サンマ不漁 誰もいわない最も深刻な問題

今年のサンマ漁獲予想が発表されました。10年以上前は20万㌧以上の水揚げが当たり前であったサンマ漁。

しかしながら、昨年の水揚げ量はわずか約4万㌧と過去最低の大不漁でした。今年は、それよりもさらに来遊量が少ないという予想です。一体どうなっているのでしょうか?

ところでサンマの問題は、単に獲れないだけではありません。日本の将来のサンマ漁に大きな禍根が残ろうとしているのです。

今年のサンマは細くて小さいと予想されている。

ちなみに昨年は大不漁であっても、その前年度に冷凍されたサンマが一部で出回りました。しかし今年は、昨年冷凍されたサンマがほとんどありません。仮に解凍サンマを見かけたとしても、繰り越している在庫はほとんどないのです。

マスコミ報道や不漁予想の発表を見ても、その問題の本質は全く伝わっていません。俯瞰(ふかん)的に、データをもとに解説すると、大きな問題に気づかれるはずです。

サンマ資源調査 3区は調査できていないが、過去に比べて極端に少ない見込 (水産研究教育機構)

よくある不漁の理由を挙げます。日本に回遊してくる前に台湾や中国などの漁船が獲ってしまうから?まるで日本から遠く離れた公海に行けばサンマがたくさん獲れたのではという幻想です。また、暖水塊が来遊を妨げている、つまりそれが移動したりなくなれば、たくさん獲れるのでは?という幻想もあります。

サンマは、日本のはるか沖合を回遊する。その沖合(公海)のサンマも少ない。 (水産研究教育機構)

このように多くの幻想と誤解が世間を取り巻いています。では、なぜそれらが幻想なのでしょうか?

公海ではサンマがたくさん獲れるという幻想?

NPFCの資料を編集

上の表を見て下さい。過去最低と言われた2019年のサンマの国別漁獲量を2018年と比較してみました。全体では、前年比44%、日本だけ見ると36%しかありませんでした。

まず気づいていただきたいのは、大不漁だったのは、日本だけではないこと。『漁場が遠く離れた公海でのサンマ漁も同様に大不漁だった。』ということです。ちなみに、日本とロシア以外の国々の漁場は、ほぼ公海とお考え下さい。

つまり、日本の漁場「EEZ内」であろうが、「公海」だろうがサンマの来遊漁が極端に少ない=資源量の激減、という状態だったのです。仮に暖水塊が消えていたとしても、その沖合の資源量自体が少なかったのです。

誰もいわない将来の問題

今年(2020年)の夏には、公海での操業も含めたサンマの国別漁獲枠を決める話し合いが行われるはずでした。しかしCORVID19の影響で、会議の見通しが立っていません。国別の漁獲枠設定は不可欠で、それなしで漁を続ければ各国による過剰漁獲が起こり、資源量と漁業に大打撃が続きます。

漁獲枠配分については、各国とも国益が関わるので容易に妥協しません。また、獲り切れない巨大な漁獲枠の設定は、資源の持続性に何の役も立ちません。昨年56万㌧という分布域全体の漁獲量が決められました。しかし、昨年の実際の漁獲量は20万㌧に過ぎませんでした。

上記の56万㌧の内、公海が33万㌧になっていますが、共に実際の漁獲量より巨大で規制になっていません。また、国別交渉になると、自国の配分比率に最大の関心が行きます。実績が伴わない分(=日本の配分)がまず減らないと、各国は納得しないことでしょう。

さらにいえば、事前に資源量が大きく減少している調査結果が出ており、効果がない形式的な取り決めをしただけでした。これをマスコミは「数量管理に合意」などと報道していましたが、実際の中身はなかったのです。

決めねばならないのは、科学的根拠に基づく全体の漁獲枠(TAC)と、国別に配分「比率」です。

サンマの資源量が減っていることが最大の問題ですが、それ以外にもとても大きな問題があります。しかし誰も言いません。それは、国別の漁獲枠配分を決める際の根拠となる、日本の漁獲量シェアの急激な低下です。

水産研究教育機構

2019年は上の表及びグラフの通り、シェアわずか24%にまで減少してしまいました。2000年以前までは、大概80%を軽く超えていました。それが、公海での水産資源管理を疎かにしてしまったために、台湾や中国などの台頭を許してしまったのです。漁船に新規投資をした国々は容易に引き下がりません。

また、彼らの方が漁船が新しく、また漁場自体がより公海側が主体となりつつあるので、日本にとっては由々しき事態です。時間の経過と共に日本の漁獲割合が減れば、将来の配分も減ることになる可能性が高くなります。

過去に日本の漁獲量が多かったからといって、それを尊重するかどうかは、もし自分が台湾や中国の交渉担当だったらどうか考えて見ると分かると思います。国益が絡む交渉は甘くありません。

サンマの資源調査結果が、昨年よりさらに悪いと出ているので、国によってはサンマ以外の魚種に一時的にシフトすることも考えられます。

しかし、そうであっても、交渉に際して2018年、2019年といった近年の漁獲量をベースに各国が主張してくれば、将来の日本の割り当て比率は少なくなります。そしてかつてのようなサンマの漁獲量には、よほど資源量が回復しない限り戻らないでしょう。一方で、合意せずにこのままでは、サンマの資源自体が壊滅するリスクが高まって行きます。

サンマは国際資源です。公海を含めたサンマの国際的な資源管理は一刻も早く実施せねばなりません。内憂外患の状態になってしまっているのです。

絶滅危惧種のウナギが豊漁といわれる怪!?

養殖に使う絶滅危惧種のウナギの稚魚が豊漁?

今年はウナギが豊漁?というのは本当???

今年は 絶滅危惧種のウナギが豊漁で安くなっているという報道を聞いたことはありませんか? 絶滅危惧種といえば、パンダやトキなどが有名ですね。同じ絶滅危惧種のパンダやトキが突然増え出したらビックリですが、ウナギではそんなことがあるのでしょうか?

このままでは、「絶滅危惧種」でも「資源量は高位」と評価されることも!?

もし今年の漁獲量が数年続いたら、今の日本の水産資源評価では、国際的には絶滅危惧種のままなのに、日本の評価では「高位」などという矛盾が起こりかねません。

その理由は、日本の場合、短い期間で資源を評価してしまうからです。このため、魚の減少と共に、資源評価における中位や高位といったバーがどんどん下がっていきます。

本来の資源評価は、最低でも50年以上前の漁獲量、資源量から正当な評価とはなりません。たくさん獲って減った後の資源量を元に、多い少ないという議論をしても、その結果出てくるのは矛盾と誤解を与える解釈だけです。

ニシンやズワイガニなど、日本の資源評価は低位に見える内容が高位にされています。このため資源管理が後手後手にという副作用が生じています。

今年はウナギが本当に安いのだろうか?

今年はウナギが安い?

