ノルウェーサバは一年中脂がのっているのか?

ノルウェーサバ  NSC

焼き魚の定番として、すっかりお馴染みになっているノルウェーサバ。多少の誤差や好みは別として、脂がのっていないノルウェーサバを食べたことがあるでしょうか?

焼いた後に冷めても美味しいのがノルウェーサバの特徴の一つです。一年中出回っているので、まるでいつでも旬のような感じがするかも知れません。

一方で、国産のサバの場合は、春から夏にかけて鮮魚で買って、脂がなくてパサパサしていたといった経験がないでしょうか?

ノルウェーサバは一年中脂がのっているわけではない

このグラフは、ノルウェーサバの脂肪分推移を表しています。赤の折れ線グラフをご覧ください。春(3〜4月ごろ)が産卵期で、この時期の脂肪分は5〜10%程度と低くなっています。そして夏になると産卵で痩せた体力を取り戻すべく、どんどんエサを食べて脂肪を蓄えて行きます。

9月中旬、霜降り状態に脂がのったノルウェーサバ 

脂肪分のピークは8月頃で、30%前後になるのですが、この時期は、まだ身に脂が十分回っていません。その後の9月中頃から皮と身の間に溜まっていた脂肪が身に回り、霜降り状態になって最も美味しい時期に入ります。

日本に輸入されるノルウェーサバは全て冷凍の状態です。脂がのった秋から冬にかけて冷凍されたサバが、周年加工により市場に供給されているのです。それで常に脂がのったサバが食べられるのです。

ところで、ノルウェーでは、秋から冬にかけてしかサバが獲れないのでしょうか?日本では、一年中どこかしらからで水揚げされ、生のサバが途切れないので不思議ですね。

ノルウェーサバの約7割(2018年)を漁獲する大型巻き網船は、千キロ離れた漁場でも魚を獲りに行くことが可能です。また一度に千㌧以上のサバを冷やした良い状態で2~3日かけて運んでくることも可能です。従って、やろうと思えば、日本のように一年中、サバを漁獲することは物理的にできるのです。

しかしながら、ノルウェーの漁船は、物理的には問題なくても、脂がのった美味しい時期以外はサバを漁獲しません。

その理由は、水産資源管理システムにあります。ノルウェーの巻き網船には、漁船ごとに漁獲枠(Quota)が科学的な根拠に基づいて毎年割り振られています。

2018年のサバの漁獲枠は1隻当たり約1,400トンでした。大型巻き網船は、その数量をたった1回で獲ってしまうことが可能です。一方で、物理的にはその数倍獲ることが可能ですが、それは規則でできません。

枠を1回で使用するよりも、3~4回くらいに分散させて、少しでも魚価が高くなるように漁をしています。求めているのは水揚数量ではなく、水揚金額の増です。

また、脂がのっていない時期より、脂がのって身に回っている時期の方が、価格が高くなります。主要マーケットである日本市場は特に脂ののり具合に敏感です。

そこで漁業者としては、漁獲枠が実際に漁獲できる数量より大幅に少ないので、たくさん獲ることではなく、如何に品質を向上させて魚価を上げることに力を入れています。

かつ、大量貧乏にならないように、できるだけ水揚げを分散して魚価を維持・高めることにを重視しています。このため水揚げされたサバの状態はとてもよくなります。

一方で、日本のマサバの場合はどうでしょうか?

国産のマサバ 脂がのらない6月もの 脂ののりは表面からは分からない

裏返してみると身は赤く脂はほぼない

ノルウェーサバとは対照的な赤い身で、6月のマサバの脂はほとんどありません。実際に食べてみると、身が固くてパサパサ。

この時期の脂肪分データをみると下のグラフのように5~10%前後しかなく、ノルウェーサバの25~30%前後の脂肪分に比べて非常に低くなっています。

マサバ 6月は5~10%前後とほとんど脂がのっていない 千葉県
マサバ 11月は20~25%前後も脂がのり美味しい 千葉県

一方で、日本のマサバも秋になるとノルウェーサバ同様に脂を蓄えます。脂肪分もノルウェーサバには及ばないものの、上のグラフを見てわかる通り20~25%前後にも達します。

なぜ、日本ではノルウェーのように脂ののった時期以外でも、獲って流通させてしまうのでしょうか?消費者としては、お店に並んでいる以上、そのサバが脂が無いと思って購入することはないでしょう。

一方で、家で調理して食べて美味しくないと、産地にかかわらず、もしくは焼き魚や煮魚に対して食べたくないというトラウマになってしまうかも知れません。

筆者は、日本だけが魚の漁獲量が減少を続けているだけでなく、魚離れまで起きてしまっている理由は、この美味しくない魚が店に並んでしまうことで、消費者が離れてしまうからだと考えています。

消費者が知らないところで、食用に向かない小さなサバもたくさん水揚げされている。

それでは、日本で獲るサバも、ノルウェー同様に常に脂がのった美味しいサバにするにはどうしたらよいのでしょうか?

その答えは、ノルウェー同様に船ごとに漁獲枠を設定することにあります。ただし、そこで重要なポイントがあります。それは獲り切れない大きな枠を設定しないこと、魚が獲れたら枠を増やすことはしないことです。

日本でも、漁船ごとにサバの枠を設定しているケースがあります。しかし、漁獲枠が大きすぎるために、漁船は小さなサバでも、見つけたら獲ってしまいます。これはノルウェーとは似て非なる制度です。

また、枠が大きいために、分散して水揚げをしようという意識が働きにくく、いっせいに獲って処理し切れないほど水揚げしてしまうケースがよく見られます。

大量水揚げでは鮮度が落ちてしまうので、魚価は下がり、食用に向かない比率が増えます。このため養殖のエサや輸出に回ってしまうケースもあり、もったいないことが起きているのです。ノルウェーサバは99%が食用ですが、日本では7割程度が食用になっているに過ぎません。

ノルウェーサバも日本のマサバも同じように春頃産卵し、秋から冬にかけて脂がのって美味しくなります。ノルウェーのような水産資源管理を行い、資源をサステナブルにし、同じように脂がのった時期に冷凍してそれを周年加工して流通させれば、日本のマサバで脂がのったサバを年中供給することができるようになります。

同じ11月に漁獲されたマサバでも200g前後の未成魚では、
成魚のように脂はのらない。千葉県

ただし、本来脂がのる秋~冬の時期であっても、ローソクやジャミと呼ばれるマサバの幼魚には、グラフにようにほとんど脂はのらず食用に向かないので、価値は低くなります。小さいうちには獲らず、最低でも300g以上、成魚になるまで待っことが重要です。そして大きくなってから脂がのった時期に獲ることが大切なのではないでしょうか?

