ニシンが増えているって何のことカンナ?

これってニシンが増えているの?

 ニシンという魚をご存知でしょうか?その卵は「数の子」として正月には欠かせません。身の部分は、主に東北から北海道にかけて食べられています。もっとも、それらの大半は、卵は米国やカナダ、焼き物などで丸ごと食べる場合は、ノルウェーなどからの輸入物がほとんどです。

数の子 輸入品

 近年、ニシンの漁獲量が増えてきたとか、ニシンが産卵して精子で海が白くなる「群来」という現象がみられるようになってきたとか報道されています。

しかしながら、現在の漁獲量の増加をもって資源量が「高位・増加」といった評価は、大きな誤解を生んでしまいます。実際には、ほんの少しだけ回復の芽が出てきたかも知れない程度なのです。本来は、その芽を再び潰さないようにせねばなりません。

「資源復活」などとも言われていますが、4/22現在獲れているニシンは産卵後で、オスメスこみの価格はキロで僅か¥25程度。食用向けは一部でミールやエサ向けの用途が多いそうです。

非食用向けにニシンを獲っている国は、日本くらいでしょう。日本が米国、カナダ、ロシア、ノルウェーなどから輸入しているニシンは、2019年は約2万㌧で平均キロ約¥140/kgでした。キロ¥25という魚価は、ニシンとしてはあり得ない安さなのです。まさに水産資源の無駄遣い。なんてもったいないことでしょうか。

水産資源管理に大きな問題がある日本のニシンについて、下記のグラフで実態を明らかにしていきましょう。

水産教育・研究機構

上のグラフは、北海道周辺におけるニシンの漁獲量の推移を表しています。今から100年程前は、年間で50万㌧もの漁獲量があったことがわかります。それに対して、それに比べれば、現在はほぼ無いに等しい漁獲量です。2018年で約1万㌧の漁獲量です。

話50倍(2018年 漁獲量約1万㌧)ww 100年前は50万㌧前後の水揚げがあった。

グラフの中のさらに右上にあるグラフは、過去50年程度の漁獲量の推移を示しています。1980年後半に1年だけ7万㌧程度に増えていましたが、すぐにまた獲れなくなっています。近年は気持ち増加傾向のように見えますが、元の100年以上前からのグラフと比較すると、その増加量は微々たるものであることがわかります。

水産研究・教育機構

上の図は、北海道周辺のニシンの分布域と産卵場を示しています。ニシンは沿岸で産卵します。このため、大きくて広範囲に探し回れる漁船でなくても、沿岸で刺し網などを使って産卵に来る魚を狙って獲れば、漁獲はさほど難しくありません。

これは、秋田のハタハタなども同様で、産卵に来る魚を待ち構える漁業は、群れを探し回る漁業と比較して容易です。しかし、資源の持続性を考えずに漁を続けると、いつの間にか獲り過ぎで魚がいなくなってしまいます。

資源を持続的にしていくために、卵を産む魚をどれだけ残しながら漁業を続けていくかという考え方が、漁業先進国(北欧・北米・オセアニアなど)では基本中の基本です。

ニシンは、多獲性魚種。日本が増えたという漁獲量は、ノルウェーでのシーズン中の漁獲量としたら、僅か1~2日分程度しかありません。

水産資源管理に成功している、ノルウェー(約50万㌧・2019年)、アイスランド(約15万㌧2018-2019年)そしてロシア(約30万㌧・2019年漁獲枠)などの漁獲量は、日本より桁違いに大きいのです。

これで資源量が高位・増加って? 小学生に聞いたらどう答えるだろうか!

水産研究・教育機構

2019年度のニシンの資源評価は高位・増加ということになっています。しかし、一番先にお見せした水揚げ量の推移をグラフで見て、小学生にこれが増えているのか?減っているのか?聞いて見たら何と答えるでしょうか? 

過去20年以上前の獲れていたころの数量を対象外として、減った後のハードルが下がった水揚げ量に対して多いとか少ないとか評価しているようですが、これで正しい評価はできるのでしょうか?

漁業法の改正により「国際的に遜色がない資源管理」を行うことになりました。例え酷い結果でも、将来のために実態が分かる資源評価を行い危機的な状況を共有することが大切なはずです。

大西洋 北海ニシンの漁獲推移 1970年代に、数年間実質禁漁にして資源を回復させた

上のグラフを見てください。大西洋・北海のニシンの漁獲推移です。1970年代を堺にV字回復で資源も漁獲量も回復させて現在に至ります。日本で漁獲量が激減してしまった例は、1970年代に資源量が激減してしまった英国やオランダ(現EU)の資源管理に大きく影響を与えました。

ニシン資源量が激減してしまった際に、日本の北海道のニシンのようになっては大変だということになったそうです。そこで数年間実質的に禁漁を実施し、資源量を回復したという話を当時対応していた科学者に直接聞いたことがあります。

皮肉にも、EUが主に漁獲しているニシンはグラフの通り回復し、水産業に貢献し、重要な食糧となっています。

なぜ産卵期前後に獲ってしまうの?

4月中旬に購入した北海道のニシン。産卵後で脂が無く、身が赤い。
ノルウェーの脂がのったニシン 身の色が白っぽい

上の写真は、春・産卵後のやせた日本のニシンは身が赤っぽく腹はペラペラで薄くなっています。下の写真は、脂がのった秋の時期に漁獲されたノルウェーニシンです。脂があり身は白っぽく、腹も厚くなっています。産卵期は共に春です。

ノルウェーでは春に産卵したニシンは、エサを食べて再び脂がのる秋まで漁獲しません。産卵後の魚は脂がなくなるのは、同じです。ところが漁船ごとに厳格な漁獲枠が決まっているので、価値が低い時期の魚は狙わないのです。

ニシンの卵は数の子・別名は黄色いダイヤ

日本人が好きな数の子は、黄色いダイヤとも呼ばれるニシンの卵です。そのほとんどは、米国・カナダ・ロシアといった国々からの輸入品です。これらの国々の資源量は、年度差はありますが潤沢です。

数の子だけでなく、タラコ(スケトウダラの卵)もそうですが、水産資源管理ができている国々は、卵を産む親をどれだけ残せばよいかを、科学的根拠に基づいて計算して漁獲枠を決定しています。

日本も批准している国連海洋法でも言及されていますが、各国は魚を減らさずにとり続ける最大量(MSY)をベースにした管理をしていかねばなりません。

MSYをベースにした水産資源管理は、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)にも明記されています。ちなみにその期限は2020年ですが、日本のほとんどの魚は残念ながらMSYに程遠い状態です。

一方で、日本の場合は「不漁だ」「豊漁だ」などと前年の漁獲量などに対して、マスコミが騒いでいるだけで、MSYなど関係もなく、科学的ではありません。一方で、肝心の漁獲枠(TAC)さえないという、漁業先進国ではおよそ考えられない管理となっています。

大西洋では、ノルウェーを始め乱獲を反省し、漁獲枠を設定して水産資源管理に成功しています。ノルウェーがニシンに漁獲枠を設定したのは1971年です。そして豊かな資源と未来を漁業と水産業に残しています。

日本は約50年遅れとなりますが、科学的根拠に基づく漁獲枠を、2018年12月に改正された漁業法に基づいて設定するタイミングなのです。国民が正しい水産資源管理に対する情報を持ち、それに基づいて世論が形成されて行くことを望みます。

イカナゴもいなくなるわけ

イカナゴ(コウナゴ)の幼魚

イカナゴもいなくなるわけ

2020年4月13日に仙台湾のイカナゴ(コウナゴ)漁が解禁となりました。しかし、20数隻が出漁したものの漁獲ゼロで寄港。いったいどうなってしまっているのでしょうか?

