生まれた川に帰ってくるというイメージをお持ちの方が多いかと思います。ところが実際には、稚魚放流と自然産卵の2パターンで回帰するのです。

サケの減少も含めて、日本では何かと魚が減ると、その原因を海水温上昇にする傾向があります。しかしながら、米国、ロシアも同じように影響を受けているはずなのに、漁獲量も資源量も減少傾向ではありません。なぜ日本の魚ばかり減るのでしょうか?

次に他にサケの減少に大きく影響していると考えられる原因について検証しましょう。

放流したサケと自然に産卵したサケの割合

Alaska Fish and Game

上のグラフは、アラスカ(米国)でサケの商業漁獲における自然産卵と稚魚放流のサケの漁獲尾数と比率を示しています。緑色の棒グラフが自然産卵、黄色が放流によるものです。黒の折れ線グラフは、放流物の漁獲比率を表しています。

Alaska Fish and Gameより編集

上の円グラフをご覧下さい。2018年は放流によるサケの漁獲比率は34%でした。放流を行いながらも、実際には回帰してくるサケの半分以上は自然産卵によるものであることが分かります。

自然環境は確かに変化しています。しかしながら、米国での調査結果の数に基づき、自然産卵によるサケの方が、稚魚放流のサケよりも環境への適応度が高いという仮説を立ててみましょう。すると、現在日本が行なっている採卵による稚魚放流よりも、資源回復のためには、採卵や漁獲量を減らし、自然に産卵するサケの量を増やした方が良いということにならないでしょうか?

さらに国際的な視点から俯瞰すると、資源量が少ないのに無理に採卵することが返って逆効果となり、結果として米国、ロシアと来遊量の差が拡大していることが想定されます。

日本のサケ放流は大丈夫か?

水産庁

上のグラフをご覧ください。青の折れ線グラフが、日本のサケの稚魚放流尾数(右軸)で、棒グラフの合計が来遊数(左軸)となっています。

このグラフで気付いていただきたいことがあります。それは、来遊数が激減しているのに、稚魚放流数がほぼ横ばいという点です。これは放流を優先させる余り、自然産卵するサケの数を減らしている可能性が高いことを意味しています。

もともと自然産卵のサケの方が来遊率が高いのではないかと考えられています。また、サケの来遊数が少ないために、別の川で採卵された卵から生まれたサケが違う川に放流されてしまえば、遺伝子的な錯乱が起こってしまう恐れもあります。

かつて北海道のシロサケで、2011年〜2014年にかけて世界的な水産エコラベルであるMSC認証取得が目指されたことがあります。しかしながら途中で断念されています。

認証を得るためには、MSY(最大持続生産量)レベル維持のための産卵魚をエスケープさせることが必要であること、及び資源状態が悪い場合には回復のための手段として採卵(増殖)をほとんど行っていないことなど、克服せねばならない要件がありました。

その後、日本独自の水産エコラベルであるMEL認証は得たものの、肝心のサケの来遊量は激減してしまいました。

水産庁

他国のサケの放流数と比較して分かること

上のグラフは、各国のサケの漁獲量と稚魚放流数を示しています。左下が日本です。赤の折れ線グラフが稚魚放流数ですが、15〜20億尾前後と、日本より漁獲量が多い米国、ロシアの5〜10億尾に比べ2〜3倍も稚魚放流が多いことが分かります。漁獲量と放流尾数の関係が乖離しているのは日本だけです。

放流尾数が多いのに、肝心のサケの漁獲量は、日本だけが激減してしまっているのです。

海水温上昇については、日本だけでなく、米国もロシアも影響を受けています。しかしながら、サケの漁獲量で激減を続けているのは我が国だけです。サステナビリティの面では、米国もロシアもMSC認証を取得、一方で日本は取れずに断念。結果を見るとサケが減ってしまい地域社会に暗い影を落としているのも日本だけです。

サケだけではありませんが、日本には世界で起こっている現実を俯瞰した水産資源管理が欠かせません。またイクラは、日本だけが消費しているわけではありません。これから他の水産物同様に、さらに買い負けが進行して行きます。

日本では資源の減少は、サケに限らず海水温の上昇が原因とされることが多いです。しかしながら、同じく海水温上昇の影響を受けている米国・ロシアでは豊漁というのが現実です。そこで国際的な視点からご理解いただきたいことがあります。それは、イクラを食べ続けるためには、サケの自然産卵を増やさせて、国内の資源回復を本気で行うことが急務なのではないかということです。

タラコを食べても魚は減らない? 産卵期の漁業は問題あるのか?

産卵期に魚を獲ることが問題なのか?

卵を抱えている魚を獲り続ければ減ってしまう。誰が考えてもわかることです。日本では、過去の歴史から北海道のニシンや秋田のハタハタを始め、産卵のために集まってくる魚を獲り続けて資源を潰してしまった例がいくつもあります。近年サケも激減していますが、これも産卵に回遊してくる魚を狙っています。

共通しているのは、卵に価値があることです。魚が減ると水産資源管理が機能していない場合、子孫を残そうと最後まで群れがまとまる産卵期か、未成魚狙いの漁業が進行してしまいます。

このため日本では、加入乱獲が様々な魚種で起きています。加入乱獲とは簡単に言えば、親魚の獲り過ぎで産まれてくる子供が少なくなってしまうことです。その結果、世界で類を見ないほど、様々な魚種が減り続け、全国各地で社会問題になっています。

なお海水温上昇の影響だと思っている方は、矛盾点を明記してあるこちらの記事を読んで下さい。(過去最低の水揚量と海水温上昇を比較すると驚くかも知れません。

産卵期に獲った魚を獲ってはいけないのか?

タラコ、イクラ、カズノコなど、たくさんの魚卵が年中店に並んでいますね。魚卵大好きな日本人。果たして私たちは魚の卵を食べ続けても良いものでしょうか?

ところで、タラコが不漁で食べられなくなるという報道を聞いたことがあるでしょうか?タラコは食べ続けてもよいのでしょうか?

答えはシンプルで「(輸入品は)全く問題ない」です。順を追って客観的な事実から検証してみましょう。主要供給国の米国やロシアでも、産卵期を主体に日本の約10倍も大型船で獲り続けています。しかし資源が減少して問題になることは聞こえてきません。なぜでしょうか?

