絶滅危惧種のウナギが豊漁といわれる怪!?


養殖に使う絶滅危惧種のウナギの稚魚が豊漁?

今年はウナギが豊漁?というのは本当???

今年は 絶滅危惧種のウナギが豊漁で安くなっているという報道を聞いたことはありませんか? 絶滅危惧種といえば、パンダやトキなどが有名ですね。同じ絶滅危惧種のパンダやトキが突然増え出したらビックリですが、ウナギではそんなことがあるのでしょうか?

このままでは、「絶滅危惧種」でも「資源量は高位」と評価されることも!?

もし今年の漁獲量が数年続いたら、今の日本の水産資源評価では、国際的には絶滅危惧種のままなのに、日本の評価では「高位」などという矛盾が起こりかねません。

その理由は、日本の場合、短い期間で資源を評価してしまうからです。このため、魚の減少と共に、資源評価における中位や高位といったバーがどんどん下がっていきます。

本来の資源評価は、最低でも50年以上前の漁獲量、資源量から正当な評価とはなりません。たくさん獲って減った後の資源量を元に、多い少ないという議論をしても、その結果出てくるのは矛盾と誤解を与える解釈だけです。

ニシンやズワイガニなど、日本の資源評価は低位に見える内容が高位にされています。このため資源管理が後手後手にという副作用が生じています。

今年はウナギが本当に安いのだろうか?

今年はウナギが安い?

豊漁なのでウナギが安いそうです。売り場では1尾2,000円前後の蒲焼きを見かけますが、これは果たして安いのでしょうか?ウナギの養殖は、シラスと呼ばれる稚魚を捕獲して育てます。完全養殖のウナギが出回るかどうかは、まだ先の話です。

ピークに比べヨーロッパウナギとニホンウナギの供給量は大幅に減少。価格が高騰している。
                                (出典 水産庁)

1990年代から2000年前半にかけて、欧州からウナギの稚魚が大量に中国へ輸出されて養殖されました。その主要輸出先は日本。上のグラフの通り、輸入量のピークは2000年代の前半で10〜13万㌧に及びました。しかしその後、輸入量は減り、2019年は約3万㌧となっています。

供給量が多かった期間では、ウナギの蒲焼の価格は、今のような4桁ではなく、3桁の価格でした。しかし、乱獲の影響で2009年にヨーロッパウナギがワシントン条約の附属書2に指定され、養殖に使う稚魚と日本向けのウナギの供給が激減し、価格の高騰が続きました。

安くなったというのは、あくまでも前年と比べてのことです。

キロ200〜300万円もしていたウナギの稚魚 

今年豊漁といわれているのは、その稚魚の漁獲量のことです。昨年は記録的な不漁となり、わずか3.7㌧しか採れませんでした。それが今年は17.1㌧と4.6倍になったので豊漁と呼んでいるのです。確かにこの2つの数字だけ見れば、数量は急激に増えているように思えます。

1番右の赤点が今年の数量。豊漁でも何でもないことが分かる  (出典 水産庁)

しかしです。過去の漁獲推移を表した上のグラフを見てください。一目瞭然ですが、もともと今年のさらに10倍ほどの年間150〜200㌧採れていた稚魚は激減したままです。

だから絶滅危惧種状態であることに、何の変わりもないのです。しかし何年かすると資源評価のバーが下がってしまい、少し増えただけでも資源量は中位だ高位だというおかしなことになってしまうのです。

このサイトで伝えたいこと

うな丼を適正価格で食べ続けるためには?

お伝えしたいことは、「おいしい魚を適正な価格で食べ続ける」ためにはどうしたら良いかということです。単に魚を食べずに保護するということではありません。

魚は水揚げ量が減れば価格が上昇します。漁業者は、漁獲量が減って、魚価が上がれば、よりたくさん獲ろうとします。しかしこれはごく当たり前のことです。

魚は資源管理を間違えなければ持続的に利用でき、食べ続けることができます。一方で、間違えてしまうと、魚が減るだけに留まらず、地域社会や産業にまで悪影響を与えてしまいます。残念ながら後者のケースが日本の北から南まで、あちこちで起こっています。

ところが、その逆の成功例が、ノルウェーを始めとした国々にあります。それを具体的な数字や写真グラフなどで伝え続けて来たことで、多くの方々に届くようになりました。

時間の経過とともに「なぜこんな評価や資源管理をしていたのか!」という声が増えています。

そこで手遅れにならない内に、魚が消えて行く状況を反転させる政策が作られ、このサイトがその手助けや根拠になることを願います。

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