豊漁なのでウナギが安いそうです。売り場では1尾2,000円前後の蒲焼きを見かけますが、これは果たして安いのでしょうか?ウナギの養殖は、シラスと呼ばれる稚魚を捕獲して育てます。完全養殖のウナギが出回るかどうかは、まだ先の話です。

ピークに比べヨーロッパウナギとニホンウナギの供給量は大幅に減少。価格が高騰している。
                                (資料 水産庁)

1990年代から2000年前半にかけて、欧州からウナギの稚魚が大量に中国へ輸出されて養殖されました。その主要輸出先は日本。上のグラフの通り、輸入量のピークは2000年代の前半で10〜13万㌧に及びました。しかしその後、輸入量は減り、2019年は約3万㌧となっています。

供給量が多かった期間では、ウナギの蒲焼の価格は、今のような4桁ではなく、3桁の価格でした。しかし、乱獲の影響で2009年にヨーロッパウナギがワシントン条約の附属書2に指定され、養殖に使う稚魚と日本向けのウナギの供給が激減し、価格の高騰が続きました。

安くなったというのは、あくまでも前年と比べてのことです。

キロ200〜300万円もしていたウナギの稚魚 

今年豊漁といわれているのは、その稚魚の漁獲量のことです。昨年は記録的な不漁となり、わずか3.7㌧しか採れませんでした。それが今年は17.1㌧と4.6倍になったので豊漁と呼んでいるのです。確かにこの2つの数字だけ見れば、数量は急激に増えているように思えます。

1番右の赤点が今年の数量。豊漁でも何でもないことが分かる  (資料 水産庁)

しかしです。過去の漁獲推移を表した上のグラフを見てください。一目瞭然ですが、もともと今年のさらに10倍ほどの年間150〜200㌧採れていた稚魚は激減したままです。

だから絶滅危惧種状態であることに、何の変わりもないのです。しかし何年かすると資源評価のバーが下がってしまい、少し増えただけでも資源量は中位だ高位だというおかしなことになってしまうのです。

このサイトで伝えたいこと

うな丼を適正価格で食べ続けるためには?

お伝えしたいことは、「おいしい魚を適正な価格で食べ続ける」ためにはどうしたら良いかということです。単に魚を食べずに保護するということではありません。

魚は水揚げ量が減れば価格が上昇します。漁業者は、漁獲量が減って、魚価が上がれば、よりたくさん獲ろうとします。しかしこれはごく当たり前のことです。

魚は資源管理を間違えなければ持続的に利用でき、食べ続けることができます。一方で、間違えてしまうと、魚が減るだけに留まらず、地域社会や産業にまで悪影響を与えてしまいます。残念ながら後者のケースが日本の北から南まで、あちこちで起こっています。

ところが、その逆の成功例が、ノルウェーを始めとした国々にあります。それを具体的な数字や写真グラフなどで伝え続けて来たことで、多くの方々に届くようになりました。

時間の経過とともに「なぜこんな評価や資源管理をしていたのか!」という声が増えています。

そこで手遅れにならない内に、魚が消えて行く状況を反転させる政策が作られ、このサイトがその手助けや根拠になることを願います。

SDGs14 日本の水産資源の危機 

厳しい世界の評価と魚が激減している現実

SDGs(持続可能な開発目標)に関する最新の評価結果(Sustainable Development Report 2020)が発表されました。魚が消えて行く日本の海。その現実に厳しい視線が注がれています。2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)、その達成期限であるゴールは全体では2030年です。

しかしゴールの中の14(海の豊かさを守ろう)のうち、魚の資源管理に関わる目標期限は2020年、つまり今年です。大きく分けて評価の良い方から、緑・黄色・赤という色分けですが、日本の「海の豊かさを守ろう」の色は「赤」。しかも水産資源管理の結果については、とても厳しい評価となっています(後述)。

欧米や、オセアニアといった漁業先進国が、その目標数値であるMSY(Maximum Sustainable Yield) =(魚を減らさずに獲り続けられる最大値)を達成していく中で、日本は大きく遅れて地方経済に暗い影を落とし続けています。

資源評価を詳しく分析してみると… 

日本の資源評価はかなり甘く 現実や世界の評価と比較すると矛盾が多い (資料:水産白書)

サンマサケイカナゴスルメイカなど、日本の漁獲量は、多くの魚種で右肩下がりに減少を続けています。ここで日本と発表されたSDGs ダッシュボードでのデータを比較してみます。

まず我が国ですが、水産資源評価が上のグラフを見ると、高位(24%)・中位(32%)・低位(44%)と3段階に分けて評価されています。

ズワイガニ 日本海系群 B海域の漁獲量推移 資源は「高位」には見えない (資料:水産研究教育機構)
ズワイガニのメス 米国、ロシアなど日本が輸入している国々では「メス」は漁獲禁止

ところがです。高位の中には、上のグラフのズワイガニ(日本海系群B海域)や、ニシンといった、実際の漁獲量推移から見ると、恐らくこれらの傾向について「高位」と見るより、むしろ「低位」とみるのでは妥当なものが含まれています。

上の写真はメスのズワイガニです。日本がズワイガニを輸入している米国、カナダ、ロシア、ノルウェーなどはメスの漁獲を禁止しています。放流しても生きているので、メスガニは卵を産み続けます。実際に資源が増えているケースは珍しくありません。

次にSDGsでの世界の評価(SDGs14・海の豊かさを守ろう)での日本の評価は、過剰漁獲・資源崩壊の割合が70.8%で悪化が進んでいるという非常に厳しいものでした。しかもこれは2014年時点でのものであり、2020年現在では、全体及び個々の魚種の漁獲量の減少傾向からして悪化していることは、残念ながら間違いありません。

つまり、日本独自では「低位」の評価が僅か44%であるのに対して、世界の日本に対する低位の評価「過剰漁獲・資源崩壊=低位と仮定」は70.8%と、評価の数値がまるで違うのです。

2020年12月に施行される改正漁業法では、国連海洋法やSDGsで採択されているMSY(最大持続生産量)に基づく資源管理がようやく実施されます。評価魚種を増やそうとしている段階ですが、データがある魚種でMSYの評価を行ったところ、約9割がMSY以下、つまり過剰漁獲の状態でした。

魚はだれのものか?国民共有の財産

日本の法律では、魚は無主物とされています。一方で、世界では欧米など「国民共有の財産」と位置付けらています。この一丁目一番地と言える肝心な文言が日本の漁業法にはありません。その文言を入れようとすると、そうさせないという闇の力が働いているようです。

「国民共有の財産」としていないために起こった身近な例に、静岡県で起きたサクラエビの禁漁区での漁獲例があります。サクラエビも、漁獲量・資源量共に激減しています。そこで資源を回復させるために産卵場に禁漁区が設けられていました。しかし、不漁の業を煮やした漁業者が禁漁区での漁を行ってしまいニュースになりました。

ところが、詳しい捜査が行われなかっただけでなく、いつの間にか「湾奥の禁漁区などの規制を一部緩和して漁に臨んだ」?となっている始末。資源が回復しないことは、漁業者だけでなく、地元の加工業者や観光にも暗い影を落としています。

「国民共有の財産」ではなく「自主管理」という方法で成功している例を筆者は知りません。あるのは自画自賛の例くらいです。

漁業者の仕事は、魚を獲ることです。魚を獲り過ぎればいなくなってしまうことは誰でもわかります。しかし、経済的なことを考えると、どうしてもたくさん獲る方向に進んでしまい、その結果ほぼ例外なく魚が減ってしまうのです。

必要なのは、漁業者ではなく、国が科学的根拠に基づいた水産資源管理のための制度をつくることです。

回復に長期間を要する、ケースが出始めていますが、今が世界からの警告を深刻に受け止めて行動するギリギリのタイミングです。

過去最低と最高の水揚げ量 この違いは何か?