まずは、タラコ原料の輸入数量から検証してみましょう。

2つとも水産通信社のデータを編集

2つのグラフの内、まず上の方を見てください。スケトウダラを漁獲しているのは、米国、ロシアそして日本です。黄色い折れ線グラフは、輸入を含めたタラコの全体の供給量(冷凍と生原料)を表しています。安定的に年間で約4万㌧供給されていることが分かります。

どの国も狙いは産卵期です。その理由は、日本向けにタラコ原料が高く売れるからです。タラコ生産量の約7割は日本向けと言われており、買付力はダントツです。一方で身の方は、フィレにしたり、すり身にしたりして、日本だけでなく欧米市場を始め各国に輸出されています。

水産通信社のデータを編集

上の表は、過去10年間のタラコ原料の生産量の平均です。国産はわずかで6%のシェア。9割以上は輸入原料に頼っていることがわかります。つまり、日本のスケトウダラ が減ってタラコの生産量が減っても大勢に影響がないのです。

ちなみにスケトウダラ の年間漁獲量(2020年)は、米国は136万トン、ロシア183万トン。一方で資源量を大きく減らしている日本は、桁違いに少なく16万トンでした。

米国・ロシアでは産卵期狙いで問題がないわけ

スケトウダラ

米国もロシアも産卵期にスケトウダラを大量漁獲しても問題が無い理由は、水産資源管理の違いによる資源量の差にあります。米国の例が分かり易いので説明します。

上のグラフをご参照下さい。米国(アラスカ)のスケトウダラのABC(青い棒グラフ・生物学的漁獲可能量)とTAC(オレンジの棒グラフ)そして実際の漁獲量(赤い折れ線グラフ)を示しています。

アラスカの場合は、生物学的に漁獲しても良い数量(青・ABC)を下回ったTAC(オレンジ・漁獲可能量)で設定されている年度が多く、かなりセーブされています。

このため、資源状態は極めて良い状態が続いています。TACと実際の漁獲量は、オレンジの棒グラフと赤い折線グラフを見れば分かりますが、ほぼ100%です。

アラスカでの昨年(2020年)の平均漁獲サイズは約750g(6歳前後)でした。100%成熟するのは5歳以上なので、成魚が漁獲の中心になっていることがわかります。

日本のスケトウダラ の場合はどうか?

水産庁 資源管理のあり方検討会

上のグラフは、日本のスケトウダラ 資源の内、日本海北部系群の推移です。米国で法律で禁止されているTACがABCを超えているなど、およそ考えられない管理が行われてきました。

グラフは2013年までで、現在は一応ABCを上回らないTACになっていますが、TACが大きすぎ水産資源管理が機能していない点は変わりません。この結果について、下のグラフでは2014年以降の推移も含んでいるので、どうなっているか見てみましょう。

水産研究・教育機構

上のグラフは2013年以降も含めた漁獲量推移ですが、漁獲量は減少続きで、改善されていないことが分かります。また、オレンジ色の箇所は、当時資源量が減少した原因とされていた韓国船の漁獲量です。その後1999年以降は韓国船が撤退。しかしながら撤退後も、肝心の漁獲量は回復どころか減少が続いています。自国の管理に問題があったのに、『外国に責任転嫁』していた一例です。

日本のスケトウダラ には、全部で4系統の資源があります。それらの過去5年(2019-2015年)分のTACに対する漁獲量の年平均消化率は僅か54%です。毎年ほぼ100%枠を消化している米国の例と比較すると違いは歴然です。

これは日本の場合、獲り切れない量の枠が設定されていて、獲り放題となり、管理になっていないことを意味します。ちなみにロシアでは2年続けて枠の消化が7割を切ると、その漁業者の枠を没収する制度が2019年より適用されています。日本でも過剰な枠の配分を制御するためにも、個別配分後、実績が少なければ没収するという制度にすれば、枠の分量に関して真剣に考えるようになるでしょう。

マークで分かる水産資源管理の違い

タラコ MSC認証 ロシア又は米国産

米国・ロシア共にスケトウダラ漁に関しては、取得が難しい国際的な水産エコラベルであるMSC漁業認証を取得しています。2011年に同じスケトウダラでMSC認証を取得している米国産に対し、ロシア産は認証がないため欧州市場で需要が減少。その後、ロシアは約3年かけてようやく認証にこぎつけた経緯があります。

日本のスケトウダラ漁業が、現在の管理状況でMSC認証を取得するには、かなりハードルが高いのは間違いありません。それでも、同じスケトウダラで、なぜこれほどまでに日本の資源状態が悪くなっているのか、国際的な広い視点で問題点をとらえることが不可欠ではないでしょうか?

以上で、必ずしも産卵期に魚を獲ってはいけないということではないことをお分かりいただけたでしょうか?

ポイントは、資源量がサステナブルな状態か?水産資源管理が機能しているかどうか?ということに尽きるのです!

水産資源は誰のものか?「国民共有の財産」となっていない謎? 

日本の漁港 資源が減り水揚げ量も減っているのに漁港への税金投入は続く。

水産資源は法律で「国民共有の財産」になるはず??

長年の疑問?なぜ未だに「水産資源は国民共有の財産」と法制化されていないのか?2011年7月22日の閣議決定。内閣府ホームページポイントを下記に表示。

https://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/publication/p_index.html 閣議決定・追加方針本文はの32ページの【農林・地域活性化 ⑰】

水産資源は誰のものか?2007年に(社)日本経済調査協議会(水産業改革高木委員会)でこの議論が始まりました。そして2011年7月22日に「国民共通(共有)の財産」として上記の引用通り閣議決定されています。しかしながら、2021年8月現在、まだそれが法律になっていません。

漁業・水産業で成長を続ける国々では、国が水産資源管理を行っている。

日本では、沖合漁業と沿岸漁業そして釣り人との間で、感情のもつれや不信感が絶えません。一方で、ノルウェーのように水産資源が豊かで、漁業で成長を続ける国ではそのような話を聞きません。大型巻き網船は大活躍です。なぜでしょうか?