ノルウェーサバは年中脂がのっているのは、脂がのっている時期しか漁船が獲らない制度だからなのです。漁業法の改正に伴い、国際的に遜色のない資源管理を行えば日本でもできることです。

食べたら危険? ノルウェーサーモンの誤解を解いてみた(2)

アトランティックサーモン 天然

冷凍されて輸入されているからアニサキスの問題はない?

ノルウェーサーモン(アトランティックサーモンへの誤解を解く第2弾。アニサキス? 冷凍?共にノルウェーサーモンとほぼ関係がないファクターが、ネットで説明され間違いが間違いを呼び複雑骨折しています。

まず養殖のノルウェー サーモンとアニサキスの関係について。アニサキスは、体内に取りこんでしまうと激しい腹痛を伴う恐ろしい寄生虫です。しかし、輸入されているノルウェーサーモンは養殖です。エサのドライ加工したペレットにはアニサキスはおらず、その心配はありません。そのため刺身用として、寿司ネタとして広く流通しているのです。

アニサキスはマイナス20度で24時間以上冷凍すると死滅します。このため、オランダやドイツで人気がある生食のニシン(マチェス)は一旦冷凍してから流通しています。ニシンは天然ものです。

日本で天然の鮭を生で食べるルイベ。これは鮭を一旦冷凍した料理です。冷凍するのは、天然のサケには養殖物と異なりアニサキスなどの寄生虫リスクがあるからなのです。

ニシンやサバなどの天然魚は、エサとなるツノナシオキアミなどにアニサキスが寄生しており、それを食べることで内臓などにアニサキスが入り寄生します。

しかしながら、ノルウェーサーモンに与えるのは、ペレットと呼ばれる粒状のエサです。原料のフィッシュミールは、加熱、乾燥させるのでアニサキスはいません。ノルウェーで問題になっているのは、後述しますが、シーライスと呼ばれる全く別の寄生虫です。

さらに日本に輸入されているノルウェーサーモンは90%以上が生の空輸です。ですから、冷凍されているからアニサキスは大丈夫というのは、そもそも的外れなのです。

アニサキスの危険?

天然アトランティックサーモンの寄生虫(シーライス)

ノルウェーサーモンにつく寄生虫(シーライス)の写真です。赤い矢印をご覧ください。アニサキスは、半透明で細いイトミミズのような全然違う虫です。この写真は、アイスランドの川に回遊してきた天然のアトランティックサーモン(ノルウェーサーモンと同じ)です。養殖で問題になっているシーライスは、このように天然のサーモンにも一般に寄生しているのです。

ノルウェーサーモンに寄生しているシーライスは、写真のように内部ではなく皮く目立つ虫です。生食用に調理する際には、皮は取り除かれますよね。

養殖場にアニサキスが入ってくる可能性が100%無いとは断言できませんが、常識的に考えて問題は無いのです。

ノルウェーサーモンは生で空輸される

2018年に輸入されたノルウェーサーモンのセミドレス(エラと内臓を取り除いた形態)の数量は15,605トンです。その内、冷凍での輸入はわずか192トンです。つまり、99%が生鮮の状態で輸入されて主に生食用として流通しているのです。

加工したフィレーの形体(頭、内蔵、骨、皮などを除去)で冷凍したものが1,699トンあります。一方で生鮮で輸入されるフィレーは大幅にそれ以上あります。チリ産などの数字も入るので詳細は分かりませんが、全部ノルウェー 産とかなり多めに計算したとしても、生鮮での輸入は9割を超えています。ノルウェーサーモンが生食で食べられるのは、冷凍して輸入されるからという理由ではないのです。

ノルウェーサーモンを加熱する?

ステーキやムニエルなどでノルウェー サーモンは加熱調理されます。もちろん、火を通しても美味しく食べられます。ただ、アニサキスの問題があるので火を通して食べた方がよいというのは、正しい解釈ではありません。

アニサキスは火を通せば死滅しますが、そもそも養殖のノルウェー サーモンにはいないので、その話自体が関係がないのです。

欧州でも寿司ネタで人気のアトランティックサーモン

EUや米国をはじめ世界中でアトランティックサーモンを使った寿司の需要が増えています。ちなみにEUや米国の食品輸入は衛生基準を始め日本に比較してかなり厳しく、問題がある食品を、しかも生食で流通させるなど考えられません。

なぜ、ノルウェーサーモンに関するデマが広がったのかは分かりません。ただ、水産資源管理、サステナビリティに関しての誤った情報や知識不足が悪影響を与え、それに対する答えが見つけられないケースがサーモンに限らず多々あります。当サイトはそのための手掛かりの一つとなれれば幸いです。

ダイオキシン、抗生物質、殺虫剤などについては「食べたら危険?ノルウェーサーモンの誤解を解いてみた(1)」をご参照ください。

食べたら危険?ノルウェーサーモンの誤解を解いてみた (1)

天然のアトランティックサーモン

ノルウェーサーモンは「最も危険な食べ物」なのか?

