世界と日本の魚の状態を比較してみた

2021年10月22日更新

2024年6月9日更新

FAO データを編集

世界全体の水揚量は増え続けているのに、日本だけが多くの魚で減り続けています。しかしこの「異常」な現実は、一般にどころか、社会科を教えているような先生方にも、ほとんど知られていません。

(2024年6月9日加筆)2023年では372万㌧とさらに減少しており歯止めがかかりません。減少を続けている原因は科学的根拠に基づく資源管理が行われていないことに他なりません。

しかしながら、それが海水温上昇や外国が悪いと責任転嫁の報道が続いています。日本の周りだけ海水温が高いわけでもなく、世界全体では増加が続いているにも関わらずです。

このブログは「魚が消えていく本当の理由」についての真実を、その社会問題を解決すべく、科学的データに基づいて発信を続けます。

食用に向かない小さなマサバやマイワシが、容赦なく漁獲されている

まず世界全体の水揚量推移のグラフを見てみましょう。天然と養殖を合わせ右肩上がりに増えています。1988年に1億トンに達した水揚げは、2017年では2億トンと倍増しています。恐ろしいことに、日本では同時期での比較では1,200万トンから4百万トンへと逆に1/3に激減しているのです。

天然と養殖物について見てみると、天然物が横ばいであるのに対して、養殖物の数量が著しく伸びています。天然魚の水揚量は頭打ちのように見えます。しかしそうではありません。北欧、北米、オセアニアなどの漁業先進国が、実際に漁獲できる数量より「大幅」にサステナビリティを考慮して天然魚の漁獲量を制限しているのでそう見えるのです。

なぜ、子供たちに教える先生が、世界と日本を比較した魚の資源状態のことを知らないのでしょうか?それは、先生方がその現実を学ぶ機会がほとんどないからです。

学校の教科書には、日本の水揚げが減少しているグラフだけが載せてられているだけです。このため1977年に設定された200海里漁業専管水域により遠洋漁業の衰退などにより魚が獲れなくなり、後継者不足や高齢化で大変な一次産業と児童や生徒に教えてしまうのです。

これでは、世界で起こっている現実が全く伝わりません。魚が消えて行くことは、私たちの生活にとても身近な問題なのに、、、です。

農水省 FAO データを編集

そこで、上のような世界全体と日本の水揚量推移でグラフを作ると、世界と日本の傾向が明確に異なることがわかります。このグラフ1枚をベースに、学校で世界と日本の傾向が著しく違う理由に関して授業を行えば、先生も含めて非常に勉強になり、話題は尽きないことでしょう。

世界銀行の発表を合わせると日本が特例であることがはっきりします。世界銀行が2010年と2030年の海域別の水揚量を予測している表では、世界全体では23.6%増えているのに、日本の海域だけがマイナス9%とマイナスを示しています。

しかも2030年を待たずして2015年で460万トンにまで減っており、前倒しして悪化してしまっているのです。日本の水揚げが大幅に減った原因として、マイワシの水揚げが減少していることも理由になっています。

しかし、マイワシの水揚げは、東日本大震災があった2011年以降は急激に増えて来ており、逆に全体の水揚げ減少を抑える要因になっています。

マイワシが減ったからでは、全体の水揚量が減り続けている理由にはなりません。

水産資源の減少としてよく出てくるのが「環境の変化」です。海水温の上昇などは、資源量に影響を与えます。しかしながら、世界中で日本の海だけが温暖化しているのでしょうか?

外国の船が獲ってしまうからという理由もよく出てきます。しかしながらこれも、ホッケ、イカナゴ、クロマグロをはじめ、外国漁船の影響はあまり関係がないケースがほとんどです。

またサンマについては、国際資源です。これも公海での国別の漁獲量さえ決まっていない現状では、外国ばかりを非難しても仕方がないことを理解せねばなりません。

日本の水産資源管理のように、漁期や漁法などは制限するものの、肝心の数量については目一杯獲って水産資源を減らしてしまう国は、例外なのです。

日本の減少理由をクジラのせいにしている場合もあるようです。もちろんクジラはたくさんの小魚などを食べます。

しかしながら、ホウェールウオッチングが盛んな、アラスカやアイスランドなどでは、クジラがたくさんいますが、魚もサステナブルな状態でたくさんいるのです。

不漁 凶漁なぜ日本の魚ばかり減るのか?