それは、ノルウェーやオーストラリアのように「水産資源を国民共有の財産」として位置づける、もしくは米国のように「国民の負託を受けて国が管理」する、つまり水産資源管理を漁業者に丸投げせず「国が管理」している点で大きく異なるのです。

繰り返される争い

魚が減って獲れなくなってくると、魚は誰のものなのか?という争いが起きます。魚が山ほどいて獲り放題な状態の時には、この不幸な争いはほとんど起きません。

しかしながら、水産資源は有限であるがゆえに、ある時点から管理が機能していないとほぼ例外なく減少が始まります。そして徐々に減りだした資源は、突然急激な減少を引き起こします。その例は、近年では、サンマ、スルメイカを始め枚挙にいとまがありません。

そして、自国の分け前を増やそうと論争が起きます。その典型的な例は、戦後の食糧不足解消のために、世界中の海に進出して世界最大の漁獲量を1972年から1988年の長期にわたって誇ってきた日本に対して起きました。

このため、主に日本漁船を排除しようと1977年に200海里漁業専管水域が設定されました。日本の遠洋漁業は大打撃を受けることになります。また英国漁業もアイスランドの漁場から排斥され大きな打撃を受け今日に至ります。

日本排斥後に、米国やニュージーランドで起こったこと

1976年に米国はアメリカ化を行い外国の排除は1991年に完了したと紹介されている

しかしながら米国では、日本漁船を追いだした後、カニ漁業者がたくさんのカニ漁船を建造、これによりカニ資源の減少を引き起こしました。この問題を解消するために、米国は当時カニ漁業者にとっては未利用魚であったスケトウダラを漁獲させて、行き場を失っている日本の漁船に洋上で買い取らせて過剰漁船問題を解決して行きました。

ニュージーランドの漁船と漁港

一方、ニュージーランドでも、1977年の200海里専管水域の設定で日本漁船が排除されるようになると、一大漁業ブームが起きて漁業許可が乱発されました。しかしながら資源が減少してしまいました。そこで1982年には許可証の一時凍結も行われ、漁獲努力量の50%削減計画が打ち出されました。そして自国の沿岸漁業を根本的に見直すことに決めてできたのがITQ(譲渡可能個別割当制度)なのです。

米国でもニュージーランドでも、日本漁船を排斥しても同じように乱獲が起きています。しかし日本との大きな違いは、水産資源管理の問題に気付き、漁業者に「自己管理」の名のもとに漁業者に管理を丸投げせずに、科学的根拠に基づく「国の管理」で資源が回復し、現在の成長と繁栄につながっているのです。この点が結果で明らかな通り、成長か衰退かの決定的な違いです。

東カナダ沖・大西洋で起きたマダラの乱獲

MSC認証のきっかけになった東カナダでのマダラ資源の崩壊 FAOデータから作成

太平洋だけでなく、大西洋でも乱獲による資源崩壊が起きています。東カナダでのマダラ漁は、1977年以前に各国が入り乱れて乱獲を起こしました。そして1977年の200海里漁業専管水域の設定により、他国をカナダの海域から排斥して行きました。

本来であれば、この時点で科学的根拠に基づく水産資源管理を行っていれば、カナダは1992年~2021年現在に至るマダラの禁漁という憂き目にあっていなかったことは確実でした。

しかしながら、今度は自国で乱獲を引き起こし、マダラ資源にとどめを刺してしまったのです。この反省からできたのが国際的な水産エコラベルであるMSC認証ができたというのは有名な話です。

禁漁してほぼ30年経っても東カナダのマダラ資源は再開できる資源量に回復していません。イカナゴニシン、ホッケなどすでに激減してしまった日本の多くの資源は、この状態に近いかも知れないと言わざるを得ないのが残念です。

「水産資源が国民の共有財産」になると何が変わるのか?

資源の状態が良いノルウェーのマダラ 40cm以下は漁獲禁止 水産資源は国民共有の財産

日本の至るところで、漁業者や水産加工業者が困っている根幹にあるのは、魚が減ってしまっていることです。これを回復させねばなりません。しかし、肝心の資源に関するデータが足りないということが起きています。そこで、漁業者に対して漁獲データの提出を義務付けることです。

また、国民がその共有財産が、水産資源管理の不備で減少していることに対して関心を持ってもらうことです。そこで「なぜ日本の海の周りだけ魚が減り続けるのか?」という「異常事態」に気付いてもらうことです。

かつて水産庁の高官の方に「なぜ国民の共有財産とならないのでしょうか?」と聞いたことがあります。その時には「そう意識しています。」という返答でした。しかしながら、法律として明記されるかどうかが大きな違いではないだろうか?と今でも考えています。

サンマ 報道されていることが事実か検証してみた

サンマが来遊して来ないのはマイワシやサバが増えたから?を検証してみた。

8月のお盆になってもまだ店頭にサンマの鮮魚は並んでいません。7月に漁期に入ったものの、これまでは水揚げがゼロだからです。上の写真は細々と並ぶ台湾と昨年の国産の解凍物。しかし多くはありません。他国も含めサンマの漁獲量が激減しているからです。

日本では、魚が減るとその原因が乱獲から他の要因に責任転嫁されてしまうケースが後を絶ちません。このため「間違った前提に対する正しい答え」が求められ、改善どころか悪化だけが進んでしまいます。

マスコミも情報不足および注目を集めるためか、変わった珍説が出ると検証もせず報道してしまいます。そして日本では水産資源に関してどんどん誤った情報が拡散されているのです。

瀬戸内海のイカナゴが激減に対した理由が「水が綺麗になりすぎたため」と報道されているのには驚かされました。それなら水が今よりももっと綺麗だった江戸や室町時代にはイカナゴはもっと少なかったのでしょうかw?