播磨灘・大阪湾、伊勢・三河湾、仙台湾と次々に消えて行くイカナゴ。解禁しても、魚がいなくて一週間も経たない内に禁漁という播磨灘・大阪湾のようなケースもあれば、伊勢・三河湾のように2月上旬から中旬まで調査をしても採取量ゼロという例もあります。資源が戻らず、今年で5年連続禁漁しても解禁ができない漁場もあります。

神戸では、春になるとイカナゴのクギ煮は風物詩のようです。しかし残念ながら、その継続も難しくなってきているようです。イカナゴは、幼魚。このまま成魚になる前に獲り続ければ、「成長乱獲」で、資源は崩壊に向かってしまいます。

イカナゴ(コウナゴ) 成魚

イカナゴのように、幼魚の方が成魚より価格が高い魚種は、資源が減るとより獲り過ぎが起きやすくなります。供給が減れば魚価が上がります。漁獲量が少なければ、余計にたくさん獲ろうとする力が働いてしまうのは必然です。

減った理由を客観的に分析すると矛盾だらけ

激減を続けるイカナゴの水揚げ量

日本では、魚の資源が激減すると、無理に理由を付ける傾向があります。このため、向かう方向を誤らないよう、冷静に分析して矛盾を指摘する必要があります。

ただその機会はほぼありません。そして誤った情報がさらに誤解を生み続けてしまいます。このため資源管理の対応自体を間違えているケースが、後を絶ちません。(例:スルメイカサンマサケ他多数)

こじつけている理由に原因がないとは言いません。しかしながら、前述した科学的根拠に基づく管理を怠っているため、そこを改善しないと、一喜一憂は別として、中長期的に悪化することはあっても良くなることは決してありません。

水が綺麗になってなり過ぎたから?

海が綺麗になり過ぎたために、イカナゴが減ったという説があります。確かに栄養分が多い海の方が、魚は育ち易いです。ならば、イカナゴという魚は、人が海に様々な汚れを含む物質を流出させたことで増えてきた魚なのでしょうか? 

化学物質も何もなかった鎌倉時代や室町時代はもっとイカナゴは少なかったのでしょうか?ww。

砂の掘り過ぎで住む場所が減ったから?

イカナゴは、英語でsandeel(砂のウナギ)と言います。定着性が高く砂に潜る性質があり、夏は砂に潜って寝ているとも言われています。

生活環境がとても大切なのは言うまでもありません。ところで、前述のイカナゴがいなくなって禁漁しているのは、ここ数年です。砂の取り過ぎが減った原因という説もあるそうですが、砂の採取は、ここ数年で急激に始まったのでしょうか?ww。

福島県のイカナゴ漁は、他の海域での不漁が深刻化する中、築地市場(当時)を潤していました。特に2016年は、1日としての水揚げ量は史上最高ではないかという声も上がったほどです。

しかし2019年になると、ほぼいなくなってしまいました。わずか数年で砂を掘り過ぎたのではなく、震災の影響で一時的に漁獲圧力が下がっていて資源が回復していたイカナゴを他地域同様に獲り過ぎてしまったのではないでしょうか?

漁獲推移のグラフの通り、1970年代が漁獲量のピークでした。その後、日本の他の魚種同様に右肩下がりに漁獲量、つまりは同じパターンで資源量が減っている典型的な魚種の一つに過ぎないのです。

海水温が上昇したから?

水温は魚の資源量に影響を与えます。農作物も気温の影響により出来高が変わって来ます。ところで全国の漁場から高水温に弱いとされるイカナゴが消えて来ていますが、それなら南の漁場から消えて行くのでしょうか? 最近の例を見るとそうでもありません。

陸奥湾のイカナゴがほとんどいなくなって禁漁になったのが2013年でした。大阪湾や伊勢・三河湾よりも北に位置している漁場が先にダメになっています。

さらに、とどめを指すように減った理由が矛盾していることがあります。2013年当時、イカナゴがいなくなった理由は、何と「水温の上昇」ではなく、「水温の低下」だったという記事がありましたww。

次に、資源管理で成功しているノルウェーと比較してみます。ノルウェーの海にもイカナゴがいます。海水温の上昇が原因なら、氷が溶けて大きな影響が出ている北極海が有名ですね。

日本よりずっと北極海に近い、北欧の海域はきっとイカナゴが激減しているに違いないですね。実際は全く逆ですが、、、ww。

最後にノルウェーのイカナゴとの比較

農水省とノルウェー漁業省のデータを編集

このサイトでは、日本と世界、特にノルウェーと比較することで問題を明確化して、解決策を提示しています。イカナゴでもその傾向ははっきりしています。

ちなみに、水温が上昇していても、漁獲量と水産資源の動向は、日本と逆で上昇傾向にあります。日本と異なり、実際に漁獲できる数量より、大幅にセーブして漁獲を続けていることが、資源量の持続性にプラスに働いているのです。

イカナゴは、食物連鎖では他の魚のエサになる魚です。そのエサになる魚が減れば、単にイカナゴが減っただけではなく、他の魚の資源量にも悪影響を与えてしまいます。

例えば、今年禁漁になっているノルウェーやアイスランドのシシャモ(カラフトシシャモ)は、日本よりはるかに多い資源量です。しかし、シシャモの漁獲量を決めるのに際し、それをエサとしているマダラなどが食べて減る分も計算するのです。

ルウェーのサバでもシシャモの漁獲量や資源量の傾向でも同じパターンなのですが、同国では科学的根拠に基づいた漁獲枠を設定して、それを厳格に管理して水産資源管理を行なっています。

仙台湾のイカナゴの漁獲枠は異常では?

ノルウェーを始め、漁業先進国における実際の漁獲量は、漁獲枠とほぼイコールというのが当然です。ところで、日本ではイカナゴがこれだけ危機的なのに、これでは全く枠の意味がないというのが次の仙台湾のケースです。

昨年の漁獲量は、激減してわずか26トン。資源量が減っていることも明確です。しかしながら、漁獲枠は何と9,700トン。と昨年実績の373倍ですww。

しかも、仙台湾の20地点での調査船による調査で獲れたのはわずか1尾、、、。絶対に獲り切れない漁獲枠。そして、その被害を受けるのは、他ならぬ漁業者です。そして、地元の加工業者、ひいては消費者にも悪い影響を与えてしまいます。

資源が潤沢で持続的な水準であれば別ですが、幼魚を科学的根拠に基づかず獲り尽くしてしまうことが、いかに問題であることかをイカナゴの例は語っているのです。

2018年に12月に70年ぶりに改正された漁業法は「国際的に見て遜色がない資源管理」をすることになっています。骨抜きにされないためには、広く国民が関心を持つことが重要なのではないでしょうか?


北欧のシシャモ資源が必ず戻るわけ

国産シシャモの幼魚 小さくても容赦なく漁獲されてしまう

食卓や居酒屋などでおなじみ、脂がのった北欧産のカラフトシシャモ(以下シシャモ)。しかしその供給が、資源量の一時的な減少で禁漁となり細る見通しです。日本に供給しているのは、アイスランドとノルウェーです。アイスランドの禁漁は、2019年に続き2年目、別の水産資源ですが、ノルウェーのバレンツ海も同じく2019年から禁漁しています。

この他、東カナダでもシシャモが獲れますが、卵の量が多いものの、脂があまりないのが特徴です。

北欧(アイスランド、ノルウェー)産 シシャモ

ところで、シシャモなどをエサにするマダラなどの腹の中にはシシャモが一杯。でも禁漁なのはなぜでしょうか?

シシャモは3年〜4年で成熟して、ノルウェーやアイスランドの沿岸で産卵をして一生を終えます。それぞれ別の資源ですが、ノルウェーではロシアと共同で管理していて、卵を産む資源量(産卵親魚量)を95%‼︎の確率で20万トン残すルールとしています。

資源量が例えば30万トンと推測されると(30➖20=10) 10万トンが漁獲枠となります。一方で、20万トンを下回ると禁漁となります。アイスランドについても、同様に産卵親魚量を15万トン残す資源管理です(2015年に方式変更)。同じくこの水準を下回ると禁漁となります。

共に2〜3月が漁獲シーズンで、ノルウェーは、早くも禁漁を決めています。アイスランドは3月現在も調査を続けていますが、解禁は厳しい見通しです。

7隻の漁船がアイスランド近海をくまなく調査

資源調査においては、図のように、官民の漁船が手分けをしてアイスランドの周りをくまなく調査しています。

色が付いている箇所がシシャモの未成魚資源 3~4歳で産卵のためにアイスランド沖に回遊して来る

ところで、来期、2021年のアイスランドでのシシャモは約17万トンの漁獲枠が早くも現時点で科学者から勧告されています。これは、資源調査の結果1~2歳の未成魚の加入量が、平均値を大きく上回っているデータが出ているからです。

上の図はシシャモの資源分布を示しているのですが、まだ成熟しない未成魚の資源です。2021年には、一部が親になってアイスランド沖に産卵のために回遊してくるのがわかっているので、解禁見込みとなっているのです。

ところで、もし生活のためだといって、この未成魚の漁場まで行き、食用にならないシシャモを大量に獲ってしまったらどうなるでしょうか?

漁獲枠もなく、もしあっても獲り切れない枠だったり、個別割当制度(IQ,ITQ,IVQ)もなかったらどうなるでしょうか?

