カツオが獲れなくなっている理由

知られていないカツオの漁業・一本釣りが主ではない

右肩下がりに減少が続く 近海・沿岸のカツオ一本釣り漁獲量 (農水省データを編集)

日本で鮮魚として出回るカツオ・近海の一本釣りで漁獲されるカツオの漁獲量が減少しています。上のグラフを見て下さい。日本がイメージするカツオ漁と言えば、土佐の一本釣りでは?しかし、残念ながらそれは過去のこととなりつつあるのかも知れません。

ところで、世界全体のカツオの水揚げも同じように減少しているのでしょうか?

中西部太平洋・カツオの国別漁獲量推移 水産庁

カツオの主力漁場である中西部太平洋の水揚げ量推移が上のグラフです。減るどころか大幅に増えたことが分かります。しかしそれは、カツオが増えたからではなく、漁船の数や漁法の発達によるもの。グラフの下の青い部分が日本の漁獲量です。もともと、日本は世界最大のカツオの漁業国でした。

また、日本の漁獲量推移をよく見ていただくと、一本釣りの最初のグラフと傾向が異なることに気づかれると思います。2019年の日本の漁獲量は23万㌧。過去10年間を見ても20万㌧台で横ばいです。その理由は、日本の漁船も遠洋漁業という形で、他国に交じって南の漁場で漁を続けているからなのです。

魚が減りだすと、しわ寄せは沿岸漁業者など小規模な漁業者に行きます。その理由は、大型漁船は、魚が減っても最後まで広範囲に漁場を求められるからです。一方で零細漁業になると、近くの漁場に魚がいなくなると直接影響を受けてしまいます。特に資源量が減っている時は、ノルウェーのマダラ漁で実行されているように、漁獲枠の配分で小規模の漁業者を優遇して守る配慮が必要です。

中西部太平洋・漁法別のカツオの漁獲量推移 巻き網漁が圧倒的に増えたことが分かる  (水産庁)

上のグラフをご覧ください。世界のカツオ漁は、漁獲量の主体が、一本釣りから、大半は漁獲効率が高い巻き網へと変わっていることが分かります。巻き網は効率が良く、ノルウェーサバなどでも主要な漁法です。しかし、TAC(漁獲可能量)や個別割当制度(IQ、ITQ、IVQ)の設定がないと、獲った者勝ちとなり、漁獲圧力が増して資源に悪影響を与えてしまいます。中西部太平洋でのカツオ漁にはまだ適用されていません。

海水温が上昇したら、日本の近海のカツオが増えるはずでは???

水産庁

カツオ漁場は(上図)の南太平洋が主体です。カツオの産卵場でもあります。日本では、サンマサケイカナゴなど海水温の上昇で魚が減ったという報道が度々されていますね。そうであれば、海水温の上昇で日本近海に回遊して来るカツオの量は増えそうなものですが、全然そうなっていないどころか逆に減っているのが現実です。それほど、漁獲が資源量に与える影響は大きいのです。

日本へのカツオの回遊が減った主な理由

相模湾で釣れたカツオ

それでは、なぜ日本へのカツオの回遊量が減っているのでしょうか?その理由として考えられるのが、南太平洋の主力漁場で最新の巻き網漁船が多数投入されていることが考えられます。探索のためヘリコプターを搭載した漁船が増えました。

カツオの日本への回遊パターン 水産庁

日本に回遊する前に漁獲されてしまうことへの影響が懸念されています。このため、日本はカツオの漁獲圧を下げるように国際会議で要望しているのですが、他の国々にとっては南太平洋の漁場には十分カツオがいる(初期資源の50%以上)という理由で取り合ってもらえていません。それどころか、他魚種で日本の資源管理対しての批判がかえってくる始末です。