そこで今回は、サンマの来遊を阻害しているのはマイワシやサバ類という説が本当か検証してみます。サンマ、マイワシ、サバ、イカナゴも驚いていることでしょう。

それぞれの説を全否定するわけではありませんが、客観的な事象や数字から分析すると明確な矛盾が出てくるので、本質的な問題ではないことが浮き出てきます。

サンマの来遊を阻害するマイワシ、サバ類は依然として多く19年より増加しているという。』❓❓❓

2021年8月。サンマの漁獲シーズンになりました。今年の予想は、過去最低の昨年よりは多いが、2019年より少ないというものです。2019年の4.6万㌧は2020年の3万㌧より多いという数字ですが、そもそも2019年の数字自体がほんの10年前まで20~30万㌧(2001年~2010年の平均26万㌧)漁獲されていた数量より極めて少ない数字なのです。

サンマとマイワシの関係

                     農水省のデータから作成

上のグラフをご覧ください。まずサンマとマイワシ(以下太平洋が対象)の関係です。マイワシ、マサバと日本海でも漁獲されているので、共に太平洋側で漁獲された数量を基に分析していきます。

マイワシの漁獲量が増えて来ていますが、1980年代のマイワシの平均漁獲量は250万㌧、同サンマは22万㌧でした。2019年(2020年は未発表)のマイワシ52万㌧、2020年のサンマは3万㌧と、1980年代の方が約5倍もマイワシが漁獲されていましたが、サンマも約7倍漁獲されていました。これでマイワシのせいでサンマの来遊を阻害していると言えるのでしょうか?

サンマとサバ類の関係

次のグラフをご覧下さい。サンマとマサバ(太平洋)の漁獲量の関係です。1980年代のマサバの平均漁獲量は38万㌧、同サンマは22万㌧でした。2019年(2020年は未発表)のマサバは27万㌧、2020年のサンマは3万㌧でした。1980年代の方が約5倍もマイワシが漁獲されていましたが、サバは増えたどころか3割減となっています、、、。これでサバのせいでサンマの来遊を阻害していると言えるのでしょうか?(注)サバ類とはマサバとゴマサバのこと。数量はマサバが圧倒しているのでゴマサバは割愛しています。

サンマとマイワシとマサバの相関関係 

                   農水省データより作成

最後にサンマ・マサバ・マイワシの3つを合わせた漁獲量推移のグラフをご覧ください。2つのグラフの説明と、上のグラフを照らし合わせて考えた場合、果たしてサンマが来遊してこないのはマイワシやマサバが阻害しているから?と言えるでしょうか?そこまでマイワシもマサバも全然多くありません。

こうやって、実際の数字で分析されているのは見たことがありません。しかし、こうやって客観的にみるとサンマの来遊とマイワシやサバ類の増加が原因であるとは言えないことがわかります。

サンマの資源量推移 NPFC

上のグラフは、サンマの資源量推移です。激減していることが分かります。サンマが来遊してこない最大の理由は資源量が減少しているからです。海水温が低い公海でも資源量も漁獲量も激減しているのです。だから来遊も減ります。なぜ本当のことを言わないのでしょうか?

検証結果は、データ分析からサンマの来遊の減少とマイワシやサバの増加には相関関係は見られないということです。

サンマが減少している主因は、魚種交代でも何でもなく獲りすぎなのです。魚種交代というのは、それぞれの魚種の水産資源管理が出来ていてはじめて語れる内容です。

なお、このWEBサイトは、マスコミや研究者の方々も含めて「魚が消えていく本当の理由」について気付いていただき、水産資源の回復とその持続性に役立ていただくことを意図しています。

より詳しく知りたい方は、下記サイトを参照してください。

魚と経済 消費者に高く漁業者に安い魚

同じマイワシでもこれだけ違う

写真は共にマイワシで、上は5月に水揚げされた小さなイワシ(小羽もしくは中羽)、下は10月に水揚げされた脂がのったマイワシ(大羽)です。同じマイワシでも見た目で大きく違うだけでなく、美味しさも価値も全然違います。

魚は価格が高いというのが魚離れの理由の一つに上げられています。なぜ高くなっているのか?その構造を知っている消費者はほぼいないことでしょう。そしてその解決策は何か?

上のグラフをご覧ください。左が5月、右が11月に水揚げされたマイワシの脂肪分です。春には5%前後しかなかった脂肪分が、秋の終わりになると20~25%前後、もしくはそれ以上に脂がのって来ていることがわかります。

大きく脂がのったマイワシは、魚粉にして魚油を取りだす際の歩留まりが違いますし、大きく成長したマイワシほど、産む卵の量も多くなります。右のグラフをよく見ると大きいサイズ程、脂ののりもよいことがわかります。

大きくて脂がのったマイワシを獲った方が、経済的に漁業者だけでなく、加工する業者や、消費者にとっても得で有ることを、これから説明します。

マイワシの水揚げ大漁

銚子港でのマイワシの水揚げ

2021年7月現在、マイワシの大漁水揚げが太平洋沿岸で見られています。釧路から銚子にかけてこれから秋、そして冬にかけて資源量からして、水揚げ量がまとまることでしょう。2021年の資源量は約360万㌧、2020年は410万㌧でしたが十分な資源量です。釧路は例年10月末で終了です。しかし、その後も銚子を主体に水揚げ量が増加して行くことが予想されます。

ところが一日千㌧以上の水揚げ量があっても、店頭での販売が極端に安くなるわけではありません。なぜでしょうか?

消費者に高く漁業者に安い魚

マイワシの水揚げ サバも混じっている

店頭に並んでいる魚について、一般的に経済面で知られていないことがあります。それは、マイワシだけでなく、サバなど多くの魚種で、価値が低い小さな魚の中から、価値が高い大きな魚が選別されて店に並べられているということです。

その裏で、食用向け以外の魚の存在があります。マイワシは2019年に6割も丸のまま魚粉や養殖のエサ(非食用)に回されています。サバで4割です。ちなみにノルウェーではサバの水揚げはベイト用に極少量を非食用に向ける分がありますが、毎年ほぼ100%が食用に向けられています。サバを4割も非食用に!というのは、北欧の関係者にとっては非常にもったいない驚きの数字なのです。

非食用のやせたマイワシ

非食用の魚は、食用に比べて極端に安くなります。例えば水揚げ現場の写真(2021年6月16日)では、1,829㌧のマイワシが水揚げされ浜値は㌔103円~36円。その翌日は3,399㌧で同㌔67円~31円でした。

この安い方の30円前後の価格が、非食用向けの相場であり、その日の水揚げの大半を占めることが少なくありません。やや大きな魚が混じるロットには多少高値が付きますが、それでも同じ漁場で、全体的に漁獲サイズが小さい時は、特定の漁獲分だけ大きい魚ばかりというケースは稀です。