それが様々な魚種で、日本で魚を減らしてしまう漁業の問題なのです 。

シシャモの赤ちゃん 国産 北欧では絶対獲らないサイズ
シシャモの成魚 国産

写真は、日本のシシャモの写真です。日本では、シシャモに漁獲枠さえありません。年間の漁獲量は千㌧弱です。もちろん、単純比較はできませんが、日本の場合は、漁獲枠が機能していないので、小さな魚の漁獲成長乱獲」が様々な魚種で、日常茶飯事に起きています。

上の写真のようなシシャモの未成魚は、将来のことを考え、「絶対」に獲りません。

冷静に考えれば、日本では、様々な魚種で小さな魚を獲ってしまう「成長乱獲」、産卵する親の数が少ないのに獲ってしまう「加入乱獲」を同時に引き起こしています。それを魚が減っているのに、海水温の上昇や外国にばかり責任転嫁するのは、いい加減にやめるべきなのです。

話を元に戻します。シシャモを見かけなくなっても、一時的に高くなったような気がしても、それは短期的なことで、数年で回復してくるのです。

はっきりそう言い切れるのは、水産資源管理がしっかりしているからに他なりません。また、漁獲する量だけでなく、マダラを始め、他の魚のエサとして減少する量も考慮されて、漁獲枠のアドバイスが出されます。

言うまでもなく漁業者にとっても、大事な収入源であるシシャモが禁漁であって良いわけがありません。しかしながら、水産資源管理がしっかりしていると、サバ、ニシンなど他の魚種が十分補ってくれるので、禁漁に対する強い不満や補助金の話は聞きません。

日本も、北欧を始めとする海外の資源管理の本当の姿をすれば、将来の明るいビジョンが見えてきます。漁業は本来、水産資源管理ができていれば成長産業です。

そしてその為の第一歩が、水産資源が国民共有の財産という内容が欠けていますが、国際的に見て遜色がない資源管理にするという漁業法の改正であったのです。

シシャモだけではありません。世界と日本の水産資源管理を比較するとハッキリとその問題点と解決策が分かります。悪化している状況を美化して問題を先送りする段階ではありません。

国会で水産資源管理のことを話してみました

参議院 国際経済・外交に関する調査会 2020年2月12日

2/12に参議院で国際経済・外交に関する調査会が開催されました。そこに参考人として水産資源管理のことを話して欲しいと依頼があり、話をして来ました。3人の参考人が呼ばれ、その1人がさかなクンだったので、マスコミの注目は凄く、帽子を取るとかとらないとか、あちらこちらのTVにも映っていたそうです。

参議院からの招待状

ちなみに、会議ではさかなクン参考人ではなく、さかなクンと呼ばれ、ご自分のことは、さかなクンといってました。本当にさかななんだ(笑)。

テレビは「さかなクン」一色でしたが、参考人が3人が各20分話し、それに対して2時間弱が質疑というまじめな組み立てでした。さて、その中で、いつも出てくる重要な質問がありました。

世界と日本のグラフ

筆者のプレゼンは、世界と日本の水揚げ量の推移の違い、世界の中で、日本の海の周りだけが、世界銀行に水揚げ量が減ると予測されており、すでに予想を上回るスピードで悪化していること。減少要因とされる海水温の上昇などの要因は、日本だけに起こっている問題ではないこと。水産資源管理の成功により、成長を続けているノルウェーでは、漁船の大小に関わらず99%の漁業者が満足していると説明しました

さらには、データを元に同国では魚の資源が増え、補助金が減るという現象が起きており、その根本にある政策が、科学的根拠に基づく「漁獲枠=TAC」の設定とそれを漁業者や漁船などに、個別に割り当てていく「個別割当方式=IQ、ITQ、IVQ」にあるという説明などをしました。アイスランド、デンマークといった漁業で成長している国々と制度が共通していることも解説しました。

日本は、皮肉にも東日本大震災で、マダラなどが漁獲圧力の減少で、一時的に魚が増えたものの、従来通りのやり方で、小さな魚まで獲ってしまい、数年で元に戻ってしまったこともデータで明示しました。

太平洋側のマダラ資源は、震災後一時的に資源が激増。しかし漁獲枠もなく獲り過ぎて元の木阿弥に。

マダラの資源推移を例とした具体的な説明

さてその質問内容を要約です。「なぜこれほどやるべきことは明快なのに、日本は水産資源管理ができないのか?」 同じ質問を、これまで様々な分野の方から一体何回受けたことでしょうか‼

水産資源管理については、漁業先進国と異なり、日本では事実がほとんど知られていないため、魚が減るとそれが海水温の上昇や外国が悪いという責任転嫁ばかりになってしまうことにあります。

政治家の皆さんに事実が伝わっていないので「間違った前提に対する正しい答え」という最も悪い政策がこれまで繰り返し行われて来ました。

漁業で成功している国々でも、水産資源管理に対しては、最初は反対でした。しかし、最後には政治的な判断が行われています。親しいデンマークの漁業会社(当時)でも、反対が強くもめたものの、最終的には自分がまとめて個別割当制度(ITQ)を実施したと直接聞いたことがあります。

ノルウェーのマダラ資源は、漁業大臣の判断で高水準が維持され続けている。その地方や産業に対する好影響は計り知れない。(オレンジ色の棒グラフが、マダラの水揚げ金額推移)

ノルウェーで当時の漁業大臣が1987年にバレンツ海(ノルウェー)でのマダラの海上投棄を禁止したことが、2019年まで禁止しなかったEU(北海)での資源量の決定的な違いとなっていることもグラフ(オレンジ色の折れ線グラフ)で説明しました。

ノルウェーでは、小さなマダラを投棄すれば将来の資源に悪影響するという正しい情報に対して、現実的には難しいという反対を押し切って、大臣がマダラの海上投棄禁止の判断し、将来に豊かな資源を残したのです。

法律になることで、漁業者は漁場の変更や、網目を大きくするなどの早急な対応が必要になったはずです。

日本は、マダラの漁獲枠さえないので、赤ちゃんマダラも容赦なく水揚げしています。

三陸沖で漁獲されるマダラの幼魚 資源管理が進む北欧や北米では決して水揚げされない

ノルウェーの水産資源管理は沿岸漁業者を優遇という事実

「沿岸漁業者はどうなるのか?」 北欧型の水産資源管理制度の是非を巡って大きな誤解があるのは、沿岸漁業への配慮についてです。

漁村崩壊とか、漁獲枠によって社会問題が起きているなどというのは、大きな誤りであり、その逆です。 ノルウェーなどでそんな話をすると、どこの国にこと?と苦笑いされてしまいます。

ノルウェーでは、地方への配慮から、小型の漁船枠が大型漁船に売られない制度になっています。このため日本のように沖合と沿岸漁業間で起こる不満は過去の話です。マダラなどで資源量が少ないときには、沿岸漁業への配分を増やして配慮しています。

漁業者の数で言えば、多いのは沿岸漁業者の方です。そのような環境下で、99%の漁業者が満足しているのに、それがなぜ社会問題になっていると言われるとしたら理解に苦しみます。

外国人の船員が多いなども間違いです。一般的なサラリーマンより収入が高く、個別割当制度により、計画的に休みも取れる仕事をなぜ外国人に譲るのでしょうか?

時代の流れと水産業改革(日本経済調査会)による提言

ご紹介したノルウェーを始めとする水産資源管理について初めて広く世に伝えたのは、3人の内のもう1人である小松正之さんでした。それは、2007年に日本経済調査会で発表されました。

当時は、北欧型を含む先進的な水産資源管理の紹介は「見てきたような嘘」「素人談義の底の浅さを暴露」「日本型の管理手法に対する評価が高まりつつある」などと何名もの学者の方などに批判されました(そのWebは削除されています。)。しかしながら、時代が変わり、政治家の方々にも正しい情報が伝わり始めました。そして同氏が中心となり、2019年に第二次水産業改革委員会の最終報告が発表されています(2017年開始)。

2018年12月に70年ぶりの漁業法改正と言われている法律に改正には、その一部が熱意のある政治家の方々によって最初の一歩が踏み出されているのです。何が本当だったのか、はっきりとわかってきたのです。

最後に、水産資源管理に関係する人が多い中、なぜ学者もない筆者が参考人として代表して国会に呼ばれたのか?

