そしてマアジも減り始めた TAC(漁獲可能量の不備) 

目立たないが確実に漁獲量が減り続けるマアジ

サンマが、スルメイカが、そしてサケがと漁獲量の激減が近年ニュースになっています。しかし同じ大衆魚でも、漁獲量の減少があまり話題になっていないのがマアジです。

漁獲量が減り続けるマアジ  農林水産省データを編集

そのマアジの漁獲量も地道に減り続けていて、ついに昨年(2019年)はグラフの通り10万㌧を下回ってしまいました。極端な減少ではないので、脚光を浴びていませんが、TAC(漁獲可能量)は大きすぎて機能しておらず、日本の減り続ける他の魚種と同じパターンです。

2018年のTACは、21.7万㌧で漁獲量は10.6 万㌧と49%の消化率。2019年は21.3万㌧のTACですが、漁獲実績は9.7万㌧なので46%の消化率。しかも個別割当ではないので、まじめに考えている関係者はいないことでしょう。

誰も解説しないマアジの漁獲量推移

サバが大漁だった時期は、アジを漁獲する九州の漁船が、たくさん太平洋側にサバを獲りに来ていた。

上のグラフを見てください。赤がサバ類(主に太平洋マサバ)で青がマアジの漁獲量推移を示しています。マアジの漁獲量推移は、1970年代後半と現在とは同じように見えるかも知れません。しかしこの時期に漁獲量が減ったのは、資源量が少なかったからではありません。1970~1980年代は太平洋マサバが大漁でした。

このため、東シナ海などの南で操業していた九州船団を主体に、太平洋のマサバ漁に向かって長期に渡って滞在していました。このためアジへの漁獲圧力が減ったと考えられます。当時長崎の船団が銚子の漁港を埋め尽くして賑やかだったいたと聞いています。

ただし、太平洋でのマサバの漁獲量は1990年に入ると激減。そこで九州の船団はもとのマアジの漁場に戻り、一時的な期間に漁獲量が再び増加したというわけです。ちなみに、太平洋サバの漁獲量激減で、急激に10万㌧以上のサバがノルウェーから輸入されるようになりました。

そして今度は再びマアジの漁獲量の減少が止まらないという状況なのです。1970年代の漁獲量の減少は、一時的にマサバを狙ったために獲らなくなったからと考えられます。しかし今度は獲り過ぎて減ってしまったからなので、その違いは実に大きいのです。

マアジが減少して行く背景 

デンマークで水揚げされていたアジ

マアジもマサバも同じように漁獲できるのか?というとそうではありません。マサバは比較的漁獲が容易で、巻き網で一網打尽にし易い魚種です。しかしながら、マアジは泳ぐのが意外と早く、巻き網ではマサバのように獲れません。欧州でアジの主要漁獲国であるオランダやアイルランドといった漁船が、トロール漁法により網を巻くのではなく、早いスピードで曳いてアジを漁獲しています。ノルウェーの大型巻き網漁船でも、なかなかアジは獲れません。

アジはなぜ漁獲量の減少は続いているのに極端には減ってこなかった理由は、この辺の漁獲の難しさにあると考えられます。

マアジの不思議 用途

国産のアジの開き。一枚100円で見かけることは減った。

刺身、タタキ、開き(干物)、フライ、南蛮漬けなど多くの料理方で人気があるアジ。ここではその中でも最もポピュラーなアジの開きについて、解説します。アジの開きの品質は、鮮度は勿論のこと、脂ののり具合によって決定づけられます。

脂がのったアジの開きは、腹骨の部分まで柔らかくて食べられます。不思議なことに同じ青物でも、サバやニシンは欧州で人気があるのですが、アジはほとんどと言ってよいほど売られていません。

このため、欧州の脂がのったアジは、開きの原料として大量に日本に輸入されていました。国産の原料よりもサイズが大きいので、アジの開きの市場は大きめのアジ(150~200g程度)を使用した欧州産と小さめ(80~100g程度)のアジの2種類で売り場に並んでいたことが少なくありませんでした。そしてアイルランドやオランダ、そしてノルウェーから輸入されたアジが大きめな干物になって提供されていました。