取扱業者は少しでも大き目の魚が混じるロットに、高めの価格で入札します。次にその中から大きな魚を選別して、付加価値を付けて高く販売します。残りの小さな魚(非食用などで安い)の分のロスを、大きな魚の分で取り戻すという手段が取られています。

次に銚子での6/16の水揚げで商売の仕組みを説明します。103円で入札したロットは、大きな魚をできるだけ高く売り、選別した小さなイワシ(㌔30円程度の価値)で販売するロスを補って販売しなければなりません。食用に向くのが4割であれば、残りの6割のロス分を、4割の魚に利益を上乗せしなければ商売にならないのです。

もし、サイズが大きくて脂がのったマイワシばかりであれば、例え㌔103円以上で入札しても、ロスする分がないので利益が出ます。一方で、漁業者側にすれば、入札価格が高くなるので儲かります。

つまり魚が大きければ、漁業者にとっては高く、加工業者や消費者に取っては安い水揚げとなるのです。なお、脂がのっていない時期では大きくても価値が高くないので、この限りではありません。

過剰漁獲が起こり資源も水産業も衰退するパターン

現在の日本で起きているのは、魚を見つければ、旬の有無やサイズの大小に関わらず漁獲しているケースが大半と言わざるを得ません。

このため、成長乱獲を起こしてしまうことで、資源が減少し、海には価値が低い魚ばかりになっています。日本は大西洋に比べて年齢が低いサバやクロマグロが多いのは、偶然ではなく、人災によるものなのです。それほど漁業の影響は大きいのです。

魚の価値が低いため、これを数量で補おうとするので、さらに乱獲が進んでしまいます。そして価値の低い魚の中から、少しでも大きい魚を選別して販売することで、その魚は高くなってしまいます。一方で全体の水揚げは価値が低い魚ばかりですので「漁業者に取って安く、消費者に取って高い」という「最悪の組み合わせ」となってしまうのです。

ノルウェーサバの水揚げと比較するとよくわかること

2020年に水揚げされたサバの魚価は、日本が㌔110円(38万㌧)に対してノルウェーは㌔170円(21万㌧)でした。一方でノルウェーからの輸入価格は㌔220円と、日本の魚価の倍でした。日本は、自国のサバを120円で輸出していますが、ノルウェーの利幅が㌔50円であるのに対して僅か㌔10円しかありません。なお、安いサバを買って輸出しているケースはありますが、ここではトータルの数量と金額で解説しています。

実は日本のサバで輸出に回る数量の大半は、アフリカや東南アジアといった市場価格が安いマーケット向けです。それらの大部分は、日本での食用に向かないサバなのです。輸入する国々は「価格が安い」から輸入しているだけというのが実態で、そこにはメイドイン・ジャパンで高品質といったブランドめいた要素はありません。大量に販売できるだけで、付加価値も利幅もほとんどないのです。

利幅がない分は、選別された少しでも大きくて品質が良いサバに利益を乗せて行くことになります。こうして、消費者にとって高いサバが供給されてしまうことになります。

ノルウェーの場合は、全部食用ですので損をして販売する分がありません。このため、輸出価格は付加価値が十分のっているため利益が出ています。漁船も、冷凍工場も毎年のように設備投資が進み近代化され続けています。そしてそのサバの最大の顧客は日本なのです。

マイワシは7年前後、サバは短くても10年は生きる魚です。それを幼魚・未成魚から狙いを定めてしまえば、大きく成長する機会も、たくさん卵を産む機会も奪ってしまいます。

天然の魚を成長させて、大きくなった魚を、価値が高い脂がのった時期にのみ漁獲する。そのための制度をしっかりさせることが重要なのです。

それは、漁業者や漁船に枠を分配して水揚げを管理してもらう制度。つまり価値が低い魚や旬ではない時期の魚を、漁業者に自ら避けさせる多くの国で効果が出ている個別割当制度(IQ,ITQ,IVQ等)のことです。

2020年に施行された改正漁業法には個別割当制度の内、枠の譲渡ができないIQ制度(Individual Quota System)が含まれています。

減り続ける魚! 水揚げ量の減少は、遠洋漁業とマイワシが減ったから?を検証してみた

マイワシ

漁獲量が減り続ける本当の理由は何か?

2020年の水揚げ量は418万㌧と記録が残る1950年代以降で過去最低となり、毎年その数字が悪化しています。「漁獲量が減少している理由」をネットで検索すると農水省のHPが出てきます。それはピークの1984年から1995年頃にかけての説明です。

理由を要約すると①遠洋漁業の衰退②マイワシの漁獲量減少③環境の変化の3点となっています。

2017年に来日したEUの欧州議会水産員会との意見交換会がありました。その時、漁獲量の激減は乱獲ではないのか?という問いがありました。それに対し、水揚げ量の減少は乱獲ではなくマイワシの減少と200海里の規制で遠洋漁業から締め出されたことによるとしていました。実際はどうなのでしょうか?なお③についての矛盾点は、海水温の上昇について別の記事で詳述しています。

まずは全体の水揚げ量(漁業と養殖の合計)を見てみよう

水産白書

上のグラフは漁業・養殖業の生産量推移を表したものです。全体として右肩下がりで減少が続いているのが分かります。さらに黒い折れ線グラフで、マイワシの漁獲量推移が示されています。そしてこれが全体の減少傾向に似ていることが分かります。

しかしながら、漁獲量が減少している原因とされている①遠洋漁業の衰退は、200海里漁業専管水域が設定された1977年以降に影響が出ています。青色部分の推移をよく見ると既に1990年代以降は尻すぼみのままで推移しています。特に2000年以降の過去20年前後からは、全体の減少に与える影響はさほどでもないことが分かります。

マイワシは減っているどころか増えているという矛盾

農水省データを編集

次に上のグラフは、マイワシの漁獲量の推移を表しています。減少要因どころか逆に増えていますね。それどころか、2011年以降はサケスルメイカサンマ、ホッケなど他の魚種が次々に大幅に減少している中で、マイワシは全体の減少を支える数少ない魚種となっているのです。

マイワシの漁獲量を差し引いた全体像でさらに傾向が分かる

農水省データを編集

次に上のグラフをご覧ください。これは、全体の水揚げ量から『マイワシの漁獲量を除いた』グラフです。マイワシの減少に関わらず、全体の数量が減っていることが分かります。

マイワシと遠洋漁業の合計推移グラフを作ってみた

農水省データを編集

さらに魚の漁獲量が減った要因とされている、遠洋漁業とマイワシの漁獲量合計を足してみました。2000年以降の推移を見ると、減少要因といわれる2つの合計は、減少ではなく増加傾向であることが分かります。遠洋漁業は減ったままなので、増加はマイワシの分です。この2つが全体の減少要因でないことは、これでハッキリとお分かりになると思います。

何が言えるのか?