実は、本当のことをいうと自分のためになりません。 そのことが、日本だけが魚が減り続けている異常な状態につながっているのです。この辺は、「サカナとヤクザ」の続編などで、事実に基づいた報道が行われれば、多くの地方と人が救われるきっかけになることでしょう。

日本の水産資源管理は、それ自体大きな社会問題でもあります。消費者、仕事、そしてSDGsを達成する国として、ほとんどの日本人が関わっている大問題なのです。そのためには、国民、そして政治家の皆さんが、日常生活に大きくかかわっている重大な問題を、客観的な事実に基づき、正しく理解して世論を変えて行くことなのです。

魚が減ったのは本当に外国のせいだけなのか?

国産スケトウダラ 日本とは対照的に米国とロシアの資源量は豊富でサステナブル

魚が消えて行く話題が絶えません。昨年(2019年)も、サケ、サンマ、スルメイカ、サクラエビ、イカナゴを始め、様々な魚種の不漁・禁漁が話題になりました。このため、漁業者、地域経済、そして消費者にも悪影響を及ぼしています。

原因は、海水温の上昇、外国の乱獲などの理由がほとんどでした。そして、魚種交代や、レジームシフトといったもっともらしく聞こえる解説も散見されました。しかしながら、その本質的な原因をひも解いて行くと、様々な矛盾が露呈して来ます。

昨年(2019年)も、サケスルメイカサンマイカナゴ、サクラエビをはじめ、消費者にとってだけでなく、地域経済に深刻な影響を与える不漁や禁漁が様々な魚種で起きてしまいました。

外国漁船が獲ってしまうから魚が減るというのは確かにそうです。1977年に設定された200海里漁業専管水域は、当時世界中の海に展開していた世界最大の漁獲量を誇る日本漁船の排斥が背景にありました。日本の漁船は、各国の水産資源にとって脅威でした。

ただし問題の本質は、特定の国が悪いということではなく、国際的な資源管理の仕組みが無かったことにありました。戦後の食糧不足から始まり、日本には動物性タンパクを魚で国民に供給する必要性が生じていたのです。国別の漁獲枠でもなければできるだけ獲ろうという力が働いてしまいます。そしてそれが乱獲の一因にもなります。

サンマのように資源が減って、同じ資源を各国が獲り合えば、それぞれが漁獲できる配分量が取り合いにより減り、ひいては全体の資源量も減ってしまうという最悪のケースに陥ってしまいます。

取り合いによって深刻な資源崩壊が起こったことで、世界的に有名なのが、東カナダ・グランドバンク漁場でのマダラ資源です。1992年に禁漁となり、未だに回復待ちです。東カナダ沖の漁場は、1977 年に設定された200海里漁業専管水域が設定される以前には、カナダ船以外の漁船も、東カナダの漁場に入り乱れていました。

グラフのように急激に伸びた漁獲量は、200海里の設定後、外国船の排除により大きく減少しました。その後、漁獲量は安定するはずだったのでしょうが、結果はその15年後に、禁漁に至る悲惨な事態となりました。マダラは主要魚種でしたので、漁業、加工業を始め300万人以上が仕事を失いました。カナダ史上最大のレイオフ(一時解雇)と言われています。

なぜ、200海里の設定後に悲劇が起きたのか?それは、自国の乱獲を棚に上げて外国を非難しただけであったことに他なりません。そのマダラ資源の激減の反省からできたのが、国際的な水産エコラベルとして受け入れられているMSCマークです。

これによく似た日本のケースを挙げるので、何が悪かったのか考えてみてください。

激減したスケトウダラの原因は何か?

スケトウダラ 日本海北部系群水揚げ推移 オレンジ色が韓国船の漁獲量で他は日本漁船の漁獲量

グラフは、北海道の日本海側のスケトウダラの漁獲量推移です。他の魚種でも多く見られる典型的な右肩下がりです。ところで、当時このスケトウダラ資源が減少しているのは「韓国漁船」による漁獲が原因といわれてました。韓国漁船の漁獲量は「オレンジ色」の部分です。200海里の制定後も、韓国漁船は同漁場での漁獲が可能であったため、割合は低いながらも、日本の漁獲量に影響してはいました。

韓国漁船の排斥が求められ、ようやく1999年に出て行くことになりました。漁獲量の減少は、韓国漁船が原因とされていたので、当然1999年以降は、漁獲量が回復するはずでした。ところが、1999年以降の漁獲量推移は、回復どころか激減してしまいました。

この例は、東カナダのマダラ資源崩壊と同じで、自国の乱獲を棚に上げて獲り続けた結果ではないでしょうか?早い段階で有効な資源管理のための手を打たないと、そのツケを払うためには数十年の年月がかかることになってしまいます。

イカを乱獲して他国に脅威を与えたこの国はどこだろうか?

もともとイカ漁で脅威だった国はどこか?

ある国のイカ漁が記事になっていました。「地元に脅威〇〇イカ船団」「略奪に渦巻く非難」「根こそぎ包囲網に不安」「反感抑え紳士的警告」「ナイター並みの照明」「乱獲の反省と節度」「進出2年でもう不漁」「獲り過ぎかなと漁労長」

この記事の◯◯は、どこの国のことでしょうか?たぶん近隣の国々のことだと思う人が多いことでしょう。

しかしながら、その〇〇に当てはまるのは「日本」なのです。記事はニュージーランド沖での日本のイカ漁に関する1974年の朝日新聞でした。当時はまだ200海里漁業専管海域(1977年に設定)の設定前でした。このため、日本漁船は12マイルもしくはそれ以内の好漁場に入って漁ができたのです。

今回の投稿は、どこの国が悪いというのが趣旨ではありません。国際的な視点で漁業を見ると、国が変わるだけで、まさに「歴史は繰り返す」なのです。漁業の歴史に関する基本的なことを知らないで他の国を批判ばかりしてしまうと、事実を知ると唖然としてしまうことになるでしょう。

サクラエビやイカナゴの減少は、近隣諸国の漁業と関係はない

ここで大事なことは、日本の200海里を出て回遊するサンマ、カツオ、サバなどの魚と、国内で完結するイカナゴ、サクラエビといった魚は分けて考えることです。

前者は科学的な根拠に基づく国別漁獲枠(TAC)を手遅れになる前に設定すること、後者は外国の漁業は影響していません。温暖化などに対するリスクを予防的アプローチとして十分考慮して、より慎重な漁獲枠を設定することが必要不可欠です。

そしてそれらを早獲り方式で資源を潰させないために、個別割当制度(IQ,ITQ,IVQ)などを適用して防いでいくのです。その成功例は、北米、北欧、オセアニアなどにたくさん存在しています。

安易な他国非難は止め、他国で資源崩壊したケースも参考にした上で、国際的な枠組みを早急につくることが重要なのではないでしょうか?

サンマ・本当はどうなっているのか?

2019年のサンマは細かった 

歴史的な「凶漁」とは?

様々な魚が減って日本人の秋の味覚にも異変が起きています。その一つがサンマです。毎年、秋になると脂がのった生のサンマが、1匹100円前後で大量に店に並んでいました。凶漁といわれる昨年(2019年)でも、何日かは1,000㌧以上に水揚げがまとまり、手ごろな価格で売られる日もありました。しかし、売価の上昇を実感した方は多かったことでしょう。

2019年のサンマの価格は例年の末端価格に比べ2〜3倍が多かった

2019年のサンマ水揚量は、約4万㌧と記録に残る1969年の約5万㌧を下回りました。この水揚量は、サンマ漁の創成期と戦時中を除き歴史上最低の数字でした。20万㌧以上が当たり前だった2014年以前の漁獲量が、2015年以降は下降線をたどっています。それまでの数字がまるでウソのようです。

しかも価格が上昇しただけではありません。海水温の上昇でエサとなるプランクトンが減少したからでしょうか?細めで脂が少ないサンマの比率が高くなってしまいました。漁場が遠く、片道2~3日もかかる漁場からでは、鮮度も日帰りで水揚げされるサンマと比較すると落ちてしまいます。

価格が高くて、脂ののりが薄いと、自然と消費者も離れてしまいます。また、それだけではありません。水揚げされて冷凍されたサンマを周年かけて利用していた加工業にも、原料不足による悪影響を与えてしまいます。

冷凍サンマがまた助けてくれるのか?

お手頃価格の脂がのった解凍サンマ

昨年(2019年)の秋になっても中々サンマの水揚げがなかったときに、手ごろな価格で店に並んだのが「冷凍サンマ」を利用した「解凍サンマ」でした。

しかも、脂も前年のものなので、まあまあでした。解凍サンマは、前年の秋に冷凍されたものです。まだ先ですが、次の秋になれば、鮮魚が少なくても、再び脂がのった冷凍サンマが手ごろな価格で提供されるのでしょうか?