次々に消えて行く魚。今年(2019年)獲れないと話題になった水産物を例に挙げてみます。サンマサケスルメイカ、イカナゴ、サクラエビ、毛ガニ、ウナギの稚魚などなどです。

「〇十年ぶりの不漁・凶漁」「過去最低の漁」「こんなに獲れなかったことはない」といったニュースに慣れてきていないでしょうか?

一方で、獲れていた頃に比べると、ほとんど獲れていないのに、あまりにも獲れなくなってしまい、少しでも獲れるようになると、まるで資源が回復したかのように錯覚される魚として、ホッケ、ニシンやクロマグロが挙げられます。

また、東日本大震災で、しばらくの間、漁獲圧力が落ちて急激に資源が増えたにもかかわらず、再び減ってしまったマダラなど、水産資源管理やサステナビリティの欠如により、残念な結果になっているケースは少なくありません。

魚が減った原因として、環境の変化や外国の影響と自国の資源管理は棚に上げて責任転嫁するケースをよく見かけます。

もちろんそれらの影響がないとまでは言いません。しかしながら問題の本質は、自国の獲りすぎを棚上げにした水産資源管理にあるケースがほとんどです。

そして、消費者として目に前の魚に問題があってもあっても、言われないと気づかないことが多いのです。

身近には乱獲(成長乱獲)の形跡が、、。。

小さなスルメイカ

「スルメイカが獲れない」というニュースを聞いたことがあるかと思います。その原因として上がるのが、外国船による操業です。ただ、その一方で、日本では、写真のように産まれたばかりと思われる小さなスルメイカを獲って売っています。これで良いのでしょうか?

サバの場合でも、日本では食用にならないローソクとかジャミと呼ばれる未成魚が容赦なく漁獲されています。養殖のエサや輸出に回ることが多く、目にする機会は少ないです。しかし実にもったいなく、資源にも良くない漁業が日本のあちこちで行われていることが、資源の減少、そして水揚量の減少とつながってしまうのです。

輸入では十分賄えない時代

水産白書を編集

日本の水産物の輸出入に関するグラフを見てみてください。青い棒グラフの「輸入数量」は年々減少しています。一方で赤い折れ線グラフの「輸入金額」は年々上昇しています。

これらが意味するところは「単価の上昇」です。この傾向は、さらに厳しくなるのは上述の通りです。これを「買い負け」と言います。 

日本のように様々な魚種が減ってしまうと、代替になる魚がなかなか見つかりません。このため、獲りすぎで海に常に借金をしているような形になっています。未成魚でも幼魚でも獲ってしまうので、魚は成長する機会も産卵する機会も奪われてしまいます。

魚を獲り過ぎると、海の中を泳いでいる魚は、小さな価値が低い魚の比率が高くなります。このため消費者は、大半を占める小さな魚の中から選ばれた少し大き目の魚を高い単価で買う羽目になってしまいます。

そして漁業者には安く、消費者には高いという悪循環になってしまいます。そのギャップを埋めてきたのが、輸入水産物でした。しかしながら、世界中で水産物の需要が増えて、日本が思うように買い付けできる時代ではなくなってしまっています。

国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)において、水産物をMSY(最大持続生産量=魚を減らさずに獲り続けられる最大値)水準にまで回復させる期限は2020年です。まさに待ったなしの日本の水産資源管理なのです。

アップデート 2021年10月22日

世界と日本の水揚げ量を比較するグラフを最新のものと交換しました。日本の水揚げ量は2020年で418万㌧と減少に歯止めがかかりません。