マイワシの水揚げ

サンマイカナゴサケマダラスルメイカなど、このサイトでは様々な魚種が次々に激減している理由と、その対策について発信を続けています。もうお分かりの通り『遠洋漁業とマイワシの漁獲量が減少しているために、日本の水揚げ量が減っているのではない』というのが結論です。

魚が消えて行き、その影響が全国で社会問題になっています。その対策で前提が誤り『誤った前提に対する正しい答え』をこのまま意思決定に関わる人たちが求めてしまったらどうなってしまうのか?

また海水温の上昇にしても、それが日本の海の周りだけに起こっていることなのか?世界の他の海ではどうなっていて、魚の資源量は日本と同じように減っているのか?

当サイトで世界の海とその資源状態を比較されたものを見れば、不都合な事実は隠せないことが分かると思います。必要なのは『魚が消えていく本当の理由』に国民に気づいてもらい、国際的に見て遜色がない水産資源管理を実行して行くことではないでしょうか?

過去最低の水揚量と海水温上昇を比較すると驚くかも知れません

小さな魚を避けて漁獲するという制度がないので、幼魚まで乱獲し成長乱獲を起こしてしまう

2020年の年間水揚量は過去最低を更新

FAOと農水省データより作成

農水省から2020年度の年間水揚量が発表されました。418万㌧と過去最低を更新しています。増加しているのは、これまで水揚げ量の原因とされてきたマイワシの14万㌧と資源管理の優等生であるホタテガイ位で、あとは、サンマを始め、軒並みと言って良いほど減少もしくは低位横ばいが鮮明となっています。

一方で、世界全体の水揚げ数量は増加傾向にあります。上のグラフは、世界全体と日本の水揚げ量を比較したものですが、両者の傾向が対照的であることが明確に分かります。

水産物の水揚げが減少した理由としてよく上がるのが、海水温の上昇によるというものです。確かに海水温の上昇は、エサになる動物性プランクトンの減少など資源状態に影響を与えます。これは農作物の出来高が、天候に左右されるのに似ています。環境要因が自然に与える影響は否定できません。

日本の海の周りだけ海水温が上昇しているのだろうか?

気象庁

海水温がゆっくり上昇していることは事実です。ところで上のグラフは、左が日本やアラスカ(米国)を含む北太平洋。右がノルウェーやEUを含む北大西洋の海水温の変化を表しています。

実は海水温の上昇は魚が減って大きな社会問題となりつつある日本も、魚の資源管理が成功し、水産業も漁業も発展を続けるノルウェーやアラスカ(米国)でも、傾向は同じなのです。

世界全体の海水温の傾向は?

気象庁

上の図は、南太平洋、南大西洋そしてインド洋も含めた海水温の傾向です。世界の海で比較すると、日本を含む北太平洋の海水温の上昇は、大差はないものの、ノルウェーを含む北大西洋や、南大西洋、そしてインド洋よりも、比較した場合上昇傾向は鈍いことがわかります。

日本が魚が減った理由に上げる海水温の上昇は、日本の周りの海だけに当てはまる特殊な現象ではないのです。

それなのに、なぜ日本の周りの魚は減ってしまうという特殊なことが起きているのでしょうか?同じく魚が減る原因として出てくるレジームシフトも、世界の海で日本の周りにだけ起きる現象ではありません。

さらに詳しく海水温の上昇と水産資源の関係を比較してみる

上の表は、北太平洋を日本と米国(アラスカ)側とに分けたもので、筆者が客観的な事実をもとにコメントしたものです。

サバでは、日本はジャミ・ローソクと呼ばれる幼魚まで全部獲ってしまうため、同じく海水温の上昇の影響を受けている大西洋に比べ資源の状態はよくありません。ノルウェーなど北大西洋では、漁業者や漁船ごとに漁獲枠が割り振られているので、価値が低い幼魚は漁獲しません。

東日本大震災で一時的に漁獲圧力が減った名残で、太平洋側だけは現時点では何とか資源が持っているという状態です。

マダラでは、よりはっきり傾向がわかります。同じく東日本大震災の影響で資源は一時的回復しましたが、すでにTAC(漁獲可能量)もなく、幼魚も獲ってしまうので資源は低位に戻ってしまいました。

・ニシンも、アラスカと北太平洋では資源状態も漁獲量も日本とはアラスカでは数倍(2020年・4万㌧程度)。北大西洋ではノルウェーだけで桁違い(同・50万㌧程度)と、日本(同・1万㌧程度)と漁獲量も資源量も大きく異なります。日本の場合はかつて50万㌧漁獲していた数量が1万㌧程度しかないにも拘わらず、これを資源量で「高位」と呼んでいます。

ズワイガニイカナゴに至っても日本の海の周りだけが海水温の上昇で資源量が増えない、もしくは減少というのはおかしくありませんか?

海水温の上昇に対する矛盾

水産資源管理が機能していないことを海水温の上昇に置き換えてしまうと辻褄が合わない現象が起きます。

イカナゴの資源が激減した理由が海水温だとすると、なぜ青森(陸奥湾)という水温が低い北の漁場で資源が崩壊した後に、伊勢湾、播磨灘、大阪湾、仙台湾、福島といった北と南が入り混じりながらイカナゴがいなくなってしまったのか?

なぜマイワシは寒冷な気候の方が増えやすいといわれている一方で、同じ北海道の道東沖で獲れていたサンマは海水温の上昇っで激減しているのか?

サンマは、道東沖の暖水塊が来遊を阻害していると言われています。しかしその沖合の公海上でもサンマ資源が激減している理由は何か?