残念ながら、冷凍サンマの供給は厳しくなります。サバでも同じなのですが、水揚げされたサンマは、価格が高い用途向けから市場で引き取られて行きます。

価格が最も高いのは鮮魚向けです。昨年のように一回の水揚量が少ないと、ほとんどが鮮魚向けに回ってしまいます。このため冷凍向けにされる分は減少し、かつ魚価高によりコストは高くなってしまいます。

細くて脂のりが薄く、鮮魚向けに向かないサンマは冷凍に回り易いのですが、それは脂がのったおいしいサンマではありません。

海水温の上昇を理由にすると起きる矛盾

水温の影響は、サンマの資源量の増減に影響します。これは、農作物の収穫量が、その年の気温や雨量などに影響を受けるのと同じです。

ところで、昨秋のサンマの凶漁に対する不漁は、海水温の上昇によりサンマが日本の近海に回遊してこないので獲れないとか、日本に回遊する前に、公海で台湾や中国などの大型漁船が獲ってしまうことが不漁の原因だという報道がほとんどでした。

それでは、その日本から遠い公海に行けばサンマが例年通り獲れたのでしょうか?その答えは「No!」です。まだ数字は出て来ていませんが、公海での他国のサンマ漁も日本と同様に不漁もしくは大不漁だったのです。つまり、サンマの回遊量そのものが非常に少なかったのです。

赤がサンマ 東から西へ移動して行く 青がサバ類で黄色がマイワシ 水産研究教育機構

サンマ(赤色)は上の図で言うと、東から西へと回遊してきます。マサバとマイワシは、サンマほど大回遊しませんが、漁場は同じように北海道から三陸の沖合にかけてが、秋~冬に主漁場になります。

ところで上の図に出ているマイワシは、 資源量が増えて来ています。その理由として、寒冷レジームが挙げられています。海水温が低くなってきている??? 一方で同じような漁場なのに、サンマは海水温の上昇で漁獲量が少ない?と言われています。

また同じく凶漁が続くスルメイカ漁では、 海水温が低かったので減っているとも言われています。実際には海水温上昇で資源量が増え易いはずが、逆に減少しているなど、海水温をもとに資源の増減の話をすると辻褄が合わなくなります。

海水温上昇が問題になっているのは、日本の近海だけではありません。世界中の話です。最も温暖化の影響を受けているといわれている北極では、氷が減りシロクマが氷の上からアザラシの猟ができない報道も見かけます。

しかしながら、水産資源管理ができている海域では、魚種により資源量は凸凹がありますが、概して青物類(サバ・ニシンなど)、底魚類(マダラなど)ともにサステナブル(持続的)な状態です。海水温の上昇で同じく影響受けているのに、日本の海のように様々な魚種で水揚量減少が記録的になっているようなことはないのです。

水揚量の推移を見てみよう

サンマの漁獲量推移 赤が日本の漁獲量 水産研究教育機構

サンマの水揚げ推移を見てみましょう。赤色の日本の漁獲量の推移を見ると、明らかに減少傾向です。今のままでは、サンマ漁が日本の漁獲量で年間20万トン前後に戻る状況とはほど遠くなってしまっています。

赤色以外の他国の漁獲量は、同じ資源を獲り合っているので、日本の一方的な立場からすれば脅威です。しかしながら、すでに多数の漁船を投資している国々は、漁業者が早く投資分を回収したいなど、別の事情と考えができてしまっています。

日本の漁船が漁獲している比率は、2018年漁期で約3割と、2000年以前に8割前後だった比率に比べて大幅に減少しています。公海での国別漁獲割り当てを決めてこなかったために、台湾・中国といった国々の進出を許してしまいました。

すでにたくさんのサンマ漁船を建造されてしまったので、後には引かない状態です。これらの国々は、自国の漁獲実績を主張して漁を止めることはありません。

このため全体の資源量が大幅に回復しない限り、2014年以前のように日本が20万トン以上漁獲できるようにはならないのです。

2018年の実績である3割のシェアで計算すると、20万トン獲るためには、全体での漁獲量が60万トン必要になります。ところが、1995年~2018年までの平均漁獲量は全体で39万トンでかつ減少傾向です(NPFCデータ)

米国でのケースでは、1977年の200海里漁業専管海域設定後の数年間で、同国沖の公海でスケトウダラを操業する日本漁船を排斥してゼロとしています。そして自国の水産資源管理を科学的根拠に基づきサステナブルにして現在に至って漁業を成功させています。

これまでの調査で十分だろうか?

日本では、魚がいなくなると安易に環境や他国に責任転嫁する傾向にあります。マスコミもそのように報道してしまうことで、多くの誤解と、実際に魚が激減するケースが後を絶ちません。昨年だけでも、イカナゴ、サクラエビを始め、減少傾向が続く水産物が話題になり、このままではさらに増えることになるでしょう。

北欧の資源量調査を見てみよう

サバとニシンの資源調査 ノルウェー、アイスランド、EU漁船が協力 調査は広範囲にわたる

サンマに話を戻しましょう。北欧の資源量調査の例を見てみましょう。上記の図は、ノルウェー、EU、アイスランドなどの漁業をしている国々が、手分けをして広範囲にわたって資源調査状況を示しています。そしてそのデータを共有して、科学的根拠に基づき漁獲枠を決めて行きます。

サンマの資源調査については、範囲が広いので日本の調査だけでは範囲が不十分です。日本の調査範囲は、主に水平展開しての調査になっています。これを中国や台湾、ロシアなどと連携して広範囲を調査して、北欧同様にデータを共有して、その数字に基づいて漁獲枠の話し合いをするべきです。

北欧の場合でも、各国の主張が食い違う場合があります。このため、必ずしもすべての魚種で、国別に漁獲してよい量(国別TAC)が科学的根拠に基づいて決まっているわけではありません。

しかしながら、乱獲に陥ると自分で自分の首を絞めてしまうことは良く理解しているので、獲れるだけ獲るようなことはしません。ここで日本も含む各国の水産資源管理と大きな違いがあります。

一方で、サンマの場合は、2019年に55万トンという獲り切れない漁獲枠を決めたものの、何の資源管理効果もありません。これを一刻も早く北欧並みの管理にしないと大変なことになる一歩手前の状態まで来ているのです。

現時点では、2020年の漁期もサンマ資源が激減しているのに、各国は獲り放題です。漁獲量制限どころか、配分交渉に備えて実績を増やそうという力が働いてしまいます。

日本も例年12月は小型が多くなるので漁を控えているのですが、そういう配慮はしませんでした。厳格な国別漁獲枠(国別TAC)が決まっていないので、できるだけたくさん獲るという点でどこも同じです。

サンマがいなくなってしまう前の対策のためには、批判だけでなく、事実の理解と現実の対処法を国民が理解していく必要があります。

なぜ軒並み「記録的不漁」?スルメイカ漁も!

水揚量が激減しているスルメイカ

サンマ秋サケ(シロサケ)が過去最低の漁獲量を記録してしまいました。そしてスルメイカも遂に記録的不漁が4年目に突入です。皮肉にも世界銀行やFAO(国連食糧農業機関)が公表している悲観的な見通しのままです。漁獲量の減少が様々な魚種で起きていて止まりません。「イカの活き造り」で知られるケンサキイカも記録的な不漁に見舞われています。

スルメイカは、鮮魚出荷だけでなく、塩辛などの珍味、フライ、刺身、スルメを始め、様々な加工がされて行く基幹的な水産原料です。 函館や八戸を始め、スルメイカに依存している地域にとって大きな痛手です。まずは、漁獲量推移の現状をグラフで見てみましょう。

青の折れ線グラフがスルメイカ、赤がアカイカ(1983年から分類)、緑がその他イカ類となっています。2000年以前には40~60万㌧もあった漁獲量は、2018年には10万㌧を割り込んでしまっています。昨年(2019年)はさらに落ち込んでいる見通しです。

グラフをよく見てみると、スルメイカの漁獲量だけが激減しているだけでなく、アカイカ・その他イカ類と、イカ類がまとめて激減していることが分かります。

スルメイカ激減要因は何か?