サバとマイワシの混獲 もう少し成長を待てばよいのだが、このまま養殖のエサ向けになってしまう量は多い 

世界全体と日本の水揚げ量の傾向は逆

農林水産省から2019年、そしてFAO(国連食糧農業機関)から2年ごとに出される世界全体の水揚げ量(2018年)が発表されました。

過去最高の水揚げ量が続く 世界全体の水揚げ量  FAO
日本の水揚げ量は世界と対照的に過去最低を更新  水産白書編集

日本の水揚げ量は、416万㌧と1956年以降の比較しうる数量で過去最低を更新中。1980年代の1,200万㌧台から滑り落ちるように減少が続き止まりません。ところで、これまで主な減少要因とされてきたマイワシの水揚げ量は、減少要因どころか2011年の震災以降10万㌧台を回復し、2019年は50万㌧を超え、減少を続ける水揚げをかろうじて支える位置付けになっています。つまり、マイワシの減少が、日本の水揚げ量が減り続ける原因ではなかったのです。

一方で、世界全体の水揚げ数量は、引き続き右肩上がりを続けています。2018年は天然と養殖で合計2億1千万㌧(海藻類3千万㌧含む)と過去最高を更新中です。天然と養殖物は、ほぼ半々。ただ、天然物の漁獲に関しては、主に北米、北欧、オセアニアなどの漁業先進国が、サステナビリティを考えて漁獲をセーブしているので、今後は養殖物の比率が増えて行くことでしょう。

ただし、サーモンを始め養殖魚の多くはエサを必要とするので、その供給が課題です。

日本と世界の傾向がなぜこんなにも違うのか?その原因と明確な答えを出し続け、皆さんに水産資源管理の大切さに気付いていただきたいというのが、当サイト(魚が消えて行く本当の理由)の目的です。

成長乱獲と加入乱獲そして投棄が同時多発

小さな幼魚を獲ってしまえば魚は大きくなりませんし、産卵する親が減れば産まれる卵の量は減ってしまいます。また漁獲した魚を小さかったり、産卵後で痩せていたりで価値が無いため投棄してしまえば資源は減少します。残念ながら日本で、様々な魚で同時に起こってしまっている現象です。その結果が、様々な魚種、そして全体でも過去最低という水揚げ量につながっています。

魚と海水温

海水温の高い低いが、水産物の資源量に影響を与えるのは当然です。農作物の収穫量も気温に影響されるのと同じです。しかしながら、日本では魚の資源が減少した理由について、海水温の上昇を安易に使いすぎています。そしてそれは「矛盾」という形で現れます。資源量に水温の影響があるなら、より漁獲量を減らして資源量の維持を図る予防的アプローチがされるべきです。しかし、供給が減ることで魚価が上がり、よりたくさん獲ろうとする力が働いて資源を潰してしまう例があちらこちらにあります。そしてとどのつまりが、環境の変化に対する責任転嫁。地方の深刻な衰退につながっています。

令和二年発行の水産白書にサケ・サンマ・スルメイカの不漁に関するコラムがあります。不漁の原因は、海水温、海洋環境の変化、外国船による漁獲の影響などが出ていますが、日本が獲り過ぎてしまったこと、水産資源管理に問題があったことは何も書かれていません。 現実的には、主に資源管理の問題で、資源状況が悪化して不漁になっているのです。かつてのノルウェー、現在の中国はそれに気づき対策を取っています。

スルメイカの減少は水温が高いではなく低いという理由??? 小さなスルメイカ

スルメイカの例:海水温の上昇ではなく、東シナ海の産卵場での海水温の低下が不漁の原因として挙げられています。海水温は低いのではなく高いので問題になっているのではないでしょうか?(漁師のつぶやき)

マイワシの例:水温が低い寒冷レジームで増えると言われています。現在資源量が増加していますが海水温は下がってきているのでしょうか?

サンマの例:水温が高いため日本の沿岸に魚群が来る量が減っていると言われています。ところで、上記のサンマとマイワシの漁場も時期もほぼ同じです。同じ海域でも水温がサンマには高くてマイワシには低く影響しているのでしょうか?

イカナゴの例水温の上昇が資源量が激減した主な理由とされていますが、一方で青森で激減した理由は海水温が低いからと矛盾しています。また、緯度が高く海水温の上昇を日本同様もしくはそれ以上影響を受けているノルウェーの2019年の資源量と漁獲量は皮肉にも大幅に増えています。

ニシンの例水温の上昇が資源減少の主な理由の一つとされてきましたしかし、2019年は1.5万㌧と過去10年の平均より2.5倍増加しています。北海道は水温が低下したのでしょうか?。

カツオの例:海水温が高いことに影響を受けるなら、南太平洋から回遊して来るカツオの量は減少していますが、増えるはずではないでしょうか?

クジラが食べる影響 クジラはどこに多いのか?

太平洋のミンククジラ

クジラは、大量の魚を食べます。アラスカなどで群れでニシンを追い込んでひとのみにする映像をご覧になった方もいるでしょう。IWC(国際捕鯨委員会)からの脱退で調査捕鯨を止めた海域は南氷洋で、そこでは最も多くクジラが生息しています。

日本の周りばかり魚をたくさん食べてしまうクジラがいるのではありません。クジラはエサになる水産資源が豊富な海域に来ます。ちなみに、太平洋と大西洋、そして南氷洋に生息するクジラの推定生息数を比べてみましょう。

最も資源量が多いミンククジラでは、日本の周りを含む太平洋(推定約2.4万頭)より、大西洋の方がはるかに推定生息数が多い(推定約14.5万頭)ことが分かります。南氷洋はさらに多い(推定51.5万頭)です。つまり、クジラが食べる影響についても、日本だけ特別に影響があるわけではないのです。かえってノルウェー、アイスランドなどの方が影響が多いことが予想できます。しかし魚の資源量では、マダラ、マサバ、ニシンなど同じ魚種でもそれらの国々の方が資源量が多く、サイズも大きいという逆の現象が起きています。

その違いこそが、まさに科学的根拠に基づく水産資源管理が行われているか否かなのです。

魚と災害 歴史を繰り返す日本の漁業 

小さなヒラメ 成長する前に獲られて売り場に並ぶ。

日本の水産資源が一時的に回復してきた歴史

人類が魚を獲る能力とその影響は、皆さんの想像よりはるかに大きいことをご存知でしょうか? ですから様々な魚種で起こっている獲り過ぎを管理しないと、さらに魚が獲れなくなり、社会に負の影響を与えてしまいます。

震災後に漁獲されたカレイのような小さなヒラメ 一枚300円で売られていた。

過去の漁業の歴史を見ると、かつては世界でも乱獲による資源崩壊が繰り返されてきました。一方で、ノルウェーを始め乱獲を反省して魚の資源を回復している国々も数多くあります。反省して漁業制度の改革を行うか、それとも「環境の変化」などに責任転嫁してしまうかで、かつて水揚げで潤っていた地方は繁栄と衰退という、全く対照的なことが起こっています。

皮肉にも、日本の水産資源が回復するのは、戦争や災害の時です。最初が第一次世界大戦後、次が第二次世界大戦後、そして東日本大震災後でした。

具体的には、英国から輸入されたトロール漁船による漁が軌道に乗り出したのが1908年。トロール漁船の急増で乱獲が進んで資源が悪化。このため1914年には131隻の内、3分の1が休漁。しかし第一次大戦が起きて軍事用に欧州から買船希望が殺到して過剰投資は救われ、終戦時に残ったのは僅か6隻。その後、皮肉にも漁船の減少で資源は一時的に回復しました。

しかし、再び漁獲競争が繰り返されて、魚がいなくなりました。 そして次に魚の資源が回復したのは、第二次世界大戦後です。 日中戦争前の1936年に433万㌧あった水揚げは戦争が終結した1945年には182万㌧に激減していました。

この間の水揚量の減少は、魚が減ったからではありません。逆に獲られないので魚は増えていたのです。

戦時中は、一時的に魚を獲る船も人も減少します。魚は産卵する機会を与えられ、小さな魚は大きくなるチャンスを得ます。そして、大きくなった親の魚が卵を産んで、増えていったのです。

第二次世界大戦後に、動物性タンパクを補うため、日本の漁船は近海だけでなく、世界中の海に展開して食糧供給で大きな貢献をしてきました。そして次々と漁船や運搬船などが建造され、北海道、東北、九州他から漁業従事者が急増しました。

