ノルウェーサーモンは「最も危険な食べ物」なのか?
回転ずしや寿司などですっかり日本の市場に定着している養殖物のノルウェーサーモン(アトランティックサーモン)。ノルウェー輸出審議会(NSC)によるメディアへのキャンペーンで見る機会もあったかも知れません。
ところが「ノルウェーサーモン」と検索すると「最も危険な食べ物」「抗生物質」「殺虫剤」「エサに大量の小魚が乱獲されている」「河川で見つかるサケの50%以上が養殖サーモン」「小さな場所に押し込まれている」などネガティブ内容を含む検索結果がいくつも出てきます。
読むと「えっ!」と思う内容が多く、このため記事が拡散されて、Googleの検索上位に上がり、それらがさらに多くの人の目についています。そしてそれらのネガティブ記事に様々な尾ひれがつきそれが拡散。
Yahoo知恵袋でのやり取りもベストアンサーの返答自体が、そういったネガティブ記事の受け答えがベースになっており、留まるところを知りません。
ところが現場を見ると、非常に厳しく管理され、きれいで澄んだ海で養殖されているノルウェーサーモン。 今回は、それらの主だったネガティブ内容をデータ、国際ルール、統計などを基に検証します。
ダイオキシン、抗生物質、殺虫剤 ?
まずダイオキシンについてです。「養殖サーモンを食べるとPCBなどの害」、「上限は年間3食。」?こんな検索結果を見れば食べるのが怖くなってしまいますね。
ところが、ノルウェーの科学委員会(Norwegian Scientific Committeeでは「週に1kg以上食べても健康に害を及ぼさないとしています。(www.nifes.no)
ダイオキシンについて
グラフ見て頂くと一目瞭然ですが、ノルウェーでは、天然のサーモンの方が、養殖物よりもダイオキシンやPCBの含有量が多いというデータになっています。またサバやニシンよりも養殖サーモンの方が低いのです。
10年以上検査がされておらずでした。このため、「養殖物」という先入観による情報が一人歩きしたのでしょう。なお、この結果は2017年に発表されたものです。
毎年11,000尾のサーモンが検査され、PCB、ダイオキシン、重金属のレベルはEUの制限値をはるかに下回っています。
抗生物質について
上のグラフは、ノルウェーサーモンの抗生物質使用料と、養殖量の推移を表しています。これも結果は一目瞭然です。抗生物質の使用が多かったのは、30年以上前のことです。その間に生産量は5万トンから120万トンに激増。逆に抗生物質の使用量は99.9%削減されているのです。
ついでにノルウェーでの肉とサーモンにおける抗生物質の使用量を比較したグラフを見てみます。キロ当たり肉は175mgですが、サーモンはわずか0.00036mgです。
殺虫剤?(エトキシキン)について
次に「殺虫剤(エトキシキン)」がエサに混じって使われているということについてです。ノルウェーサーモンのエサには、フィッシュミール(構成比17%)が使用されています。
ところで魚粉には、乾燥した魚粉が自然発火しないように船舶で輸送する際には、エトキシキンを使用することが「義務付け」られています。また、使用料についてはWHOで基準が定められています。
日本には過去12ヶ月(2018年10月〜2019年9月)で21万トンのフィッシュミールが輸入されています。輸送手段は船舶です。もし、エトキシキンがダメなら、日本で養殖されているハマチ、マダイなどを始め、フィッシュミールをエサにしている養殖魚はどうなるのでしょうか?
エサに大量の小魚が乱獲されている?
ノルウェーでは、サバでもニシンでも大きくなれば食用になる魚を小魚の内に獲るような勿体ないことはしません。サバではノルウェーの食用向けの比率は99%で日本は同70%程度です。また釧路で水揚げされるマイワシでは90%がフィッシュミール(2018年)になっており、この件は、むしろ日本に当てはまってしまう内容です。
ちなみに、ノルウェー ではニシンをフィッシュミールにしています。しかしミールになるのは、頭、骨、内臓などの可食部を取り除いた残渣です。イカナゴのように食用にしていない魚は、丸のままフィッシュミールにしていますが、科学的根拠に基づき資源管理されており、乱獲には全く該当しません。
河川で見つかるサケの50%以上が養殖サーモン?
養殖のサーモンが逃げ出し、天然物と混じってしまうことは避けねばなりません。ノルウェーでは、サーモンが脱走した場合、1尾当たり約6,000円(500NOK)の罰金がかかります。
河川で見つかるサーモンの50%が養殖物という検索結果もありましたが、実際には5%以下というデータなのです。天然のサーモンの縄張りが荒らされたり、他の魚も含めてエサがなくなってしまうなどということもありません。
小さな場所に押し込まれている?
ノルウェーサーモンの養殖は、環境にとても配慮しています。上の養殖場の図の通りで、サーモンの比率はわずか2.5%であとは海水です。小さい場所で養殖などしていません。過密養殖とは程遠い健全な状態なのです。
実際、現場に行ってみると、養殖場は広いフィヨルドの中にポツンとあり、もっと養殖場があっても良いのでは?と思うくらいです。
また、販売に不可欠になってきている養殖版の水産エコラベル(asc認証)を取るためには、養殖する魚の環境や、使用するエサのサステナビリティの考慮も欠かせません。
まだまだ、ノルウェーサーモンに関する誤った情報発信はたくさんありますが、長くなるので今回は第一弾としてこの辺にしておきましょう。
“食べたら危険?ノルウェーサーモンの誤解を解いてみた (1)” への3件の返信