スルメイカの分布と産卵場 水産研究教育機構

魚が減る原因としてしばしば環境要因、特に海水温の上昇が挙げられます。 たしかに環境要因は水産資源の増減に影響します。しかし日本では獲り過ぎが、環境要因に置き換えられてしまうことがよくあります。

資源管理の遅れが海水温や外国に責任転嫁されてしまう報道が後を絶たないため、日本人の多くは「獲り過ぎ」という魚が減って行く本当の理由を知りません。

スルメイカでは、資源量と環境の関係で矛盾点が露出します。

まず海水温が高くなっているのは、否定しえない事実です。ところでスルメイカの場合、資源が減少している原因として考えられるのが寒冷レジーム、つまり水温の低下となっています。

さらに産卵期に海水温が低下したことが原因?ともいわれています?ところで、水温が高いのではなく低い?というのがそもそも??です。しかも、一方でこれだけ温暖化が問題になっているのに、それが生態に影響するほど低かったとは考えにくいです。

ちなみにこんな報告もあります。2019年9月24日、盛岡で、水産庁と「するめいか資源に係る意見交換会」が行われた。研究者の話もまじえ、昨年暮れから今年初めにかけて、東シナ海の水温分布は、するめいかの産卵に良い環境であった、と報告されている。」』

また、もしもそれだけ水温が低かったのであれば、スルメイカは産卵のための適水温を求めて移動するはずですね。スルメイカの産卵海域は図の通り広範囲にわたっています。高温ならともかく、海水温の低下が資源減少の主因になるとは、にわかには信じがたいです。

仮説になりますが、こういう矛盾が起こってしまう理由は、魚が減った結果を、無理やり環境要因に転嫁してしまうためと考えます。例えていうなら、周りの企業はみな業績が良いのに(世界全体では水揚量は増加中)、悪かった(日本だけが減少傾向)ことを、景気悪化(海水温の上昇など)に転嫁してしまいマネジメントを反省しないのに似ています。

そこで日本と世界の漁獲量の推移を見れば、明確にそれがおかしなことが分かります。世界中で日本の海水温だけが上がるはずはありませんのでww。

水産庁資料では「 我が国周辺水域では、水温が温かい時代である温暖レジームにはカタクチイワシやスルメイカ等の漁獲量が増え、逆に冷たい時代である寒冷レジームにはマイワシやスケトウダラ等の漁獲量が増える傾向にあります。 」とあります。

寒冷レジーム(??)でマイワシが増えるという一方で、海水温が高いためにサンマが日本近海に近寄らずに獲れない??秋から冬にかけて同じような北部海域で漁獲されるのに??一方で海水温が低いといってみたり、他方で高いといってみたりでは理解は困難です。

岩手の漁業者の方が、スルメイカ資源の環境要因に関する矛盾を新聞社に指摘しているブログがこちらです。良く調べないで、責任転嫁された内容がそのまま報道されていることがわかります。これでは誤解が誤解を生んでいくだけです。

機能していない漁獲枠(TAC)

漁業法改定に伴い、漁獲枠(TAC)が機能することを期待しますが、現時点(2020年1月)でのスルメイカのTACは資源管理に機能していません

(水産庁資料より編集)

2018年から過去10年でのTACに対する漁獲率はわずか46%。これでは漁獲枠が実際の漁獲量より大幅に大きく、水産資源管理が機能しません。

TACは、目標値ではありません。 ノルウェーのサバ 、アラスカのスケトウダラを始め、漁業で成長を続けている北欧や北米での漁獲量は、TACに対してほぼ100%です。実際に漁獲できる量より大幅に少ない数量が、漁業者や漁船ごとに割り振られています。このため例外を除き、毎年漁獲枠通りの漁獲実績になっています。

小さなイカを獲っても大丈夫か?

小さな小さなスルメイカも逃がさず漁獲されてしまう 

漁獲枠(TAC)が機能していないと写真のような生まれたばかりのスルメイカまで根こそぎ獲ってしまいます。悲しいことに、これが日本の漁業の現実です。

スルメイカ秋季発生系群の成長 水産研究教育機構

スルメイカの寿命はわずか1年です。写真のスルメイカは1パイわずか10g程度。8ヶ月も経てば200g以上になるのに、実にもったいなく、資源に悪い漁業が我が国で行われているのです。

科学的根拠に基づく漁獲枠が、漁業者や漁船ごとに厳格に決まっていれば、スルメイカに限らず漁業者は、資源に悪くて、価値が低い小さな魚は獲らなくなります。

さらにたくさん獲るのではなく、単価が高い魚を獲って水揚げ金額を上げようとします。すると、幼魚は成長して産卵する機会を得て、資源が持続的になって行きます。そして漁業者だけでなく、消費者にも大きな魚の供給が増えてそのメリットが及んで行くのです。

他国の漁獲のせいではないのか?

スルメイカについては、環境要因が主因ではないことは恐らく理解されたと思います。そして、最後に残るのが、近隣諸国のこと。つまり、韓国、中国、北朝鮮の漁獲への疑問でしょう。日本近海のスルメイカの漁獲量は、2017年で約14万㌧。日本:韓国=比率で約45:55でした。これに数量が分からない北朝鮮や中国の数字が加わります。

特に日本海側の漁場では、各国が入り乱れて漁をしているのは報道の通りです。また、2019年は北朝鮮がロシア海域で違法操業が行い3,000人以上が捕まったと言われています。

日本、韓国がそれぞれ実際の漁獲量より大きな漁獲枠を設定し、それとは別に中国、北朝鮮も漁を行っているので、環境要因が改善されれば(そもそもこれも?)漁獲が回復するなどという生易しい状態ではありません。

しかしながら、このまま漁を続ければ、さらに獲れなくなって窮地に陥ることになるでしょう。

合意は容易ではありませんが、スルメイカに加えて、サンマ、サバ、マイワシなども含めて、手遅れになる前に科学的根拠に基づく総合的な国別漁獲枠の設定が不可欠なのです。

漁獲量という人間の力を軽視して、環境要因を主体に資源の問題を語ってしまうと大きな誤解と矛盾が生じます。そして誤った前提に対する正しい答えを政治が主導してしまった結果が、直面している魚が消えて行くという現実です。世界と日本を比較して、国際的な視点を持って行動することが待ったなしになっています。

2019年1月18日 加筆。

なぜ日本のサケだけが歴史的不漁なのか?

大不漁が続く日本のシロザケ

人気があって、日本人がもっともよく食べる魚の一つであるサケ。ところがそのサケの漁獲量に異変が起きています。2019年の秋から年末にかけての報道では、「北海道・三陸とも記録的不漁」「近年最悪漁5万㌧割れ」「秋サケは幻の魚」などといわれ、漁獲量の激減が大きな社会問題になっているのです。

ところで、天然のサケが10万㌧以上漁獲される国は、米国(アラスカ)、ロシア、日本だけなのです。正確にいえば日本が脱落しましたが、、、。天然のサケがまとまって獲れるのは、ともに北半球の太平洋側です。天然のサケは、世界のあちらこちらでたくさん獲れている魚でないことをご存知でしたでしょうか?

他の国々のサケの水揚げ状況は?

日本では、10~20年前(2000年~2009年)の平均漁獲量は23万㌧もありました。それが、2016年から10万㌧を割り込み始め、2019年は5万㌧と激減しています。ちなみにノルウェーやチリなどから輸入されているサケ(ギンザケ・アトランテックサーモン・サーモントラウト)は全て養殖物です。

ところで日本のサケの話だけしていると大不漁の話ばかりなので、さぞや他の国も大不漁だろうと想像されるかも知れません。しかしそれは全然違うのです。ちなみに昨年(2019年)アラスカは40万㌧で近年8位、ロシアは50万㌧で史上4位と共に「豊漁」で、まるで別世界です。こういう事実が一般には知られる機会がほとんど無く、異変に気付くきっかけがつかめないのも問題ですね。

アラスカのベニザケ アラスカのサケ類は日本と対照的に豊漁

サケの市場価格はどうなっているのか?