1977年に200海里漁業専管水域という、漁業に関する新しい世界のルールができなければ、漁業は短期的に発展した後、世界中の海から魚が消えて行ったことでしょう。

その後、日本では2019年の水揚げ量が416万トンと、比較しうる1956年以降で最低になりました魚がいなくなった結果を基に、水温が高い低い、水がきれいになりすぎた、黒潮大蛇行、地震の前兆など全く影響がないとは言いませんが、矛盾した理由が挙げられています。しかしながら一番大きな影響力を与えたのは他ならぬ人間の力なのです。

東日本大震災で魚が増えたが再び資源を潰す

多少の凸凹を繰り返しながら右肩下がりに漁獲量が減る傾向が再び止まるきっかけが起こりました。2011年に起きた東日本大震災です。放射性物質の影響で、三陸沖に一時的な禁漁区が出来上がり、また漁業者に補助金が支払われ漁獲圧力が大きく減少しました。

皮肉にも、マサバ、マダラ、ヒラメ、イカナゴ他の魚種の資源が急回復。しかしながら、その多くは一時的に回復しただけで 再び 減少を始めています。その一例としてヒラメを挙げます。

ヒラメに見る震災の影響とその後

7kgのヒラメ   ヒラメはカレイと異なり大型になる

上のグラフは、震災前後のヒラメの資源量(太平洋北部系群)を表しています。古い2017年の右のグラフには赤い線が二本引いてあります。下の線が低位と中位、上が高位と中位の資源量の境目です。しかしながら、2011年を境に急激に資源量は増えました。2本の線は意味をなしていないことが分かります。それだけ、震災前はヒラメ資源に圧力をかけすぎてしまい、回復する機会を奪ってきたことが推測されます。

新しい2019年の右のグラフでは、二本の赤い日本の線は消されてしまっています。

資源が急回復したヒラメ資源ですが、このままでは再び減少傾向に向かうことは目に見えています。震災後、カレイのようなヒラメを目にするようになりました。ヒラメは成長すると8kgにも10kgにもなる大型魚です。それを1kgにも満たない未成魚を獲ってしまえば、減りだすのは必然です。

ヒラメには漁獲枠さえありません。獲れるからといって、小さすぎて最も美味しいエンガワの部分さえないヒラメを獲るべきではないのです。

同じ過ちを繰り返しても気づかず 

震災後 三陸で水揚げされていた マダラの稚魚 用途を聞くとエサにでもするとのこと

東日本大震災を機に、漁獲圧力が減り、資源量が回復。しかし再び元どおりに減った例にマダラがあります。写真は、三陸で撮ったものですが、マダラかどうかよく見なければわからない稚魚が水揚げされていました。マダラはヒラメと同じく、1メートルにもなる大型魚です。小さな内に獲ってしまえば育ちません。これを「成長乱獲」と呼びます。

太平洋マダラ 1メートル 体重は10kgにもなる
マダラ 太平洋系群の資源量推移  水産研究教育機構

マダラの資源量が、2011年の震災前と、震災後で資源量が大きく変動し、再び減少していることが上のグラフで分かります。

2011年に震災の影響で漁獲が減った2012年時2歳(水色)のマダラ資源が、成長して翌2013年3歳(黄緑)になり、翌々年の2014年に4歳(黄色)と急増していることが分かります。ヒラメの資源を表すグラフ同様に、中位、高位といった、2本の線は本来あるべき資源量を考えた場合、基準が低すぎて意味がなかったことが分かります。これは、ヒラメでも同じです。

ところで、科学的根拠に基づく漁獲枠がなく、稚魚も容赦なく獲ってしまう現在の制度においては、残念ながら資源がサステナブル(持続可能)になることはありません。

漁業先進国と異なり、戦争や天災が起こらないと、資源が回復せず、回復しても一時的で元の木阿弥になってしまう日本の水産資源管理制度。

2020年に施行される国際的に見て遜色がない資源管理を行うとする漁業法の改正を機に、真剣に資源をサステナブルにする制度を作る必要があるのではないでしょうか?

必要なことは、国民一人一人が、消費者としても大きく関わっている水産資源管理の大問題に気づくことです。新型コロナのマスク不足などで分かった方は多いと思いますが、各国は自国への供給を優先します。日本の食糧自給、特に魚のサステナビリティは非常に重要なのです。

イカナゴ大漁!!の国はどこ? 

イカナゴ(コウナゴ) 英語ではsandeel(砂ウナギ?)という名前

日本ではイカナゴが大不漁です。その一方で過去20年で最高にイカナゴ資源が増えて大漁になっている国があります。しかもその国が獲っている海域は、日本より北に位置し、もっと温暖化の影響が出ている可能性が高いのです。

大阪湾、三河湾、そして仙台湾と、次々に解禁後即禁漁、禁漁、解禁したものの漁獲無しで終了と、日本のイカナゴ漁は散々な窮状です。

海水温が高いだけではなく、低いために減っている、水がきれいすぎるためなど、それらの理由は、とても矛盾が多いことを別途実例と共に記述しました

もし海水温の上昇が、資源激減の最大の要因だった場合、より水温が高い日本の南の方から影響を受けるのではないでしょうか?しかしながら、青森、伊勢・三河湾、大阪湾、仙台湾とイカナゴが消えていく順番は北と南で入り混じっています。そして、本州で最後に残ったのが宮城でしたが、ここも今年は実質水揚げなしで終了です。

福島のイカナゴが築地市場を潤すなどと、震災後の2016年に言われることがありましたが、その勢いは聞かれません。後者の宮城と福島は震災により漁獲圧力が下がり一時的に資源が増加していただけで、再び獲り過ぎて資源を潰してしまった可能性が高いと言わざるを得ないのです。

東日本大震災による一時的な資源の急増は、マダラ、ヒラメ、マサバなどに顕著にみられましたが、これらの魚種も、今の水産資源管理制度では、再び減少となり同じ結果となります。すでにマダラの資源量は、幼魚の漁獲が止まらずで、一時的に資源は高水準になりましたが、再び減少を始めています。

水温の変化やエサとなるプランクトンの増減が、資源量に与える影響は当然あります。しかし、もっと根本的な問題、つまり水産資源管理の不備により過剰漁獲が続き、資源が激減してしまったことが世の中に十分伝わっていません。

このため、過去最低の水揚げ量、歴史的不漁といった言葉が、サンマスルメイカサケなどですっかり定着しつつあり、それに慣れつつあるのではないでしょうか?

海水温の上昇は、北極圏が最も影響があると言われています。氷が減って、北極圏を通れる新たな航路が夏の間にできたり、北極の氷が解けてシロクマがエサとなるアザラシを捕まえられなくなって痩せてしまったりと、温暖化の影響が顕著です。それでは北欧に目を向けてみましょう。

ノルウェーのイカナゴ資源量は大幅増加 

海水温の上昇を日本と同等、もしくはそれ以上に受けているはずのノルウェー海域でのイカナゴ資源量は、逆に大幅に増加しています。今年(2020年)は過去20年で最大の親魚の資源量であり、また2019年生まれの資源は歴史的高水準です。

日本では資源も漁獲量も激減 ノルウェーは対照的。その差は水産資源管理!