回転ずしや寿司などですっかり日本の市場に定着している養殖物のノルウェーサーモン(アトランティックサーモン)。ノルウェー輸出審議会(NSC)によるメディアへのキャンペーンで見る機会もあったかも知れません。

ところが「ノルウェーサーモン」と検索すると「最も危険な食べ物」「抗生物質」「殺虫剤」「エサに大量の小魚が乱獲されている」「河川で見つかるサケの50%以上が養殖サーモン」「小さな場所に押し込まれている」などネガティブ内容を含む検索結果がいくつも出てきます。

読むと「えっ!」と思う内容が多く、このため記事が拡散されて、Googleの検索上位に上がり、それらがさらに多くの人の目についています。そしてそれらのネガティブ記事に様々な尾ひれがつきそれが拡散。

Yahoo知恵袋でのやり取りもベストアンサーの返答自体が、そういったネガティブ記事の受け答えがベースになっており、留まるところを知りません。

養殖 ノルウェーサーモン(アトランティックサーモン) NSC

ところが現場を見ると、非常に厳しく管理され、きれいで澄んだ海で養殖されているノルウェーサーモン。 今回は、それらの主だったネガティブ内容をデータ、国際ルール、統計などを基に検証します。

ダイオキシン、抗生物質、殺虫剤 ?

まずダイオキシンについてです。「養殖サーモンを食べるとPCBなどの害」、「上限は年間3食。」?こんな検索結果を見れば食べるのが怖くなってしまいますね。

ところが、ノルウェーの科学委員会(Norwegian Scientific Committeeでは「週に1kg以上食べても健康に害を及ぼさないとしています。(www.nifes.no)

ダイオキシンについて

養殖より天然のサーモンの方がダイオキシンなどは多い

グラフ見て頂くと一目瞭然ですが、ノルウェーでは、天然のサーモンの方が、養殖物よりもダイオキシンやPCBの含有量が多いというデータになっています。またサバやニシンよりも養殖サーモンの方が低いのです。

10年以上検査がされておらずでした。このため、「養殖物」という先入観による情報が一人歩きしたのでしょう。なお、この結果は2017年に発表されたものです。

毎年11,000尾のサーモンが検査され、PCB、ダイオキシン、重金属のレベルはEUの制限値をはるかに下回っています。

抗生物質について

ノルウェーサーモン 抗生物質使用量と養殖量推移

上のグラフは、ノルウェーサーモンの抗生物質使用料と、養殖量の推移を表しています。これも結果は一目瞭然です。抗生物質の使用が多かったのは、30年以上前のことです。その間に生産量は5万トンから120万トンに激増。逆に抗生物質の使用量は99.9%削減されているのです。

抗生物質 肉とサーモンの使用量

ついでにノルウェーでの肉とサーモンにおける抗生物質の使用量を比較したグラフを見てみます。キロ当たり肉は175mgですが、サーモンはわずか0.00036mgです。

殺虫剤?(エトキシキン)について

次に「殺虫剤(エトキシキン)」がエサに混じって使われているということについてです。ノルウェーサーモンのエサには、フィッシュミール(構成比17%)が使用されています。

ところで魚粉には、乾燥した魚粉が自然発火しないように船舶で輸送する際には、エトキシキンを使用することが「義務付け」られています。また、使用料についてはWHOで基準が定められています。

欧州で販売されているアトランティックサーモン

日本には過去12ヶ月(2018年10月〜2019年9月)で21万トンのフィッシュミールが輸入されています。輸送手段は船舶です。もし、エトキシキンがダメなら、日本で養殖されているハマチ、マダイなどを始め、フィッシュミールをエサにしている養殖魚はどうなるのでしょうか?

エサに大量の小魚が乱獲されている?

ノルウェーでは、サバでもニシンでも大きくなれば食用になる魚を小魚の内に獲るような勿体ないことはしません。サバではノルウェーの食用向けの比率は99%で日本は同70%程度です。また釧路で水揚げされるマイワシでは90%がフィッシュミール(2018年)になっており、この件は、むしろ日本に当てはまってしまう内容です。

ちなみに、ノルウェー ではニシンをフィッシュミールにしています。しかしミールになるのは、頭、骨、内臓などの可食部を取り除いた残渣ですイカナゴのように食用にしていない魚は、丸のままフィッシュミールにしていますが、科学的根拠に基づき資源管理されており、乱獲には全く該当しません。

河川で見つかるサケの50%以上が養殖サーモン?

ノルウェーサーモン 脱走尾数 単位千尾

養殖のサーモンが逃げ出し、天然物と混じってしまうことは避けねばなりません。ノルウェーでは、サーモンが脱走した場合、1尾当たり約6,000円(500NOK)の罰金がかかります。

河川で見つかるサーモンの50%が養殖物という検索結果もありましたが、実際には5%以下というデータなのです。天然のサーモンの縄張りが荒らされたり、他の魚も含めてエサがなくなってしまうなどということもありません。

小さな場所に押し込まれている?

サーモンの比率はわずか2.5%で97.5%が海水 NSC

ノルウェーサーモンの養殖は、環境にとても配慮しています。上の養殖場の図の通りで、サーモンの比率はわずか2.5%であとは海水です。小さい場所で養殖などしていません。過密養殖とは程遠い健全な状態なのです。

実際、現場に行ってみると、養殖場は広いフィヨルドの中にポツンとあり、もっと養殖場があっても良いのでは?と思うくらいです。

また、販売に不可欠になってきている養殖版の水産エコラベル(asc認証)を取るためには、養殖する魚の環境や、使用するエサのサステナビリティの考慮も欠かせません。

まだまだ、ノルウェーサーモンに関する誤った情報発信はたくさんありますが、長くなるので今回は第一弾としてこの辺にしておきましょう。

世界と日本の魚の状態を比較してみた

世界の水揚量は増加を続けている FAOデータを編集

世界全体の水揚量は増え続けているのに、日本だけが多くの魚で減り続けています。しかしこの「異常」な現実は、一般にどころか、社会科を教えているような先生方にも、ほとんど知られていません。