サンマも同じですが、国別のTAC(漁獲可能量)交渉では、各国は自国の水産資源管理で起きていることを棚に上げにはできません。

ツナ缶とカツオ

欧米でカツオといえばツナ缶。

日本では、カツオといえばタタキやカツオ節というイメージですが、欧米市場となると圧倒的にツナ缶です(写真)。

その中で年々大きくなっている動きがあります。それはツナ缶に使うカツオの原料に、水産エコラベルの国際認証であるMSC認証を求めるというものです。欧米の流通業が扱ってくれなければカツオ自体の価値も無くなってしまうので、漁業者側は取得とその維持に必死です。特に巻き網の原料を避けて一本釣りのカツオを求める傾向が強くなっています。

しかしながら、すでに配備された大型の巻き網船が、一本釣りに転換するわけではありません。このため膨大な漁獲量の国別TAC設定と、その中での漁法別割当の実施が大きな課題となります。

日本のカツオ漁業の強みとFADs(集魚装置)

日本のカツオ漁では数百グラムしかないような小型のカツオは、一本釣りでは釣りませんし、売り場で見ることもないでしょう。日本の漁船は、素群れといって主にカツオの親魚の群れを追いかけて漁獲してます。

しかしながら、FADs(集魚装置・漂流物に集まる習性を利用)を浮かべ、その周りのカツオを一網打尽にしてしまう漁法が、資源に悪影響を与えていると言われています。FADsの周りには数百グラムにも満たないカツオの未成魚も集まり、一緒に巻かれてしまうからです。

そういったカツオの未成魚でも、ダシのような粒子にすれば大きさが分かりません。ペンシルガツオといった鉛筆の長さほどの小さなカツオまで漁獲され、それを日本がダシ用に輸入しているという漁業者団体からの指摘もあります。

欧米市場ではトレーサビリティやMSC認証の効果もあり、このような乱獲につながるカツオを使った商品は、流通業の調達方針などで排除されます。例えばドイツの流通大手メトロでは、カツオの資源と再生産を考慮し、1.8kg以下のカツオは扱わないという調達方針を出しています。

一方で日本の場合は、魚体の大きさに関わらず輸入されて流通していることが考えられ、遠くない将来、ESG投資などから指摘を受けるようになることでしょう。

カツオ漁については日本の漁業は比較的サステナブルです。一方で、消費者を含め我々日本人が、どのような原料を使っているのか気にしないようであれば、他国との国際交渉で同じテーブルに付くことも難しいのです。まずは、水産資源管理に関して国民が広く客観的な事実を知ることですね。

待てない漁業の末路・サンマ TAC(漁獲可能量)   ノルウェーと日本の大きな違い

サンマの水揚げが遅れているという単純な問題ではない

例年9月には水揚げのピークを迎えるサンマとノルウェーサバ。今年(2020年)は水揚げが進んでいません。実際の数字を基に、この2つの魚種のTAC(漁獲可能量)の運用状態を比較すると、問題の本質がよくわかります。

TACと実際の漁獲量が乖離している。これでは獲り放題ととなり、水産資源管理に役立たない。水産庁のデータ他から編集

まずサンマです。日本有数の水揚げ地である気仙沼では、このブログを書いている9月27日になっても水揚げなし。過去最も遅かった2013年の9月11日をすでに2週間以上も過ぎています。サンマの水揚げを待っている加工業者・物流業者、そして関連する様々な産業に影を落とします。

上のグラフをご覧下さい。国が決めたTAC(漁獲可能量)は26.4万㌧もあります。TACは昨年も同じですが、実際の漁獲量は僅か4.6万㌧で消化率は僅か2割弱でした。これは、水産資源管理にTACが全然機能していないことを示しています。

ノルウェーサバのTACと漁獲量はほぼ一致。ニシンやシシャモなどでもこれが通常のTACとその運用。

一方ノルウェーのサバですが、こちらも例年9月中旬ころから10月ころにかけて、毎週2~3万㌧前後の水揚げがあります。こちらも9月末現在、ほとんどありません。上のグラフをご覧下さい。ところがノルウェーのサバTACは21.4万㌧。昨年のTACは15.3万㌧でほぼ100%の消化率です。TACと実際の漁獲量は毎年、ほぼ100%で推移しTACが機能しています。