日本とノルウェーでは、同じように歴史的な資源量ですが、その差は地獄と天国です。日本とノルウェーの漁獲量推移(2020年は推定)はグラフの通りで、対照的になっています。

今年のノルウェーでの漁期は4/15から。一方で、ほぼ同じくして始まった宮城県の漁獲シーズンは4/13~5/8で106㌔(㌧ではない)で打ち切りとなりました。漁獲枠は9,700㌧、昨年実績26㌧。漁期前の調査では僅か1尾!しか獲れていないのにです。結果は事前調査の通りで散々たるものでした。

5/15,5/16の2日間の漁獲量の明細。24時間リアルタイムで報告される。 Norges Sildesalgslag

一方で、資源量調査の結果が良好なノルウェーでの25万㌧の漁獲枠はザル枠ではないので、消化されて行きます。1隻当たり、一回の漁獲で500~1,000㌧前後漁獲しており、いかに魚の資源量が多いのかがわかります。ちなみに、例として上の表の通り5/15と5/16の2日間で10隻で約6,500㌧の漁獲。1隻の平均は650㌧でした。

ノルウェーのイカナゴはMSCの漁業認証

ノルウェーのイカナゴはMSC認証を取得しているNorges Sildesalgslag

ノルウェーのイカナゴ漁業は、国際的な水産エコラベル認証であるMSC認証を取得しています。ノルウェーのイカナゴは、養殖の餌料向けがほとんどです。

世界の市場では、養殖魚に与えられるエサについても、水産資源がサステナブルなものであることが不可欠になってきています。アトランティックサーモンなどの養殖量を増やして行くに当り、そこで乱獲した魚を使っていては、元も子もないからです。

日本とノルウェーの資源管理は何が違うのか?

最後に、両国のイカナゴの資源管理の違いをまとめておきましょう。

 漁獲枠漁獲対象
日本あっても形式的      漁獲量<漁獲枠価格が高い幼魚と餌料用成魚
ノルウェー漁獲できる数量より少ない 漁獲量=漁獲枠成魚で用途は餌料用主体

日本では、漁獲枠はあっても形式的なもので、獲り切れない枠が設定されるので資源管理の効果はありません。一方で、ノルウェーの漁獲枠は科学的根拠に基づいた厳格なものです。実際漁獲できる数量より、大幅に抑えられた量です。このため枠の全量消化は容易で、漁獲枠と漁獲量は、ほぼイコールです。

日本では、価格が高い食用向けの幼魚狙いで漁が行われてきました。一方で、ノルウェーでの漁獲対象は、成魚のみです。ノルウェーの漁場は、かなり沖合の大陸棚なので、漁獲は主に大型の漁船が行っています。

日本のイカナゴ資源が枯渇すれば、かつてノルウェーサバが日本の市場を席巻してきたようにノルウェーからイカナゴの幼魚が日本向けに高値で輸出されるようになるのかも知れません。仮にイカナゴの幼魚を獲るようになっても、科学的根拠を基づく漁獲枠と、その枠を漁船や漁業者に割り当てる個別割当方式(IQ,ITQ,IVQなど)を取るので、日本で起こり続ける資源崩壊を彼らは起こしません。

この記事を通して、資源の激減を海水温の上昇などの環境要因へ一方的に責任転嫁することが、いかに危険であるかを読取っていただければ幸いです。

サカナと養殖 エサはどうするのか? 

魚は水や空気で育たない

養殖物の水産物を増やせば、魚が減少している問題を解決できるのでしょうか?確かに、養殖物は水産物の安定供給には不可欠な存在です。

養殖物の定番であるハマチやマダイといった魚から、ギンザケ、クロマグロ、シマアジ、フグ類、ヒラメ、ウナギなど日本では様々な魚が養殖されています。最近のブームとしてサバの養殖も生食できるという点で、人気が出て来ていますね。

また、ホタテ・カキといった貝類、ノリ類、ワカメ、コンブといった海藻類の養殖もあります。他にホヤやクルマエビなどの養殖もやっています。

魚と貝類や海藻類の養殖では、大きく違う点があります。それは「エサ」を人が与えるかどうかです。

ところで貝類や海藻類は、エサを与える必要がないので、どんどん増やせばよいのでは?と思うかもしれません。しかし、バランスよく増やして行かないと過密養殖や水質の問題が起きてしまいます。

さて、肝心の魚の養殖についてです。まず、稚魚や小さな魚を獲って(一部大型魚も)育てる蓄養と、卵から育てる完全養殖とに分かることができます。採卵して川に戻して回帰を待つサケのケースは、統計上、養殖物ではなく漁業に分類されているので、ここでは扱いません。

魚を養殖することは、たいていの場合「エサ」を必要とします。決して空気や海水で魚は大きくなりません。この点を理解して魚の養殖を考えていくことが不可欠です。

養殖物の位置づけ

世界全体の水揚げ量は、天然物が横ばいなのに対して、養殖物が増加していく傾向にあります。実際には天然物の漁獲量は意図的に伸ばすことは、北欧、北米などでは可能(容易)です。しかしながら、資源の持続性(サステナビリティ)を考えて行いません。

そこで、世界の魚の需要を賄うためは、養殖物の増加が不可欠になります。天然物と養殖物で年間約2億トン(2018年)の水揚げで2億1千万㌧ですが、その内天然(1億㌧)と養殖(1億1千㌧)は、約半々です。さらに養殖物の内、約3千万㌧が海藻類となります。

エサをどうやって手配するのか?

増肉係数 サーモンは僅か1.2kgのエサで1kg大きくなり養殖効率がよい。NSC

さて本題に入ります。まずは、魚を養殖するためには、どれだけのエサが必要になるかです。上図を見てください。1kg太らせるのに牛で8kg豚で3kg鶏です。

一方で、魚に関してはサーモンで1.2kg、ハマチで2.8kg、クロマグロに関しては15kg必要です。養殖の漁労収入に占めるエサのコストは6割前後と言われています。このためエサに対する戦略は最も重要な要素のひとつとなります。

アトランティックサーモン NSC

今回は、養殖魚として最重要魚種のひとつであり、日本でもすっかり市場に定着しているアトランティックサーモンに焦点を当てます。

ノルウェーの養殖場 NSC

アトランティックサーモンの世界最大の養殖国は、ノルウェーです。ノルウェーでは、2018年現在130万㌧の養殖量を2050年までに500万㌧にする方針があります。現場を訪れるとすぐ分かるのですが、これでもかというくらいのきれいで澄んでいるフィヨルドで養殖されています。ところが、国の方針でこれ以上のフィヨルド内での養殖ライセンスを増やさないことになりました。現在では、外洋に出て養殖を各社技術を競って養殖のライセンスを獲得するという流れになっています。

ところで、養殖量を何倍にも伸ばすためには、一体どれだけのエサが必要で、それは何処から手配するのでしょう?この質問に対して、まだ納得のいく答えをもらったことがありません。

アトランティックサーモンのエサの中身 3割は魚由来で7割が植物由来 NSC

これまでは、エサに使う魚粉や魚油の高騰で、植物由来の原料の比率を増やすことで、エサの増加に対応してきました。今では、魚由来のエサが約3割に対して植物由来が約7割です。

魚粉や魚油といった魚由来のエサの比率をゼロにもできるようですが、その場合、養殖されるサーモンは、本来自然界では食べることがなかったエサのみで育てられることになります。これはこれで、病気のリスクや身質の変化などの課題が出てくるのではないでしょうか?

エサの話

足りなくなって行く養殖のエサに関する対応策は、どうしていけばよいのでしょうか?

現在、候補として研究が進んでいるのは①昆虫(動物性タンパク)②木くず(エサの一部として使用)といったものがで出て来ています。また魚由来としては③深海にすむ未利用魚のハダカイワシを利用する可能性も上がっています。

魚の養殖には、必ずエサをどうするか考えねばならないのです。販売に際し重要度が増しているASC(養殖の水産エコラベル)認証で、MSC認証(天然の水産エコラベル)のエサが必要になる傾向についてはここでは割愛します。

簡単にいうと、乱獲された小魚などを使ったエサを使用することは、国際的な市場で認められなくなるのは時間の問題であり、それを考慮してエサの手配を考えていかねばならないということです。

日本の魚の養殖でのエサ

さて、話を日本の魚の養殖のエサに戻して行きましょう。最初に言えることは、日本は資源量が持続的ではない魚種を、未成魚を丸のままエサにすることは極力止めていくことです。養殖魚を増やすために天然魚を減らすとしたら、それは本末転倒ではないでしょうか?