食用に向かない小さなマサバやマイワシが、容赦なく漁獲されている

まず世界全体の水揚量推移のグラフを見てみましょう。天然と養殖を合わせ右肩上がりに増えています。1988年に1億トンに達した水揚げは、2017年では2億トンと倍増しています。恐ろしいことに、日本では同時期での比較では1,200万トンから4百万トンへと逆に1/3に激減しているのです。

天然と養殖物について見てみると、天然物が横ばいであるのに対して、養殖物の数量が著しく伸びています。天然魚の水揚量は頭打ちのように見えます。しかしそうではありません。北欧、北米、オセアニアなどの漁業先進国が、実際に漁獲できる数量より「大幅」にサステナビリティを考慮して天然魚の漁獲量を制限しているのでそう見えるのです。

水産白書

なぜ、子供たちに教える先生が、世界と日本を比較した魚の資源状態のことを知らないのでしょうか?それは、先生方がその現実を学ぶ機会がほとんどないからです。

学校の教科書には、日本の水揚げが減少しているグラフだけが載せてられているだけです。このため1977年に設定された200海里漁業専管水域により遠洋漁業の衰退などにより魚が獲れなくなり、後継者不足や高齢化で大変な一次産業と児童や生徒に教えてしまうのです。

これでは、世界で起こっている現実が全く伝わりません。魚が消えて行くことは、私たちの生活にとても身近な問題なのに、、、です。

そこで、上のような世界全体と日本の水揚量推移でグラフを作ると、世界と日本の傾向が明確に異なることがわかります。このグラフ1枚をベースに、学校で世界と日本の傾向が著しく違う理由に関して授業を行えば、先生も含めて非常に勉強になり、話題は尽きないことでしょう。

世界銀行の発表を合わせると日本が特例であることがはっきりします。世界銀行が2010年と2030年の海域別の水揚量を予測している表では、世界全体では23.6%増えているのに、日本の海域だけがマイナス9%とマイナスを示しています。

しかも2030年を待たずして2015年で460万トンにまで減っており、前倒しして悪化してしまっているのです。日本の水揚げが大幅に減った原因として、マイワシの水揚げが減少していることも理由になっています。

しかし、マイワシの水揚げは、東日本大震災があった2011年以降は急激に増えて来ており、逆に全体の水揚げ減少を抑える要因になっています。

マイワシが減ったからでは、全体の水揚量が減り続けている理由にはなりません。

水産資源の減少としてよく出てくるのが「環境の変化」です。海水温の上昇などは、資源量に影響を与えます。しかしながら、世界中で日本の海だけが温暖化しているのでしょうか?

外国の船が獲ってしまうからという理由もよく出てきます。しかしながらこれも、ホッケ、イカナゴ、クロマグロをはじめ、外国漁船の影響はあまり関係がないケースがほとんどです。

またサンマについては、国際資源です。これも公海での国別の漁獲量さえ決まっていない現状では、外国ばかりを非難しても仕方がないことを理解せねばなりません。

日本の水産資源管理のように、漁期や漁法などは制限するものの、肝心の数量については目一杯獲って水産資源を減らしてしまう国は、例外なのです。

日本の減少理由をクジラのせいにしている場合もあるようです。もちろんクジラはたくさんの小魚などを食べます。

しかしながら、ホウェールウオッチングが盛んな、アラスカやアイスランドなどでは、クジラがたくさんいますが、魚もサステナブルな状態でたくさんいるのです。

不漁 凶漁なぜ日本の魚ばかり減るのか?

次々に消えて行く魚。今年(2019年)獲れないと話題になった水産物を例に挙げてみます。サンマサケスルメイカ、イカナゴ、サクラエビ、毛ガニ、ウナギの稚魚などなどです。

「〇十年ぶりの不漁・凶漁」「過去最低の漁」「こんなに獲れなかったことはない」といったニュースに慣れてきていないでしょうか?

一方で、獲れていた頃に比べると、ほとんど獲れていないのに、あまりにも獲れなくなってしまい、少しでも獲れるようになると、まるで資源が回復したかのように錯覚される魚として、ホッケ、ニシンやクロマグロが挙げられます。

また、東日本大震災で、しばらくの間、漁獲圧力が落ちて急激に資源が増えたにもかかわらず、再び減ってしまったマダラなど、水産資源管理やサステナビリティの欠如により、残念な結果になっているケースは少なくありません。

魚が減った原因として、環境の変化や外国の影響と自国の資源管理は棚に上げて責任転嫁するケースをよく見かけます。

もちろんそれらの影響がないとまでは言いません。しかしながら問題の本質は、自国の獲りすぎを棚上げにした水産資源管理にあるケースがほとんどです。

そして、消費者として目に前の魚に問題があってもあっても、言われないと気づかないことが多いのです。

身近には乱獲(成長乱獲)の形跡が、、。。

小さなスルメイカ

「スルメイカが獲れない」というニュースを聞いたことがあるかと思います。その原因として上がるのが、外国船による操業です。ただ、その一方で、日本では、写真のように産まれたばかりと思われる小さなスルメイカを獲って売っています。これで良いのでしょうか?

