食べたら危険? ノルウェーサーモンの誤解を解いてみた(2)

アトランティックサーモン 天然

冷凍されて輸入されているからアニサキスの問題はない?

ノルウェーサーモン(アトランティックサーモンへの誤解を解く第2弾。アニサキス? 冷凍?共にノルウェーサーモンとほぼ関係がないファクターが、ネットで説明され間違いが間違いを呼び複雑骨折しています。

まず養殖のノルウェー サーモンとアニサキスの関係について。アニサキスは、体内に取りこんでしまうと激しい腹痛を伴う恐ろしい寄生虫です。しかし、輸入されているノルウェーサーモンは養殖です。エサのドライ加工したペレットにはアニサキスはおらず、その心配はありません。そのため刺身用として、寿司ネタとして広く流通しているのです。

アニサキスはマイナス20度で24時間以上冷凍すると死滅します。このため、オランダやドイツで人気がある生食のニシン(マチェス)は一旦冷凍してから流通しています。ニシンは天然ものです。

日本で天然の鮭を生で食べるルイベ。これは鮭を一旦冷凍した料理です。冷凍するのは、天然のサケには養殖物と異なりアニサキスなどの寄生虫リスクがあるからなのです。

ニシンやサバなどの天然魚は、エサとなるツノナシオキアミなどにアニサキスが寄生しており、それを食べることで内臓などにアニサキスが入り寄生します。

しかしながら、ノルウェーサーモンに与えるのは、ペレットと呼ばれる粒状のエサです。原料のフィッシュミールは、加熱、乾燥させるのでアニサキスはいません。ノルウェーで問題になっているのは、後述しますが、シーライスと呼ばれる全く別の寄生虫です。

さらに日本に輸入されているノルウェーサーモンは90%以上が生の空輸です。ですから、冷凍されているからアニサキスは大丈夫というのは、そもそも的外れなのです。

アニサキスの危険?

天然アトランティックサーモンの寄生虫(シーライス)

ノルウェーサーモンにつく寄生虫(シーライス)の写真です。赤い矢印をご覧ください。アニサキスは、半透明で細いイトミミズのような全然違う虫です。この写真は、アイスランドの川に回遊してきた天然のアトランティックサーモン(ノルウェーサーモンと同じ)です。養殖で問題になっているシーライスは、このように天然のサーモンにも一般に寄生しているのです。

ノルウェーサーモンに寄生しているシーライスは、写真のように内部ではなく皮く目立つ虫です。生食用に調理する際には、皮は取り除かれますよね。

養殖場にアニサキスが入ってくる可能性が100%無いとは断言できませんが、常識的に考えて問題は無いのです。

ノルウェーサーモンは生で空輸される

2018年に輸入されたノルウェーサーモンのセミドレス(エラと内臓を取り除いた形態)の数量は15,605トンです。その内、冷凍での輸入はわずか192トンです。つまり、99%が生鮮の状態で輸入されて主に生食用として流通しているのです。

加工したフィレーの形体(頭、内蔵、骨、皮などを除去)で冷凍したものが1,699トンあります。一方で生鮮で輸入されるフィレーは大幅にそれ以上あります。チリ産などの数字も入るので詳細は分かりませんが、全部ノルウェー 産とかなり多めに計算したとしても、生鮮での輸入は9割を超えています。ノルウェーサーモンが生食で食べられるのは、冷凍して輸入されるからという理由ではないのです。

ノルウェーサーモンを加熱する?

ステーキやムニエルなどでノルウェー サーモンは加熱調理されます。もちろん、火を通しても美味しく食べられます。ただ、アニサキスの問題があるので火を通して食べた方がよいというのは、正しい解釈ではありません。

アニサキスは火を通せば死滅しますが、そもそも養殖のノルウェー サーモンにはいないので、その話自体が関係がないのです。

欧州でも寿司ネタで人気のアトランティックサーモン

EUや米国をはじめ世界中でアトランティックサーモンを使った寿司の需要が増えています。ちなみにEUや米国の食品輸入は衛生基準を始め日本に比較してかなり厳しく、問題がある食品を、しかも生食で流通させるなど考えられません。

なぜ、ノルウェーサーモンに関するデマが広がったのかは分かりません。ただ、水産資源管理、サステナビリティに関しての誤った情報や知識不足が悪影響を与え、それに対する答えが見つけられないケースがサーモンに限らず多々あります。当サイトはそのための手掛かりの一つとなれれば幸いです。

ダイオキシン、抗生物質、殺虫剤などについては「食べたら危険?ノルウェーサーモンの誤解を解いてみた(1)」をご参照ください。