北欧のシシャモ資源が必ず戻るわけ

国産シシャモの幼魚 小さくても容赦なく漁獲されてしまう

食卓や居酒屋などでおなじみ、脂がのった北欧産のカラフトシシャモ(以下シシャモ)。しかしその供給が、資源量の一時的な減少で禁漁となり細る見通しです。日本に供給しているのは、アイスランドとノルウェーです。アイスランドの禁漁は、2019年に続き2年目、別の水産資源ですが、ノルウェーのバレンツ海も同じく2019年から禁漁しています。

この他、東カナダでもシシャモが獲れますが、卵の量が多いものの、脂があまりないのが特徴です。

北欧(アイスランド、ノルウェー)産 シシャモ

ところで、シシャモなどをエサにするマダラなどの腹の中にはシシャモが一杯。でも禁漁なのはなぜでしょうか?

シシャモは3年〜4年で成熟して、ノルウェーやアイスランドの沿岸で産卵をして一生を終えます。それぞれ別の資源ですが、ノルウェーではロシアと共同で管理していて、卵を産む資源量(産卵親魚量)を95%‼︎の確率で20万トン残すルールとしています。

資源量が例えば30万トンと推測されると(30➖20=10) 10万トンが漁獲枠となります。一方で、20万トンを下回ると禁漁となります。アイスランドについても、同様に産卵親魚量を15万トン残す資源管理です(2015年に方式変更)。同じくこの水準を下回ると禁漁となります。

共に2〜3月が漁獲シーズンで、ノルウェーは、早くも禁漁を決めています。アイスランドは3月現在も調査を続けていますが、解禁は厳しい見通しです。

7隻の調査船と漁船がアイスランド近海をくまなく調査 (MRI)

資源調査においては、図のように、官民の漁船が手分けをしてアイスランドの周りをくまなく調査しています。

色が付いている箇所がシシャモの未成魚資源 3~4歳で産卵のためにアイスランド沖に回遊して来る

ところで、来期、2021年のアイスランドでのシシャモは約17万トンの漁獲枠が早くも現時点で科学者から算出されています。これは、資源調査の結果1~2歳の未成魚の加入量が、平均値を大きく上回っているデータが出ているからです。

上の図はシシャモの資源分布を示しているのですが、まだ成熟しない未成魚の資源です。2021年には、一部が親になってアイスランド沖に産卵のために回遊してくるのがわかっているので、解禁見込みとなっているのです。

ところで、もし生活のためだといって、この未成魚の漁場まで行き、食用にならないシシャモを大量に獲ってしまったらどうなるでしょうか?

漁獲枠もなく、もしあっても獲り切れない枠だったり、個別割当制度(IQ,ITQ,IVQ)もなかったらどうなるでしょうか?

それが様々な魚種で、日本で魚を減らしてしまう漁業の問題なのです 。

シシャモの赤ちゃん 国産 北欧では絶対獲らないサイズ
シシャモの成魚 国産

写真は、日本のシシャモの写真です。日本では、シシャモに漁獲枠さえありません。年間の漁獲量は千㌧弱です。もちろん、単純比較はできませんが、日本の場合は、漁獲枠が機能していないので、小さな魚の漁獲成長乱獲」が様々な魚種で、日常茶飯事に起きています。

上の写真のようなシシャモの未成魚は、将来のことを考え、「絶対」に獲りません。

冷静に考えれば、日本では、様々な魚種で小さな魚を獲ってしまう「成長乱獲」、産卵する親の数が少ないのに獲ってしまう「加入乱獲」を同時に引き起こしています。それを魚が減っているのに、海水温の上昇や外国にばかり責任転嫁するのは、いい加減にやめるべきなのです。

話を元に戻します。シシャモを見かけなくなっても、一時的に高くなったような気がしても、それは短期的なことで、数年で回復してくるのです。

はっきりそう言い切れるのは、水産資源管理がしっかりしているからに他なりません。また、漁獲する量だけでなく、マダラを始め、他の魚のエサとして減少する量も考慮されて、漁獲枠のアドバイスが出されます。

言うまでもなく漁業者にとっても、大事な収入源であるシシャモが禁漁であって良いわけがありません。しかしながら、水産資源管理がしっかりしていると、サバ、ニシンなど他の魚種が十分補ってくれるので、禁漁に対する強い不満や補助金の話は聞きません。

日本も、北欧を始めとする海外の資源管理の本当の姿をすれば、将来の明るいビジョンが見えてきます。漁業は本来、水産資源管理ができていれば成長産業です。

そしてその為の第一歩が、水産資源が国民共有の財産という内容が欠けていますが、国際的に見て遜色がない資源管理にするという漁業法の改正であったのです。

シシャモだけではありません。世界と日本の水産資源管理を比較するとハッキリとその問題点と解決策が分かります。悪化している状況を美化して問題を先送りする段階ではありません。