魚の水揚げが遅れているという点で、上記のケースは似ています。しかし、水産資源管理制度の大きな違いにより、ノルウェーサバの方は遅れていても、資源量は全く問題がない点で実に対照的なのです。

サンマでは毎年、最初のグラフの通りTACが実際の漁獲量と乖離していて機能不全。一方でノルウェーの場合は、下のグラフの通りTACと実際の漁獲量がほぼイコールで推移しています。前者では、TACが大きすぎるので、魚さえいればできるだけたくさん獲ろうとします。一方で後者は実際に漁獲できる数量はTACよりかなり大きく、たくさん獲るよりいかにして価値が高い魚を制限された漁獲量の中で選んで獲るかに焦点を当てます。時間の経過とともに、前者の資源量は減ってしまいます。

漁業者のブログから確認される公海でのサンマ漁の実態

サンマの漁獲量が減っている原因について、まるで海水温の上昇やサンマの漁場が形成される場所の近辺に暖水塊ができ、回遊が遅れているという報道があります。しかし、サンマにとって水温が冷たくて適水温であるはずの公海においても、サンマが獲れていない実態はほとんど報道されていません。このため、漁が遅れているだけという幻想が生まれているようです。もちろん、海水温の上昇は資源量に影響を与えます。しかし、問題の本質はそこだけではないのです。

公海上で操業をしている漁業者の方のブログをみると実態がよくわかります。現在の漁業である公海では、狭い漁場に各国の漁船が入り乱れて操業しています。台湾や中国の漁船は、洋上で冷凍する設備を備えているので、日本の漁船より大型です。大型の漁船が、強力な集魚灯で少ないサンマを集めて漁獲しています。

日本の漁船は、漁獲後に片道2日前後もかけてサンマを生で水揚げしなければなりません。また船の大きさの違いから、集魚灯の明るさでかなわないことは容易に想像できます。資源が減少していようがサンマを獲りまくる、実質的にルールもない無法地帯となっていることでしょう。

ノルウェーサバの場合はどうだろうか?

ノルウェーサバ まるで養殖場から魚を獲って来るようにTACの通り毎年漁獲される。

一方で、ノルウェーサバの場合はどうでしょうか?現在、サバの群れはノルウェー海域の外側にいます。資源状態が良いことは、シーズン前の夏の時期にEU、アイスランドなどとの広範囲にわたる共同調査で明らかになっています。

ノルウェーサバの場合は、ノルウェー、EUを始め実際の漁獲量とほぼイコールになるTACが設定されています。そして、大型の巻き網漁船に、漁船ごとに漁獲枠が個別割当制度(IVQ)が割り振られています。

その枠は実際に漁獲できる量より、大幅に少ない枠です。このため、漁船は、枠が消化できることは分かっているので遠く離れた漁場に、燃料をたくさん使って行かなくてもよいのです。仮に回遊経路が今年は違うようであれば、10月だろうと11月だろうと、その時期に漁場に行って、養殖場から魚を運ぶような感覚で漁獲するだけです。

ノルウェー海域ではなく、主漁場がEU海域になるようなら、そこまで行くだけ。片道6~12時間前後の漁場が、24~48時間程度になっても、大型のノルウェー漁船は鮮度を十分維持できます。

ただし、EU海域というのは、EUを離脱したほぼ英国の海域です。このためノルウェー・英国間での合意が、他のEU・英国間の交渉同様にはっきり決まっていなければ、英国がノルウェー漁船の操業に制限をかけてくるかも知れません。サバがいるのにノルウェー漁船がEU海域から閉め出されて枠を取り切れなかったことが2009年(枠の消化率64%)にありました。この場合を除けば、今年も例年通りに漁獲枠はほぼ100%消化されます。

