サンマが来遊して来ないのはマイワシやサバが増えたから?を検証してみた。
8月のお盆になってもまだ店頭にサンマの鮮魚は並んでいません。7月に漁期に入ったものの、これまでは水揚げがゼロだからです。上の写真は細々と並ぶ台湾と昨年の国産の解凍物。しかし多くはありません。他国も含めサンマの漁獲量が激減しているからです。
日本では、魚が減るとその原因が乱獲から他の要因に責任転嫁されてしまうケースが後を絶ちません。このため「間違った前提に対する正しい答え」が求められ、改善どころか悪化だけが進んでしまいます。
マスコミも情報不足および注目を集めるためか、変わった珍説が出ると検証もせず報道してしまいます。そして日本では水産資源に関してどんどん誤った情報が拡散されているのです。
瀬戸内海のイカナゴが激減に対した理由が「水が綺麗になりすぎたため」と報道されているのには驚かされました。それなら水が今よりももっと綺麗だった江戸や室町時代にはイカナゴはもっと少なかったのでしょうかw?
そこで今回は、サンマの来遊を阻害しているのはマイワシやサバ類という説が本当か検証してみます。サンマ、マイワシ、サバ、イカナゴも驚いていることでしょう。
それぞれの説を全否定するわけではありませんが、客観的な事象や数字から分析すると明確な矛盾が出てくるので、本質的な問題ではないことが浮き出てきます。
『サンマの来遊を阻害するマイワシ、サバ類は依然として多く19年より増加しているという。』❓❓❓
2021年8月。サンマの漁獲シーズンになりました。今年の予想は、過去最低の昨年よりは多いが、2019年より少ないというものです。2019年の4.6万㌧は2020年の3万㌧より多いという数字ですが、そもそも2019年の数字自体がほんの10年前まで20~30万㌧(2001年~2010年の平均26万㌧)漁獲されていた数量より極めて少ない数字なのです。
サンマとマイワシの関係
上のグラフをご覧ください。まずサンマとマイワシ(以下太平洋が対象)の関係です。マイワシ、マサバと日本海でも漁獲されているので、共に太平洋側で漁獲された数量を基に分析していきます。
マイワシの漁獲量が増えて来ていますが、1980年代のマイワシの平均漁獲量は250万㌧、同サンマは22万㌧でした。2019年(2020年は未発表)のマイワシ52万㌧、2020年のサンマは3万㌧と、1980年代の方が約5倍もマイワシが漁獲されていましたが、サンマも約7倍漁獲されていました。これでマイワシのせいでサンマの来遊を阻害していると言えるのでしょうか?
サンマとサバ類の関係
次のグラフをご覧下さい。サンマとマサバ(太平洋)の漁獲量の関係です。1980年代のマサバの平均漁獲量は38万㌧、同サンマは22万㌧でした。2019年(2020年は未発表)のマサバは27万㌧、2020年のサンマは3万㌧でした。1980年代の方が約5倍もマイワシが漁獲されていましたが、サバは増えたどころか3割減となっています、、、。これでサバのせいでサンマの来遊を阻害していると言えるのでしょうか?(注)サバ類とはマサバとゴマサバのこと。数量はマサバが圧倒しているのでゴマサバは割愛しています。
サンマとマイワシとマサバの相関関係
最後にサンマ・マサバ・マイワシの3つを合わせた漁獲量推移のグラフをご覧ください。2つのグラフの説明と、上のグラフを照らし合わせて考えた場合、果たしてサンマが来遊してこないのはマイワシやマサバが阻害しているから?と言えるでしょうか?そこまでマイワシもマサバも全然多くありません。
こうやって、実際の数字で分析されているのは見たことがありません。しかし、こうやって客観的にみるとサンマの来遊とマイワシやサバ類の増加が原因であるとは言えないことがわかります。
上のグラフは、サンマの資源量推移です。激減していることが分かります。サンマが来遊してこない最大の理由は資源量が減少しているからです。海水温が低い公海でも資源量も漁獲量も激減しているのです。だから来遊も減ります。なぜ本当のことを言わないのでしょうか?
検証結果は、データ分析からサンマの来遊の減少とマイワシやサバの増加には相関関係は見られないということです。
サンマが減少している主因は、魚種交代でも何でもなく獲りすぎなのです。魚種交代というのは、それぞれの魚種の水産資源管理が出来ていてはじめて語れる内容です。
なお、このWEBサイトは、マスコミや研究者の方々も含めて「魚が消えていく本当の理由」について気付いていただき、水産資源の回復とその持続性に役立ていただくことを意図しています。
より詳しく知りたい方は、下記サイトを参照してください。