サバの場合でも、日本では食用にならないローソクとかジャミと呼ばれる未成魚が容赦なく漁獲されています。養殖のエサや輸出に回ることが多く、目にする機会は少ないです。しかし実にもったいなく、資源にも良くない漁業が日本のあちこちで行われていることが、資源の減少、そして水揚量の減少とつながってしまうのです。

輸入では十分賄えない時代

水産白書

日本の水産物の輸出入に関するグラフを見てみてください。青い棒グラフの「輸入数量」は年々減少しています。一方で赤い折れ線グラフの「輸入金額」は年々上昇しています。

これらが意味するところは「単価の上昇」です。この傾向は、さらに厳しくなるのは上述の通りです。これを「買い負け」と言います。 

日本のように様々な魚種が減ってしまうと、代替になる魚がなかなか見つかりません。このため、獲りすぎで海に常に借金をしているような形になっています。未成魚でも幼魚でも獲ってしまうので、魚は成長する機会も産卵する機会も奪われてしまいます。

魚を獲り過ぎると、海の中を泳いでいる魚は、小さな価値が低い魚の比率が高くなります。このため消費者は、大半を占める小さな魚の中から選ばれた少し大き目の魚を高い単価で買う羽目になってしまいます。

そして漁業者には安く、消費者には高いという悪循環になってしまいます。そのギャップを埋めてきたのが、輸入水産物でした。しかしながら、世界中で水産物の需要が増えて、日本が思うように買い付けできる時代ではなくなってしまっています。

国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)において、水産物をMSY(最大持続生産量=魚を減らさずに獲り続けられる最大値)水準にまで回復させる期限は2020年です。まさに待ったなしの日本の水産資源管理なのです。

大漁?今のマイワシ漁はもったいなくないだろうか?

食用に向かない小さなマイワシ. 写真 Nobuyuki Aoki

北海道(道東)沖のマイワシ漁が、20万トンに達する勢いで水揚げを伸ばしています。前年比4割増。3年連続で10万トンを超える豊漁が続いています。 震災前は、北海道沖の水揚げは、ほとんどありませんでした。

主要な水揚げ地である釧路を始め、八戸や三陸などに多い日には5千トン前後も大量に水揚げされています。しかしながら、それほど大漁による恩恵を、消費者が受けているような感じはしていないかも知れません。

120g以上ある脂がのったマイワシ

それは、盛漁期の9~10月は、50~60g台の小型が多かったためです。食用に向かない小さなマイワシをたくさん獲っても、そのほとんどは、養殖などのエサになる魚粉(フィッシュミール)向けに加工されて行きます。

昨年の釧路港では、水揚げの約9割が、非食用向けでした。今年もその傾向は変わらないでしょう。

鮮魚や冷凍加工に向ける場合は、魚価が高くなる一方で、受入れ側の手間や、冷凍加工能力の増強が必要になります。一方で、魚粉に処理する場合は、一度に大量に処理できるため、生産効率はよいのです。

また、魚粉に加工する際には、魚油(フィッシュオイル)も抽出することができます。魚粉も魚油も国内外に市場があります。

しかしながら、大きくしてから獲れば食用が増えて平均魚価が上がりますし、消費者にとっても供給量が増えて、手ごろな価格で買える機会が増えます。増え魚粉や魚油にするにしても、丸ごと魚を使うのではなく、頭、骨、内臓などの食用にならない部分を使った方が良いのではないでしょうか?

水産資源を有効に使い続けるノルウェー漁業🇳🇴

写真はノルウェーでニシンをフィレー加工したものです。可食部以外の頭、骨、内臓などがフィッシュミールに加工されています。アラスカのスケトウダラについても、フィレーやすり身にした残りが、フィッシュミールにされていきます。フィッシュミールは、養殖に不可欠なので必要です。違いは、やり方次第で価値を上げられる魚そのものを使うか、可食部を除いた後の残渣を使うかです。

マイワシの寿命を知っていますか?

水産教育 研究機構

マイワシの寿命は7年前後と考えれています。年齢と成熟率のグラフを見ると、1歳でも何割か成熟する魚もいますが、完全に成熟するのは2歳からです。

年齢と体重の比較を見ると、今年(2019年9~10月)に漁獲の主体であったという50~60gのマイワシは、1歳程度(ほぼ未成魚)が主体であったことが分かります。

水産研究 教育機構

マイワシは、突然大きくなりません。小羽・中羽・大羽などと大きさが表現されます。20cm超とも言われる大羽サイズは、グラフをみると最低でも3歳、重量は100gを超えているイワシであることがわかります。

水産研究 教育機構

また年齢ごとの漁獲尾数を表しているグラフを見ると、近年漁獲されている尾数は0~1歳ばかり。大きくなる前の魚を大量に獲ってしまうのはもったいないのです。これを「成長乱獲」とも言います。

マイワシ(太平洋)の資源は、増加傾向にあります。このためしばらくは、運よく獲られずに大きくなるマイワシも出てくるでしょう。

しかし、もったいないので、食用に向かない小さな魚はできるだけ獲らない仕組みにした方が良いのではないでしょうか?

食用に向かないマイワシの水揚げが続く理由

食用になるサイズに育ててから漁獲することは資源の無駄遣い

なぜ、2~3年待てば脂がのったマイワシに成長するのに、非食用向けにどんどん水揚げしてしまうのでしょうか?その答えは、ノルウェーを始めとする漁業先進国の水産資源管理と比較するとはっきりわかります。

まず第一に、漁獲枠(TAC)が機能していないことにあります。北海道(道東)沖の漁は、当初漁獲枠を18万トンでスタートしました。しかし、漁獲が増加してくると、10月になって6万トンも増やして24万トンにしました。漁獲量が増えたら枠を増やすパターンです。

2017年は、当初5万トンの枠でしたが、2回も増枠して最後は12万トンにまで枠が増やされていました。漁業者は、あとで枠を増やされてしまうのでは、まだ魚が小さいからと待っていたら正直者が馬鹿を見ることになってしまいます。

あとで増える漁獲枠であれば、枠の信用もなくなります。当事者としては、見つけ次第、大きさにかかわらず魚をたくさん獲ろうとする力が働くのが普通だと思います。これでは、残念ながら水産資源管理に効果はありません。