北欧で失敗したマアジの資源管理

黒線は各国の国境線・EEZ アジやサバはこの黒線を超えて回遊。このため漁獲量に対する各国の合意が不可欠。

ところが、北欧アジの輸入量は2019年で約9千㌧と2010年での3万㌧と比べても大きく減少しています。その原因は買い負けなどではなく、資源の減少が原因で漁獲量の減少から来ています。ノルウェーを始めとする欧州の水産資源管理は良い例がほとんどですが、アジは例外です。

失敗している理由は、日本のような資源管理をしていることにあります。サバやニシンを始め、漁獲枠と実際の漁獲量がほぼイコールなのがノルウェーを始めとする北欧型の資源管理なのですが、アジは違います。

日本のように獲り切れない枠が設定され、また船ごとの枠はないので、最新の大型巻き網船が容赦なく漁獲していました。日本同様に資源は崩壊に向かったのです。

大型で脂がのったノルウェーで主に10~11月に漁獲されるアジをノルウェーアジと呼んでいます。主にEU海域に回遊し、秋になると一時的にノルウェーのEEZ(排他的経済水域)に回遊してきます。

もともとEU側はこのアジに漁獲枠を設定していました。ノルウェーで独自に漁獲枠を設定すれば、同じ魚に対して別々の枠、つまり合計すれば乱獲につながってしまいます。ノルウェーは2009年に独自に突然10万㌧ものアジ枠(同年の漁獲は7万㌧)を設定しました。

それまでノルウェーは、アジに漁獲枠を設定していませんでした。ノルウェーらしくない設定ですが、これには、政治的な理由があります。2007年頃からサバの回遊パターンが変わりました。それまで、9~10月の脂がのった品質的にベストの時期にEU海域からノルウェー海域に回遊してきたものが、EU海域に留まり、ノルウェー海域にほとんど回遊しなかったのです。

ノルウェー漁船は、EU海域でもサバの漁獲ができますが、その数量の解釈を巡りEU側がノルウェー漁船のEU海域内の操業にストップをかけてきたのです。もともと、EUの漁船のノルウェー海域でのサバ操業は実質認められていませんでした。

このため、不公平な面があったのですが、品質的にベストな時期のサバは、ノルウェー漁船がほぼ独占することになっていたのです。今ではEU漁船は10月以降でノルウェーのEEZ内でのサバ漁が可能になっています。

しかし、これを期にEUが同海域でのノルウェー漁船のサバ漁を止めたことで、ノルウェーではサバの漁獲枠を取り残す初めてのケースとなりました。

そのタイミングで突然設定されたのが、上記のアジの漁獲可能量(TAC)。EU側からは批判が出たのはいうまでもありません。

結局アジに関しては、資源の激減による大不漁で苦しんでいる今のサンマ漁と同じようなケースとなりました。獲り切れないザル枠が設定されたままで、資源も漁獲量も減少。日本の市場からは、脂がのった大型のノルウェーアジはほとんど姿を消すことになってしまったのです。

結局まともなTAC(漁獲可能量)がないと同じことが起こってしまいます。ましては、それが漁船や漁業者に割り振られていないとなると、もはや無法状態での乱獲が始まり、例外なく魚は消えて行くのです。それだけ、我々人類が、水産資源を始めとした生態系に与える影響は大きいのです。

そしてその事実はほとんど知られれず、海水温、外国、クジラなどに責任転嫁され多くの人がそれを信じているので、何の解決にも向かいません。大事なことは、水産資源管理に関する広く本当のことが知られることではないでしょうか?

サンマ大不漁と品質の関係

【御礼】昨年(2019年)の10月にサンマの投稿から始めて、このコンテンツで28回目。累計で3万回を超える「いいねとシェア」ありがとうございます!