サケが大不漁であれば値段が上昇するはずです。しかしながら、焼き物として定番のギンザケなどのサケの価格は、短期的には下がっています。その理由は、日本での水揚げが減っていても、ロシア、米国(天然物)、チリ(養殖物)など、それを上回る供給体制が出来上がっているからなのです。

この状態は、もともと上昇が続いていた相場が少し行き過ぎて、需給のバランスが短期的に崩れているととらえるのが妥当です。しかし5年~10年単位でみれば、魚の需要の増加に対して供給が追い付かない構造になっているので、再び価格は上昇して行くことでしょう。

塩ザケの定番となっているチリのギンザケ(養殖) 2019年は相場下落

例えば、10年前にキロ400円だったあるサケの相場が800円まで高騰。それが前年比で600円に一時的に下がった場合、相場的には大幅な値下がりです。しかし、10年前に比べれば大幅高であり、価格帯を前年比、もしくは5~10年前後のスパンでとらえるかで、高いか安いかの価格のとらえ方は変わってくるのです。

さて本題に戻りましょう。なぜ日本のサケだけが激減しているのか?よく温暖化の問題が上がります。温暖化により魚が減る懸念は、サケが漁獲されているアラスカなどでも問題になっています。またFAOは気候変動・温暖化により2050年までに漁獲量が2.8%~12.1%減少する可能性があると予測しています。そうであれば、なおさら予防的アプローチを行い、水産資源管理を科学的根拠に基づき厳格に行っていかなければなりません。決して日本だけが温暖化の影響を受けているわけではないのですから。

自然に産卵するサケが少ない問題が指摘されていたが、、、

温暖化の影響は米国でもロシアでも同様に懸念されています。しかしこれらのサケが豊漁になっている国々と日本では決定的に違うことがあります。

その一つが、川で産卵するサケの比率が日本では非常に低くなってしまっていると考えられることです。出来るだけ採卵して放流する考え方です。このため恐らく放流で回帰してくる比率が、アラスカでは3割程度(34% : 2018年 ADF&G)であるのと、ほぼ逆になってしまっているようです。

サケの来遊数は激減している。グラフは2017年まで。2019年はさらに減少している。水産研究教育機構

また、サケは産まれた川に戻ってくる母川回帰の性質が有名です。しかし、サケの回帰不足で孵化させるために採卵するサケの数が減っています。一方で放流数はほとんど減少していない(グラフ参考)ので、川で自然に産卵するサケの数が少ない計算になります。採取状況などの違いにより、河川によって異なりますが、約7割のサケが放流された魚であったというデータもあります。

また、孵化させる卵の量を確保するために、足りない分を他の川に回帰予定だったサケの卵が使われているケースがあるようです。

サケの回帰率が大幅に減少中。放流数が横ばいであることから、回帰数は激減し、水揚げ量も同様になってしまう。水産研究教育機構

サケの回帰数が少ない表れとして、回帰率が3〜4%から2%弱までに大幅に減少していることが挙げられます。放流数がほぼ同じで回帰率が減れば必然的に、回帰数は減少してしまいますね。

断言まではできないのですが、自然産卵のサケの稚魚より、採卵された稚魚の方が生命力が弱いと仮定します。そこで自然産卵するサケの量が減ってしまった。つまり採卵用も含めて、サケの獲り過ぎで、自然産卵のサケの回帰数が減り、全体でサケの水揚げ量が激減していることが、減った主因ではないかと推測できないでしょうか?

日本のサケはMSC認証を断念。そしてその結果は?

北海道のサケ定置網漁業は、2014年にMSC認証取得を断念 そして5年後の水揚げ量は激減した。孵化放流の依存を減らせなかったのが原因ではなかろうか?

実は、北海道のサケ定置網漁業は、水産エコラベルとして国際的に認識されているMSC認証を2011年~2014年にかけて取得しようとしていました。しかし残念ながら「孵化放流に依存しすぎで持続的でない」と評価されて断念しています。

そこでは、自然産卵を増やすことが指摘されていたのです。一方で、サケ類の豊漁が続く米国(アラスカ)やロシアでは、対照的にMSC認証の取得が進んでおり、サケ類の資源量は持続的(サステナブル)です。

日本のサケが減っている理由については、その他に護岸工事や、温暖化によるエサ不足なども考えられるそうです。そうであればなおさら、自然に産卵させて川に戻らせる数を増やして行かねばならないのではないでしょうか?

サケ資源が回復して持続的(サステナブル)にできることが望まれます。そのためには、できるだけ河川で自然に産卵させる数を増やしたい状況ではないでしょうか?

本来、国の許可を採卵目的で獲っているはずのサケの卵がイクラになって流通されるようなことがないことも切に願いたいところです。


シラスは獲っても良いのでしょうか?

カタクチイワシの稚魚 シラス

シラスとは?

小魚の問題投稿したところ、それではシラスの漁獲はどうなのか?と、とらえられる方が多かったようです。みなさんが食べられているシラスの大半はカタクチイワシの子供です。今回はそのシラスについての投稿です。

養殖に使うシラスウナギ 

普段食べられているシラスにはいくつか種類があります。カタクチイワシのシラスほどメジャーではありませんが、マイワシやウルメイワシの稚魚もシラスです。また、シラスとは呼びませんが、後述するイカナゴ(コウナゴ)の稚魚も、ちょっと細長いシラスのように見えます。

ところで、養殖に使うウナギの稚魚もシラス(ウナギ)と呼びます。その昔、スペインなどでシラスウナギを食べる習慣がありました。今では資源が激減し日本同様に絶滅危惧種となり、代わりにスリミを使ったイミテーションのシラス(ウナギ)の製品が売られているのです。

日本人は小魚が大好き

釜揚げシラス カタクチイワシの幼魚

スーパーの魚売り場に行けば、必ずと言ってよいほど目にすることができるシラス。その主な親であるカタクチイワシは、春から秋までの長い期間に渡って産卵します。冷凍して解凍したシラスも広く出回っていますので、周年供給されているのです。シラス丼、パスタ、おにぎリと様々な料理に相性抜群ですね。

そんなシラスは沿岸で、細かい網目の網で漁獲されています。幼魚を獲っても資源は大丈夫なのでしょうか?現状では、禁漁期間を設けていることがあるそうですが、カタクチイワシには肝心の数量を管理する漁獲枠さえありません。

漁獲量の推移を見てみる

全体で見ると、青の折れ線グラフが親のカタクチイワシの漁獲推移で、赤がシラスです。カタクチイワシの漁獲量は、 1956年~2018年の平均で297,495㌧、2018年の漁獲量は109,800㌧と大きく減少しています。一方で、シラス(注)の同平均で54,868㌧、2018年は50,000㌧と親のカタクチイワシの漁獲量の推移と違いほとんど変化がありません。

これは、シラスの漁獲は小規模な沿岸漁業による漁獲主体であるため、仮にシラスの資源量が多かった時期でも、増えていても物理的に獲れなかったものと推定されます。

ただしこれも、イカナゴですでにそうなってしまっているよう、資源量が大きく減ってしまい禁漁を強いられたり、ほとんど獲れなくなってしまう事態になる懸念もあります。

(注:シラス=カタクチイワシの稚魚という前提)

こうすれば問題はない

シラスを獲ってもよいのか?に対しては、まず産卵できる親の資源量が持続可能(サステナブル)なレベルであれば、問題ないと言えます。つまり、シラスのような幼魚を獲ってしまうこと自体が本質的な問題ではないのです。魚を減らすことなく獲り続けられる最大の親の資源量を維持しながらの漁獲となっているかどうかが問題なのです。

魚を減らすことなく獲り続けられる最大量をMSY(最大持続生産量)と呼びます。漁業先進国より数十年遅れて、漁業法改正で、その考え方がようやく取られることになりました。

困ったことに日本はMSYをほとんど無視してきましたが、この考え方は、1996年に日本が批准した国連海洋法や2015年に国連で採択されたSDGs14(海の豊かさを守ろう)の中でも明記されています。

SDGs 持続可能な開発目標 14 「海に豊かさを守ろう」

シラスのような幼魚であっても、卵を持っている魚であってもMSY(最大持続生産量)を維持できる漁獲量であることが不可欠です。そしてそれが漁獲枠(TAC)と個別割当制度(IQ、ITQ、IVQなど)でセットになれば、あとは漁業者が経済的なことを考えて、どの時期の魚を獲れば単価(水揚げ金額)が上がるか考えて漁をするだけになります。

単価が高い魚は、それだけ食用として消費者にとって価値がある魚ということです。消費者にも、漁業者に取っても価値がある魚を獲るべきであって、現在のように多くの親の魚が減ってしまい、価値がない小型の魚まで獲ってしまう構図は、言うまでもなく、最悪のケースなのです。

海外のケース

カタクチイワシやイカナゴは海外でも多く漁獲されています。カタクチイワシ(アンチョビー)の漁獲で有名なのがペルーです。ペルーでは資源量の増減により大きく変化しますが、年間100万㌧以上も漁獲されています。ただし、彼らはシラスのような幼魚は漁獲しません。幼魚の比率が増えてくると、その漁場での漁獲を禁止して資源を維持します。