第二に、漁船ごとに漁獲枠が決まっていないこと。漁船ごとの枠でなければ、早獲り競争が加速するので効果がありません。処理し切れないほど一度に水揚げされるので、鮮度も落ちてしまい、必然的に食用に向く比率も減ります。

なおこの状態はずっと続きません。減りだしてからでは遅いので、資源が多いうちに手を打つべきなのです。

昨年末に漁業法が70年ぶりに改正され、国際的に見て遜色がない資源管理をすることになりました。でもその法律の肉付けはこれからです。

そこで皆さんの水産資源管理に関する正しい知識が必要になります。皆さんが知らないところで、実にもったいない漁業が、マイワシに限らず日本のあちらこちらで続いているのです。これを止めることが、サステナブルな社会を実現していくためにも、不可欠なのです。

少し待てば食用になるマイワシ 。やるべきことは、出来るだけたくさん獲って、たくさんフィッシュミールにすることではありません。科学的根拠に基づいて 漁船ごとに漁獲枠を設定することなのです。

そして、漁船に水揚げを分散してもらい、出来るだけ食用や、加工に向く水揚げの比率を増やし、地元の産業も支えていく仕組みを作っていくことです。

ノルウェー漁業 資源がサステナブルで 安全な理由

ノルウェー大型 巻き網船

ノルウェー漁業は 船が大きいだけではない

世界第2位の輸出を誇り、持続的な成長を続けるノルウェー漁業。その理由は、水産資源管理の成功に他なりません。これまで様々な形で紹介してきましたが、ここでは、「安全面」も含めてご紹介します。

ノルウェー大型巻網船内

なぜノルウェー漁業は安全なのか?

いくつも理由があるのですが、まずは制度面から。サバやニシンなどの漁業を行う巻き網船は、科学的根拠に基づいた漁獲枠が、魚種と漁船ごとに割り振られています。これを漁船別個別割当(IVQ=Individual Vessel Quota)と言います。

ノルウェーサバを例にすると、漁獲枠と実際の漁獲量は、消化率でほぼ100%(2008〜2018年 平均97%)です。一方で、日本のサバ類(マサバ、ゴマサバ)は消化率が64%(2008年〜2017年)にすぎません。サンマになるとわずか同51%です。消化率がほぼ100%とならない、大きすぎる枠の設定では、漁業者は質より量を求めてしまいます。このため漁獲枠が機能しません。

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ノルウェーサバ

実はこの枠の大きさが、資源量だけでなく、「安全面」でも悪影響を与えているのです。漁獲枠が実際の漁獲量より大きく設定されていると、魚が獲り放題に近い状態になってしまいます。

このため、たとえ海が荒れていても、「出来るだけたくさん獲ろうとする強い意識」が働いてしまいます。かつ、小型の魚も容赦な く獲ってしまう力も働きます。この大きくなる前の小型の魚まで獲ってしまう「成長乱獲」は、水産資源にとっても良くありません。これは、漁業者に起因するのではなく、資源管理制度の不備により、日本で必然的に起きてきた問題です。

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ノルウェー大型巻き網船 船員は個室

一方で、ノルウェーの場合は、実際に漁獲できる数量より、大幅に少ない数量が、漁獲枠となっています。このため、無理して荒れた海に、あえて出て行く必要がありません。

それどころか、他の漁船の動向を見ながら、水揚げが集中しないように、受け手側の処理能力を考え、品質と価格が保てるように、分散して水揚げをしてきます。

このため、日本でよく起きる大漁貧乏。つまり一度に獲りすぎで処理し切れず、鮮度が落ちてしまい、魚価も暴落というケースは起こしません。

また、食用に向く魚まで、処理し切れないほど漁獲してしまいエサ用にしてしまう、などということはしません。そのような、経済的に非常にもったいない漁はせず、かつ安全な操業にする仕組みが、漁船ごとの枠の割当制度(IVQ)なのです。

加えて、ノルウェーでは、中長期的に資源がサステナブルであることが誰の目にも明らかです。このため、安全で快適な新造船が、どんどん投入されて行くのです。

漁獲枠の管理がしっかりしているので、焦って慌てて荒れた海に出ていく必要などないというわけです。

魚が減ると漁場が遠くなり危険が増す

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日本の漁船:魚を運んでくる運搬船 ノルウェーは単船操業なので、同じ船が漁獲して運んでくる。

サンマ、カツオなど、回遊魚の漁獲量が減少すると、今まで獲っていた漁場に、魚が回遊してこなくなってきます。このため漁場が遠ざかって行くのです。

この場合、小型の漁船でも、遠い漁場にまで魚を獲りに行かなくてはならなくなることが、安全面でのリスクとなります。

資源が、サステナブルであれば、ノルウェーのように小型の漁船でも、沿岸にも魚が十分回遊して来るので、遠征しなくても漁業で生計が立られます。

漁船の大きさ制限も検討する必要がある

ノルウェーを始めとする北欧では、漁船に許可を出すコンセプトが異なります。漁船の大きさの制限は、日本のようにトン数ではなく、長さで制限されているのです。このため、転覆しにくく、横幅が広い、安定した漁船となっています。

またVMS(Vessel Monitoring System=衛星漁船管理システム)が搭載されていているので、万一遭難しても、位置が把握されています。

ただし、重要な注意点があります。改正漁業法で法律になっている通りに「国際的に見て遜色がない資源管理」が実施されずに漁船だけが新造されていけば、乱獲を助長するだけになりかねないということです。

ノルウェーでは漁業者の満足度も高い

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ノルウェーは、マーケティングも進んでいる

ノルウェー(SINTEF=科学技術研究所) で、漁業者の約1割に当たる1,000人の漁業者を対象にした、満足度調査が2016年に行われました。その結果は、「漁船の大小」や仕事の役割にかかわらず、「99%の漁業者が仕事に満足」しているものでした。

日本で同様に満足度調査をしたらその割合は、どうなるのでしょうか?満足度の高い産業では、後継者問題は発生しにくいでしょう。その満足度を上げるための根本にあるのが、資源がサステナブルであるということなのです。