海水温の上昇は水産資源に影響を与えてしまいます。だからこそ予防的アプローチを行って水産資源をサステナブルにする努力が不可欠です。

ノルウェーを始めその恩恵を享受して漁業や水産業が発展を続ける国もあれば、残念ながら日本のように資源管理が機能していないことを海水温の上昇に責任転嫁してして衰退してしまう国もあります。

6/4に水産庁の「不漁問題に関する検討会」の提言が出されました。サンマ・スルメイカ・サケの不漁の原因として温暖化が不漁の原因と明記されています。

どちらが、現在、そして将来にとってよいかはいうまでもありません。

崩壊寸前のイカナゴ漁が、ノルウェーでは絶好調なわけ

(ノルウェー青物漁業協同組合)

日本では崩壊寸前のイカナゴ漁

昨年(2020年)の同時期、イカナゴ(小女子)の水産資源管理に関する問題を発信したところ、1,000を超える「いいね!」と「シェア」がありました。日本では、残念ながら国際的な視点で解説されることがありません。そこで、何らかの参考になるように再度発信しておきます。

播磨灘大阪湾伊勢湾、福島沖、仙台湾陸奥湾とかつてのイカナゴ漁場は次々に獲れなくなり崩壊して来ています。供給量の減少で価格が高騰、残った漁場では一生懸命獲ろうとする強い力が働き、やがてその漁業の魚もいなくなってしまいます。

何年禁漁しても資源が戻らない海域も少なくありません。それだけ資源量が激減しているのです。根絶やしに近い状態まで獲ってしまった資源を回復させるのは至極困難であり、長い年月と厳しい漁獲制限が不可欠となります。

海がきれいになり過ぎた、海水温の上昇、砂利の採取など漁獲量激減に対して、様々な理由が付けられネットで拡散されて変に納得(誤解)されています。しかし、国際的な視点から分析すると本質的な原因がわかります。

イカナゴ 

ところで、海がきれいになり過ぎたからなら、江戸時代や室町時代にイカナゴはいなかったのか?海水温の上昇が原因なら、なぜ北の陸奥湾の資源が、播磨灘・大阪湾などの西の漁場より先に消えてしまったのか?砂利の採取は、激減したここ数年のことなのか?震災で漁獲ができなくなっていた福島では、なぜ再開後にイカナゴが獲れたのか?そしてなぜ今は獲れないのか?

魚が消えていく本当の理由が理解されずに水産資源が減少を続けていることは、実に痛ましいことです。それらの理由が関係ないとは言いませんが、最も大きな力である、漁業という人間の力をあまりにも過少評価していないでしょうか?

その本当の理由とその対策は海外との比較で明確に分かってきます。

今年も絶好調ノルウェーのイカナゴ漁

(hi.no)

日本とノルウェーのイカナゴ漁を比較してみましょう。まず似ているところは、砂に潜る性質から漁場が砂場であること。ノルウェーの場合は、地形上砂場が少なく、イカナゴ漁が行われるのは、上図の紫色の箇所に点在している程度です。漁場という面では、日本の方が恵まれていると言えるでしょう。また、春に漁獲時期を迎えるのも似ています。

さて、次は異なる点です。①昨年(2020年)の漁獲量は日本は1万㌧程度に対し、ノルウェーは25万㌧と大きな差があること。しかし、15年ほど前までは日本の方が多い年もありました②漁獲枠の有無。日本では自主管理です。宮城県がある仙台湾では、昨年・今年と9,700㌧もの漁獲枠が設定されましたが、2年連続で実質ゼロ。事前の調査でもいないことが分かっていても枠はそのままで、機能としてもゼロです。

一方で、ノルウェーでは科学的根拠に基づきTAC(漁獲可能量)が設定され、毎年TAC通りの漁獲になります。かつ上図の漁場で実際に操業できるのは1/4であり、手つかずの漁場が残されて行きます。③日本では食用となる稚魚狙いですが、ノルウェーは成魚狙いで非食用(フィッシュミール向け)です。

(ノルウェー青物漁業協同組合)

上の表は今年(4/29)の水揚げ状況です。8隻で10,180㌧と日本の年間水揚げ量を1日で漁獲しています。2,050㌧、2,400㌧と一回の漁獲で2,000㌧を超えている漁船もいますね。これらの漁船は、サバやニシンも獲る大型船で一網打尽です。しかしながら、資源管理ができているので、このように大量に漁獲しても資源に問題ありません。日本と異なり、資源の持続性に効果がある漁獲枠が設定されているからです。

ノルウェーで海水温は上昇している

ノルウェーバレンツ海の海水温推移(ノルウェー青物漁業協同組合)

上のグラフは、ノルウェー北部バレンツ海の海水温の推移です。ノルウェーでも海水温の上昇は問題になっています。しかしながら、水温の上昇により資源量に悪影響が出ている環境では、その分も考慮されることになるでしょう。実際の資源量は、サバ・ニシン等の青魚、そしてマダラ・カレイ類などの底魚共に、短期的な資源量の増減は別にして、中長期的には横ばい・もしくは増加傾向にあります。

生物多様性とイカナゴ

イカナゴはシシャモなどの小魚と同様に、他魚種の重要なエサにもなっています。資源が減れば、人間が獲り尽くして困るのと同様に、それを捕食していた魚種にとっても深刻な問題となります。

例えば、ノルウェーでのシシャモの漁獲枠設定に際しては、マダラなどの他魚種が食べる分も考慮して漁獲枠が設定されています。また、シシャモやイカナゴ漁に関して、マダラなどの混獲が厳しく管理されています。

日本のように漁獲枠も科学的根拠もほぼなく、資源崩壊が近づくと様々な理由を付けて責任転嫁に走るのとは大きな違いです。言うまでもなく、現状の後者の漁業には未来はありません。

資源調査結果通りのイカナゴ漁

9,700㌧もの漁獲枠が設定されていた仙台湾での事前調査はゼロ(牡鹿半島で2尾)で結果は漁獲ゼロ。

兵庫県での親魚密度調査では昨年(2019年)の5.3尾に対して7.8尾。ただし平年(2009年~2018年の10年間)の132.3尾より大幅に減少しています。漁獲量は147㌧(2020年)⇒1,467㌧(2021年)と調査結果以上に前年10倍のようにも見えますが、実際のところ昭和の時代には2~3万㌧は漁獲されていたので、大したことはなく、資源が回復しているわけではないのです。