自分のこととして捉えると分かる

また、サンマが減った原因の一つとされる台湾・中国の漁船についても、相手の立場に立ってみると分かることがあります。1977年に設定された200海里漁業専管水域の設定で、世界中で遠洋漁業の漁船は一気に閉め出されてきました。

実はその最大の影響を受けたのは日本の漁船です。各国は、新しい漁場を探し回り、隙あればルールが無ければ「公開自由の原則」で操業ができる200海里の外側である公海に進出してきます。最近では、中国船によるガラパゴス諸島の外側・公海上での漁が問題になりましたね。

水色とピンクの境目がEEZ 本来は日本のEEZの外側の国別TACを設定しておくべきであった。水産研究・教育機構

サンマの主要漁場である日本のEEZの外側である公海には、サンマに関する規制がなくフリーの漁場になっていました。これを狙い、漁船が建造されたり、他の漁場から展開し漁獲実績を積まれてしまいました。こうなると、相手国の漁船は後に引かなくなってしまいます。これまで自由に操業できていた公海で、何で日本の指し図を受けねばならないのかとなってしまうのです。

日本としては、回遊して来る前のサンマまで漁獲されてしまい「沖獲り」が起きて漁業に影響が出ています。しかしこれも、かつては米国沖のスケトウダラや北洋での洋上でのサケ漁を始め、日本もさんざん他国のEEZの外側で操業して排除されてきたのと同じなのです。

歴史上、漁業では攻めることに慣れ切っていた日本。ところが防御対策に慣れておらず、大きな隙を突かれました。この状態で資源をサステナブルにした国別TACの設定は、漁船が投入されて漁獲実績ができてしまった後なので、極めて難しくなってしまいました。将来にわたる国家の利権が絡む交渉なので、サンマで日本が満足できる配分を得ることはすでにできないでしょう。その結果、獲りきれない国別TACの設定では、何の効果もありません。残念ながら痛みを伴うことは不可避で、時計の針はもどせず。

待てない漁業の末路

ノルウェーから水産資源管理で学ぶことは多い 

現在のサンマ漁は、日本も含む各国が漁を待てない状態になってしまい、資源の悪化に歯止めがかかりません。歯止めが一時的にかかるとしたら、余りにも漁が悪いために漁船が離れる場合でしょう。しかし、そうであっても国際的な国別TACの合意が無ければ、少しでも一時的に漁が回復しても、すぐに漁船が戻っきて同じ状態に陥るため解決にはなっていません。

ノルウェーを始めとする北欧の漁業でも、決して国家間の交渉は容易ではありません。しかしながら、獲り過ぎれば自分で自分の首を絞めることは理解されており、この点日本の場合と大きく異なります。

漁業者や漁船ごとに漁獲枠が決められていない商業魚種はほとんどありません。このため「待てる漁業」が実施され、資源がサステナブルとなり、かつ水揚げされる魚の価値が高まる傾向があるのです。

このブログを続けている理由は、広く漁業と水産資源管理に関し世界に目を向けていただき「正しい情報」を前提に理解を深めていただきたいからです。

マスコミの情報を鵜呑みにすることがいかに危険なことなのか、マスコミにも出している情報が正しいのか確認して発信してもらいたいのです。時間の経過とともに、これまでの日本は漁業者による自主管理ができているとか、世界に冠たる日本の資源管理などといったことは、第二次世界大戦時の大本営発表のようだったことに気づく時が訪れます。

その時が手遅れになった後ではないことを切に願います。

そしてマアジも減り始めた TAC(漁獲可能量)の不備

目立たないが確実に漁獲量が減り続けるマアジ

サンマが、スルメイカが、そしてサケがと漁獲量の激減が近年ニュースになっています。しかし同じ大衆魚でも、漁獲量の減少があまり話題になっていないのがマアジです。

漁獲量が減り続けるマアジ  農林水産省データを編集

そのマアジの漁獲量も地道に減り続けていて、ついに昨年(2019年)はグラフの通り10万㌧を下回ってしまいました。極端な減少ではないので、脚光を浴びていませんが、TAC(漁獲可能量)は大きすぎて機能しておらず、日本の減り続ける他の魚種と同じパターンです。