ノルウェーのイカナゴ 幼魚は漁獲せず フィッシュミール向け

またイカナゴはノルウェーやデンマークなどの北欧諸国でも獲られています(写真)。ノルウェーでの年間漁獲量は、2019年の漁獲枠125,000㌧に対して124,786㌧でした。消化率は99.8%。ちなみに日本のイカナゴ漁獲量は、漁獲量の減少が止まらず14,600㌧(2018年)でした。そしてこれらの国々でも、ペルー同様に幼魚は漁獲しません。なぜなら食べる習慣がなく、幼魚に価値がないからです。

細長いのが特徴のイカナゴの幼魚

カタクチイワシや、イカナゴの水産資源管理には、ペルーやノルウェー・デンマークと日本には決定的な違いがあります。それは、科学的根拠に基づいた漁獲枠(TAC)の有無です。さらにこれらの国々は漁獲枠が漁船や漁業者に配分される個別割当制度(ITQ/IVQ)が設定されて、資源管理が行われています。

これらの国々でも、もし幼魚に価値を見出せば獲りに行くことでしょう。しかしながら、幼魚を獲れば親の資源量に悪影響を与える「成長乱獲」が起きる懸念があります。そこで間違いなく将来の資源を持続的にするための「親の資源量」を残すことを考えた上で、実施することでしょう。

つまり、シラスを獲ってよいかについては、科学的根拠に基づき、カタクチイワシのMSY(最大持続生産量)を維持できる量であるかどうかなのです。それができる範囲の漁獲であれば問題ありません。

逆にいうと、現在のように漁獲枠を設けず、カタクチイワシの資源をどれだけ残すかも決まっていない状態で、シラスを獲り続けることは、将来に禍根を残すリスクが高いということです。

シラスの資源量は、もちろん環境要因によっても影響を受けます。しかしながら、魚が減っているのを、自国の水産資源管理制度の不備にあることを棚に上げて、環境や外国のせいにばかりに責任転嫁をしてしまうのはよくありません。

結局は、すでに様々な魚種で起こっているように、魚が減って、漁業者のみならず、魚で生計を立てていた皆さんや、我々消費者含めて、多くの人を巻き込んでしまいます。

イカナゴの漁獲推移 温暖化の問題が起こる以前から減少が続く

イカナゴを例に取ると、4年連続の禁漁になった伊勢湾・三河湾や、不漁が全国で続くなか、せめて宮城だけでもと言われた宮城も、昨年のわずか3%、24㌧の水揚げとなり、壊滅的になってしまいました。

一方で、資源管理を科学的根拠に基づいて、漁獲枠を設定し、それを漁船ごとに個別割当制度で運営しているノルウェーでは上記のように、資源が豊富で豊漁でした。

グラフを見ると、全体では日本のイカナゴの漁獲量が減り始めたのは、1980年代以降で、それが現在に至っていることが分かります。

激減した理由として近年の温暖化が挙げられています。短期的には、それも影響していることでしょう。しかしながら、イカナゴが減っていると言われる現在より、30年ほど前から明らかに減少が始まっていたことが分かります。

イカナゴが激減した理由は、日本の水産資源管理制度に根本的な原因があり、それに近年の温暖化が追い討ちをかけているのではないでしょうか?

また、ノルウェーの方が、必ずしもイカナゴがたくさんいるから漁獲量が多いというわけではありません。日本では1970年台に20〜30万㌧も年間で漁獲されており、この数量はノルウェー昨年の漁獲量よりも多かったのです。

海域により多少の凸凹はあっても日本全体での上記の結果は、決して偶然ではなく、水産資源管制度による違いに起因する必然です。シラスは、親のカタクチイワシを含めて、ノルウェー同様に科学的根拠に基づき、早急に枠を決めて管理すべきなのです。

こんなに小さな魚を獲っても大丈夫でしょうか?

鉛筆と同じような長さの小さな小さなマダラ

小さいうちに獲ると魚は大きくなれない

魚によって寿命は違うのですが、小さいうちに漁獲してしまうと、成魚になって卵を産んで子孫を残す機会を奪ってしまいます。これを「成長乱獲」と言います。

また魚を減らすことなく獲り続けられる数量をMSY(最大持続生産量)と言います 。産卵する親をサステナブル(持続可能)な量に維持して魚を獲り続けることが世界の漁業の常識であり課題です。

海の憲法と呼ばれる国連海洋法や2015年に採択されたSDGsの14(海の豊かさを守ろう)にも、MSYによる管理が明記されています。

小さな魚まで獲られてしまう国は?

可食部がほぼない、小さな小さなノドクロ(アカムツ)

小さな魚を獲ってはいけないことは誰にでもわかるはずです。しかし、それは大概の場合、どこか他の国のことで、自分たちには関係がないことと思われることでしょう。しかしながら、水揚げの現場や売場の魚に解説を加えると、問題が身近にあることがはっきりわかります。

食用にできずエサにしてしまうケースは別にして、日本人は、ほぼ魚を捨てることなく、とても器用に使います。このため、とても小さな魚でも、「ひらき」にしたり、ほとんど食べるところがなくても、魚肉の部分をとって、練り製品やカマボコなどに混ぜたりします。

もっとも、小さな魚でも、資源が潤沢にあり、獲っても持続性に影響がなければ問題はありません。しかしながら、資源が少ないのに、小さな魚を獲ってしまうとなると話は別です。

日本の場合は漁獲枠がなかったり、あっても漁獲量より漁獲枠が大きすぎて機能してないケースがほとんどです。このため、漁獲圧力が高くなって、水産資源に非常に悪い影響を与えているケースが随所に見られます。その結果、日本の漁獲量に対しては、世界銀行やFAOが非常に悲観的な見通しを出しています。

皮肉なことに、売り場などで見る幼魚、小さな甲殻類などは国産ばかりです。科学的根拠にもとづく水産資源管理が機能している漁業先進国である北米、北欧、オセアニアなどでは、日本と違い、まだ価値が低い小さな魚はもったいないので漁獲しません。日本が輸入しているのは、価値も価格も高い輸入水産物です。このためあれっ「⁉️」と思う小さいのは国産の魚介類ばかりなのです。

可食部は?小さな毛ガニ

小さな毛ガニやズワイガニも見かけます。カニはエビのように丸ごと唐揚げにできません。小さなカニはそもそも可食部がほとんどないのです。もっと大きくなってから獲れば良いのにと思います。

しかし、そもそも漁獲枠がなかったり、漁獲枠があっても大き過ぎたり、または個別割当方式になって配分されていなかったりでは、自分が獲らなければ他の人に獲られてしまうという発想になってしまいます。これを「共有地の悲劇」と言います。

その結果、将来にとって悪いと分かっていても、小さな魚を獲ってしまいます。そして獲れなくなるとさらに頑張って小さな魚でも獲り、さらに減って行きます。これが多くの魚種や地域で起こっているのです。これがまさに悪循環が全国各地で起こっていることです。

小さな小さなスルメイカ

4年連続で水揚げ量がダウンし、過去最低の水揚げ量になろうとしているスルメイカ。他国のせいや、水温が低くて???など、減った理由の責任転嫁が多い反面、写真のように、自国で生まれたばかりの小さなスルメイカまで、容赦なく獲っている現実を知る必要があるのではないでしょうか?

何尾いるのか?シシャモの幼魚 

写真のシシャモは幼魚。1パックの中に一体何尾いるのか分かりません。どれだけ小さな網目ならこんなに小さな魚を獲ることができるのでしょうか?資源保護のために、今年シシャモ(カラフトシシャモ)を禁漁したノルウェーやアイスランドでは、幼魚がたくさんいる居場所を知っています。しかし資源の持続性を考えて、幼魚は決して獲らずに成熟して大きくなるまで待って獲ります。

これだけ小さいと、もちろん卵はありませんし、とても干しシシャモにできる大きさではありません。

漁業法改正により、これから国際的にみて遜色がない資源管理を行うことになりました。逆にいえば、これまではそうではなかったので、水産資源が減り、魚で生計を立てていたコミュニティの衰退が止まらないのです。これまで国内外の数多くの現場を見てきたので実感します。

魚の資源が潤沢であり続ければ、小さな魚を獲りたければ獲って構いません。ただ、漁業先進国のように漁船や漁業者ごとに漁獲枠が厳格に配分されていれば、経済性を考え、漁業者自ら価値が低い小さな魚を獲るのを避けるようになります。

小さな魚まで獲ってしまう日本の問題。その問題の根源は、漁業者にではなく、水産資源管理制度の違いにあるのです。