アラスカでは、スケトウダラの身や卵を取った残渣(ざんさ・残り)を、養殖用のフィッシュミール(魚粉)にします。ノルウェーでは、ニシンをフィレーの残渣を同様にフィッシュミールにします。

また、北欧でのカラフトシシャモでは、オスメスに選別して、メスの卵を取りだした残り(干しシシャモ用の原料除く)をフィッシュミールにしていますオスメスをそのままフィッシュミールにするケースもありますが、これはあくまでも、資源状態が極めてよく、かつフィッシュミールの国際相場が高い時に限ります。

丸のままフィッシュミールにする魚として、イカナゴやブルーホワイティング(タラの一種)などがありますが、これらの魚は食用価値がほぼない魚です。

日本の養殖魚のエサのあるべき姿とは

まず第一に、北米や北欧のようにエサの生産には、丸のままの未成魚ではなく、成魚の残渣を使うことです。大きな魚は価値がありますが、全てが可食部ではありません。頭、内臓、骨を除去し、残りを食用とするのです。写真はニシンのフィレーですが、可食部は約45%、つまり半分以上がフィッシュミールになっているのです。

日本で水揚げが増えているマイワシを例に挙げれば、小さなうちの獲るのは止めて、同じように可食部を除いた残りをフィッシュミール(エサ)にすれば、どれだけ付加価値が高まるのでしょうか?

この点、現状では漁獲枠が多過ぎて、一度に大量水揚げされてしまい、処理も食用向けに間に合わないといことが起きています。例として、主要水揚げ港の釧路ではマイワシの実に約9割がフィッシュミールになっています。1990年代に釧路には20を超えるフィッシュミール工場があったものの、資源の激減でほとんどが潰れてしまいました。また工場が増えて同じことが繰り返されるのでしょうか?

マイワシは、環境要因にによっても資源は大きく増減しますが、減少し始めたら早めに手を打って回復を待つことが水産資源管理の基礎です。(例)米国西海岸では、資源の減少を懸念し2015年から禁漁とし、資源回復を待っているところです。

天然魚とのバランス

結局のところ、もととなる魚の資源をサステナブル(持続可能)にして行くことが何よりも大切で、全てはそこから始まります。資源が潤沢で水産資源管理制度が機能していれば、フィッシュミール向けでも食用向けでも漁業者の自由です。

しかし、漁業者・漁船ごとに漁獲枠が科学的根拠に基づいて決まっていれば、漁業者自ら考えて、水揚げ金額を上げようとします。

前述の釧路港の例でも、漁船や漁業者ごとに漁獲枠が厳格に決まっていれば、漁業者の方から水揚げを分割して水揚げが分散され食用になる比率が増えます。ただし、枠が後で増えるやり方ではそうなりません。

結果として、資源の無駄遣いもなくなって行きます。これこそ、なぜ、日本ではサバの3~4割が非食用になってしまっているのに対し、99%が食用となっているノルウェーとの大きな違いなのです。

日本でも、エサになる魚の持続性を最優先に考えて、養殖を拡大していく戦略を検討していく必要があるのではないでしょうか?

サカナとアブラ(脂)その1 サバ

うまい魚を食べたい

「うまい魚」とは、どういう魚でしょうか?もちろん好みは色々ありますが、一番大きな要因は脂ののり具合ではないでしょうか?うまい魚=脂がのった魚と言っても過言ではないでしょう!

上が国産マサバ・下がノルウェーサバ。下のノルウェーサバの左下には脂がにじみ出ている。上の国産からは焼いても脂が出てこない。
マサバ 4月下旬物 卵が少し残っていた。卵に栄養分を取られているので細い。

脂がのった魚といえば、どんな魚が思い浮かぶでしょうか?まずはその代表格・サバについてです。脂ののり具合の差から、今やすっかり国産のサバと価値が逆転しているノルウェーサバと比較してみましょう。

ノルウェーサバと、国産の生の春サバ(4/29購入)を焼いて比較してみました。ノルウェーサバは秋に漁獲・冷凍されたサバです。

しみ出している液体はサバの脂です。共に天然のサバですが、これだけ脂の量に違いがあります。これがうまいサバかどうかの分かれ目です。マイワシサンマなどでも脂がのった時期の魚は同じように脂がしみ出てきます。

脂がないサバは、身がパサパサしています。特に、卵や白子が大きくなる4~6月にかけては身の色が赤くなります。また産卵後の夏の時期もやせていて脂がありません。しかしその間にたくさんエサを食べて脂を蓄えるようになるので、日本のマサバは秋から冬にかけて脂がのって最も美味しい旬の時期に入ります。

ノルウェーサバ 脂肪分推移 秋には25ー30%も脂がのる一方で、産卵期前後の春には5%前後しか脂がない。脂がない時期は漁獲しない仕組みがある。

産卵期は、国産もノルウェー産も、ほぼ同じ春から夏にかけての時期なのです、脂がのる時期ものらない時期もパターンが似ています。

ところが、一年中サバを漁獲する日本と異なり、ノルウェーでは脂がのった美味しい時期しか漁獲されない仕組み(個別割当制度)があります。

小さなサバには脂がのらない

小さなサバ、特にジャミとかローソクと呼ばれる200gにも満たない未成魚のサバには脂がのりません。このため、食用にされることは少なく、安い魚価で未成魚が養殖魚のエサなどの非食用向けにされてしまいます。

小さなサバにはほとんど脂はのらない. 写真 Nobuyuki Aoki

ちなみにノルウェーでは99%が食用で、小さなサバを獲らない制度(個別割当方式)ができています。一方日本では、食用は6~7割程度しかなく、実にもったいない漁業をしています。

サカナ離れの本当の理由?

日本では、世界で魚の需要が増え続ける一方で、逆に減少。著しく傾向が異なっています。ただ、寿司や刺身などが嫌いになったわけではありません。サカナ離れの要因は、不味い魚を食べたことによるトラウマから来ているのではないか?と筆者は考えています。

水産物の国際相場は中長期的に上昇が続く  データ FAO

もちろん、魚の価格が高くなってきたこともサカナ離れに影響はあるでしょう。しかしながら、魚の価格が上昇傾向なのは世界的な傾向であり、日本だけではありません。ところが、世界全体の魚の需要は年々増えているのです。

高級魚は日々食べられる魚ではありません。消費量に影響があるのはもっと身近な魚です。つまりもっとも需要が大きいサバ、イワシ、イナダ(ブリ)などの大衆魚が影響していると考えられます。それらの美味しくない時期の魚の提供を大幅に減らし、うまい魚の供給を増やすことが、消費、資源、漁業者の収入面を含めて大きな効果を生み出します。

まずい時期の魚を出さない国家戦略

「まずい時期の魚を出さない」ことは、当たり前のように見えて、実際はそうなってはいません。脂が無い時期の魚は普通に店に並んでいます。

消費者は、おいしくない時期の魚が売られているとは知らずに買ってしまいます。これを止めるための制度と効果は、日本の魚そして未来にとって大きくプラスに働きます。

必要な制度については、科学的な根拠に基づく、漁獲枠の設定と、それを漁業者や漁船に割り振って厳格に運用することです。獲る量が厳格に決まれば、漁業者はたくさん獲るから、どうやって水揚げ金額を上げるかに関心が変わります。

うまい時期の魚の方が価格が高いので、産卵前後の脂がのっていない時期の漁獲は、漁業者自ら避けるようになります。そうすることで、脂がのった美味しい時期の魚だけが自然と店に並ぶようになるのです。

供給の手段は、鮮魚ばかりではありません。脂がのった時期に冷凍して、それを加工して周年供給することで、不味い魚の供給が市場から消えていくことでしょう。

SDGs 14. 海の豊かさを守ろう 

脂がのった時期だけの漁獲になれば、産卵する機会を与えられ、資源を持続的にする役割も果たすようになります。

もちろん、産卵する親魚の量が持続的(サステナブル)になるよう、MSY(最大持続生産量・魚の量を減らさずに獲り続けられる最大量)を考慮しながら漁獲量を決めていくことが重要です。それが、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)にも明記されているのです。

水産資源がこのまま減り続けると、消費者はまずい日本の魚を高く買わされることになってしまいます。輸入する魚は不味いと売れないので買付されませんが、一方でうまい魚は世界で奪い合いが加速していくので、価格は上がってしまいます。

うまい魚を手ごろな価格で食べ続けるためには、脂のない時期の魚は獲らないことです。それが国産の魚の資源を回復させることになるのです 。

ニシンが増えているって何のことカンナ?