2018年のTACは、21.7万㌧で漁獲量は10.6 万㌧と49%の消化率。2019年は21.3万㌧のTACですが、漁獲実績は9.7万㌧なので46%の消化率。しかも個別割当ではないので、まじめに考えている関係者はいないことでしょう。

誰も解説しないマアジの漁獲量推移

サバが大漁だった時期は、アジを漁獲する九州の漁船が、たくさん太平洋側にサバを獲りに来ていた。

上のグラフを見てください。赤がサバ類(主に太平洋マサバ)で青がマアジの漁獲量推移を示しています。マアジの漁獲量推移は、1970年代後半と現在とは同じように見えるかも知れません。しかしこの時期に漁獲量が減ったのは、資源量が少なかったからではありません。1970~1980年代は太平洋マサバが大漁でした。

このため、東シナ海などの南で操業していた九州船団を主体に、太平洋のマサバ漁に向かって長期に渡って滞在していました。このためアジへの漁獲圧力が減ったと考えられます。当時長崎の船団が銚子の漁港を埋め尽くして賑やかだったいたと聞いています。

ただし、太平洋でのマサバの漁獲量は1990年に入ると激減。そこで九州の船団はもとのマアジの漁場に戻り、一時的な期間に漁獲量が再び増加したというわけです。ちなみに、太平洋サバの漁獲量激減で、急激に10万㌧以上のサバがノルウェーから輸入されるようになりました。

そして今度は再びマアジの漁獲量の減少が止まらないという状況なのです。1970年代の漁獲量の減少は、一時的にマサバを狙ったために獲らなくなったからと考えられます。しかし今度は獲り過ぎて減ってしまったからなので、その違いは実に大きいのです。

マアジが減少して行く背景 

デンマークで水揚げされていたアジ

マアジもマサバも同じように漁獲できるのか?というとそうではありません。マサバは比較的漁獲が容易で、巻き網で一網打尽にし易い魚種です。しかしながら、マアジは泳ぐのが意外と早く、巻き網ではマサバのように獲れません。欧州でアジの主要漁獲国であるオランダやアイルランドといった漁船が、トロール漁法により網を巻くのではなく、早いスピードで曳いてアジを漁獲しています。ノルウェーの大型巻き網漁船でも、なかなかアジは獲れません。

アジはなぜ漁獲量の減少は続いているのに極端には減ってこなかった理由は、この辺の漁獲の難しさにあると考えられます。

マアジの不思議 用途

国産マアジの開き。一枚100円で見かけることは減った。

刺身、タタキ、開き(干物)、フライ、南蛮漬けなど多くの料理方で人気があるアジ。ここではその中でも最もポピュラーなアジの開きについて、解説します。アジの開きの品質は、鮮度は勿論のこと、脂ののり具合によって決定づけられます。

脂がのったアジの開きは、腹骨の部分まで柔らかくて食べられます。不思議なことに同じ青物でも、サバやニシンは欧州で人気があるのですが、アジはほとんどと言ってよいほど売られていません。

このため、欧州の脂がのったアジは、開きの原料として大量に日本に輸入されていました。国産の原料よりもサイズが大きいので、アジの開きの市場は大きめのアジ(150~200g程度)を使用した欧州産と小さめ(80~100g程度)のアジの2種類で売り場に並んでいたことが少なくありませんでした。そしてアイルランドやオランダ、そしてノルウェーから輸入されたアジが大きめな干物になって提供されていました。

北欧で失敗したアジの資源管理

黒線は各国の国境線・EEZ アジやサバはこの黒線を超えて回遊。このため漁獲量に対する各国の合意が不可欠。

ところが、北欧アジの輸入量は2019年で約9千㌧と2010年での3万㌧と比べても大きく減少しています。その原因は買い負けなどではなく、資源の減少が原因で漁獲量の減少から来ています。ノルウェーを始めとする欧州の水産資源管理は良い例がほとんどですが、アジは例外です。

