サンマ不漁 誰もいわない最も深刻な問題


更新2024年6月9日 現状のまとめとデータを更新しました。

今年は1尾100円前後で売られる日はあるのか? 

この記事を発信したのが2020年1月でした。国際的な資源管理の話し合いは毎年されています。しかしながら2024年に設定された漁獲枠は前年比10%減・22.5万㌧と前年実績の12万㌧のほぼ倍で全く資源管理には効果がありません。一方で科学者が適切と考えている漁獲枠は約7万㌧でした。

全体に対する日本の漁獲量の比率は約2割となっています。かつて長期にわたり8割あった時に世界で起きている国別漁獲枠の交渉例を見て手を打っておくべきでしたが、時すでに遅しです。日本の将来に大きな負の遺産を残してしまいました。(加筆終わり)

今年のサンマ漁獲予想が発表されました。10年以上前は20万㌧以上の水揚げが当たり前であったサンマ漁。

しかしながら、昨年の水揚げ量はわずか5万㌧弱と過去最低の大不漁でした。今年は、それよりもさらに来遊量が少ないという予想です。一体どうなっているのでしょうか?

ところでサンマの問題は、単に獲れないだけではありません。日本の将来のサンマ漁に大きな禍根が残ろうとしているのです。

今年のサンマは細くて小さいと予想されている。

ちなみに昨年は大不漁であっても、その前年度に冷凍されたサンマが一部で出回りました。昨年冷凍されたサンマはほとんどありません。仮に解凍サンマを見かけたとしても、繰り越している在庫は少ないないのです。

マスコミ報道や不漁予想の発表を見ても、その問題の本質は全く伝わっていません。俯瞰(ふかん)的に、データをもとに解説すると、大きな問題に気づかれるはずです。

サンマ資源調査 3区は調査できていないが、過去に比べて極端に少ない見込 (出典:水産研究・教育機構)

よくある不漁の理由を挙げます。日本に回遊してくる前に台湾や中国などの漁船が獲ってしまうから?まるで日本から遠く離れた公海に行けばサンマがたくさん獲れたのではという幻想です。また、暖水塊が来遊を妨げている、つまりそれが移動したりなくなれば、たくさん獲れるのでは?という幻想もあります。

サンマは、日本のはるか沖合を回遊する。その沖合(公海)のサンマも少ない。 (出典:水産研究・教育機構)

このように多くの幻想と誤解が世間を取り巻いています。では、なぜそれらが幻想なのでしょうか?

公海ではサンマがたくさん獲れるという幻想?

                               NPFCのデータより作成

上の表を見て下さい。過去最低と言われた2019年のサンマの国別漁獲量を2018年と比較してみました。全体では、前年比44%、日本だけ見ると36%しかありませんでした。

まず気づいていただきたいのは、大不漁だったのは、日本だけではないこと。『漁場が遠く離れた公海でのサンマ漁も同様に大不漁だった。』ということです。ちなみに、日本とロシア以外の国々の漁場は、ほぼ公海とお考え下さい。

つまり、日本の漁場「EEZ内」であろうが、「公海」だろうがサンマの来遊漁が極端に少ない=資源量の激減、という状態だったのです。仮に暖水塊が消えていたとしても、その沖合の資源量自体が少なかったのです。

誰もいわない将来の問題

今年(2020年)の夏には、公海での操業も含めたサンマの国別漁獲枠を決める話し合いが行われるはずでした。しかしCORVID19の影響で、会議の見通しが立っていません。国別の漁獲枠設定は不可欠で、それなしで漁を続ければ各国による過剰漁獲が起こり、資源量と漁業に大打撃が続きます。

漁獲枠配分については、各国とも国益が関わるので容易に妥協しません。また、獲り切れない巨大な漁獲枠の設定は、資源の持続性に何の役も立ちません。昨年56万㌧という分布域全体の漁獲量が決められました。しかし、昨年の実際の漁獲量は20万㌧に過ぎませんでした。

上記の56万㌧の内、公海が33万㌧になっていますが、共に実際の漁獲量より巨大で全く規制になっていません。また、国別交渉になると、自国の配分比率に最大の関心が行きます。実績が伴わない分(=日本の配分)がまず減らないと、各国は納得しないことでしょう。

さらにいえば、事前に資源量が大きく減少している調査結果が出ており、効果がない形式的な取り決めをしただけでした。これをマスコミは「数量管理に合意」などと報道していましたが、実際の中身はなかったのです。

決めねばならないのは、科学的根拠に基づく全体の漁獲枠(TAC)と、国別に配分「比率」です。

サンマの資源量が減っていることが最大の問題ですが、それ以外にもとても大きな問題があります。しかし誰も言いません。それは、国別の漁獲枠配分を決める際の根拠となる、日本の漁獲量シェアの急激な低下です。

サンマの漁獲量推移 水産研究・教育機構 データを編集

2019年は上の表及びグラフの通り、シェアわずか22%にまで減少してしまいました。2000年以前までは、大概80%を軽く超えていました。それが、公海での水産資源管理を疎かにしてしまったために、台湾や中国などの台頭を許してしまったのです。漁船に新規投資をした国々は容易に引き下がりません。

また、彼らの方が漁船が新しく、また漁場自体がより公海側が主体となりつつあるので、日本にとっては由々しき事態です。時間の経過と共に日本の漁獲割合が減れば、国際交渉がさらに不利になる可能性が極めて高くなります。かといってたくさん獲ろうとすれば、さらに資源は悪化して行きます。

過去に日本の漁獲量が多かったからといって、それを尊重するかどうかは、もし自分が台湾や中国の交渉担当だったらどうか考えて見ると分かると思います。国益が絡む交渉は甘くありません。

サンマの資源調査結果が、昨年よりさらに悪いと出ているので、国によってはサンマ以外の魚種に一時的にシフトすることも考えられます。

しかし、そうであっても、交渉に際して2018年、2019年といった近年の漁獲量をベースに各国が主張してくれば、将来の日本の割り当て比率は少なくなります。そしてかつてのようなサンマの漁獲量には、よほど資源量が回復しない限り戻らないでしょう。一方で、合意せずにこのままでは、サンマの資源自体が壊滅するリスクが高まって行きます。

サンマは国際資源です。公海を含めたサンマの国際的な資源管理は一刻も早く実施せねばなりません。その戦略的な選択肢は多くありません。まさに内憂外患の状態になってしまっているのです。

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