これってニシンが増えているの?

 ニシンという魚をご存知でしょうか?その卵は「数の子」として正月には欠かせません。身の部分は、主に東北から北海道にかけて食べられています。もっとも、それらの大半は、卵は米国やカナダ、焼き物などで丸ごと食べる場合は、ノルウェーなどからの輸入物がほとんどです。

数の子 輸入品

 近年、ニシンの漁獲量が増えてきたとか、ニシンが産卵して精子で海が白くなる「群来」という現象がみられるようになってきたとか報道されています。

しかしながら、現在の漁獲量の増加をもって資源量が「高位・増加」といった評価は、大きな誤解を生んでしまいます。実際には、ほんの少しだけ回復の芽が出てきたかも知れない程度なのです。本来は、その芽を再び潰さないようにせねばなりません。

「資源復活」などとも言われていますが、4/22現在獲れているニシンは産卵後で、オスメスこみの価格はキロで僅か¥25程度。食用向けは一部でミールやエサ向けの用途が多いそうです。

非食用向けにニシンを獲っている国は、日本くらいでしょう。日本が米国、カナダ、ロシア、ノルウェーなどから輸入しているニシンは、2019年は約2万㌧で平均キロ約¥140/kgでした。キロ¥25という魚価は、ニシンとしてはあり得ない安さなのです。まさに水産資源の無駄遣い。なんてもったいないことでしょうか。

水産資源管理に大きな問題がある日本のニシンについて、下記のグラフで実態を明らかにしていきましょう。

水産教育・研究機構

上のグラフは、北海道周辺におけるニシンの漁獲量の推移を表しています。今から100年程前は、年間で50万㌧もの漁獲量があったことがわかります。それに対して、それに比べれば、現在はほぼ無いに等しい漁獲量です。2018年で約1万㌧の漁獲量です。

話50倍(2018年 漁獲量約1万㌧)ww 100年前は50万㌧前後の水揚げがあった。

グラフの中のさらに右上にあるグラフは、過去50年程度の漁獲量の推移を示しています。1980年後半に1年だけ7万㌧程度に増えていましたが、すぐにまた獲れなくなっています。近年は気持ち増加傾向のように見えますが、元の100年以上前からのグラフと比較すると、その増加量は微々たるものであることがわかります。

水産研究・教育機構

上の図は、北海道周辺のニシンの分布域と産卵場を示しています。ニシンは沿岸で産卵します。このため、大きくて広範囲に探し回れる漁船でなくても、沿岸で刺し網などを使って産卵に来る魚を狙って獲れば、漁獲はさほど難しくありません。

これは、秋田のハタハタなども同様で、産卵に来る魚を待ち構える漁業は、群れを探し回る漁業と比較して容易です。しかし、資源の持続性を考えずに漁を続けると、いつの間にか獲り過ぎで魚がいなくなってしまいます。

資源を持続的にしていくために、卵を産む魚をどれだけ残しながら漁業を続けていくかという考え方が、漁業先進国(北欧・北米・オセアニアなど)では基本中の基本です。

ニシンは、多獲性魚種。日本が増えたという漁獲量は、ノルウェーでのシーズン中の漁獲量としたら、僅か1~2日分程度しかありません。

水産資源管理に成功している、ノルウェー(約50万㌧・2019年)、アイスランド(約15万㌧2018-2019年)そしてロシア(約30万㌧・2019年漁獲枠)などの漁獲量は、日本より桁違いに大きいのです。

これで資源量が高位・増加って? 小学生に聞いたらどう答えるだろうか!

水産研究・教育機構

2019年度のニシンの資源評価は高位・増加ということになっています。しかし、一番先にお見せした水揚げ量の推移をグラフで見て、小学生にこれが増えているのか?減っているのか?聞いて見たら何と答えるでしょうか? 

過去20年以上前の獲れていたころの数量を対象外として、減った後のハードルが下がった水揚げ量に対して多いとか少ないとか評価しているようですが、これで正しい評価はできるのでしょうか?

漁業法の改正により「国際的に遜色がない資源管理」を行うことになりました。例え酷い結果でも、将来のために実態が分かる資源評価を行い危機的な状況を共有することが大切なはずです。

大西洋 北海ニシンの漁獲推移 1970年代に、数年間実質禁漁にして資源を回復させた

上のグラフを見てください。大西洋・北海のニシンの漁獲推移です。1970年代を堺にV字回復で資源も漁獲量も回復させて現在に至ります。日本で漁獲量が激減してしまった例は、1970年代に資源量が激減してしまった英国やオランダ(現EU)の資源管理に大きく影響を与えました。

ニシン資源量が激減してしまった際に、日本の北海道のニシンのようになっては大変だということになったそうです。そこで数年間実質的に禁漁を実施し、資源量を回復したという話を当時対応していた科学者に直接聞いたことがあります。

皮肉にも、EUが主に漁獲しているニシンはグラフの通り回復し、水産業に貢献し、重要な食糧となっています。

なぜ産卵期前後に獲ってしまうの?

4月中旬に購入した北海道のニシン。産卵後で脂が無く、身が赤い。
ノルウェーの脂がのったニシン 身の色が白っぽい

上の写真は、春・産卵後のやせた日本のニシンは身が赤っぽく腹はペラペラで薄くなっています。下の写真は、脂がのった秋の時期に漁獲されたノルウェーニシンです。脂があり身は白っぽく、腹も厚くなっています。産卵期は共に春です。

ノルウェーでは春に産卵したニシンは、エサを食べて再び脂がのる秋まで漁獲しません。産卵後の魚は脂がなくなるのは、同じです。ところが漁船ごとに厳格な漁獲枠が決まっているので、価値が低い時期の魚は狙わないのです。

ニシンの卵は数の子・別名は黄色いダイヤ

日本人が好きな数の子は、黄色いダイヤとも呼ばれるニシンの卵です。そのほとんどは、米国・カナダ・ロシアといった国々からの輸入品です。これらの国々の資源量は、年度差はありますが潤沢です。

数の子だけでなく、タラコ(スケトウダラの卵)もそうですが、水産資源管理ができている国々は、卵を産む親をどれだけ残せばよいかを、科学的根拠に基づいて計算して漁獲枠を決定しています。

日本も批准している国連海洋法でも言及されていますが、各国は魚を減らさずにとり続ける最大量(MSY)をベースにした管理をしていかねばなりません。

MSYをベースにした水産資源管理は、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)にも明記されています。ちなみにその期限は2020年ですが、日本のほとんどの魚は残念ながらMSYに程遠い状態です。

一方で、日本の場合は「不漁だ」「豊漁だ」などと前年の漁獲量などに対して、マスコミが騒いでいるだけで、MSYなど関係もなく、科学的ではありません。一方で、肝心の漁獲枠(TAC)さえないという、漁業先進国ではおよそ考えられない管理となっています。

大西洋では、ノルウェーを始め乱獲を反省し、漁獲枠を設定して水産資源管理に成功しています。ノルウェーがニシンに漁獲枠を設定したのは1971年です。そして豊かな資源と未来を漁業と水産業に残しています。

日本は約50年遅れとなりますが、科学的根拠に基づく漁獲枠を、2018年12月に改正された漁業法に基づいて設定するタイミングなのです。国民が正しい水産資源管理に対する情報を持ち、それに基づいて世論が形成されて行くことを望みます。

イカナゴもいなくなるわけ

イカナゴ(コウナゴ)の幼魚

イカナゴもいなくなるわけ

2020年4月13日に仙台湾のイカナゴ(コウナゴ)漁が解禁となりました。しかし、20数隻が出漁したものの漁獲ゼロで寄港。いったいどうなってしまっているのでしょうか?

