減り続ける魚! 水揚げ量の減少は、遠洋漁業とマイワシが減ったから?を検証してみた


マイワシ

漁獲量が減り続ける本当の理由は何か?

2020年の水揚げ量は418万㌧と記録が残る1950年代以降で過去最低となり、毎年その数字が悪化しています。「漁獲量が減少している理由」をネットで検索すると農水省のHPが出てきます。それはピークの1984年から1995年頃にかけての説明です。

理由を要約すると①遠洋漁業の衰退②マイワシの漁獲量減少③環境の変化の3点となっています。

2017年に来日したEUの欧州議会水産員会との意見交換会がありました。その時、漁獲量の激減は乱獲ではないのか?という問いがありました。それに対し、水揚げ量の減少は乱獲ではなくマイワシの減少と200海里の規制で遠洋漁業から締め出されたことによるとしていました。実際はどうなのでしょうか?なお③についての矛盾点は、海水温の上昇について別の記事で詳述しています。

まずは全体の水揚げ量(漁業と養殖の合計)を見てみよう

水産白書

上のグラフは漁業・養殖業の生産量推移を表したものです。全体として右肩下がりで減少が続いているのが分かります。さらに黒い折れ線グラフで、マイワシの漁獲量推移が示されています。そしてこれが全体の減少傾向に似ていることが分かります。

しかしながら、漁獲量が減少している原因とされている①遠洋漁業の衰退は、200海里漁業専管水域が設定された1977年以降に影響が出ています。青色部分の推移をよく見ると既に1990年代以降は尻すぼみのままで推移しています。特に2000年以降の過去20年前後からは、全体の減少に与える影響はさほどでもないことが分かります。

マイワシは減っているどころか増えているという矛盾

農水省データを編集

次に上のグラフは、マイワシの漁獲量の推移を表しています。減少要因どころか逆に増えていますね。それどころか、2011年以降はサケスルメイカサンマ、ホッケなど他の魚種が次々に大幅に減少している中で、マイワシは全体の減少を支える数少ない魚種となっているのです。

マイワシの漁獲量を差し引いた全体像でさらに傾向が分かる

農水省データを編集

次に上のグラフをご覧ください。これは、全体の水揚げ量から『マイワシの漁獲量を除いた』グラフです。マイワシの減少に関わらず、全体の数量が減っていることが分かります。

マイワシと遠洋漁業の合計推移グラフを作ってみた

農水省データを編集

さらに魚の漁獲量が減った要因とされている、遠洋漁業とマイワシの漁獲量合計を足してみました。2000年以降の推移を見ると、減少要因といわれる2つの合計は、減少ではなく増加傾向であることが分かります。遠洋漁業は減ったままなので、増加はマイワシの分です。この2つが全体の減少要因でないことは、これでハッキリとお分かりになると思います。

何が言えるのか?

マイワシの水揚げ

サンマイカナゴサケマダラスルメイカなど、このサイトでは様々な魚種が次々に激減している理由と、その対策について発信を続けています。もうお分かりの通り『遠洋漁業とマイワシの漁獲量が減少しているために、日本の水揚げ量が減っているのではない』というのが結論です。

魚が消えて行き、その影響が全国で社会問題になっています。その対策で前提が誤り『誤った前提に対する正しい答え』をこのまま意思決定に関わる人たちが求めてしまったらどうなってしまうのか?

また海水温の上昇にしても、それが日本の海の周りだけに起こっていることなのか?世界の他の海ではどうなっていて、魚の資源量は日本と同じように減っているのか?

当サイトで世界の海とその資源状態を比較されたものを見れば、不都合な事実は隠せないことが分かると思います。必要なのは『魚が消えていく本当の理由』に国民に気づいてもらい、国際的に見て遜色がない水産資源管理を実行して行くことではないでしょうか?

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