満足している主な理由の上位10は、①仲間意識と仕事の雰囲気②仕事における独立性③仕事の意味するもの④漁業への関心⑤仕事の多様性⑥エキサイティングな仕事であること⑦仕事における自由⑧高い収入⑨自然と海⑩計画的なレジャー(漁獲枠が決まっているため計画的に漁業が行える)。 というものでした。

北海油田が理由ではない デンマークの漁船も豪華

デンマーク漁船内

ノルウェー以外の北欧の国々の漁船も安全で快適です。枠の譲渡性の有無など、国により漁獲枠の配分方法は異なる場合があります(別の機会に解説)が、個別割当方式であることに変わりはありません。

写真は、ノルウェーに停泊中のデンマーク漁船です。たくさん獲ることが優先ではなく、乗組員の環境のことが、よく考えられて設計されています。というか、只々豪華です。

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ノルウェーに停泊中のデンマーク漁船

日本の漁船は、操業中も、水揚げ時もとても忙しいです。しかし、機械化が進み、水揚げもポンプで楽々の北欧漁船では、このように運動不足の解消なのか、ジムがある漁船が珍しくありません。日焼けサロンが付いている漁船まであります。

ノルウェー漁業の成功は、1970年代に北海油田が発見されたことで国の経済がよくなり、漁業者が油田関係の仕事にシフトできたことよるなどと言われることがあるようです。

しかしながら、産油国ではない、アイスランド、デンマークなども、同じように漁業で発展しています。肝心なのは、水産資源管理が科学的根拠に基づいて行われているかどうかなのです。

ノルウェーを始めとする北欧の漁業が安全なのは、漁獲枠が、科学的根拠に基づき、実際に漁獲可能な量より、大幅に少なく分配されているからです。

かつ、水産資源がサステナブルで、漁業がもうかっているので、快適で安全な新造船が次々と造られているからなのです。

今は多くの魚種で崖っぷちのタイミングです。しかし 日本でも手遅れになる前であれば、魚の資源をサステナブルにすることは可能です。そうなれば、水産資源に加え、漁業の安全度も同時に増すことになります。

サンマが消えて行く本当の理由

今年のサンマは細い

魚が減ると味が落ちて高くなるわけ

 水揚げの減少が深刻なサンマ。今年、売り場に並ぶ生鮮のサンマは、細くてあまり脂がのっていません。全般的に痩せていることもあるのですが、それだけが理由ではありません。

鮮魚向けのサンマが不足しています。このため、最近まで食用になるのに、サンマが潤沢だったので選別して、餌料向けなどにしていた細くて小さいサンマも、足りないので食用に回さざるを得ないのです。

つい5年ほどまでは、年間で20〜30万トンと鮮魚では消化できない量が水揚げされていました。それが2017年は8万トンと半世紀ぶりの凶漁となり、2019年はそれを下回るペースでの水揚げとなっています。このため、供給不足でキロ当たりの価格が上がり、それが1尾価格の大幅上昇として跳ね返っているのです。

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 サンマ国別水揚げ量推移 水産研究 教育機構

具体的な数字でいうと、2007年~2016年に非食用だった比率が、平均で20%だったのに対し、半世紀ぶりの凶漁と言われた2017年は約半分の12%となっています。2019年は2017年より少ないペースでの水揚げとなっています(10月中旬現在・2019年の結果はこちら)ので、出来るだけ食用に回されることになるでしょう。

供給の減少により、価格が取れるため最優先となる鮮魚向けの比率は、同36%でしたが、2017年には57%に上昇しています。

全体の水揚げ量から非食用向けと鮮魚向けを引いた残りが、加工向けとなります。水揚げが少ないと開きや缶詰向けの原料も高騰し、製品価格に転嫁せざるを得なくなるのです。

 今年は、冷凍サンマの方が美味しいと言われるのにも理由があります。冷凍に回るのは、主に旬で潤沢に水揚げがまとまり、価格が落ち着く時期です。

水揚げされるサンマは、概ね鮮魚向けが確保されてから、冷凍原料として確保されて行きます。

水揚げが少なく、価格が高いシーズンの始めの頃は、あまり冷凍には回りません。このため、冷凍品は水揚げが少ない期間でも、鮮魚より安く販売できるケースが多いのです。

ただし、あくまでも潤沢な水揚げが一定期間続いていることが前提です。なぜなら不漁が続けば冷凍に回る機会は減るからです。また冷凍されても、魚価の上昇で安く販売するのは難しくなります。

1990年以来、国産のマサバの水揚げが激減して、その分ノルウェーサバが大量に輸入されて不足分が補われてきました。しかしサバと違い、サンマは大西洋では獲れません。

また、もともと中国や台湾と同じ群れなのです。だから、日本が獲れない時は、他の国もサンマが減っているので同じように不漁となります。かつ日本のEEZ(排他的経済水域)内に回遊して来るサンマの方が、脂がのって品質も良くなるため、輸入による代用は容易ではないのです。

このため美味しいサンマを食べ続けるためには、科学的根拠に基づく、国際的な取り組みを伴う資源管理が、待ったなしの状況なのです。

サンマは誰のものなのか?

サンマが減った原因は「日本に回遊してくる前に台湾や中国が獲ってしまうから」、「海水温の上昇で回遊パターンが変わったから」ということが盛んに報道されています。

このため、日本人の多くは、「日本も含めて」各国が獲りすぎているという問題の本質が理解できていません。

ところで、サンマは「国際漁業資源」に分類されていることをご存知でしょうか?日本人からすれば、日本に回遊する前に沖合で獲ることは許せないとなります。

しかしながら、公海で操業している国々からすれば「日本がたくさん獲るから公海での漁獲が減ってしまう」という理屈になるのです。

漁業先進国である北欧や北米の国々では、アイスランドのカラフトシシャモや、アラスカに遡上するサケ類を始め、自国に産卵のために回遊してくる公海上の魚の資源まで厳しく管理しています。

日本は、それをしてこなかったために、他国の進出を許してしまったのです。

サンマはどこを泳いでいるのか?