魚が消えていく本当の理由と対策について、みなさんと共有できれば嬉しい限りです。事実を知らねば決して解決には向かいません。

漁場が遠いため、鮮度が落ちやすい。焼くと腹の部分弱く腹ワたが溶け出してしまった。
前年の原料で生産されたサンマの干物。通常の鮮度のサンマは腹の部分は焼いてもしっかりしている。

やせて脂乗りが今一つで高いサンマ

新物のサンマは2尾で580円、加工された開きは同380円 同じ店で購入。後者の原料は前年の物で原料価格が新物より安い。それぞれ焼いたのが上の写真。

少しずつ売り場でサンマが並ぶようになってきました。ただし、以前のように、1尾価格が100円前後という価格ではなくなっていますね。

写真は、上の新物のサンマが2尾で580円。下の加工されたサンマは2尾で380円。同じ店で購入。下は、昨年以前の原料のため、新物より原料価格が安い。それぞれ焼いたのものが、冒頭の写真です。

またよく見ると、魚がやせていて、何となく鮮度が今一つであることに気づくこともあるはずです。

鮮度が今一つである理由

サバ、イワシなど、青物は鮮度が命です。しかしながら、サンマの漁場が資源の激減と海水温の上昇により遠くなっています。8/20に主力の棒受け網魚船が出航。しかし漁場は北海道の花咲港から、片道2昼夜半もかけて向かう1,400㌔離れた「公海」です。

腹ワタが溶けて出かかっていた。とても刺身で食べられる鮮度ではない。

漁場が遠いので、採算を考えると漁が少ないと帰港しづらいところです。このため、最初に獲った魚が古くなっていることがあるのです。さらに漁獲してすぐに帰っても2昼夜半。それからせりにかけて、北海道から全国へデリバリーされて売場に並ぶまでは、どうしても物理的に長い時間がかかります。

つい数年前までの漁場のように 日帰りで持ち帰れる距離ではなく、魚を鮮度が良い状態で水揚げすることが難しくなっているのです。

一方で資源が豊富であれば、群れが広範囲に餌を求めて広がって行きいます。このため、近い漁場で短時間で獲れる機会が増えて、対照的に漁獲から水揚げまでの回転が早くなり、鮮度も操業効率も向上します。

やせていている理由

主に海水温の上昇によるためか、エサとなるプランクトンが減少して、海の栄養分が不足しています。このため魚の成長が遅くなったり、やせている傾向が見られます。

サンマの魅力といえば、焼くとジューっとしみ出してくる脂。やせているとその脂が少なく、パサパサしてしまいます。そうなると美味しくないとなりますよね。

価格について

水揚げ量が極端に減れば、価格は高騰。価格が上昇しても、その魚に価値があれば買う人もいます。しかしながら、やせていて美味しくないのに価格が高ければ、消費者は離れてしまいます。

大不漁とはいっても、 三陸海域での漁場形成が予想されている10月の後半頃までには、何回かはまとまった水揚げが期待されます。ただし、その回数は連日1尾100円で当たり前のように売られていた以前とは異なることでしょう。

また同じ1尾の価格であったも、150gと100gでは異なります。価格が安くても、よく見るとずいぶん小さいと気づくことがあると思います。

水揚げ量の減少により、大漁が続いていた頃には鮮魚用にしていなかった小型のサンマまで流通させざるを得なくなります。このため、余計に価格が高いわりにボリュームがなく、美味しくないとなりやすいのです。

過去最低より悪い8月の水揚げ量

凶漁・異次元の水揚げ量・過去最低などと表現された昨年のサンマ漁。そして今年は、その昨年よりもさらに悪い水揚げで漁が始まっています。8月の水揚げ量は、過去最低だった昨年の900㌧の「さらに8割減」でした。

あまりにもサンマがいません。しかしながら、これは事前調査による予想通りの展開でもあります。

少し無理して考えれば、漁が遅れているという捉え方もできます。ただし漁期の終わりはふつう変わりません。そうなると、シーズン全体では水揚げ量は大変少ないということになります。そして、鮮魚が少なかっただけでなく、冷凍して周年流通させるための解凍サンマやサンマの開き原料も少なくなります。

日本の食を支えてきたサンマが大きな転機を迎えてしまっています。その問題と対策については下記の3つのブログに明記しました。

サンマが消えて行く本当の理由 サンマ・本当はどうなっているのか? サンマ不漁 誰も言わない最も深刻な問題