失敗している理由は、日本のような資源管理をしていることにあります。サバやニシンを始め、漁獲枠と実際の漁獲量がほぼイコールなのがノルウェーを始めとする北欧型の資源管理なのですが、アジは違います。

日本のように獲り切れない枠が設定され、また船ごとの枠はないので、最新の大型巻き網船が容赦なく漁獲していました。日本同様に資源は崩壊に向かったのです。

大型で脂がのったノルウェーで主に10~11月に漁獲されるアジをノルウェーアジと呼んでいます。主にEU海域に回遊し、秋になると一時的にノルウェーのEEZ(排他的経済水域)に回遊してきます。

もともとEU側はこのアジに漁獲枠を設定していました。ノルウェーで独自に漁獲枠を設定すれば、同じ魚に対して別々の枠、つまり合計すれば乱獲につながってしまいます。ノルウェーは2009年に独自に突然10万㌧ものアジ枠(同年の漁獲は7万㌧)を設定しました。

それまでノルウェーは、アジに漁獲枠を設定していませんでした。ノルウェーらしくない設定ですが、これには、政治的な理由があります。2007年頃からサバの回遊パターンが変わりました。それまで、9~10月の脂がのった品質的にベストの時期にEU海域からノルウェー海域に回遊してきたものが、EU海域に留まり、ノルウェー海域にほとんど回遊しなかったのです。

ノルウェー漁船は、EU海域でもサバの漁獲ができますが、その数量の解釈を巡りEU側がノルウェー漁船のEU海域内の操業にストップをかけてきたのです。もともと、EUの漁船のノルウェー海域でのサバ操業は実質認められていませんでした。

このため、不公平な面があったのですが、品質的にベストな時期のサバは、ノルウェー漁船がほぼ独占することになっていたのです。今ではEU漁船は10月以降でノルウェーのEEZ内でのサバ漁が可能になっています。

しかし、これを期にEUが同海域でのノルウェー漁船のサバ漁を止めたことで、ノルウェーではサバの漁獲枠を取り残す初めてのケースとなりました。

そのタイミングで突然設定されたのが、上記のアジの漁獲可能量(TAC)。EU側からは批判が出たのはいうまでもありません。

結局アジに関しては、資源の激減による大不漁で苦しんでいる今のサンマ漁と同じようなケースとなりました。獲り切れないザル枠が設定されたままで、資源も漁獲量も減少。日本の市場からは、脂がのった大型のノルウェーアジはほとんど姿を消すことになってしまったのです。

結局まともなTAC(漁獲可能量)がないと同じことが起こってしまいます。ましては、それが漁船や漁業者に割り振られていないとなると、もはや無法状態での乱獲が始まり、例外なく魚は消えて行くのです。それだけ、我々人類が、水産資源を始めとした生態系に与える影響は大きいのです。

そしてその事実はほとんど知られれず、海水温、外国、クジラなどに責任転嫁され多くの人がそれを信じているので、何の解決にも向かいません。大事なことは、水産資源管理に関する広く本当のことが知られることではないでしょうか?

サンマ大不漁と品質の関係

【御礼】昨年(2019年)の10月にサンマの投稿から始めて、このコンテンツで28回目。累計で3万回を超える「いいねとシェア」ありがとうございます!

