2024年6月9日 更新 現状のまとめとグラフを更新しました。
2016年6月9日加筆 イカナゴは2024年にさらに悪化。大阪湾・宮城県が休漁、事故が起きてからブレーキを踏むでは遅い。科学的根拠に基づく資源管理が行われておらず、成長乱獲が続き改善する見込みはない。海水温上昇や水が綺麗になったなど環境に責任転嫁を続けている事態ではない。(加筆終わり)
イカナゴもいなくなるわけ
2020年4月13日に仙台湾のイカナゴ(コウナゴ)漁が解禁となりました。しかし、20数隻が出漁したものの漁獲ゼロで寄港。いったいどうなってしまっているのでしょうか?
播磨灘・大阪湾、伊勢・三河湾、仙台湾と次々に消えて行くイカナゴ。解禁しても、魚がいなくて一週間も経たない内に禁漁という播磨灘・大阪湾のようなケースもあれば、伊勢・三河湾のように2月上旬から中旬まで調査をしても採取量ゼロという例もあります。資源が戻らず、今年で5年連続禁漁しても解禁ができない漁場もあります。
神戸では、春になるとイカナゴのクギ煮は風物詩のようです。しかし残念ながら、その継続も難しくなってきているようです。イカナゴは、幼魚。このまま成魚になる前に獲り続ければ、「成長乱獲」で、資源は崩壊に向かってしまいます。
イカナゴのように、幼魚の方が成魚より価格が高い魚種は、資源が減るとより獲り過ぎが起きやすくなります。供給が減れば魚価が上がります。漁獲量が少なければ、余計にたくさん獲ろうとする力が働いてしまうのは必然です。
減った理由を客観的に分析すると矛盾だらけ
日本では、魚の資源が激減すると、無理に理由を付ける傾向があります。このため、向かう方向を誤らないよう、冷静に分析して矛盾を指摘する必要があります。
ただその機会はほぼありません。そして誤った情報がさらに誤解を生み続けてしまいます。このため資源管理の対応自体を間違えているケースが、後を絶ちません。(例:スルメイカ、サンマ、サケ他多数)
こじつけている理由に原因がないとは言いません。しかしながら、前述した科学的根拠に基づく管理を怠っているため、そこを改善しないと、一喜一憂は別として、中長期的に悪化することはあっても良くなることは決してありません。
水が綺麗になってなり過ぎたから?
海が綺麗になり過ぎたために、イカナゴが減ったという説があります。確かに栄養分が多い海の方が、魚は育ち易いです。ならば、イカナゴという魚は、人が海に様々な汚れを含む物質を流出させたことで増えてきた魚なのでしょうか?
化学物質も何もなかった鎌倉時代や室町時代はもっとイカナゴは少なかったのでしょうか?ww。
砂の掘り過ぎで住む場所が減ったから?
イカナゴは、英語でsandeel(砂のウナギ)と言います。定着性が高く砂に潜る性質があり、夏は砂に潜って寝ているとも言われています。
生活環境がとても大切なのは言うまでもありません。ところで、前述のイカナゴがいなくなって禁漁しているのは、ここ数年です。砂の取り過ぎが減った原因という説もあるそうですが、砂の採取は、ここ数年で急激に始まったのでしょうか?ww。
福島県のイカナゴ漁は、他の海域での不漁が深刻化する中、築地市場(当時)を潤していました。特に2016年は、1日としての水揚げ量は史上最高ではないかという声も上がったほどです。
しかし2019年になると、ほぼいなくなってしまいました。わずか数年で砂を掘り過ぎたのではなく、震災の影響で一時的に漁獲圧力が下がっていて資源が回復していたイカナゴを他地域同様に獲り過ぎてしまったのではないでしょうか?
漁獲推移のグラフの通り、1970年代が漁獲量のピークでした。その後、日本の他の魚種同様に右肩下がりに漁獲量、つまりは同じパターンで資源量が減っている典型的な魚種の一つに過ぎないのです。
海水温が上昇したから?
水温は魚の資源量に影響を与えます。農作物も気温の影響により出来高が変わって来ます。ところで全国の漁場から高水温に弱いとされるイカナゴが消えて来ていますが、それなら南の漁場から消えて行くのでしょうか? 最近の例を見るとそうでもありません。
陸奥湾のイカナゴがほとんどいなくなって禁漁になったのが2013年でした。大阪湾や伊勢・三河湾よりも北に位置している漁場が先にダメになっています。
さらに、とどめを指すように減った理由が矛盾していることがあります。2013年当時、イカナゴがいなくなった理由は、何と「水温の上昇」ではなく、「水温の低下」だったという記事がありましたww。
次に、資源管理で成功しているノルウェーと比較してみます。ノルウェーの海にもイカナゴがいます。海水温の上昇が原因なら、氷が溶けて大きな影響が出ている北極海が有名ですね。
日本よりずっと北極海に近い、北欧の海域はきっとイカナゴが激減しているに違いないですね。実際は全く逆ですが、、、ww。
最後にノルウェーのイカナゴとの比較
このサイトでは、日本と世界、特にノルウェーと比較することで問題を明確化して、解決策を提示しています。イカナゴでもその傾向ははっきりしています。
ちなみに、水温が上昇していても、漁獲量と水産資源の動向は、日本と逆で上昇傾向にあります。日本と異なり、実際に漁獲できる数量より、大幅にセーブして漁獲を続けていることが、資源量の持続性にプラスに働いているのです。
イカナゴは、食物連鎖では他の魚のエサになる魚です。そのエサになる魚が減れば、単にイカナゴが減っただけではなく、他の魚の資源量にも悪影響を与えてしまいます。
例えば、今年禁漁になっているノルウェーやアイスランドのシシャモ(カラフトシシャモ)は、日本よりはるかに多い資源量です。しかし、シシャモの漁獲量を決めるのに際し、それをエサとしているマダラなどが食べて減る分も計算するのです。
ノルウェーのサバでもシシャモの漁獲量や資源量の傾向でも同じパターンなのですが、同国では科学的根拠に基づいた漁獲枠を設定して、それを厳格に管理して水産資源管理を行なっています。
仙台湾のイカナゴの漁獲枠は異常では?
ノルウェーを始め、漁業先進国における実際の漁獲量は、漁獲枠とほぼイコールというのが当然です。ところで、日本ではイカナゴがこれだけ危機的なのに、これでは全く枠の意味がないというのが次の仙台湾のケースです。
昨年の漁獲量は、激減してわずか26トン。資源量が減っていることも明確です。しかしながら、漁獲枠は何と9,700トン。と昨年実績の373倍ですww。
しかも、仙台湾の20地点での調査船による調査で獲れたのはわずか1尾、、、。絶対に獲り切れない漁獲枠。そして、その被害を受けるのは、他ならぬ漁業者です。そして、地元の加工業者、ひいては消費者にも悪い影響を与えてしまいます。
資源が潤沢で持続的な水準であれば別ですが、幼魚を科学的根拠に基づかず獲り尽くしてしまうことが、いかに問題であることかをイカナゴの例は語っているのです。
2018年に12月に70年ぶりに改正された漁業法は「国際的に見て遜色がない資源管理」をすることになっています。骨抜きにされないためには、広く国民が関心を持つことが重要なのではないでしょうか?