資源調査結果は、イカナゴに限らずその傾向をとらえるのに役立っています。しかしながら、実際の漁業管理ができていないことが致命的に問題なのです。

経済面で考える日本の漁業の問題

ノルウェー漁業省のデータを編集 ノルウェークローネ=¥13.3(2021年5月)

資源が減り、資源が減少することでイカナゴの価格は高騰しています。兵庫県を例に取ると今年(2021年)はキロ¥844(1,467㌧)、昨年(2020年)は¥2,578!(147㌧)でした。一方でノルウェーは昨年(2020年)¥48(25万㌧・約120億円)と単価は食用でないこともあり、大幅に安いのですが数量が、桁違いに数量が多いために水揚げ金額は大きく、漁業者は潤っています。

どんなに単価が上がっても資源が無くなってしまい、水揚げ数量がゼロになれば金額もゼロになります。伊勢湾、仙台湾、陸奥湾では今年もイカナゴの水揚げはゼロなので水揚げ金額もゼロでした。

水産資源管理がサステナブルに行われると、単価は下がり消費者にメリットがある一方で、漁業者に取っては単価も数量も安定してするメリットがあります。一方で、その逆は資源も地方も崩壊してしまう恐ろしい現象が起きてしまうのです。果たして我々は、どちらを選択するべきなのでしょうか?

水産資源管理の優等生 ホタテガイ

資源管理の成功例 北海道のホタテガイ

ブログ投稿はこの記事で42回目。おかげさまで「いいね!」「シェア」は累計で4万回を超えました。客観的な事実に基づき、国際的な視点から水産資源管理に関する発信を続けるメディアとして、社会そして世界に役立つことを願っています。

資源量が激減し衰退が止まらない日本の水産業。そんな中で、世界に誇れる数少ない事例があります。それが北海道のホタテガイ漁業です。

資源管理の理屈がわかる 地まきで育てられるホタテガイ

ホタテガイの増養殖は大きく分けて2つあります。一つは、貝に穴を開けて吊るす垂下式。主に北海道の噴火湾や本州で行われている方法。もう一つは主に北海道のオホーツクなどで行われている海区を区切って稚貝をまく、地まきと呼ばれるやり方です。ここでは、後者に焦点を当てて説明します。地まきで育ったホタテガイは、主に貝柱を取る加工に向けられます。

ホタテガイが優等生となる仕組み

日本のホタテガイ水揚量の推移 

今から数十年前、ホタテガイもご多分にもれず乱獲で、枯渇に近い状態になってしまいました。ところが上のグラフを見てください。今では年間漁獲量は40~50万㌧前後で安定しています。

他の水産物と異なるのは、機能する資源管理が行われるようになったからでした。

上の図をご覧ください。ホタテガイの増養殖の仕組みをご説明します。まず使用する海を4つの海区(例)A,B,C,Dに分けます。それぞれの海区を4つの畑と捉えて下さい。

オホーツクでは、収獲までに4年かけます。図では右のD海区に、3年前稚貝がまかれていた前提になっています。2年前にC海区、1年前にB海区、そして今年A海区に稚貝がまかれるという前提です。

4年目になるとD海区にまかれていた稚貝は、立派なホタテガイに成長し、これを収獲します。翌年は同じく順番で4歳になっているC海区で収獲という順番です。もちろんD海区には、水揚げ後に再び稚貝をまいて3年後を待ちます。

ホタテガイを他の漁業に置き換えると分かること

もし、4歳の収獲サイズまで待たず、まいてすぐ獲ってしまったらどうなるでしょうか?4年後を待たず、A海区(1歳)〜C(3歳)海区のホタテを獲ってしまったらどうなるでしょうか?漁獲自体は容易にできてしまいますが、、、。

これこそ、日本の多くの魚種で起こっている成長乱獲なのです。例えば、サバは4歳まで待てば、立派な価値がある成魚に育ちます。

しかし、1歳のローソクサバ、ジャミサバと呼ばれる日本では食用に向かないサバの幼魚まで、容赦なく漁獲されてしまいます。このため、なかなか成長して産卵するチャンスが与えられません。サステナブルなノルウェーのサバ漁では絶対に行われないサバの幼魚の一網打尽。

日本で漁獲される魚は、サバ、マダラ、クロマグロなど、大西洋で漁獲される同じ仲間の魚より、概して小さいことがよくあります。これは偶然ではなく、残念ながら「大きくなる前に獲ってしまうから」という単純な理由がほとんどです。

ホタテガイは4歳まで成長を待てば価値が上がり、大きな貝柱が取れます。ホタテガイは主に春に産卵します。水揚げされる4歳貝は、すでに成貝です。オホーツクの水揚げ時期は、産卵後の主に夏から秋にかけて行われるので、水揚げ時には産卵は終わっており、卵は海の中です。

こうやって、まるで畑から作物を収穫するかのような漁業が行われており、オホーツクのホタテ増養殖業者は高収入を得ています。稚貝を海にまいてから3年、つまり価値があり、資源管理にもよい4歳貝を水揚げし続ける仕組みが出来上がっているからです。

畑の作物との違いは、水も肥料もあげる必要がないことです。ただ稚貝をまく際にはヒトデなどを除去する漁場造成が行われます。

実は、持続的な水産資源管理ができている国々では、それが魚であってもオホーツクのホタテガイのように、海を巨大な養殖場のように利用して、産卵させる親魚をサステナブルな量に保ちながら漁業を続けているケースがほとんどなのです。

北海道のホタテガイはMSC認証

取得が難しいMSC認証

北海道のホタテガイは、サステナブルな漁業の国際認証であるMSC(海洋管理協議会)認証を取得しています。

世界では、サステナビリティに対する関心が年々高まって来ています。そして認証が増えている一方で、その中身が本物かどうか問われてきています。

MSCのような水産エコラベルの目的は、認証数を増やすことではなく、資源を増やしてそれをサステナブルな量を維持しながら、漁業を続けることです。

失敗ばかりが目立つ日本の水産資源管理ですが、ホタテガイのような成功例もあるので、是非見習いたいものです。