魚が消えていく本当の理由と対策について、みなさんと共有できれば嬉しい限りです。事実を知らねば決して解決には向かいません。

漁場が遠いため、鮮度が落ちやすい。焼くと腹の部分弱く腹ワたが溶け出してしまった。
前年の原料で生産されたサンマの干物。通常の鮮度のサンマは腹の部分は焼いてもしっかりしている。

やせて脂乗りが今一つで高いサンマ

新物のサンマは2尾で580円、加工された開きは同380円 同じ店で購入。後者の原料は前年の物で原料価格が新物より安い。それぞれ焼いたのが上の写真。

少しずつ売り場でサンマが並ぶようになってきました。ただし、以前のように、1尾価格が100円前後という価格ではなくなっていますね。

写真は、上の新物のサンマが2尾で580円。下の加工されたサンマは2尾で380円。同じ店で購入。下は、昨年以前の原料のため、新物より原料価格が安い。それぞれ焼いたのものが、冒頭の写真です。

またよく見ると、魚がやせていて、何となく鮮度が今一つであることに気づくこともあるはずです。

鮮度が今一つである理由

サバ、イワシなど、青物は鮮度が命です。しかしながら、サンマの漁場が資源の激減と海水温の上昇により遠くなっています。8/20に主力の棒受け網魚船が出航。しかし漁場は北海道の花咲港から、片道2昼夜半もかけて向かう1,400㌔離れた「公海」です。

腹ワタが溶けて出かかっていた。とても刺身で食べられる鮮度ではない。

漁場が遠いので、採算を考えると漁が少ないと帰港しづらいところです。このため、最初に獲った魚が古くなっていることがあるのです。さらに漁獲してすぐに帰っても2昼夜半。それからせりにかけて、北海道から全国へデリバリーされて売場に並ぶまでは、どうしても物理的に長い時間がかかります。

つい数年前までの漁場のように 日帰りで持ち帰れる距離ではなく、魚を鮮度が良い状態で水揚げすることが難しくなっているのです。

一方で資源が豊富であれば、群れが広範囲に餌を求めて広がって行きいます。このため、近い漁場で短時間で獲れる機会が増えて、対照的に漁獲から水揚げまでの回転が早くなり、鮮度も操業効率も向上します。

やせていている理由

主に海水温の上昇によるためか、エサとなるプランクトンが減少して、海の栄養分が不足しています。このため魚の成長が遅くなったり、やせている傾向が見られます。

サンマの魅力といえば、焼くとジューっとしみ出してくる脂。やせているとその脂が少なく、パサパサしてしまいます。そうなると美味しくないとなりますよね。

価格について

水揚げ量が極端に減れば、価格は高騰。価格が上昇しても、その魚に価値があれば買う人もいます。しかしながら、やせていて美味しくないのに価格が高ければ、消費者は離れてしまいます。

大不漁とはいっても、 三陸海域での漁場形成が予想されている10月の後半頃までには、何回かはまとまった水揚げが期待されます。ただし、その回数は連日1尾100円で当たり前のように売られていた以前とは異なることでしょう。

また同じ1尾の価格であったも、150gと100gでは異なります。価格が安くても、よく見るとずいぶん小さいと気づくことがあると思います。

水揚げ量の減少により、大漁が続いていた頃には鮮魚用にしていなかった小型のサンマまで流通させざるを得なくなります。このため、余計に価格が高いわりにボリュームがなく、美味しくないとなりやすいのです。

過去最低より悪い8月の水揚げ量

凶漁・異次元の水揚げ量・過去最低などと表現された昨年のサンマ漁。そして今年は、その昨年よりもさらに悪い水揚げで漁が始まっています。8月の水揚げ量は、過去最低だった昨年の900㌧の「さらに8割減」でした。

あまりにもサンマがいません。しかしながら、これは事前調査による予想通りの展開でもあります。

少し無理して考えれば、漁が遅れているという捉え方もできます。ただし漁期の終わりはふつう変わりません。そうなると、シーズン全体では水揚げ量は大変少ないということになります。そして、鮮魚が少なかっただけでなく、冷凍して周年流通させるための解凍サンマやサンマの開き原料も少なくなります。

日本の食を支えてきたサンマが大きな転機を迎えてしまっています。その問題と対策については下記の3つのブログに明記しました。

サンマが消えて行く本当の理由 サンマ・本当はどうなっているのか? サンマ不漁 誰も言わない最も深刻な問題