播磨灘・大阪湾、伊勢・三河湾、仙台湾と次々に消えて行くイカナゴ。解禁しても、魚がいなくて一週間も経たない内に禁漁という播磨灘・大阪湾のようなケースもあれば、伊勢・三河湾のように2月上旬から中旬まで調査をしても採取量ゼロという例もあります。資源が戻らず、今年で5年連続禁漁しても解禁ができない漁場もあります。

神戸では、春になるとイカナゴのクギ煮は風物詩のようです。しかし残念ながら、その継続も難しくなってきているようです。イカナゴは、幼魚。このまま成魚になる前に獲り続ければ、「成長乱獲」で、資源は崩壊に向かってしまいます。

イカナゴ(コウナゴ) 成魚

イカナゴのように、幼魚の方が成魚より価格が高い魚種は、資源が減るとより獲り過ぎが起きやすくなります。供給が減れば魚価が上がります。漁獲量が少なければ、余計にたくさん獲ろうとする力が働いてしまうのは必然です。

減った理由を客観的に分析すると矛盾だらけ

激減を続けるイカナゴの水揚げ量

日本では、魚の資源が激減すると、無理に理由を付ける傾向があります。このため、向かう方向を誤らないよう、冷静に分析して矛盾を指摘する必要があります。

ただその機会はほぼありません。そして誤った情報がさらに誤解を生み続けてしまいます。このため資源管理の対応自体を間違えているケースが、後を絶ちません。(例:スルメイカサンマサケ他多数)

こじつけている理由に原因がないとは言いません。しかしながら、前述した科学的根拠に基づく管理を怠っているため、そこを改善しないと、一喜一憂は別として、中長期的に悪化することはあっても良くなることは決してありません。

水が綺麗になってなり過ぎたから?

海が綺麗になり過ぎたために、イカナゴが減ったという説があります。確かに栄養分が多い海の方が、魚は育ち易いです。ならば、イカナゴという魚は、人が海に様々な汚れを含む物質を流出させたことで増えてきた魚なのでしょうか? 

化学物質も何もなかった鎌倉時代や室町時代はもっとイカナゴは少なかったのでしょうか?ww。

砂の掘り過ぎで住む場所が減ったから?

イカナゴは、英語でsandeel(砂のウナギ)と言います。定着性が高く砂に潜る性質があり、夏は砂に潜って寝ているとも言われています。

生活環境がとても大切なのは言うまでもありません。ところで、前述のイカナゴがいなくなって禁漁しているのは、ここ数年です。砂の取り過ぎが減った原因という説もあるそうですが、砂の採取は、ここ数年で急激に始まったのでしょうか?ww。

福島県のイカナゴ漁は、他の海域での不漁が深刻化する中、築地市場(当時)を潤していました。特に2016年は、1日としての水揚げ量は史上最高ではないかという声も上がったほどです。

しかし2019年になると、ほぼいなくなってしまいました。わずか数年で砂を掘り過ぎたのではなく、震災の影響で一時的に漁獲圧力が下がっていて資源が回復していたイカナゴを他地域同様に獲り過ぎてしまったのではないでしょうか?

漁獲推移のグラフの通り、1970年代が漁獲量のピークでした。その後、日本の他の魚種同様に右肩下がりに漁獲量、つまりは同じパターンで資源量が減っている典型的な魚種の一つに過ぎないのです。

海水温が上昇したから?

水温は魚の資源量に影響を与えます。農作物も気温の影響により出来高が変わって来ます。ところで全国の漁場から高水温に弱いとされるイカナゴが消えて来ていますが、それなら南の漁場から消えて行くのでしょうか? 最近の例を見るとそうでもありません。

陸奥湾のイカナゴがほとんどいなくなって禁漁になったのが2013年でした。大阪湾や伊勢・三河湾よりも北に位置している漁場が先にダメになっています。

さらに、とどめを指すように減った理由が矛盾していることがあります。2013年当時、イカナゴがいなくなった理由は、何と「水温の上昇」ではなく、「水温の低下」だったという記事がありましたww。

次に、資源管理で成功しているノルウェーと比較してみます。ノルウェーの海にもイカナゴがいます。海水温の上昇が原因なら、氷が溶けて大きな影響が出ている北極海が有名ですね。

日本よりずっと北極海に近い、北欧の海域はきっとイカナゴが激減しているに違いないですね。実際は全く逆ですが、、、ww。

最後にノルウェーのイカナゴとの比較

農水省とノルウェー漁業省のデータを編集

このサイトでは、日本と世界、特にノルウェーと比較することで問題を明確化して、解決策を提示しています。イカナゴでもその傾向ははっきりしています。

ちなみに、水温が上昇していても、漁獲量と水産資源の動向は、日本と逆で上昇傾向にあります。日本と異なり、実際に漁獲できる数量より、大幅にセーブして漁獲を続けていることが、資源量の持続性にプラスに働いているのです。

イカナゴは、食物連鎖では他の魚のエサになる魚です。そのエサになる魚が減れば、単にイカナゴが減っただけではなく、他の魚の資源量にも悪影響を与えてしまいます。

例えば、今年禁漁になっているノルウェーやアイスランドのシシャモ(カラフトシシャモ)は、日本よりはるかに多い資源量です。しかし、シシャモの漁獲量を決めるのに際し、それをエサとしているマダラなどが食べて減る分も計算するのです。

ルウェーのサバでもシシャモの漁獲量や資源量の傾向でも同じパターンなのですが、同国では科学的根拠に基づいた漁獲枠を設定して、それを厳格に管理して水産資源管理を行なっています。

仙台湾のイカナゴの漁獲枠は異常では?

ノルウェーを始め、漁業先進国における実際の漁獲量は、漁獲枠とほぼイコールというのが当然です。ところで、日本ではイカナゴがこれだけ危機的なのに、これでは全く枠の意味がないというのが次の仙台湾のケースです。

昨年の漁獲量は、激減してわずか26トン。資源量が減っていることも明確です。しかしながら、漁獲枠は何と9,700トン。と昨年実績の373倍ですww。

しかも、仙台湾の20地点での調査船による調査で獲れたのはわずか1尾、、、。絶対に獲り切れない漁獲枠。そして、その被害を受けるのは、他ならぬ漁業者です。そして、地元の加工業者、ひいては消費者にも悪い影響を与えてしまいます。

資源が潤沢で持続的な水準であれば別ですが、幼魚を科学的根拠に基づかず獲り尽くしてしまうことが、いかに問題であることかをイカナゴの例は語っているのです。

2018年に12月に70年ぶりに改正された漁業法は「国際的に見て遜色がない資源管理」をすることになっています。骨抜きにされないためには、広く国民が関心を持つことが重要なのではないでしょうか?