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サンマの分布図  水産研究 教育機構

そもそもサンマはどこを回遊しているのでしょうか?おそらく日本のEEZ(排他的経済水域)を超えて広く回遊していることは、あまり意識されていないことでしょう。

図によると薄緑(夏季)とオレンジ(冬季)と広く分布しているように見えます。しかし、実際に魚群がまとまって漁場が形成されるのは、ピンクと水色の海域です。色の境目は概ね日本のEEZと「公海」の境目を意味するのです。

ところで、オレンジ色に広く分布しているように見える海域については、そもそも資源調査をしている海域に大部分が入っていません。毎年公表している上の図と、具体的な調査データである下の図を比較すると、本当にそんなに広い範囲に分布していると言えるのでしょうか?少なくとも漁場が形成できるほどには、サンマはいないでしょう。

一方、北欧では、漁業をしている国々が協力して広範囲に資源調査をしています。

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2019年サンマ資源量調査結果  水産研究 教育機構

台湾や中国の漁船は、日本のEEZ内に入って操業が出来ません。一方で、外国漁船が操業している海域には「公海自由の原則」が適用されます。公海での国別の漁獲枠が決まっていないことで、サンマの資源量と水揚量に懸念が出ているのです。

世界各国は、自国のEEZの資源管理強化を進めてきました。その結果、自由に操業できる漁場が狭まっています。このため、日本のEEZの外側のように、管理が甘い漁場は、他の国々に狙われてしまいます。

それだけではありません、一旦、設備投資されて新造船が増えてしまうと、後には引かなくなります。残念ながら、それが今の中国、台湾などのサンマを漁獲する国々の立場なのです。

国別漁獲枠の決定は、通常過去の漁獲実績をベースにした交渉となります。このため、中国(2012年よりサンマ漁開始)のように後から参入してきた国は、漁獲実績をできるだけ増やしてから、国別の漁獲枠交渉のテーブルにつきたいと考えるのです。

しかし、このまま漁獲競争を続けて資源を潰してしまえば、元も子もないことは各国とも、だいぶ分かって来ているようです。一方で、国別の漁獲枠の配分は、国益が絡むので各国とも、安易な妥協はできません。

日本の漁獲比率が8割以上あった1990年代後半以前に、2007年以降に起こった北欧でのサバの漁獲枠交渉の経緯を見て、参考にしていれば良かったのですが、時計の針は戻せません。

2018年の国別漁獲量のシェアでは、日本は29%とついに3割を切ってしまい、さらに減り続けています。古くて小さい漁船、日本から漁場が遠いなど不利な要因が多く、時間の経過と共に交渉条件はどんどん不利になってしまいます。

サンマを食べ続けるために各国がしなければならないこと

2019年7月に第5回北太平洋漁業委員会(NPFC)が開かれ、その中で、サンマの漁獲量の上限が決められました。しかしながら、その数量は56万トンと、昨年の実績44万トンを上回っています。NPFCのメンバーは8カ国です。漁獲量順に台湾、日本、中国、韓国、ロシア、バヌアツ。これに漁獲実績がない米国とカナダが参加しています。

しかも今年度は、昨年度より資源状態が悪く、この数字は後で「ぶかぶかの帽子」と表現されています。大きく減らす必要がある量なので、残念ながらこれでは漁獲枠としての効果は見込めません。

かつ、今季(令和元年7月〜翌6月)日本のTAC(漁獲枠)は、前期同様の26万トンと、実績の13万トンの倍、今年の水揚げはさらに減る見込みであるため、これも全く資源管理に役に立ちません。

サンマを漁獲する各国がしなければならないことは、科学的根拠に基づく、漁獲枠の総枠と国別漁獲枠の決定です。2017年には日本の提案で国別漁獲枠を決めようとしましたが却下されました。

これを日本のマスコミは「中国その他が反対」と伝えています。しかし、実際に賛成したのは台湾のみでした。また、その内容自体は、漁獲枠が巨大(56万トン)で、同年の水揚げ実績の倍であり、かつ日本に取って著しく有利な内容(日本の漁獲枠は24万トンで前年実績11万トンの2倍以上)でした。

もちろん日本に取って有利な条件で合意できればいうことありません。しかしながら国益が絡む交渉です。獲り切れない大きな漁獲枠で、資源の持続性の担保もなく、自国にとって有利ではない条件で、安易に合意する可能性など最初からなかったのです。

サンマの漁獲競争 持久戦に勝者はいない

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サンマ・サバ類・マイワシ 資源量調査結果/  水産研究 教育機構

図は、サンマ(赤色)以外に、サバ類(青色)とマイワシ(黄色)の資源量の調査結果を合わせたものです。大まかに言って、2区と3区は日本のEEZ外です。

漁獲が減って供給が減りサンマの価格は上昇します。このため実質獲り放題になっているので、各国は資源に悪いと思っていても、ますますサンマを狙うことになります。

そこで、まだNPFCで話しも出ていない「マイワシの国別漁獲枠設定の宣言」をするのです。そうすると、各国は、実績確保のためにサンマの漁獲日数を減らしても、マイワシ狙いに行き、一時的に漁獲圧力が下がることになります。その間に、サンマの国別TACを決めるのです。

中国、台湾を始め、すでに漁船に投資して回収できていない漁業者に、効果があるように漁獲量を制限させることは容易ではありません。東日本大震災以降に増えているマイワシ資源。残された時間も選択肢も減ってきている中、手遅れになる前に、ここでマイワシのカードを切り、その間に国際合意に持っていく戦略が不可欠なのです。